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審決分類 |
審判 全部申し立て B60J |
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管理番号 | 1004031 |
異議申立番号 | 異議1998-72684 |
総通号数 | 4 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 実用新案決定公報 |
発行日 | 2000-04-28 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 1998-05-26 |
確定日 | 1999-08-04 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 実用新案登録第2555586号「車両用ウィンドモールディング」の請求項1ないし3に係る実用新案に対する実用新案登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 実用新案登録第2555586号の請求項1ないし3に係る実用新案登録を取り消す。 |
理由 |
1.手続の経緯 本件実用新案登録第2555586号の請求項1乃至3に係る考案は、平成2年7月27日に出願され、平成9年8月8日に設定の登録がなされ、その後、三井・デュポンポリケミカル株式会社より異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成10年11月16日に訂正請求がなされた後、訂正拒絶理由通知がなされ、その指定期間内である平成11年5月13日に意見書が提出されたものである。 2.訂正の適否 ア.(訂正明細書の請求項1及び2に係る考案) 訂正明細書の請求項1及び2に係る考案は、その実用新案登録請求の範囲に記載された以下の事項により特定されるとおりのものである。 (1) 車体パネルの窓開口端部と該窓開口端部に組付けられるウインドガラスの周縁との間隙に嵌挿されてその間隙を覆うウインドモールディングであって、該ウインドモールディングは、上記間隙に嵌挿されてガラス周縁部に嵌合する支柱部と、上記車体パネルに向けて延在形成したシール部とよりなり、かつ上記ウインドモールディングは、上記シール部が-10℃?-30℃における捩り剛性率が5?40MPaである塩素化エチレンコポリマー架橋体アロイにより形成されており、また上記支柱部は塩化ビニル樹脂により形成されていることを特徴とする車両用ウインドモールディング。 (2)第1請求項において、上記シール部は支柱部の上端部と下端部の2ヶ所に配設されていることを特徴とする車両用ウインドモールディング。 イ. (引用刊行物) (1)引用例1:特開昭63-258212号公報 引用例1には、▲1▼「本発明は、・・・周縁モールとボディ・・・との摺り合せによって生ずる異音の発生に鑑み、これを解決すべく開発されたもので、特に本発明は周縁モールと窓開口部・・・との密着性を確保し、窓開口部と窓ガラス間の間隙を有効に密封しつつ、これら開口部と窓ガラスに対する圧接状態の下でボデイの歪みに伴い生ずる異音の発生を効果的に防止することを目的と」すること(2頁右上欄1行乃至9行)、▲2▼「本発明の上記低摩擦処理の一つは・・・窓開口縁部に直接接触する主体の・・・側縁部につき、・・・窓開口縁部との圧接による摩擦力を低下させること」(2頁左下欄9行乃至19行)、▲3▼「窓の開口縁部に設けられる装着窪みに窓ガラスの縁部を嵌め入れこの窪みのフランジ部と窓ガラス下面との間に充填する接着剤で固着するに当たり上記装着窪みと窓ガラス縁部との間に介挿して両者の間隙を被う周縁モールであって、上記窓ガラスと窓の開口縁部間に渡り上記間隙を被う帯板状の主体と、主体の下面から垂下し前記接着剤に脚部を突き入れる脚部と、この脚部から前記窓ガラス側と窓の装着窪みの起上がり壁側に向けてそれぞれ延設する第1、第2の係止片を有してなる合成樹脂製の自動車の窓ガラス用周縁モールにおいて、少なくとも前記窓ガラスと窓の開口縁部に各接触する前記主体の両側縁部につき低摩擦処理を施してなる・・・自動車の窓ガラス用周縁モール」(特許請求の範囲)、▲4▼実施例に関し、「この周縁モールは適度の剛性と柔軟性を有した合成樹脂、この実施例では塩化ビニル樹脂を材料に押出成形法によって一体に成形するものとし、特にこの実施例では周縁モールの本体部分を上記合成樹脂で成形するのに対して主体1aの・・・他縁の肉薄片部1b(1fの誤記と認められる。)及び第2係止片部1dの各部についてその素材の合成樹脂中にパラフィンワックスを混入させた原料にして一体成形したものとしてある。」(3頁左上欄12行乃至右上欄1行)、▲5▼「この様に部分的にパラフィンワックスを混入してなる周縁モール1は、第2図に示したように窓の装着窪み2に窓ガラス4の周縁部を嵌め入れフランジ部5との間に介挿する接着剤6で固着する際に装着窪みの起上り壁9と窓ガラス周縁部との間に出来る間隙10を通して脚部1bを挿入することによってその装着が行われる。間隙に挿入された脚部1bは第1の係止片1cを窓ガラスの縁部で一旦内側に撓めたのち、・・他方脚部1bの反対側に突き出す第2の係止片1dを起上がり壁9面に突き当て、・・・そして、この脚部1bの挿入に伴い周縁モールの主体1aは窓ガラス4の周縁部上面と開口縁部表面部11に跨って側縁部1eと肉薄片部1fを圧接させ間隙10を閉塞することになる。」(3頁右上欄2行乃至左下欄1行、第1図及び第2図参照)との記載がある。 上記各記載によれば、引用例1には、「車体パネルの開口縁部と該開口縁部に組付けられる窓ガラスの周縁部との間隙に嵌挿されてその間隙を覆う窓ガラス用周縁モールであって、該窓ガラス用周縁モールは、上記間隙に嵌挿されてガラス周縁部に嵌合する脚部と、上記車体パネルに向けて延在形成した側縁部(肉薄片部)1f及び第2の係止部1dよりなるシール部とから構成され、かつ上記窓ガラス用周縁モールは、窓の開口縁部に各接触する前記主体の側縁部(肉薄片部)1f及び第2の係止部1dにつき低摩擦処理を施してなるものにより形成されており、また上記脚部は塩化ビニル樹脂により形成されている自動車の窓ガラス用周縁モール。」が実質的に開示されている。 (2)引用例2:「ポリファイル」第27巻第2号通巻311号(平成2年2月1日発行)54?56頁 引用例2には、「熱可塑性ゴム・・・ALCRYNは・・・塩素化エチレンコポリマー架橋体アロイで・・・ゴムライクな特徴を持っている。」(55頁左欄2行乃至8行)、ALCRYNは「・・・小さな力で変形し、・・・ゴムと同様に非常に柔らかい事・・」(55頁12行乃至14行)、特性として、図3とともに▲2▼「優れた弾性特性、クリープ特性を示す。」、▲3▼「耐候性は非常に優れていて、自動車外装材・・・に使用されている。・・・使用温度範囲は120?-70℃と非常に広く、特に低温特性に優れており、自動車用ウインドシールドモールドのリップ部に使用すると優れた低温柔軟性により、こすれ音の発生を防止でき、また、自動車用水切類・・・に使用すると広範囲な温度に対し安定したシール力を発揮する。」、▲4▼「加工性は架橋体でありながら極めて優れており、プラスチックス用の加工機械によって容易に・・・押出・・・加工が可能である。粘度の剪断速度依存性が高いため異形押出での形状出しが容易であり、」、▲6▼「PVC・・・と相溶性が良く、特にPVCとは自動車用モール・・・用途に共押出成形されている。」との記載がある。 (3)周知例1:実願昭62-164951号(実開平1-69016号)のマイクロフイルム (4)周知例2:実願昭63-57002号(実開平1-161812号)のマイクロフイルム (5)周知例3:実願昭62-118732号(実開昭64-22612号)のマイクロフイルム(実用新案登録権者が提示した参考資料4) (6)周知例4:特開昭58-108122号公報 ウ.(対比・判断) (1)訂正明細書の請求項1に係る考案と引用例1に開示されたものとを対比すると、上記請求項1に係る考案における車体パネル、窓開口端部、ウインドモールディング、支柱部、及びシール部は、上記引用例1のものにおける開口縁部表面11、フランジ5及び起上がり壁9を含む窓の開口縁部、周縁モール1、脚部1b、並びに主体の側縁部(肉薄片部)1f及び第2の係止片1dにそれぞれ相当するので、両者は、車体パネルの窓開口端部と該窓開口端部に組付けられるウインドガラスの周縁との間隙に嵌挿されてその間隙を覆うウインドモールディングであって、該ウインドモールディングは、上記間隙に嵌挿されてガラス周縁部に嵌合する支柱部と、上記車体パネルに向けて延在形成したシール部とよりなり、上記支柱部は塩化ビニル樹脂により形成されている車両用ウインドモールディングである点で一致し、 上記請求項1に係る考案では、上記シール部が-10℃?-30℃における捩り剛性率が5?40MPaである塩素化エチレンコポリマー架橋体アロイにより形成されているのに対し、上記引用例1に開示されたものでは、上記シール部が合成樹脂に低摩擦処理を施して接触部における滑りを良好にするものにより形成されている点で相違する。 上記の相違点について検討すると、上記引用例2には、上記したように、自動車用ウインドシールドモールドのリップ部に塩素化エチレンコポリマー架橋体アロイを使用するとその優れた低温柔軟性により、こすれ音の発生を防止できること、塩素化エチレンコポリマー架橋体アロイは、PVCと相溶性が良く、特にPVCとは自動車用モール用途に共押出成形されること、及び異形押出での形状出しが容易であることが、それぞれ記載されており、上記「塩素化エチレンコポリマー架橋体アロイは、PVCと相溶性が良く、特にPVCとは自動車用モール用途に共押出成形される」との記載によれば、塩素化エチレンコポリマー架橋体アロイは、PVCと相溶性が良く、特にPVCと接着させることが可能であることを示唆しているものと認められる。さらに、上記塩素化エチレンコポリマー架橋体アロイである熱可塑性ゴムALCRYN2070BKの物性(柔軟性)が図3として図示され、図3によれば、上記塩素化エチレンコポリマー架橋体アロイの-10℃?-30℃におけるねじり剛性率(Mpa)の目盛は約4?20Mpaであることが開示され、そして訂正明細書及び第2図に記載の塩素化エチレンコポリマー架橋体アロイは-10℃?-30℃における捩り剛性率が5?40Mpaであるので、両者の塩素化エチレンコポリマー架橋体アロイの-10℃?-30℃における捩り剛性率が一致しており、両者の上記架橋体アロイは低温柔軟性である点で一致している。 そしてシール部であるリップ部を有する自動車用ウインドシールモールドは、窓開口端部と該窓開口端部に組み付けられるウインドガラスの周縁との間隙に嵌挿されてガラス周縁部に嵌合する支柱部と、車体パネルに向けて延在形成したシール部とより構成され、上記シール部が、シール部とボディとの摺り合わせによって生ずる異音の発生を防止するために、滑性のある滑剤を配合した軟質合成樹脂により形成されているものは従来周知であり(引用例1,周知例1?3参照)、さらに周知例3、4にも開示されているように、相溶性がある異なった組成の合成樹脂組成物を混合することなく口金より個別に押し出して一体成形する共押出は異なった部材の接着手段として従来周知である。 してみれば、引用例1に開示されたものにおいて、シール部の窓開口端部に対する圧接状態の下でのボデイの歪みに伴い生ずる異音の発生を防止すべく、合成樹脂に低摩擦処理を施して、上記各接触部において滑り良好にするものを用いてシール部を形成することにかえて、優れた低温柔軟性により自動車用ウインドシールモールドのシール部であるリップ部と窓開口端部との圧接による摩擦力を低下させ、異音(こすれ音)の発生を防止するために、低温柔軟性を有するとともにゴムライクな特徴を持つ上記塩素化エチレンコボリマー架橋体アロイを用いてシール部を形成することは、当業者がきわめて容易に想到しうることである。 そして、上記請求項1に係る考案は、上記引用例1及び2に比して格別優れた効果を奏するものとは認められない。 エ.(むすび) 以上のとおりであるから、訂正明細書の請求項1に係る考案は、上記引用例1及び引用例2に記載のものに基づいて、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであり、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録出願の際独立して実用新案登録を受けることができないものであるから、この訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第9条第2項の規定において準用する特許法第120条の4第3項において準用する同法第126条第4項の規定に適合しないので、当該訂正は認められない。 3.実用新案登録異議の申立てについての判断 ア.(請求項1乃至3に係る考案) 請求項1乃至3に係る考案は、実用新案登録明細書及び図面の記載からみて、それぞれその実用新案登録請求の範囲の請求項1乃至3に記載された次の事項によって特定されるとおりのものである。 【請求項1】 車体パネルの窓開口端部と該窓開口端部に組付けられるウインドガラスの周縁との間隙に嵌挿されてその間隙を覆うウインドモールディングであって、該ウインドモールディングは、上記間隙に緩挿されてガラス周縁部に嵌合する支柱部と、上記車体パネルに向けて延在形成したシール部とよりなり、かつ上記ウインドモールディングは、少なくとも上記シール部が-10℃?-30℃における捩り剛性率が5?40MPaである塩素化エチレンコポリマー架橋体アロイにより形成されていることを特徴とする車両用ウインドモールディング。 【請求項2】 第1請求項において、上記シール部は支柱部の上端部と下端部の2ヶ所に配設されていることを特徴とする車両用ウインドモールディング。 【請求項3】第1又は第2請求項において、上記支柱部は塩化ビニル樹脂により形成されていることを特徴とする車両用ウインドモールディング。 イ.実用新案法第3条第2項違反について (引用刊行物) (1)上記引用例1:特開昭63-258212号公報 (2)上記引用例2:「ポリファイル」第27巻第2号通巻311号(平成2年2月1日発行)54?56頁(甲第5号証) (3)上記周知例1:実願昭62-164951号(実開平1一69016号)のマイクロフイルム(甲第2号証) (4)上記周知例2:実願昭63-57002号(実開平1-161812号)のマイクロフイルム (5)上記周知例3:実願昭62-118732号(実開昭64-22612号)のマイクロフイルム(実用新案登録権者が提示した参考資料4) (6)上記周知例4:特開昭58-108122号公報 ウ.(対比・判断) (1)実用新案登録明細書の請求項1に係る考案について、 上記請求項1に係る考案と引用例1に開示されたものとを対比すると、上記請求項1に係る考案における車体パネル、窓開口端部、ウインドモールディング、支柱部、及びシール部は、上記引用例1のものにおける開口縁部表面11、フランジ5及び起上がり壁9を含む窓の開口縁部、周縁モール1、脚部1b、並びに主体の側縁部(肉薄片部)1f及び第2の係止片1dにそれぞれ相当するので、両者は、車体パネルの窓開口端部と該窓開口端部に組付けられるウインドガラスの周縁との間隙に嵌挿されてその間隙を覆うウインドモールディングであって、該ウインドモールディングは、上記間隙に嵌挿されてガラス周縁部に嵌合する支柱部と、上記車体パネルに向けて延在形成したシール部とよりなる車両用ウインドモールディングである点で一致し、 上記請求項1に係る考案では、少なくとも上記シール部が-10℃?-30℃における捩り剛性率が5?40MPa5である塩素化エチレンコポリマー架橋体アロイにより形成されているのに対し、上記引用例1に開示されたものでは、シール部が合成樹脂に低摩擦処理を施して、接触部における滑りを良好にするものにより形成されている点で相違する。 上記の相違点について検討すると、上記引用例2には、上記したように、自動車用ウインドシールドモールドのリップ部に塩素化エチレンコポリマー架橋体アロイを使用すると、その優れた低温柔軟性により、こすれ音の発生を防止できること、及び塩素化エチレンコポリマー架橋体アロイは、異形押出での形状出しが容易であり、またPVCと相溶性が良く、特にPVCとは自動車用モール用途に共押出成形されることが、それぞれ記載されており、上記「塩素化エチレンコポリマー架橋体アロイは、PVCと相溶性が良く、特にPVCとは自動車用モール用途に共押出成形される」との記載によれば、塩素化エチレンコポリマー架橋体アロイは、PVCと相溶性が良く、特にPVCと接着させることが可能であることを示唆しているものと認められる。さらに、上記塩素化エチレンコポリマー架橋体アロイである熱可塑性ゴムALCRYN2070BKの物性(柔軟性)が図3として図示され、図3によれば、上記塩素化エチレンコボリマー架橋体アロイの-10℃?-30℃におけるねじり剛性率(Mpa)の目盛は約4?20Mpaであることが開示され、そして実用新案登録明細書及び第2図に記載の塩素化エチレンコポリマー架橋体アロイは、-10℃?-30℃における捩り剛性率が5?40Mpaであるので、両者の塩素化エチレンコポリマー架橋体アロイの-10℃?-30℃における捩り剛性率が一致しており、両者の上記架橋体アロイは低温柔軟性である点で一致している。 そしてシール部であるリップ部を有する自動車用ウインドシールモールドは、窓開口端部と該窓開口端部に組み付けられるウインドガラスの周縁との間隙に嵌挿されてガラス周縁部に嵌合する支柱部と、車体パネルに向けて延在形成したシール部とより構成され、上記シール部が、シール部とボディとの摺り合わせによって生ずる異音の発生を防止するために、滑性のある滑剤を配合した軟質合成樹脂により形成されているものは従来周知であり(引用例1、周知例1?3参照)、さらに周知例3、4にも開示されているように、相溶性がある異なった組成の合成樹脂組成物を混合することなく口金より個別に押し出して一体成形する共押出は異なった部材の接着手段として従来周知である。 してみれば、引用例1に開示されたものにおいて、シール部の窓開口端部に対する圧接状態の下でのボデイの歪みに伴い生ずる異音の発生を防止すべく、合成樹脂に低摩擦処理を施して接触部における滑りを良好にするものを用いてシール部を形成することにかえて、優れた低温柔軟性により自動車用ウインドシールモールドのシール部であるリップ部と窓開口端部との圧接による摩擦力を低下させ、異音(こすれ音)の発生を防止するために、少なくとも低温柔軟性を有するとともにゴムライクな特徴を持つ上記塩素化エチレンコポリマー架橋体アロイを用いてシール部を形成することは、当業者がきわめて容易に想到しうることである。 (2)実用新案登録明細書の請求項2に係る考案について、 上記請求項2に係る考案と引用例1に開示されたものとを対比すると、上記請求項2に係る考案における、支柱部の上端部と下端部の2ヶ所に配設されているシール部は、引用例1に開示されたものにおける、脚部1bの上端部と下端部に配設されている主体の側縁部(肉薄片部)1fと第2の係止部1dに相当し、さらに上記請求項2に係る考案における車体パネル、窓開口端部、ウインドモールディング、及び支柱部は、上記したように、上記引用例1に開示されたものにおける開口縁部表面11、フランジ部5及び起上がり壁9を含む開口縁部、周縁モール1、及び脚部1bにそれぞれ相当するので、両者は、車体パネルの窓開口端部と該窓開口端部に組付けられるウィンドガラスの周縁との間隙に嵌挿されてその間隙を覆うウインドモールディングであって、該ウインドモールディングは、上記間隙に嵌挿されそガラス周縁部に嵌合する支柱部と、上記車体パネルに向けて延在形成したシール部とよりなり、かつ上記シール部は支柱部の上端部と下端部の2ヶ所に配設されている車両用ウインドモールディングである点で一致し、上記請求項2に係る考案では、上記シール部は-10℃?-30℃における捩り剛性率が5?40MPaである塩素化エチレンコポリマー架橋体アロイにより形成されているのに対し、上記引用例1に開示されたものでは、上端部及び下端部のシール部が合成樹脂に低摩擦処理を施して、接触部における滑りを良好にするものにより形成されている点で相違する。 上記の相違点について検討すると、上記したように、上記引用例2には、上記したように、自動車用ウインドシールドモールドのリップ部に塩素化エチレンコポリマー架橋体アロイを使用するとその優れた低温柔軟性により、こすれ音の発生を防止できること、塩素化エチレンコポリマー架橋体アロイは、PVCと相溶性が良く、特にPVCとは自動車用モール用途に共押出成形されること、及び異形押出での形状出しが容易であることが、それぞれ記載されており、上記「塩素化エチレンコポリマー架橋体アロイは、PVCと相溶性が良く、特にPVCとは自動車用モール用途に共押出成形される」との記載によれば、塩素化エチレンコポリマー架橋体アロイは、PVCと相溶性が良く、特にPVCとは接着させることが可能であることを示唆しているものと認められる。さらに、上記塩素化エチレンコポリマー架橋体アロイである熱可塑性ゴムALCRYN2070BKの物性(柔軟性)が図3として図示され、図3によれば、上記塩素化エチレンコポリマー架橋体アロイの-10℃?-30℃におけるねじり剛性率(Mpa)の目盛は約4?20Mpaであることが開示され、そして本件実用新案登録明細書及び第2図に記載の塩素化エチレンコポリマー架橋体アロイの-10℃?-30℃における捩り剛性率は5?40Mpaであるので、両者の塩素化エチレンコポリマー架橋体アロイの-10℃?-30℃における捩り剛性率が一致しており、両者の上記架橋体アロイは低温柔軟性である点で一致している。 そしてシール部であるリップ部を有する自動車用ウインドシールモールドは、窓開口端部と該窓開口端部に組み付けられるウインドガラスの周縁との間隙に嵌挿されてガラス周縁部に嵌合する支柱部と、車体パネルに向けて延在形成したシール部とより構成され、かつ上記シール部は支柱部の上端部と下端部の2ヶ所に配設されている自動車用ウインドシールモールドにおいて、上記シール部が、シール部とボディとの摺り合わせによって生ずる異音の発生を防止するために、滑性のある滑剤を配合した軟質合成樹脂により形成されているものは従来周知であり(引用例1、周知例1?3参照)、さらに周知例3、4にも開示されているように、相溶性がある異なった組成の合成樹脂組成物を混合することなく口金より個別に押し出して一体成形する共押出は異なった部材の接着手段として従来周知である。 してみれば、引用例1に開示されたものにおいて、主体の側縁部1f及び第2の係止片1dの窓開口縁部及び起上がり壁9に対する圧接状態の下でのボデイの歪みに伴い生ずる異音の発生を防止すべく、合成樹脂に低摩擦処理して、上記各接触部において滑り良好にするものを用いてシール部(主体の側縁部又は肉薄片部1f及び第2の係止部1d)を形成することにかえて、同じようにシール部の圧接状態の下でのボデイの歪みに伴い生ずる異音の発生を防止すべく、優れた低温柔軟性により自動車用ウインドシールモールドの上端部及び下端部のシール部と窓開口端部(窓開口端縁及び起上がり壁9)との圧接による摩擦力を低下させ異音の発生を防止するために、少なくとも低温柔軟性を有するとともにゴムライクな特徴を持つ上記塩素化エチレンコポリマー架橋体アロイを用いてシール部を形成することは、当業者がきわめて容易に想到しうることである。 (3)実用新案登録明細書の請求項3に係る考案について、 上記請求項3に係る考案と引用例1に開示されたものとを対比すると、上記請求項3に係る考案における支柱部は、上記引用例1における脚部1bに相当し、上記請求項3における車体パネル、窓開口端部、ウインドモールディング、及びシール部は、上記引用例1に開示されたものにおける開口縁部表面11、フランジ部5及び起上がり壁9を含む開口縁部、周縁モール1、並びに主体の側縁部(肉薄片部)1f及び第2の係止片1dにそれぞれ相当するので、両者は、車体パネルの窓開口端部と該窓開口端部に組付けられるウインドガラスの周縁との間隙に嵌挿されてその間隙を覆うウインドモールディングであって、該ウインドモールディングは、上記間隙に嵌挿されてガラス周縁部に嵌合する支柱部と、上記車体パネルに向けて延在形成したシール部とよりなり、上記支柱部が塩化ビニル樹脂により形成されている車両用ウインドモールディングである点で一致し、 上記請求項3に係る考案では、上記シール部は-10℃?-30℃における捩り剛性率が5?40MPaである塩素化エチレンコポリマー架橋体アロイにより形成されているのに対し、上記引用例1記載のものでは、シール部が合成樹脂に低摩擦処理を施してなるものにより形成されている点で相違する。 上記の相違点について検討すると、上記引用例2には、上記したように、自動車用ウインドシールドモールドのリップ部に塩素化エチレンコポリマー架橋体アロイを使用するとその優れた低温柔軟性により、こすれ音の発生を防止できること、塩素化エチレンコポリマー架橋体アロイは、PVCと相溶性が良く、特にPVCとは自動車用モール用途に共押出成形されること及び異形押出での形状出しが容易であることが、それぞれ記載されており、上記「塩素化エチレンコポリマー架橋体アロイは、PVCと相溶性が良く、特にPVCとは自動車用モール用途に共押出成形される」との記載によれば、塩素化エチレンコポリマー架橋体アロイは、PVCと相溶性が良く、特にPVCとは接着させることが可能であることを示唆しているも、のと認められる。さらに、上記塩素化エチレンコポリマー架橋体アロイである熱可塑性ゴムALCRYN2070BKの物性(柔軟性)が図3として図示され、図3によれば、上記塩素化エチレンコポリマー架橋体アロイの-10℃?-30℃におけるねじり剛性率(Mpa)の目盛は約4?20Mpaであることが開示され、本件実用新案登録明細書及び第2図に記載の塩素化エチレンコポリマー架橋体アロイの-10℃?-30℃における捩り剛性率は5?40Mpaであるので、両者の塩素化エチレンコポリマー架橋体アロイの-10℃?-30℃における捩り剛性率が一致しており、両者の上記架橋体アロイは低温柔軟性である点で一致している。 そしてシール部であるリップ部を有する自動車用ウインドシールモールドは、窓開口端部と該窓開口端部に組み付けられるウインドガラスの周縁との間隙に嵌挿されてガラス周縁部に嵌合する支柱部と、車体パネルに向けて延在形成したシール部とより構成され、上記シール部が、シール部とボディとの摺り合わせによって生ずる異音の発生を防止するために、滑性のある滑剤を配合した軟質合成樹脂により形成されているものは従来周知であり(引用例1、周知例1?3参照)、さらに周知例3、4にも開示されているように、相溶性がある異なった組成の合成樹脂組成物を混合することなく口金より個別に押し出して一体成形する共押出は異なった部材の接着手段として従来周知である。 してみれば、引用例1のものにおいて、シール部の窓開口部に対する圧接状態の下でのボデイの歪みに伴い生ずる異音の発生を防止すべく、合成樹脂に低摩擦処理を施して接触部において滑り良好にしたものを用いてシール部を形成することにかえて、同じようにシール部の圧接状態の下でのボデイの歪みに伴い生ずる異音の発生を防止すべく、優れた低温柔軟性により自動車用ウインドシールモールドのシール部と窓開口端縁との圧接による摩擦力を低下させるために、少なくとも低温柔軟性を有するとともにゴムライクな特徴を持つ上記塩素化エチレンコポリマー架橋体アロイを用いてシール部を形成することは、当業者がきわめて容易に想到しうることである。 そして、上記請求項1乃至3に係る考案は、上記引用例1及び2に記載されたものに比して格別優れた効果を奏するものと認められない。 エ.(むすび) 以上のとおりであるので、請求項1乃至3に係る本件考案は、上記引用例1及び引用例2に記載のものに基づいて、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものである。 したがって、請求項1乃至3に係る本件考案の実用新案登録は実用新案法第3条第2項の規定に違反してされたものであって、拒絶の査定をしなければならない実用新案登録出願に対してされたものと認める。 よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第9条第7項の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の一部の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第3条第1項及び第2項の規定により、上記のとおり決定する。 |
異議決定日 | 1999-06-21 |
出願番号 | 実願平2-79986 |
審決分類 |
U
1
651・
121-
ZB
(B60J)
|
最終処分 | 取消 |
前審関与審査官 | 六車 江一、前田 幸雄 |
特許庁審判長 |
築山 敏昭 |
特許庁審判官 |
井口 嘉和 鈴木 法明 |
登録日 | 1997-08-08 |
登録番号 | 実用登録第2555586号(U2555586) |
権利者 |
東海興業株式会社 愛知県大府市長根町4丁目1番地 |
考案の名称 | 車両用ウインドモールディング |
代理人 | 高橋 祥泰 |
代理人 | 山口 和 |
代理人 | 中嶋 重光 |
代理人 | 岩倉 民芳 |