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審決分類 |
審判 全部申し立て F16F 審判 全部申し立て F16F |
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管理番号 | 1004027 |
異議申立番号 | 異議1997-74177 |
総通号数 | 4 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 実用新案決定公報 |
発行日 | 2000-04-28 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 1997-09-05 |
確定日 | 1999-08-25 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 実用新案登録第2528149号「メンバーマウント」の実用新案に対する実用新案登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 実用新案登録第2528149号の実用新案登録を取り消す。 |
理由 |
1.手続の経緯 本件実用新案登録第2528149号の請求項1に係る考案(以下、「本件登録考案」という。)は、平成3年3月20日に実用新案登録出願され、平成8年12月2日にその実用新案登録の設定登録がなされ、その後、株式会社ブリジストンより実用新案登録異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成10年3月18日に訂正請求がなされ、訂正拒絶理由がなされ、その指定期間内に意見書が提出されたものである。 2.訂正の適否についての判断 (1)訂正の内容 実用新案登録請求の範囲の請求項1を以下のように訂正すると共に、該訂正事項と整合性を取るべく、考案の詳細な説明の欄を同様に訂正するものである。 【請求項1】メンバに車両の上下方向に圧入される外筒金具と、車体に上端が取り付けられ該外筒金具と同心状に配設された内筒金具と、該外筒金具と該内筒金具との間に介在されすぐりが形成された弾性部材とをもつメンバーマウントにおいて、 前記すぐりは、少なくとも前記車両の前後方向で周方向に延び、かつ前記弾性部材の一端面から軸方向に延びて、開口部が底部よりも径方向で幅広に凹設された第1すぐりと、 少なくとも該車両の前後方向で周方向に延び、かつ該弾性部材の他端面から軸方向に延びて、開口部が底部よりも径方向で幅広に凹設された第2すぐりと、 該車両の前後方向で周方向に延び、かつ該第1すぐりの底部から軸方向に延びて、底部が該第2すぐりの底部よりも径方向外側に位置し、前記外筒金具を前記メンバに圧入する前、かつ前記内筒金具を前記車体に取り付ける前には、該底部が該第2すぐりの底部よりも該他端面側に位置され、該外筒金具の該他端面側端部の内側位置における該第2すぐりの開口部との間で軸方向に該弾性部材のみを介して部分的に対向して凹設された第3すぐりと、からなることを特徴とするメンバーマウント。 (2)新規事項か否かについて 上記訂正請求は、実用新案登録請求の範囲及び考案の詳細な説明における第3すぐりの構成について、実用新案登録請求の範囲の減縮及び明りょうでない記載の釈明を目的として、「該外筒金具の該他端面側端部の内側位置における該第2すぐりの開口部との間で軸方向に該弾性部材のみを介して部分的に対向して凹設された第3すぐり」(以下、「訂正事項A」という。)と構成を限定する事項を含むものである。 ところが、上記訂正事項Aは、本件実用新案登録の登録設定時の願書に添付した明細書又は図面(以下、「基準明細書等」という。)に記載されていないばかりか、これから直接的かつ一義的に導き出せることでもないので、本件訂正請求は、基準明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものとは認められない。 これに対し、権利者は、上記訂正事項Aについて、意見書において、基準明細書等の具体的な記載を提示して、該訂正事項Aが基準明細書等に記載されている旨主張し、また、平成10年11月24日付けの審尋書に対する平成11年1月11日付けの回答書において、「この弾性部材3のみしか存在しない範囲を参考図1及び参考図3に一点鎖線で囲みました。」(回答書第3頁14?15行)として、該訂正事項Aの内容を実質的に説明している。 しかしながら、上記訂正事項Aにおける「弾性部材のみ」の技術的意味が上記参考図1及び参考図3に一点鎖線で囲まれる範囲であることが、基準明細書等に記載されていないばかりか、これから直接的かつ一義的に導き出せることでもなく、また、この種願書に添付した図面の性質上、同第1図及び第3図の記載から、上記参考図1及び参考図3に一点鎖線で囲まれているような事項が直接的かつ一義的に導き出せることでもない。 してみると、権利者の「上記訂正事項Aは、基準明細書等に記載されているとか、これから直接的かつ一義的に導き出せることである。」旨の主張は採用することができない。 したがって、上記訂正請求は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第9条第2項によって準用する特許法第120条の4第3項でさらに準用する第126条第2項の規定に適合しない。 (3)訂正の適否についてのむすび 以上のとおりであるから、上記訂正請求は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第9条第2項によって準用する特許法第120条の4第3項でさらに準用する第126条第2項の規定に適合しないので、当該訂正を認めることができない。 3.実用新案登録異議申立てについての判断 (1)本件登録考案 権利者が請求した訂正は、上記2.で説示のように、認めることができないものであるから、本件実用新案登録第2528149号の請求項1に係る考案(以下、「本件登録考案」という。)は、実用新案登録明細書及び図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された次とおりのものである。 【請求項1】メンバに車両の上下方向に圧入される外筒金具と、車体に上端が取り付けられ該外筒金具と同心状に配設された内筒金具と、該外筒金具と該内筒金具との間に介在されすぐりが形成された弾性部材とをもつメンバーマウントにおいて、 前記すぐりは、少なくとも前記車両の前後方向で周方向に延び、かつ前記弾性部材の一端面から軸方向に延びて、開口部が底部よりも径方向で幅広に凹設された第1すぐりと、 少なくとも該車両の前後方向で周方向に延び、かつ該弾性部材の他端面から軸方向に延びて、開口部が底部よりも径方向で幅広に凹設された第2すぐりと、 該車両の前後方向で周方向に延び、かつ該第1すぐりの底部から軸方向に延びて、底部が該第2すぐりの底部よりも径方向外側に位置し、前記外筒金具を前記メンバに圧入する前、かつ前記内筒金具を前記車体に取り付ける前には、該底部が該第2すぐりの底部よりも該他端面側に位置されて凹設された第3すぐりと、からなることを特徴とするメンバーマウント。 (2)引用例に記載された考案 申立人が甲第1号証として提出した実願平1-71038号(実開平3-11144号)のマイクロフィルム(以下、「引用例1」という。)には、次のような技術的事項が記載されている。 ▲1▼「内筒金具11は金属製の、肉厚が一定の円筒であり、これと同心に外筒金具12が外周から包囲して配置されている。」(第7頁第17?19行) ▲2▼「このように構成されたメンバーマウント10は、内筒金具11の軸心を貫通した図示していないピンにより車体に固着されたブラケットに、自動車の上下方向に軸方向が平行にされて取付けられ、外筒金具12が図示していないサブフレーム等に取付けられる。」第9頁第6?11行) ▲3▼「自動車の上下方向の振動に対してメンバーマウントの仕切板で分割された弾性体には軸方向に圧縮力が作用するようになり大きな変位の振動に対してばね定数が高くなり、操縦安定性がよくなる。また弾性体中に軸心を挟んで複数個の空洞部を設けたので、自動車の前後方向および左右方向のばね定数の設定の自由度が高まり、ハーシュネスおよびこもり音の発生を抑制する効果にすぐれる。」(第11頁第5?12行) ▲4▼第1図の記載によると、空洞部14aの上方出口に該空洞部14aの径方向幅より大の空洞部が連なっている。 ▲5▼第1図の記載及び明細書の記載によると、空洞部14aは、車両の前後方向で周方向に延び、かつ上端部の凹部の底部から軸方向に延びて、底部が空洞部14bの底部よりも径方向外側に位置し、前記外筒金具12を前記メンバに圧入する前、かつ前記内筒金具を前記車体に取り付ける前には、該底部が該空洞部14bの底部よりも該他端面側に位置されて凹設されている。なお、圧入及び取り付けの前後については、明示の記載がないものの、上記▲2▼等の明細書の記載を参酌すれば、圧入の前及び取り付けの前において同様の関係であることは自明である。 また、メンバーマウントをサブフレームに取付けるとき、その外筒金具を圧入することが慣用の手段である(例えば、申立人が甲第2号証として提出した特開平2-309028号公報参照)。 これらの技術的事項からみて、引用例1には次のとおりの考案(以下、「引用考案1」という。)が記載されていると認めることができる。 「メンバに車両の上下方向に圧入される外筒金具12と、車体に上端が取り付けられ該外筒金具12と同心状に配設された内筒金具11と、該外筒金具12と該内筒金具11との間に介在され空洞部14a,14b及び凹部が形成された弾性体13とをもつメンバーマウント10において、 前記空洞部14a,14b及び凹部は、前記車両の前後方向で周方向に延び、かつ前記弾性体13の一端面から軸方向に延びて、開口部が底部よりも径方向で幅広に凹設された上端部の凹部と、 該車両の前後方向で周方向に延び、かつ該弾性体13の他端面から軸方向に延びて、開口部に至る部分が底部とほぼ同じ幅で凹設された空洞部14bと、 該車両の前後方向で周方向に延び、かつ該上端部の凹部の底部から軸方向に延びて、底部が該空洞部14bの底部よりも径方向外側に位置し、前記外筒金具12を前記メンバに圧入する前、かつ前記内筒金具を前記車体に取り付ける前には、該底部が該空洞部14bの底部よりも該他端面側に位置されて凹設された空洞部14aと、からなることを特徴とするメンバーマウント。」 (3)本件登録考案と引用考案との対比・判断 本件登録考案と引用考案とを対比すると、引用考案の「外筒金具12と該内筒金具11との間に介在され空洞部14a,14b及び凹部」は本件登録考案の「すぐり」に相当し、同様に、「弾性体13」は「弾性部材」に、「開口部が底部よりも径方向で幅広に凹設された上端部の凹部」は「第1すぐり」に、「空洞部14b」は「第2すぐり」に、「空洞部14a」は「第3すぐり」に、それぞれ相当すると認められるから、両者の一致点及び相違点は次のとおりである。 <一致点> メンバに車両の上下方向に圧入される外筒金具と、車体に上端が取り付けられ該外筒金具と同心状に配設された内筒金具と、該外筒金具と該内筒金具との間に介在されすぐりが形成された弾性部材とをもつメンバーマウントにおいて、 前記すぐりは、前記弾性部材の一端面から軸方向に延びて、開口部が底部よりも径方向で幅広に凹設された第1すぐりと、 該車両の前後方向で周方向に延び、かつ該弾性部材の他端面から軸方向に延びて凹設された第2すぐりと、 該車両の前後方向で周方向に延び、かつ該上端部の第1すぐりの底部から軸方向に延びて、底部が該第2すぐりの底部よりも径方向外側に位置し、前記外筒金具を前記メンバに圧入する前、かつ前記内筒金具を前記車体に取り付ける前には、該底部が該第2すぐりの底部よりも該他端面側に位置されて凹設された第3すぐりと、からなることを特徴とするメンバーマウント。 <相違点> ▲1▼第1すぐりについて、本件登録考案では、車両の前後方向で周方向に延びているのに対し、引用考案では、延びの態様が明確でない点。 ▲2▼第2すぐりについて、本件登録考案では、開口部が底部よりも径方向で幅広に凹設されているのに対し、引用考案では、開口部が底部とほぼ同じ幅で凹設されている点。 そこで、これらの相違点について検討する。 <相違点▲1▼について> すぐりは、弾性体の特性を調整する手段として慣用のものであって、その形態においても従来より各種のものがあり、本件登録考案のように車両の前後方向で周方向に延びるように設けること自体は、従来周知の特開平2-309028号公報、実願昭60-80061号(実開昭61-197336号)のマイクロフィルム、実願昭51-116300号(実開昭53-35388号)のマイクロフィルム等に見られるものとその形態において格別異なるものではない。 また、本件登録考案のように第1すぐりを車両の前後方向で周方向に延びるように設けることにより、格別の作用効果が生じるものとも認められないばかりか、これを引用考案に適用できない特段の事情もない。 してみると、相違点▲1▼で摘記した本件登録考案の構成は、当業者にとって引用考案に基づききわめて容易に想到できたものと認めることができる。 <相違点▲2▼について> すぐりは、弾性体の特性を調整する手段として慣用のものであって、その形態においても従来より各種のものがあり、本件登録考案のように開口部を底部よりも径方向で幅広に凹設すること自体は、従来周知の特開平2-309028号公報、実願昭60-80061号(実開昭61-197336号)のマイクロフィルム、実願昭51-116300号(実開昭53-35388号)のマイクロフィルム等に見られるものとその形態において格別異なるものではない。 また、本件登録考案のように開口部を底部よりも径方向で幅広に凹設することにより、格別の作用効果が生じるものとも認められないばかりか、これを引用考案に適用できない特段の事情もない。 してみると、相違点▲2▼で摘記した本件登録考案の構成は、当業者にとって引用考案に基づききわめて容易に想到できたものと認めることができる。 したがって、本件登録考案は、本件の出願の前に頒布された刊行物である引用例に記載された考案(引用考案)及び従来周知の技術的事項に基いて、当業者がきわめて容易に考案することができたものと認められる。 (4)異議申立てのむすび 以上のとおりであるから、本件登録考案は、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができない。 したがって、本件登録考案についての実用新案登録は拒絶の査定をしなければならない実用新案登録出願に対してされたものと認める。 よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第9条第7項の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の一部の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第3条第1項及び第2項の規定により、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 1999-06-23 |
出願番号 | 実願平3-16815 |
審決分類 |
U
1
651・
841-
ZB
(F16F)
U 1 651・ 121- ZB (F16F) |
最終処分 | 取消 |
前審関与審査官 | 内田 博之 |
特許庁審判長 |
舟木 進 |
特許庁審判官 |
西村 敏彦 佐藤 洋 |
登録日 | 1996-12-02 |
登録番号 | 実用登録第2528149号(U2528149) |
権利者 |
東海ゴム工業株式会社 愛知県小牧市大字北外山字哥津3600番地 |
考案の名称 | メンバーマウント |
代理人 | 中谷 光夫 |
代理人 | 杉村 興作 |
代理人 | 杉村 暁秀 |
代理人 | 杉村 純子 |
代理人 | 大川 宏 |
代理人 | 徳永 博 |
代理人 | 高見 和明 |
代理人 | 梅本 政夫 |
代理人 | 藤谷 史朗 |
代理人 | 青木 純雄 |