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審決分類 審判 全部申し立て   G11B
管理番号 1004023
異議申立番号 異議1997-74170  
総通号数
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案決定公報 
発行日 2000-04-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 1997-09-03 
確定日 1999-08-25 
異議申立件数
事件の表示 実用新案登録第2527718号「ディスク装置」の実用新案に対する実用新案登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。   
結論 実用新案登録第2527718号の実用新案登録を取り消す。
理由 (1)手続きの経緯
実用新案登録第2527718号の考案は、平成3年1月23日に実用新案登録出願され、平成8年12月2日にその設定登録がなされ、その後、中川裕人より実用新案登録異議申立てがなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成10年2月5日に訂正請求がなされたものである。
(2)訂正の適否
上記訂正請求は、実用新案登録請求の範囲の請求項1の記載中の「入力された回転速度に応じて前記ディスクの種類」の記載の後に、「と共にディスクの有無」の記載を追加し、明細書中、段落番号【0006】の記載を、「【課題を解決するための手段】 本考案は上記課題を解決するために径の異なる複数種類のディスクが装着され、装着されたディスクをディスク回転モータにより回転させ、装着されたディスクの種類に応じた動作制御を行なうディスク装置において、前記ディスク回転モータの回転速度を検出する回転速度検出手段と、前記ディスク回転モーターがディスク処理を行うために起動されてから一定時間経過後に前記回転速度検出手段の検出回転速度を入力し、入力された回転速度に応じて前記ディスクの種類及びディスクの有無を判別する判別手段とを具備してなる。」と訂正し、明細書中、段落【0007】の記載を、「【作用】ディスクの径が異なるとディスクを回転させるディスク回転モータにかかる負荷が異なるためディスク回転モータをディスクの記録又は再生を行うためのディスク処理を行うために起動してから一定時間経過後の回転速度が異なってくる。本考案はこのことを利用してディスクの径の判別を行なおうとするもので、回転速度検出手段によりモータの回転速度を検出し、判別手段によりディスク回転モータをディスクの記録又は再生を行うためのディスク処理を行うために起動してから一定時間経過後のモータの回転速度よりディスクの種類を判別する。したがって、モータの起動と同時にディスクの種類及びディスクの有無の判別が行なえるため、装置の立ち上げ時間を短縮できる。」と訂正し、明細書中、段落番号【0021】の記載を、「【考案の効果】上述の如く、本考案によれば、ディスク回転モータをディスク処理するために起動させる途中で装着されたディスクの種類及びディスクの有無の判別が行なえるため、ディスクの種類及びディスクの有無の判別のための特別な動作が不要になり装置の立ち上げ時間を短縮することができる等の本願考案に特有の効果を奏する。」と訂正しようとするものである。
上記訂正の適否について検討するに、実用新案登録時における請求項1に係る考案(以下、本件考案という。)は、実用新案登録請求の範囲に記載されたとおりの、「径の異なる複数種類のディスクが装着され、装着されたディスクをディスク回転モータにより回転させ、装着されたディスクの種類に応じた動作制御を行なうディスク装置において、前記ディスク回転モータの回転速度を検出する回転速度検出手段と、前記ディスク回転モータがディスク処理を行うために起動されてから一定時間経過後に前記回転速度検出手段の検出回転速度を入力し、入力された回転速度に応じて前記ディスクの種類を判別する判別手段とを具備し、前記判別手段の判別結果に応じた動作制御を行なう構成としてなるディスク装置。」であって、本件考案の判別手段は、装着された径の異なる複数種類のディスクの種類を判別するものであり、本件考案のディスク装置は、この判別手段の判別結果に応じた動作制御を行うようにしている(駆動用モータ、ピックアンプ等をディスクの種類に対応した動作が行えるように制御する。)ところ、訂正明細書の請求項1に係る考案においては、前記本件考案に「及びディスクの有無」との要件を追加し、訂正明細書の請求項1に係る考案の判別手段は、装着された径の異なる複数種類のディスクの種類を判別する他に、ディスクの有無を検出し、ディスクの有無の検出結果に応じたディスクの動作制御を行うようにしており(訂正明細書の考案の詳細な説明によれば、ディスクが装着されていないと判断すればディスクが装着されていないことを知らせる処理等行う)、この「及びディスクの有無」との要件を請求項1に追加する訂正は、本件考案におけるディスクの種類に応じた制御をする(駆動用モータ、ピックアンプ等をディスクの種類に対応した動作が行えるように制御する。)ということに、ディスクが装着されていないと判断すればディスクが装着されていないことを知らせるという、新たな技術課題を解決する構成を付加していることにほかならず、実質的に新たな目的を付加し、本件考案を変更するものである。
したがって、「及びディスクの有無」との要件を請求項1に追加する訂正は、実質上実用新案登録請求の範囲を変更するものであるから、その他の訂正について検討するまでもなく、上記訂正請求は、平成6年法律第116号附則第9条第2項によって準用する特許法第120条の4第3項でさらに準用する特許法第126条第3項の規定に適合せず、訂正は認められない。
(3)実用新案登録異議申立てについて
(本件考案)
請求項1に係る考案(以下、「本件考案」という。)は、実用新案登録第2527718号の明細書及び図面の記載からみて、実用新案登録請求の範囲に記載された次の事項によって特定されるとおりのものである。
「径の異なる複数種類のディスクが装着され、装着されたディスクをディスク回転モータにより回転させ、装着されたディスクの種類に応じた動作制御を行なうディスク装置において、前記ディスク回転モータの回転速度を検出する回転速度検出手段と、前記ディスク回転モータがディスク処理を行うために起動されてから一定時間経過後に前記回転速度検出手段の検出回転速度を入力し、入力された回転速度に応じて前記ディスクの種類を判別する判別手段とを具備し、前記判別手段の判別結果に応じた動作制御を行なう構成としてなるディスク装置。」(引用刊行物記載の発明)
当審が通知した取消理由に引用した刊行物1(特開平2-216663号公報)には、光ディスクに関する考案が記載されており、「第1図において、1は全体としてコンパクトディスクプレイヤを示し、コンパクトディスク2をスピンドルモータ3で回転駆動する。これに対して周波数発電機4は、スピンドルモータ3の回転速度に比例して周波数が増加するようになされた回転速度検出信号S_(F)を周波数電圧変換回路6に出力し、これにより周波数電圧変換回路6を介してコンパクトディスク2の回転速度に比例して電圧が変化する出力信号Svが得られるようになされている。演算増幅器8は、帰還抵抗9,入力抵抗11及び13と共に差動増幅回路を構成するようになされ、出力信号Svを反転入力端に受けると共に、制御回路15から出力される起動信号S_(ST)を非反転入力端に受けるようになされている。これにより演算増幅回路8から、起動信号58Tに対する出力信号Svの誤差信号S_(ER)が得られ、当該誤差信号S_(ER)を増幅回路18を介して駆動回路19に出力するようになされている。駆動回路19は、増幅回路18の出力信号に基づいてスピンドルモータ3を駆動するようになされ、これによりスピンドルモータ3、周波数発電機4、周波数電圧変換回路6、演算増幅回路8、増幅回路18及び駆動回路19でサーボループを構成するようになされている。従ってスピンドルモータ3においては、出力信号Svが起動信号S_(ST)、に追従するように駆動される。」(第3頁左上欄第6行?右欄第14行)、「ところでスピンドルモータ3においては、当該スピンドルモータ3が回転駆動するコンパクトディスク2の重量に応じて、起動応答状態が変化する。すなわち12〔cm〕のコンパクトディスクを駆動する場合及びアダプタに固定した8〔cm〕のコンパクトディスクを駆動する場合は、8〔cm〕のコンパクトディスク単体を駆動する場合に比して、回転駆動対象が重くなることから、回転速度の立ち上がりが遅延する。従って8〔cm〕のコンパクトディスク単体を駆動する場合においては、第2図(B1)に示すように出力信号Svが短時間の内に一定電圧に上昇するのに対し、12〔cm〕のコンパクトディスクを駆動する場合及びアダプタに固定した8〔cm〕のコンパクトディスクを駆動する場合は、第2図(B2)に示すように出力信号Svの立ち上がりが遅延する。」(第3頁左下欄第4行?右下欄第1行)、「第3図及び第4図に示すように、この実施例においては、スピンドルモータ3を時点t0で起動した後、所定時間経過後の時点t3で出力電圧Svを検出し、これによりスピンドルモータ3の起動応答状態を検出する。すなわち制御回路35においては、タイマ回路36は、制御信号Scに基づいて時点t0(第4図(A))でリセットされた後、所定のクロック信号S_(CK)をカウントする。さらにタイマ回路36は、カウント値が所定値になると、ラッチ回路37にラッチ信号S_(R)を出力し、これにより時点t3で出力信号SV(第4図(B1)及び(B2))のディジタル値をラッチ回路37に取り込むようになされている。従ってラッチ回路37においては、12〔cm〕のコンパクトディスク及びアダプタに固定した8〔cm〕のコンパクトディスクを駆動する場合は、値の大きなデータがラッチされるのに対し、8〔cm〕のコンパクトディスク単体を駆動する場合は値の大きなデータがラッチされる。比較回路38は、所定の基準データD_(REF3)を基準にして、ラッチ回路37に格納されたデータについて大小判断をし、その判断結果をサーボゲインの切換信号S_(GAIN)として出力する。第3図の構成によれば、スピンドルモータ3を起動した後、所定時間経過後の出力電圧Svを検出し、これによりスピンドルモータ3の起動応答状態を検出するようにしても、第1の実施例と同様の効果を得ることができる。」(第4頁右下欄第5行?第5頁左上欄第14行)と説明されている。
また、同じく当審が通知した取消理由に引用した刊行物2(特開昭60-195770号公報)には、ディスクサイズ検出回路に関する考案が記載されており、その背景技術の項には、「ディスクのサイズを安定にかつ確実に検出し得るディスクサイズ検出回路として第1図に示す如き回路が公知となっている。第1図において、ディスク1を回転駆動するモータ2の回転速度に応じた繰返し周波数の回転速度検出用パルスが回転速度検出用パルス発生器3より出力される。この回転速度検出用パルス発生器3は、例えばモータ2の回転軸に固定された円盤の周縁部にスリットを配列し、このスリットが配列されている周縁部の一点に光を照射してスリットを透過した光量の変化に応じたパルスを光電変換素子によって発生させて出力パルスとする構成になっている。この回転速度検出用パルス発生器3の出力パルスは、回転速度検出手段としての周波数検出回路4に供給される。周波数検出回路4において、回転速度検出用パルス発生器3の出力パルスは周波数・電圧変換回路(以下F/V変換回路と略記する)5に供給される。F/V変換回路5は、例えば積分回路で形成されており、供給されたパルスの繰返し周波数すなわちモータ2の回転速度に応じた電圧を発生する。このF/V変換回路5の出力電圧はコンパレータ6に供給されて基準電圧Vrと比較される。モータ2の回転速度が所定速度に到達してF/V変換回路5の出力電圧が基準電圧Vr以上になるとコンパレータ6の出力が高レベルとなる。このコンパレータ6により出力される高レベル信号が回転速度検出手段としての周波数検出回路4より出力されモータ2の回転速度が所定速度になっていることを示す所定速度検出信号として判別回路7に供給される。判別回路7にはタイマ8の出力も供給されている。タイマ8は、基準発振器9より出力されているクロックを分周して例えば1/100秒の周期で発生するパルスを生成してカウンタのクロック入力とし、モータ2の始動を指令するスタート信号の発生後における経過時間を示すデータを1/100秒の精度で出力する構成となっている。また、判別回路7は、所定速度検出信号の発生時点におけるタイマ8の出力データと所定基準値との比較を行ってタイマ8の出力データが所定基準値以下のとき出力が例えば低レベルとなりかつタイマ8の出力データが所定基準値より大となったとき出力が高えば高レベルとなるように構成されている。この判別回路7の出力が出力端子OUTに供給されている。以上の構成において、ディスク1の慣性モーメントがディスク1の半径の二乗に比例しかつ当該慣性モーメントの違いによりモータ2の立上り時間が変化する。すなわち、モータの端子に印加される電圧が一定の場合、所定回転速度に立上がるまでの時間は慣性モーメントが小さい方が短くなる。このため、ディスク1のサイズ(径の大きさ)によってモータ2の始動を指令するスタート信号が発生してから所定速度検出信号が発生するまでの時間が変化することとなる。従って、ディスク1のサイズが小のとき所定速度検出信号の発生時点におけるタイマ8の計数値が所定基準値以下になるようにしかつディスク1のサイズが大のとき所定速度検出信号の発生時点におけるタイマ8の計数値が所定基準値より大になるようにすることができる。そうすると、判別回路7の出力はディスク1のサイズが小のとき低レベルとなるかつディスク1のサイズが大のとき高レベルとなってディスクサイズの判別がなされることとなる。」(第1頁右下欄第1行?第2頁左下欄第3行)と説明されている。
(対比・判断)
本件考案と刊行物1記載の考案とを比較すると、
(a)上記刊行物1記載の考案は、複数種類のディスクを再生し得るようになされた光ディスク装置に関し、装填されたディスクを判別して、その結果に応じてサーボゲイン等の動作制御を行うものであること、またディスクの種類とは、8cmディスクと12cmディスクの例があげられていることから、径の異なるディスクを指していることは明らかであるから、これらの点は、本件考案の径の異なる複数種類のディスクが装着され、装着されたディスクをディスク回転モータにより回転させ、装着されたディスクの種類に応じた動作制御を行なうディスク装置に相当する、
(b)上記刊行物1記載の考案においては、周波数発電機及び周波数電圧変換回路を備え、周波数発電機によりスピンドルモータの回転速度に比例して周波数が増加するようになされた回転速度検出信号を発生し、周波数電圧変換回路は、この回転速度検出信号を入力としてコンパクトディスクの回転速度に比例して電圧が変化する出力信号を出力するようにしており、これらの構成は、本件考案のディスク回転モータの回転速度を検出する回転速度検出手段に相当する、
(c)上記刊行物記載の考案において、時点t0でスピンドルモータが起動すると、タイマ回路36は所定のクロック信号S_(CK)のカウントを開始し、このカウント値が所定値になった時点t3で出力信号Sv(F/V変換回路出力)をラッチ回路37に取り込み、このラッチ回路に格納されたデータを比較回路38により所定の基準データを基準にして大小判断することによりディスクの大きさを判断するようにしており、これらの点は、本件考案において、ディスク回転モータがディスク処理を行うために起動されてから一定時間経過後に前記回転速度検出手段の検出回転速度を入力し、入力された回転速度に応じてディスクの種類を判別する判別手段を具備する点に相当する、
(d)上記刊行物1記載の考案においては、(c)で述べた判断結果をサーボゲインの切換信号として出力するようにしており、本件考案の判別手段の判別結果に応じた動作制御を行なう点に相当する。
以上のとおりであるから、本件考案と上記刊行物1記載の考案とは格別な差異はなく、少なくとも、本件考案は上記刊行物1記載の考案に基づき当業者が極めて容易に想到しえたものとするのが相当である。
なお、ディスク回転モータの回転速度によりディスクの有無を判別することについては、特開平1-98161号公報、特開平1-298572号公報、特開昭63-112863号公報に記載されており、必要ならば参照されたい。
(4)むすび
したがって、本件考案は上記刊行物1記載の考案に基づき当業者が極めて容易に考案することができたものであって、実用新案法第3条第2項の要件を満たすものでないので、本件考案についての実用新案登録は、実用新案法附則第9条第2項で準用する特許法第113条第1項第2号の規定により取り消されるべきものである。
よって結論のとおり決定する。
異議決定日 1999-06-23 
出願番号 実願平3-1638 
審決分類 U 1 651・ 121- ZB (G11B)
最終処分 取消    
前審関与審査官 新宮 佳典菅澤 洋二  
特許庁審判長 川名 幹夫
特許庁審判官 武井 袈裟彦
麻野 耕一
登録日 1996-12-02 
登録番号 実用登録第2527718号(U2527718) 
権利者 ミツミ電機株式会社
東京都調布市国領町8丁目8番地2
考案の名称 ディスク装置  
代理人 伊東 忠彦  

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