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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A61F
管理番号 1002352
審判番号 審判1998-8869  
総通号数
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2000-03-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1998-06-11 
確定日 1999-10-13 
事件の表示 平成5年実用新案登録願第19939号「使い捨ておむつ」拒絶査定に対する審判事件〔(平成8年3月29日出願公告、実公平8-10305)、実用新案登録請求の範囲に記載された請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。   
結論 原査定を取り消す。 本願の考案は、実用新案登録をすべきものとする。
理由 1.手続の経緯
本願は、平成5年4月19日の出願であり、原審において出願公告されたところ、登録異議の申立てがあり、その登録異議の決定に記載した理由によって拒絶すべきとされたものである。
2.本願考案
本願の請求項1?3に係る考案(以下、各々「本願考案1」、「本願考案2」、「本願考案3」という。)は、実用新案法第13条において準用する特許法第64条の規定により適法に補正された明細書及び図面の記載からみて、実用新案登録請求の範囲の請求項1?3に記載された以下のとおりのものである。
【請求項1】 液透過性の表面シート、液不透過性の裏面シート及びこれら両シート間に介在する吸収体とを有し、前後のウエスト部が左右それぞれ接合され且つ腹側部及び背側部それぞれの両側縁部が接合されることにより,左右一対の接合部が形成されたパンツ型の使い捨ておむつにおいて、背側部の巾方向中央部で且つ上記ウエスト部の開口縁部の弾性伸縮部材の固定領域の下方部における上記裏面シートの表面に、おむつ廃棄時止着用の細帯状のテープファスナーを、その長さ方向をおむつの上下方向に向けてその一端を固定し且つその長さ方向に折りたたんで上記背側部内に位置するように配設してあり、上記テープファスナーは、その自由端部をおむつ廃棄時に用いる止着部となしてあり、且つその伸展時に該止着部が上記ウエスト部の開口縁部を越えて位置し得る長さであることを特徴とする使い捨ておむつ。
【請求項2】 上記テープファスナーが、上記固定部を含む領域、上記止着部を含む領域及び上記両領域を連結する中間領域の3層からなる3つ折り状態に折りたたまれていることを特徴とする請求項1記載の使い捨ておむつ。
【請求項3】 上記テープファスナーが、粘着領域と剥離領域とを有し、上記3つ折り状態下において、該粘着領域と剥離領域とが互いに当接するように重なっていることを特徴とする請求項1又は2記載の使い捨ておむつ。
3.原査定の概要
これに対して、原査定の拒絶の理由である登録異議の決定の理由の概要は、本願考案1?3は、本出願前頒布された甲第1号証(以下、「引用例1」という。)、甲第5号証(以下、「引用例2」という。)および甲第3号証(以下、「引用例3」という。)に記載された考案に基いて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができない、というものである。
4.引用例の記載事項
引用例1には、「着用者の肌に接する透水性のトップシートと、該トップシートの反対側に位置する不透水性のバックシートと、該両シート感に介在する吸収性のコアとからなるパンツ本体の前身頃の両側部の一部と後ろ身頃の両側部の一部とをそれぞれ接着した接合線を左右に有して、上方に開口部と下方左右にそれぞれ脚穴部とを形成して、一体化したパンツ式紙おむつにおいて、前記開口部の付近に設けられた横方向の腰周り弾性体」(第2頁左下欄第3?12行)を有するものとすることが記載されている。
そして、使用後の廃棄に関して、「第13図に示すように、接合テープ31,32の他端をそれぞれ離型紙35,36から剥離する。つぎに、第14図に示すように、股間部から上方へと横長円筒状に巻き込む。さらに、その両側部を中央に向けて折り曲げ、第15図に示すように、これが再び広がらないように、該両面テープ31,32の他端をはりつける。」(第4頁右下欄下から第3行?第5頁左上欄第5行)と、また、「長さを抵当に長くしたものにすれば、左右いずれか一方の接合テープだけにしてもよい。」と記載されている。
引用例2には、「少なくとも、透水性表面シートと非透水性裏面シートとの間にこれらよりも小形の吸収体を介在させ、該吸収体の縦方向及び横方向両端部から演出して相会する前記表裏両面得シート野縦方向及び横方向両端部を接合して成る使い捨ておむつにおいて、前記裏面シートに接着テープ片を取り付けてあることを特徴とする前記おむつ。」(実用新案登録請求の範囲第1項)に関する考案が記載されている。
そして、接着テープ片に関して、「おむつを使用後に投棄する際、排泄物が露出しないように折り畳み或は丸めた状態を保つため」(第2頁下から第6?3行)に、「おむつの前側部又は背側部の吸収体を位置させてない腰囲り中央部に該接着テープ片の一端部を固定し、該接着テープ片の自由端部を該腰囲り部から外方向へ突出させ得るようにする」(実用新案登録請求の範囲第2項)か、あるいは、「吸収体を位置させてあるおむつの前側部又は背側部の横方向中央部に、腰囲り部に該接着テープ片の一部が位置しないように接着する」(実用新案登録請求の範囲第3項)こととし、さらに「その一端部を固定し、その他端部を自由端部となす」(実用新案登録請求の範囲第4項)と記載され、また、第8図を示し、接着テープ片により折畳み状態に保たれているおむつが記載されている(第6頁下から第5行?第7頁第5行)。
さらに、接着テープ片に関し、第1?5図を示し、「背側部3の腰囲り部4の中央部の裏面シート8に好ましくは疎水性の接着剤層11を有する接着テープ片12の一端部を固定し、その自由端部を腰囲り部4から外方向へ突出させ、その自由端の接着剤層11に離型テープ片13を仮着してある。・・・もとより、接着テープ片12は、これを使用しない場合には、その自由端部を適宜折曲しておいてもよい。」(第4頁第下から第7行?第5頁第10行)、「吸収体9を位置させてある背側部3の表面シート8に好ましくは疎水性の接着剤層11を有する接着テープ片12の一端部を固定し、その自由端部が腰囲り部4の域に位置しないようにし、その自由端部の接着剤層11に離型テープ片13を仮着してある。」(第5頁第13?18行)とし、「しかるべき特定位置に取付けてあるため使用し易く、又吸収体を位置させてある部位の裏面シートに取り付けてある場合には、接着テープ片が比較的剛性であっても、これによりその位置が隆起して使用者の肌に当りこれを痛めない等の効果があり、実用に供して極めて有益である。」(第7頁第3?19行)と記載されている。
引用例3には、「おむつあるいは失禁用パッドの近接箇所近傍の側方に一対の装着片が折畳まれて設けられている。」(第3欄第54?56行)こと、「各装着片は、・・・とアコーディオンプリーツ型に折畳まれている。・・・その数は装着片の長さに応じる」(第4欄第1?5行)ことが記載されている。
5.対比、判断
(本願考案1について)
本願考案1と、引用例1に記載された考案とを対比すると、引用例1に記載された考案における「トップシート」「バックシート」「吸水性のコア」「前身頃」「後身頃」「接合線」「接合テープ」はそれぞれ本願考案1における「表面シート」「裏面シート」「吸収体」「腹側部」「背側部」「接合部」「細帯状のテープファスナー」に相当するものであるから、両者は、液透過性の表面シート、液不透過性の裏面シート及びこれら両シート間に介在する吸収体とを有し、前後のウエスト部が左右それぞれ接合され且つ腹側部及び背側部それぞれの両側縁部が接合されることにより,左右一対の接合部が形成されたパンツ型の使い捨ておむつにおいて、背側部で且つウエスト部の開口縁部の弾性伸縮部材の固定領域の下方部における上記裏面シートの表面に、おむつ廃棄時止着用の細帯状のテープファスナーを、その一端を固定し上記背側部内に位置するように配設してあり、上記テープファスナーは、その自由端部をおむつ廃棄時に用いる止着部となしてあることを特徴とする使い捨ておむつである点で一致し、以下の点で相違する。
相違点▲1▼
細帯状のテープファスナーの配設位置に関して、前者が、「背側部の巾方向中央部」に配設されるとしているのに対し、後者は、「後身頃(背側部)の左右接合部」に配設されている点。
相違点▲2▼
細帯状のテープファスナーの配設方向に関して、前者が、「その長さ方向をおむつの上下方向」に向けて配設されるとしているのに対し、後者は、「後身頃(背側部)から接合線(接合部)にかけての左右幅方向に」向けて配設されている点。
相違点▲3▼
細帯状のテープファスナーの配設状態、長さに関して、前者が、「その長さ方向に折りたたんで、その伸展時に該止着部が上記ウエスト部の開口縁部を越えて位置し得る長さである」とされているのに対し、後者は、そのような規定がなされていない点。
以下、上記相違点について検討する。
引用例2には、使用後におむつを廃棄する際に、排泄物が露出しないように折り畳み又は丸めた状態を保つために、その背側部の横方向中央部に接着させてなる接着テープ片が配設されてなる展開型使い捨ておむつが記載されているものの、上記相違点▲3▼に係る本願考案1の構成については記載がない。そして、引用例2においては、本願考案1と同様に、当該接着テープ片が、背側部の裏面シートの腰囲り部の下部領域にその一端部が固定されている使い捨ておむつも記載されてはいるが(第4図)、このおむつにおいては、粘着テープ片の自由端部が腰囲り部の域に位置しないように構成するとされており、この場合、接着テープ片が比較的剛性であっても、これによりその部位が隆起して使用者の肌に当りこれを痛めない等の効果があり、実用に供して極めて有益である、と記載されているのである。そうであってみれば、引用例2には、粘着テープを本願考案1と同様位置に配設することが記載されてはいるが、この場合においては、粘着テープの止着部(自由端部)は、おむつの腰囲り部まで達しないようにすることをその効果とともに明示しているのであるから、この引用例2は、上記相違点▲3▼に係る本願考案1の構成を採用することをむしろ否定するものである。
また、引用例3には、おむつの廃棄処理について記載がないばかりか、単におむつあるいは失禁用パッドの近接箇所近傍の側方に設けられた装着片について、使用前はその長さ方向に折畳まれており、伸展時におむつ或いは失禁用パッドを着用者に固定することができるものである旨の記載があるにとどまるから、引用例3は、本願考案1とは目的が異なり、また上記相違点▲1▼?▲3▼に係る本願考案1の構成も示唆していない。
これに対して、本願考案1は、「背側部の巾方向中央部で且つ上記ウエスト部の開口縁部の弾性伸縮部材の固定領域の下方部における上記裏面シートの表面に、おむつ廃棄時止着用の細帯状のテープファスナーを、その長さ方向をおむつの上下方向に向けてその一端を固定し且つその長さ方向に折りたたんで上記背側部内に位置するように配設してあり、上記テープファスナーは、その自由端部をおむつ廃棄時に用いる止着部となして」あるという構成に加え、さらにテープファスナーは、「その伸展時に該止着部が上記ウエスト部の開口縁部を越えて位置し得る長さ」とする上記相違点▲3▼に係る構成を採用することによって、単に、テープファスナーの止着部が肌に当接しないというのみではなく、おむつの廃棄時に、一方向からの丸め操作のみで、廃棄処理が容易に行いうるという効果を奏し得たものである。
一方、引用例1の考案においては、廃棄時に、下方向からの丸め操作に加え、さらに左右両方向からの折畳み操作を必要とし、また引用例2においても、接着テープを本願発明と同様位置に配設した場合、接着テープの止着部(自由端部)が腰囲り部にも達しないため、廃棄処理は、上下両方向からの丸め操作を必要とするものである。さらに、引用例3には、廃棄処理について全く記載がないものである。
そうであってみれば、本願考案1の効果は、引用例1?3に記載のない顕著なものといえるから、これらの点からみて、本願考案1は、上記引用例に記載された考案から当業者がきわめて容易に考案しうるものとはいえない。
(本願考案2、3について)
本願考案2、3は、本願考案1をさらに限定したものであるから、上記本願考案1についての判断と同様の理由により、上記各引用例に記載の考案から当業者がきわめて容易に考案しうるものとはいえない。
6.むすび
以上のとおりであるから、本願考案1?3は、上記引用例1?3に記載された考案に基いて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものと認めることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
審決日 1999-07-30 
出願番号 実願平5-19939 
審決分類 U 1 8・ 121- WY (A61F)
最終処分 成立    
前審関与審査官 梅田 幸秀門前 浩一  
特許庁審判長 吉村 康男
特許庁審判官 穴吹 智子
深津 弘
考案の名称 使い捨ておむつ  
代理人 羽鳥 修  

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