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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F02N
管理番号 1001292
審判番号 審判1998-13654  
総通号数
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2000-02-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1998-08-31 
確定日 1999-08-25 
事件の表示 平成1年実用新案登録願第111976号「エンジン始動装置の始動検出回路」拒絶査定に対する審判事件(平成7年5月1 7日出願公告、実公平7-21891)について、次のとおり 審決する。   
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 1.手続の経緯・本件考案
本件は、平成1年9月25日の出願であって、その請求項1に係る考案(以下、「本件請求項1に係る考案」という)は、出願公告後の平成8年3月26日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、次のとおりのものと認める。
「エンジン始動用のセルモー夕と、このセルモータの駆動用電源であるパッテリとを備えたエンジン始動装置において、前記セルモータが駆動される直前の前記パッテリの電圧を一定の期間に亘って保持する電圧保持手段と、前記一定の期間内において前記パッテリの電圧および前記電圧保持手段によって保持されている電圧が供給され、前記パッテリの電圧が前記保持電圧の値以上となったことを判別する判別手段とを有し、この判別手段によって前記パッテリ電圧が前記保持電圧の値以上となったことが判別されたときには、前記エンジンが始動したものと判別するようになっていることを特徴とするエンジン始動装置の始動検出回路。」
なお、請求項1には、「エンジ始動装置において、」と記載されているが、これは「エンジン始動装置において、」の明らかな誤記と認められるから、本件の請求項1に係る考案を上記のように認定した。
2.引用例
これに対し、原査定の拒絶の理由となった、登録異議申立人、株式会社日立カーエンジニアリングの登録異議申立てに対する登録異議の決定の理由に引用された本件出願前に頒布された特開昭63-272962号公報(以下、「引用例1」という)及び、同特開昭62-128819号公報(以下、「引用例2」という)には、それぞれ、以下の事項が記載されている。
(ア)引用例1
第1頁左欄第5行?第17行には「エンジンを始動させる指令を受けることにより、当該エンジン用のスタータモータを作動させ、当該エンジンの始動と同時に、当該スタータモータを停止させる車両用エンジンの自動始動装置であり、スタータモータの作動時に当該スタータモータへの電流供給により、当該スタータモータの非作動時に比べ低下した当該車両用バッテリーの電圧が、当該エンジンの始動によるオルタネータの始動により、当該オルタネータの出力電圧まで急上昇する変化が検出されることをもって、当該エンジンが始動したと判定し当該スタータモータを停止させるようにしたことを特徴とする車両用エンジンの自動始動装置。」(特許請求の範囲)と記載され、
第2頁左上欄第13行?同第20行には「しかしながら、このチャージランプの低電圧側への接続は一般的に車両側には、コネクター等が特に用意されているわけではないので容易ではない。直接オルタネータから配線する場合、温度湿度等条件の厳しいエンジンルームから、エンジン自動始動装置を配置する車室内への配線であり、リード線が長く、線処理、エンジンルームと車室とのしゃへい、耐温湿度等、特に問題がある。」と記載され、
第2頁右上欄第12行?同第18行には「第3図に示す如く、配線上困難な問題を有する、チャージランプ3の低電圧側を使用せず、バッテリー5の電圧が、第2図に示す如くスタータモータ作動時に低く下がっており、エンジン始動時に急速に立上ることを利用し、この電圧立上りを検出する回路、検出回路の出力を保持する回路、スタータモータ駆動回路から構成する。」と記載され、
第2頁左下欄第11行?同右下欄第10行には「次に、スタータスイッチ12を閉じると、コンパレータ8に電源電圧が加えられ、-側入力端子には分圧用抵抗9及び10によって分割された電圧が加えられる。一方+側入力端子には、電圧微分用コンデンサが既にバッテリー電圧に充電されているためOvが加えられる。よって、コンパレータ8の出力はローレベルとなりリレー11の接点が閉じスタータモータ7が作動する。この時バッテりー電圧が下がるがコンパレータ8の動作条件に変化はない。この時、電圧微分用コンデンサ16はダイオード17を通して両端電圧が第2図のV1を用いて表すとV1-1Dvまで放電する。
(1D=1ダイオード)エンジンが始動すると、バッテリー電圧が急速に上昇し、コンパレータ8の+側入力端子の電圧は、第2図のV1,V3を用いて表わすとV3-V1+1Dvまで上昇し、-側入力端子の入力電圧は上記+側入力電圧より小さくなるように分圧用抵抗9及び10を設定しているので、コンパレータ8の出力はハイレベルとなり」と記載されている。
上記記載に第1乃至3図等も合わせてみると、引用例1には、「エンジン始動用のスタータモータ7と、このスタータモータ7の駆動用電源であるバッテリー5とを備えたエンジン始動装置において、前記スタータモータ7の作動時にスタータモータ7への電流供給により、スタータモータ7の非作動時に比べ低下したバッテリーの電圧V1が、当該エンジンの始動によるオルタネータの始動により、当該オルタネータの出力電圧V3まで急上昇する変化を検出するコンパレータ8を有し、このコンパレータ8によって、前記エンジンが始動したことを判別するようになっているエンジン始動装置の始動検出回路。」が記載されているものと認める。
(イ)引用例2
第5頁左上欄第3行?第10行には、「以上のようにしてエンジンの最初の始動操作、又は再始動操作においてエンジンが始動したとすると、これがエンジンの始動検出装置(15)により検出される。この検出装置(15)は種々考えられるが、一例として自動車のバッテリー電圧をセルモータの起動前と起動後とにおいてそれぞれ検出して比較することにより、電圧が上昇したときは、エンジンが始動したと判断される。」と記載されている。
3.対比・判断
本件請求項1に係る考案と引用例1に記載されたものとを比較すると、引用例1に記載されたものの「スタータモータ7」は、本件請求項1に係る考案の「セルモータ」に相当するから、両者は、「エンジン始動用のセルモータと、このセルモータの駆動用電源であるパッテリとを備えたエンジン始動装置において、バッテリ電圧の変化の状態を検出し、この変化の状態で前記エンジンが始動したことを判別するようになっているエンジン始動装置の始動検出回路。」という点で一致するものの、
本件請求項1に係る考案が「セルモー夕が駆動される直前の前記パッテリの電圧を一定の期間に亘って保持する電圧保持手段と、前記一定の期間内において前記パッテリの電圧および前記電圧保持手段によって保持されている電圧が供給され、前記パッテリの電圧が前記保持電圧の値以上となったことを判別する判別手段とを有し、この判別手段によって前記パッテリ電圧が前記保持電圧の値以上となったことが判別されたときには、前記エンジンが始動したものと判別するようになっている」のに対し、引用例1に記載されたものは、「スタータモータ7の作動時にスタータモータ7への電流供給により、スタータモータ7の非作動時に比べ低下したバッテリーの電圧V1が、当該エンジンの始動によるオルタネータの始動により、当該オルタネータの出力電圧V3まで急上昇する変化を検出するコンパレータ8を有し、このコンパレータ8によって、前記エンジンが始動したことを判別するようになっている」点で相違する。
以下、上記相違点について検討する。
引用例2には、「自動車のパッテリ電圧をセルモータの起動前と起動後においてそれぞれ検出して比較することにより電圧が上昇したときは、エンジンが始動したと判断される」と記載されており、その具体的手段については直接的な記載はないものの、パッテリ電圧は、セルモータの起動後エンジンが始動すればオルタネータの作動によりセルモータ起動前のパッテリ電圧より高い電圧となり、セルモータの起動後エンジンが始動しない場合はオルタネータが作動せず、セルモータ起動後のパッテリ電圧がセルモータの起動前のパッテリ電圧を越えることがないという事項は、当業者にとっては自明の事項であり、また、引用例2に記載の「セルモータの起動」は「セルモータの駆動」と同義と認められるから、引用例2には、「セルモータ駆動前のパッテリ電圧と、セルモータ駆動後のパッテリ電圧とを比較し、セルモータ駆動後のパッテリ電圧が、セルモータ駆動前のバッテリ電圧を越える電圧となったことが判別されたときには、エンジンが始動したものと判別する判別手段を有するエンジン始動検出装置」が記載されていると認められる。
そして、引用例1に記載されたエンジン始動装置の始動検出回路も引用例2に記載されたエンジン始動検出装置も、パッテリ電圧の変化を検出してエンジン始動を検出するという同一の技術分野に属することから、引用例1に記載されたエンジン始動装置の始動検出回路に、引用例2に記載された「セルモータ駆動前のパッテリ電圧と、セルモータ駆動後のパッテリ電圧とを比較し、セルモータ駆動後のパッテリ電圧が、セルモータ駆動前のパッテリ電圧を越える電圧となったことが判別されたときには、エンジンが始動したものと判別する判別手段」を適用することは当業者であればきわめて容易に想到し得ることと認められる。
そして、上記適用に際し、セルモータの駆動前とセルモータの駆動後とでは時間的ずれがあるため、セルモータ駆動前のパッテリ電圧と、セルモータ駆動後のパッテリ電圧とを比較するには、セルモータ駆動前のパッテリ電圧値を何らかの形でセルモータ駆動後の比較を行う時点まで記憶させておく必要があることは当業者にとっては自明の事項であり、また、比較すべき2つの電圧の検出時に時間的ずれがある場合、先に検出する電圧を保持しておき、後に検出する電圧と比較することは電子回路の技術分野では周知の技術であり(例えば、特開昭56-75966号公報、特開昭63-39430号公報等参照)、また、セルモー夕駆動後、エンジンが始動しオルタネータが作動し、バッテリ電圧がセルモータ駆動前の電圧より高くなるのに所要期間を要することから、一定期間に亘って、セルモータ駆動前のバッテリ電圧を保持することが、当然エンジン始動検知のために必要であることは当業者にとって技術常識である点を考慮すると、セルモータが駆動する前のバッテリ電圧を一定の期間に亘って保持する電圧保持手段を備え、該保持手段によって保持されている電圧を判別手段に提供し、セルモータの駆動後のパッテリ電圧と比較するように構成することは、当業者であればきわめて容易に想到し得ることである。
更にセルモータが駆動する前のパッテリ電圧保持において、セルモータ駆動前のより正確なバッテリ電圧を得るため、保持するパッテリ電圧をセルモータの駆動の直前のバッテリ電圧とすることも、当業者の技術常識である。
したがって、上記相違点における本件請求項1に係る考案の構成は、引用例2に記載された判別手段に基づいて当業者がきわめて容易に想到し得ることと認められる。
そして、本件考案の作用効果も、上記引用例1,2に記載されたものから予測しうる作用効果以上の顕著な作用効果を奏するものとも認められない。
4.むすび
以上のとおりであるから、本件請求項1に係る考案は、上記引用例1及び引用例2に記載された考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 1999-06-23 
結審通知日 1999-07-06 
審決日 1999-07-12 
出願番号 実願平1-111976 
審決分類 U 1 8・ 121- Z (F02N)
最終処分 不成立    
前審関与審査官 鹿股 俊雄村上 哲  
特許庁審判長 蓑輪 安夫
特許庁審判官 清田 栄章
山口 直
考案の名称 エンジン始動装置の始動検出回路  
代理人 山田 稔  

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