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審決分類 |
審判 全部申し立て F16B |
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管理番号 | 1002415 |
異議申立番号 | 異議1999-71161 |
総通号数 | 3 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 実用新案決定公報 |
発行日 | 2000-03-31 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 1999-03-19 |
確定日 | 1999-07-26 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 実用新案登録第2581547号「留め具と被組付部品との取付け構造」の実用新案に対する実用新案登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 実用新案登録第2581547号の実用新案登録を維持する。 |
理由 |
1.本件考案 本件実用新案登録第2581547号(平成2年12月25日出願、平成10年7月10日設定登録)の請求項1に係る考案(以下、「本件考案」という。)は、実用新案登録明細書及び図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。 「所定の装着部位に固定されているスタッドボルトを挿入させることでこのスタッドボルトに係止される留め具と、この留め具を介して前記装着部位に組付けられる被組付部品とを互いに結合状態に保持するための取付け構造であって、前記留め具はその下部に形成された断面がほぼ矩形の取付部と、この取付部の下面両側から張り出させた一対の鍔部とを備え、また前記被組付部品は長方形の短辺が前記留め具の取付部を受入れて保持できる寸法で、かつ長辺が取付部の前記鍔部を通過させることができる寸法に設定された少なくとも二種類の取付孔を備え、一方の種類の取付孔はその両長辺側の縁部に対して前記取付部の各鍔部と係合可能に形成された一対の係合面と、これらの各係合面における相互の対角位置で前記鍔部をそれぞれ受け止め、この取付孔の長辺に沿った方向への前記留め具の移動を規制する規制部とを備え、他方の種類の取付孔はその両長辺側の縁部に対してそれぞれの全長にわたって前記取付部の各鍔部と係合可能に形成された一対の係合面を備えている留め具と被組付部品との取付け構造。」 2.実用新案登録異議申立の理由の概要 実用新案登録異議申立人 ポップリベット・ファスナー株式会社は、証拠方法として甲第1乃至4号証を提示し、本件考案は、甲第1乃至4号証に記載された考案に基づいて、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができないものであり、その実用新案登録を取り消すべき旨主張している。 3.甲各号証の記載内容 実用新案登録異議申立人が提示した甲各号証には以下の事項がそれぞれ記載されている。 [甲第1号証:実願昭62-185820号(実開平1-89614号)のマイクロフィルム] 留め具と部品部材との取付け構造に関し、 (ア)所定の装着部位に固定されているスタッドボルト5を挿入させることでこのスタッドボルト5に係止される留め具6と、この留め具6を介し前記装着部位に組付けられる部品部材1とを互いに結合状態に保持するための取付け構造であって、前記留め具6がその下部に形成された断面がほぼ矩形の係止部16と、この係止部16の下面両側から張り出させた一対の鍔部20とを備え、部品部材1は長方形の短辺が前記留め具6の係止部16を受入れて保持できる寸法で、かつ長辺が係止部16の鍔部20を通過させることができる寸法に設定された複数の取付孔3を備え、前記取付孔3がその両長辺側の縁部に対してそれぞれの全長にわたって係止部16の各鍔部20と係合可能に形成された一対の係合面を備えていることが記載されている(実用新案登録請求の範囲、第4頁第1行?第6頁第3行、第1及び2図参照)。 [甲第2号証:実願昭59-34475号(実開昭60-145953号)のマイクロフィルム] 自動車用モール等の取付け構造に関し、 (イ)自動車のボディBへ合成樹脂よりなるクリップCを用いてモールM等を取付けるための構造であって、前記クリップCはモールM等を装着しうるモール装着片1とボディBに形成された取付け穴5に対し弾性的に係入される係合基部2とから一体に形成されるとともに、同係合基部2の外側面には係止爪4が突出される一方、取付け穴5は全体鉤状に形成されて前記係合基部2が係入されたときには前記係止爪4と係合され、クリップ全体のずれ止めをなしうるずれ止め縁6が鉤状に形成されていることが記載されている(実用新案登録請求の範囲、第3及び4図参照)。 [甲第3号証:実願昭61-106647号(実開昭63-14082号)のマイクロフィルム] パイプ等の長尺物を車体のパネルに固着されたスタッドを介して該パネルに保持するパイプ等の保持具に関し、 (ウ)長尺物の一部を所定長さに渡って保持できるような長さに形成された細長い保持部3と、保持部3に長尺物を固定するため、該保持部3の少なくとも2個所に設けられた固定手段4,5と、少なくとも2つのスタッド係止手段7,2とから成り、該スタッド係止手段7,2は、前記保持部に一体成形された1つの第1スタッド係止具7と、前記保持部3とは別体に形成された第2スタッド係止具2を含み、第2スタッド係止具2は保持部3に対して位置変更可能に取付けられていること(実用新案登録請求の範囲第1項、第1、5及び6図参照)、 (エ)第1スタッド係止具7は保持部3の側面に一体成形されており、第2スタッド係止具2は、保持部3の側面から一体に延びる板8の長穴9に、取付けられていること(実用新案登録請求の範囲第4項、第1、5及び6図参照)及び (オ)車体に取付けられたスタッドのピッチが正確でなくとも、スタッド係止手段はスタッドに確実に係止すること(第5頁18?20行)が記載されている。 [甲第4号証:実願昭53-41436号(実開昭54-144517号)のマイクロフィルム] 自動車のフロントグリル取付構造に関し、 (カ)フロントグリル1の裏面のほぼ中央部及び左右部にタッピングスクリューのねじ込み穴を有する筒状のボス部1aを一体に突出形成し、該ボス部外周面に嵌着される嵌着穴を有する本体と車体側に固着されたブラケット4,5の係合穴4a,5aに係合する係合片2bを一体に形成したクリップ2の該嵌着穴を上記ボス部に嵌着した上裏面側よりタッピングスクリューをボス部の穴にねじ込むことによりクリップ2をフロントグリル裏面に固着し、前記ブラケット4,5の係合穴4a,5aの横には上記クリップ2の係合片2bが自由に出入りできる巾広の穴を連設し、該ブラケットの係合穴にフロントグリル裏面の中央部に固着したクリップ2は横方向に位置決めされた状態で嵌入係合し左右のクリップ2は横方向には自由な状態で嵌入係合することによりフロントグリルを取付けるようにしたこと(実用新案登録請求の範囲、第1?4図参照)及び (キ)ブラケット4は、上下の巾がクリップ2の係合片2bが嵌入して上下縁に係合し得る比較的狭い係合穴4aの横に係合片2bが自由に抜け出し得る比較的広い穴4bが連接され、その4aと4bの境界部に位置決め用のストッパ部4cが突出形成されていること(第6頁第2?10行参照)が記載されている。 4.対比・判断 本件考案と甲第1号証に記載された考案とを対比すると、甲第1号証に記載された「部品部材1」及び「係止部16」は、それぞれ本件考案の「被組付部品」及び「取付部」に相当することより、両者は、留め具と被組付部品との取付け構造において、所定の装着部位に固定されているスタッドボルトを挿入させることでこのスタッドボルトに係止される留め具と、この留め具を介して前記装着部位に組付けられる被組付部品とを互いに結合状態に保持するための取付け構造であって、前記留め具はその下部に形成された断面がほぼ矩形の取付部と、この取付部の下面両側から張り出させた一対の鍔部とを備え、また前記被組付部品は長方形の短辺が前記留め具の取付部を受入れて保持できる寸法で、かつ長辺が取付部の前記鍔部を通過させることができる寸法に設定された複数の取付孔を備え、前記取付孔はその両長辺側の縁部に対してそれぞれの前記取付部の各鍔部と係合可能に形成された一対の係合面を備えている点で一致し、 複数の取付孔が、本件考案では、少なくとも二種類の取付孔からなり、一方の種類の取付孔はその両長辺側の縁部に対して前記取付部の各鍔部と係合可能に形成された一対の係合面と、これらの各係合面における相互の対角位置で前記鍔部をそれぞれ受け止め、この取付孔の長辺に沿った方向への前記留め具の移動を規制する規制部とを備え、他方の種類の取付孔はその両長辺側の縁部に対してそれぞれの全長にわたって前記取付部の各鍔部と係合可能に形成された一対の係合面を備えているのに対し、甲第1号証に記載されたものでは、上記他方の種類の取付孔はあるが、上記一方の種類の規制部を備えた取付孔がない点で相違する。 そこで、上記相違点について検討すると、 甲第2号証には、クリップCが係入される取付け穴5に、全体鉤状に形成されてクリップCの係合基部2が係入されたときにはその係止爪4と係合され、クリップ全体のずれ止めをなしうるずれ止め縁6が鉤状に形成されていることが記載され、この「ずれ止め縁6」は、本件考案の「規制部」相当するものとみることができるが、この「ずれ止め縁6」は、取付け穴5の縁部に形成された係止爪4との係合面に備えられているものではなく、また、前記係合面と係合する係止爪4の張り出させた部分(本件考案の「鍔部」に相当する部分)を受け止めるものでもない。すなわち、甲第2号証には、本件考案の上記相違点に係る構成である、取付孔において、取付部の鍔部と係合可能に形成された一対の係合面における相互の対角位置で前記鍔部をそれぞれ受け止めるように備えられた規制部については記載がなく、示唆するものもない。 また、甲第3及び第4号証には、一種類の留め具であってもスタッドボルトまたはブラケット間のピッチ誤差を吸収できると同時に被組付部品をその基準位置に位置決めできるという本件考案と同様な作用効果を奏する類似した留め具と被組付部品との取付け構造は記載されているものの、本件考案の上記相違点に係る規制部の構成についての記載がなく、示唆するものもない。 そうすると、本件考案の上記相違点に係る構成である、取付孔において、取付部の鍔部と係合可能に形成された一対の係合面における相互の対角位置で前記鍔部をそれぞれ受け止めるように備えられた規制部について、甲各号証のいずれにも記載されていなく、また、これが周知の構成であるとも認められないことより、甲第3及び4号証に記載された技術を考慮して、甲第2号証に記載された規制部の構成を甲第1号証に記載された取付け構造における一方の取付孔に適用したところで、本件考案を構成し得るものではない。 したがって、本件考案は、甲第1乃至4号証に記載された考案に基づいて、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものとすることはできない。 5.むすび 以上のとおりであるから、実用新案登録異議申立ての理由及び証拠方法によっては、本件考案に係る実用新案登録を取り消すことはできない。 また、他に本件考案に係る実用新案登録を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 1999-06-24 |
出願番号 | 実願平2-404740 |
審決分類 |
U
1
651・
121-
Y
(F16B)
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最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 山下 喜代治 |
特許庁審判長 |
佐藤 洋 |
特許庁審判官 |
和田 雄二 鳥居 稔 |
登録日 | 1998-07-10 |
登録番号 | 実用登録第2581547号(U2581547) |
権利者 |
大和化成工業株式会社 愛知県岡崎市保母町字上平地1番地 |
考案の名称 | 留め具と被組付部品との取付け構造 |
代理人 | 大塚 文昭 |
代理人 | 村社 厚夫 |
代理人 | 中村 稔 |
代理人 | 今城 俊夫 |
代理人 | 小川 信夫 |
代理人 | 竹内 英人 |
代理人 | 宍戸 嘉一 |