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審決分類 |
審判 全部無効 2項進歩性 無効としない C02F 審判 全部無効 4項(5項) 請求の範囲の記載不備 無効としない C02F 審判 全部無効 1項3号刊行物記載 無効としない C02F |
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管理番号 | 1003971 |
審判番号 | 審判1996-2014 |
総通号数 | 4 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 実用新案審決公報 |
発行日 | 2000-04-28 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 1996-02-09 |
確定日 | 1999-07-15 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第1815516号実用新案「連続式電解水生成装置」の登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 |
理由 |
I.本件登録実用新案 本件登録第1815516号実用新案(以下、「本件考案」という。)は、昭和58年10月12日に実用新案登録出願され、平成2年5月22日に実用新案権の設定の登録がなされたものであり、本件考案の要旨は、明細書及び図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲に記載されたとおりの、 「給水側と一対の出口側ラインとを設けた解槽の内部をポーラスな隔壁で陰極室と陽極室とに仕切り、それぞれの極室に電極を設けて、直流電圧を印加し、上記陰極室および陽極室を流れる水に対して電気分解および電気滲透作用を行わせるとともに、前記給水側に連続的に供給される水で前記一対の出口側ラインから電解水を排出する連続式電解水生成装置において、陰極室側に通じる出口側ラインにスイッチ手段を設け、上記ラインにアルカリイオン水が流れる時信号を出すようにし、また、陽極室側に通じる出口側ラインにバルブを設け、上記信号で上記バルブを開放するように、上記スイッチ手段と上記バルブとを連関させたことを特徴とする連続式電解水生成装置。」 にあるものと認められる。 II.請求人の主張 請求人は、下記に示す甲第1号証乃至甲第13号証を提示し、審判請求書及び弁ぱく書において、大略次のように主張している。 (1)本件考案は、甲第1号証乃至甲第13号証に基いて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、その登録は実用新案法第3条第2項の規定に違反してされたものである。 (2)実用新案登録請求の範囲には考案の必須の構成要件が記載されておらず、その登録は実用新案法第5条第5項で規定する要件を満たしていない出願に対してされたものである。 (3)本件考案は、実用新案法第3条の柱書きの「産業上利用することができる考案」に該当しないから、その登録は実用新案法第3条柱書きに違反してされたものである。 (4)本件考案は、甲第3号証乃至甲第4号証に記載された考案と同一であるから、その登録は実用新案法第3条第1項の規定に違反してされたものである。 甲第1号証 特公昭54-5792号公報 甲第2号証 米国特許第3755128号 明細書 甲第3号証 特開昭48-99082号公報 甲第4号証 特開昭51-18275号公報 甲第5号証 日本化学会誌「化学と工業」 1994年第47巻第9号 1155頁 甲第6号証 昭和36年6月15日株式会社 オーム社発行「電子工学ポケットブック(JR版)」956及び957 頁 甲第7号証 特開昭51-125751号公報 甲第8号証 昭和63年12月23日付け 実用新案登録異議答弁書 甲第9号証 特公昭39-29415号公報 甲第10号証 特許第86306号明細書 甲第11号証 特許第96141号明細書 甲第12号証 米国特許第3698412号 明細書 甲第13号証 特開昭54-119131号公報 III.当審の判断 請求人の上記主張について検討する。 (1)の主張について 甲第1号証には、「給水側と一対の出口側ラインとを設けた電解槽の内部を隔壁で陰極室と陽極室とに仕切り、それぞれの極室に電極を設けて、直流電圧を印加し、上記陰極室および陽極室を流れる水に対して電気分解および電気滲透作用を行わせるとともに、前記給水側に供給される水で前記一対の出口側ラインから電解水を連続的に排出する水処理装置」が記載されており、本件考案と甲第1号証記載の考案とを比較すると、 本件考案が、陰極室側に通じる出口側ラインにスイッチ手段を設け、上記ラインにアルカリイオン水が流れる時信号を出すようにし、陽極室側に通じる出口側ラインに設けたバルブを、上記信号で開放するように、上記スイッチ手段と上記バルブとを連関させている(以下、「構成A」という)のに対し、甲第1号証記載の考案は、前記構成Aを備えていない点で、相違している。 そこで、上記相違点を検討する。 甲第2号証には、「電解質マトリックス13で仕切った陰極室18と陽極室19に電極11,12を設けて、直流電圧を印加し、陽極室19に通じる導管33から酸素ガスを得、陰極室18に通じる導管50から水素ガスを得る水の分解装置において、導管33に差圧制御バルブ58を設け、この差圧制御バルブ58と導管50とを導管(conduit)72で連結し、陰極室18内の水素ガスと導管33内の酸素ガスとの間に所定の圧力差を維持する」構成が記載されている。(なお、甲第12号証に記載されている「差圧P_(1)-P_(2)に応答してスイッチ18が信号を出し、その信号でバルブ66を開閉する差圧制御バルブ」を考慮しても、甲第2号証の記載内容は上記のとおりである。) しかしながら、甲第2号証記載の「差圧制御バルブ58」は、陰極室18内の水素ガスと導管33内の酸素ガスとの間に所定の圧力差を維持する作用を奏するものであり、導管50内を水素ガスが流れる時に開閉制御されるものとはいえないので、結局、甲第2号証には、構成Aが記載されていない。 したがって、たとえ、甲第6号証?甲第7号証及び甲第10号証?甲第11号証によって、電気分解によって電解水を得る技術と電解ガスを得る技術とが類似した技術であるといえても、本件考案が甲第1号証及び甲第2号証に記載された考案に基いて当業者がきわめて容易に考案することができたものではない。(なお、甲第5号証は、本件出願前に発行された刊行物ではない。) また、甲第3号証又は甲第4号証には、「ポーラスな隔壁を介して陰極室と陽極室とを仕切り、陰極室には陰極を、陽極室には陽極をそれぞれ配設すると共に、上記陽極室に連通する排水管に開閉弁を設け、上記陰極室と貯水タンクとを放水管で連通し、放水管に開閉弁を設けた飲料水の製造装置」が記載されており、陽極室に連通する排水管に設けられた開閉弁と陰極室に連通する放水管に設けられた開閉弁とは、同時に解放される構成となっている。 しかしながら、甲第3号証又は甲第4号証に記載されたものは、電解槽の下部に貯水タンクを備えたものであって、連続式電解水生成装置ではなく、結局、甲第3号証又は甲第4号証には、連続式電解水生成装置において、陰極室側に通じる出口側ラインにスイッチ手段を設け、上記ラインにアルカリイオン水が流れる時信号を出すようにし、陽極室側に通じる出口側ラインに設けたバルブを開放するように、上記スイッチ手段と上記バルブとを連関させた構成は、記載されておらず、かつ、示唆されてもいないので、本件考案が甲第1号証及び甲第3号証又は甲第4号証に記載された考案に基いて当業者がきわめて容易に考案することができたものとはいえない。 さらに、甲第9号証には、「パイプ4に設けたバルブ9を、パイプ5を流れる流体の流通による信号で開閉制御する」ことが、甲第13号証には、「第1のラインにタンク4を設け、タンク内のフロートに取付けた永久磁石10によって、第2のラインのボール3を弁座2に対して開閉するよう構成し、第1のラインに流体が流れるとき、第2のラインの弁部材を解放する」ことが記載されている。 しかし、甲第9号証又は甲第13号証に記載されたものは、甲第1号証記載の考案とは技術分野を異にするものであって、前記いずれの甲号証にも、甲第1号証記載の考案に甲第9号証又は甲第13号証記載の考案を適用することを示唆する記載もないので、本件考案は甲第1号証及び甲第9号証又は甲第13号証に記載された考案に基いて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものではない。 そして、上記構成Aを必須の構成要件とする本件考案は、「貯槽、ポンプなどを必要とせずに、所望の時、電解生成水を目的の個所に、しかも水道水圧を利用して圧力状態で供給できる」という明細書記載の効果を奏するのである。 以上のとおりであるから、本件考案が甲第1号証乃至甲第13号証に記載された考案に基いて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものとすることはできない。 (2)の主張について 請求人は、「電解槽の水供給口側は圧力水源に連通されていて、かつアルカリイオン水の取水のためにライン8にはカランのような弁が設けられている」ことが、必須の構成要件である旨主張するが、実用新案登録請求の範囲に「給水側に連続的に供給される」、「ラインにアルカリイオン水が流れる時」と記載されており、この構成要件を備える本件考案は明細書記載の作用を奏するものと認められるので、請求人の主張は採用できない。 なお、請求人の主張する前記構成を備えたものは、本件考案の実施例の1つである。 (3)の主張について 請求人は、「電解槽の水供給側に圧力スイッチ又は流量測定システムを設けて水供給量を規定していないので、例えば、水の電気分解が過度に進んでしまう過電解等の事態により不測の事故が発生し、実用に供し得ない。したがって、本件考案は、産業上利用することができる考案ではない。」旨主張するが、電極にどの程度の電流を、どの程度の時間流すか等は、当業者が本件考案を実施する際、適宜設計できる事項に過ぎないので、本件考案が産業上利用することができる考案ではないということはできない。 また、請求人は、『実用新案登録請求の範囲に記載された「アルカリイオン水が流れる時信号を出すようにし」では、アルカリイオン水が生成されないと、スイッチ手段が信号を出さないので、陰、陽極電極に電圧が印加されることはなく、さらに、バルブの閉塞について全く触れられていないので、給水側から入った圧力水は流れっぱなしとなる。 したがって、本件考案は、連続式電解水生成装置として正常に機能せず、産業上利用することができる考案に該当しない。』旨主張する。 しかしながら、「アルカリイオン水が流れる時信号を出すようにし」は、「アルカリイオン水」を検知するのではなく、「アルカリイオン水の流れ」を検知することであり、このことは、スイッチ手段10が具体的にはフロートスイッチで構成されていることからも明らかであり、また、「アルカリイオン水が流れる時信号を出すようにし」とは、アルカリイオン水が流れない時は信号を出さないことであるので、本件考案は連続式電解水生成装置として機能する。 なお、「解槽」は、「電解槽」の明らかな誤記である。 以上のとおりであるから、請求人の主張は、採用できない。 (4)の主張について 甲第3号証又は甲第4号証には、「ポーラスな隔壁を介して陰極室と陽極室とを仕切り、陰極室には陰極を、陽極室には陽極をそれぞれ配設すると共に、上記陽極室に連通する排水管に開閉弁を設け、上記陰極室と貯水タンクとを放水管で連通し、放水管に開閉弁を設けた飲料水の製造装置において、貯水タンク内の水が消費されると、電解槽に給水し、所定時間後、両開閉弁を解放して、陰極室のアルカリ水を貯水タンクに給水する飲料水の製造装置」が記載されている。 そこで、本件考案と甲第3号証又は甲第4号証記載の考案とを比較すると、本件考案が、連続式電解水生成装置であって、陰極室側に通じる出口側ラインにスイッチ手段を設け、上記ラインにアルカリイオン水が流れる時信号を出すようにし、陽極室側に通じる出口側ラインに設けバルブを、上記信号で開放するように、上記スイッチ手段と上記バルブとを連関させてるのに対し、甲第3号証又は甲第4号証記載の考案は、連続式電解水生成装置ではなく、かつ陰極室側に通じる出口側ラインに、アルカリイオン水が流れる時信号を出すスイッチ手段が設けられていない点で、相違している。 そして、甲第8号証は、被請求人の本件考案についての主張であり、この主張を持ってして、上記相違点に考案力を要しないという請求人の主張は採用できない。 したがって、本件考案が甲第3号証又は甲第4号証記載の考案と同一であるということはできない。 IV.むすび 以上のとおりであるから、請求人の主張及び証拠方法によっては、本件考案の実用新案登録を無効とすることはできない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 1997-02-25 |
結審通知日 | 1997-03-04 |
審決日 | 1997-03-18 |
出願番号 | 実願昭58-157560 |
審決分類 |
U
1
112・
113-
Y
(C02F)
U 1 112・ 532- Y (C02F) U 1 112・ 121- Y (C02F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 荻島 俊治 |
特許庁審判長 |
主代 静義 |
特許庁審判官 |
豊永 茂弘 藤井 俊二 |
登録日 | 1990-05-22 |
登録番号 | 実用登録第1815516号(U1815516) |
考案の名称 | 連続式電解水生成装置 |
代理人 | 吉武 賢次 |
代理人 | 永井 浩之 |
代理人 | 永田 武三郎 |
代理人 | 佐藤 一雄 |
代理人 | 神谷 巌 |