ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 全部申し立て H01F |
---|---|
管理番号 | 1004048 |
異議申立番号 | 異議1998-71840 |
総通号数 | 4 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 実用新案決定公報 |
発行日 | 2000-04-28 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 1998-04-14 |
確定日 | 1999-05-10 |
異議申立件数 | 2 |
事件の表示 | 実用新案登録第2552048号「積層型インダクタ」の実用新案に対する実用新案登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 実用新案登録第2552048号の実用新案登録を取り消す。 |
理由 |
I.手続の経緯 本件実用新案登録第2552048号は平成3年5月16日に出願され、平成9年7月4日に設定登録されたものである。 これに対して、平成10年4月14日に実用新案登録異議申立人 株式会社村田製作所より、また、平成10年4月16日に実用新案登録異議申立人 依田 和雄よりそれぞれ実用新案登録異議の申立てがなされ、平成10年7月28日付で当審より取消理由を通知したところ、平成10年10月15日付で訂正請求がなされた。これに対して、平成10年11月5日付で当審より訂正拒絶理由を通知したところ、平成11年1月18日付で意見書及び手続補正書が提出されたものである。 II.訂正の適否 1.訂正の内容 前記平成10年10月15日付訂正請求の請求の趣旨は本件実用新案登録明細書を請求書に添付した訂正明細書のとおり次のように訂正することを求めるものである。 (a)実用新案登録請求の範囲の減縮を目的として、実用新案登録請求の範囲の請求項1を次のように訂正する。 「【請求項1】両外層面をなす一対の磁性体板と、これらの間に面の所定部分に切り欠き窓が透通形成された磁性体層とを有し、前記切り欠き窓を通して終端部分と始端部分とが長手方向に接続される渦帯状導電体と前記磁性体層とが交互に重畳積層され成る積層型インダクタにおいて、 前記一方の磁性体板と密着する前記導電体の始端部分と前記他方の磁性体板に密着する前記導電体の終端部分とがともに磁性体板の縁辺に沿って露出するように形成されており、かつ、該露出部分が外部電極に接続され、更に、各前記磁性体層間の夫々の前記導電体が形成されている面と同一面上に、前記外部電極に接続される露出部分が夫々形成されていることを特徴とする積層型インダクタ。」。 (b) 実用新案登録公報第1頁第1欄第12行?第13行の「各前記磁性体層間に前記外部電極に接続される露出部分が形成されている」を、明瞭でない記載の釈明を目的として、「各前記磁性体層間の夫々の前記導電体が形成されている面と同一面上に、前記外部電極に接続される露出部分が夫々形成されている」に訂正する。 (c) 実用新案登録公報第2頁第3欄第37行?第38行の「各前記磁性体層間に前記外部電極に接続される露出部分が形成されている」を、明瞭でない記載の釈明を目的として、「各前記磁性体層間の夫々の前記導電体が形成されている面と同一面上に、前記外部電極に接続される露出部分が夫々形成されている」と訂正する。 2.訂正の適否についての判断 【1】訂正明細書の請求項1に係る考案 訂正明細書の請求項1に係る考案は、平成11年1月18日付手続補正書により補正された実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載されているつぎのとおりのものと認める。 「【請求項1】両外層面をなす一対の磁性体板と、これらの間に面の所定部分に切り欠き窓が透通形成された磁性体層とを有し、前記切り欠き窓を通して終端部分と始端部分とが長手方向に接続される渦帯状導電体と前記磁性体層とが交互に重畳積層され成る積層型インダクタにおいて、 前記一方の磁性体板と密着する前記導電体の始端部分と前記他方の磁性体板に密着する前記導電体の終端部分とがともに磁性体板の縁辺に沿って露出するように形成されており、かつ、該露出部分が外部電極に接続され、更に、各前記磁性体層間の夫々の前記導電体が形成されている面と同一面上のみに、前記外部電極に接続される露出部分が夫々形成されていることを特徴とする積層型インダクタ。」。 【2】引用刊行物記載の考案 訂正明細書の請求項1に係る考案に対し、当審が訂正拒絶理由通知において示した刊行物1(特開平2-135715号公報)の特に第4図?第6図、及び関連する説明箇所には、内部電極の始端及び終端部分と外部電極との接続強度を大きくすべく、次の構成を有する積層型インダクタ、が記載されている。 両外層面をなす一対の磁性体板1、1´と、これらの間に面の所定部分に切り欠き部6が透通形成された磁性体層5とを有し、前記切り欠き部6を通して終端部分と始端部分とが長手方向に接続される導電体4と前記磁性体層5とが交互に重畳積層され成る積層型インダクタにおいて、 前記一方の磁性体板1と密着する前記導電体4の始端部分2´と前記他方の磁性体板1´に密着する前記導電体4の終端部分3´とがともに前記磁性体板1、1´の縁辺に沿って露出するように形成されており、かつ、該露出部分が外部電極7に接続されている積層型インダクタ。 同じく当審が訂正拒絶理由通知において示した刊行物2(実願昭63-6835号(実開平1-112008号)のマイクロフィルム)には、チップインダクタに関し、内部電極と外部電極の接合面の強度を向上させることを目的として、 チップインダクタを構成する各フェライト層2間に、接合補強用電極1を外部電極4に接続されるように露出部分を形成したチップインダクタ、が記載されている。 【3】対比 そこで、請求項1に係る考案と刊行物1の考案とを比較すると、刊行物1の考案の 「切り欠き部6」、「導電体4」は、それぞれ請求項1に係る考案の 「切り欠き窓」、「渦帯状導電体」に相当し、 両者は、 「両外層面をなす一対の磁性体板と、これらの間に面の所定部分に切り欠き窓が透通形成された磁性体層とを有し、前記切り欠き窓を通して終端部分と始端部分とが長手方向に接続される渦帯状導電体と前記磁性体層とが交互に重畳積層され成る積層型インダクタにおいて、 前記一方の磁性体板と密着する前記導電体の始端部分と前記他方の磁性体板に密着する前記導電体の終端部分とがともに前記磁性体板の縁辺に沿って露出するように形成されており、かつ、該露出部分が外部電極に接続されている積層型インダクタ」である点で一致し、 請求項1に係る考案は、 各前記磁性体層間の夫々の前記導電体が形成されている面と同一面上のみに、外部電極に接続される露出部分が夫々形成されている点、 で、刊行物1の考案と相違する。 【4】当審の判断 そこで、前記相違点につき、以下に検討する。 前記刊行物2には、内部電極と外部電極の接合面の強度を向上させることを目的として、 チップインダクタを構成する各フェライト層2(請求項1に係る考案の磁性体層に対応する)間に、接合補強用電極1を外部電極4に接続されるように露出部分(請求項1に係る考案の、磁性体層間に形成された「外部電極に接続される露出部分」に相当する)を形成したチップインダクタ、が記載されている。 そして、刊行物1のものも刊行物2のものも磁性体板を積層して構成したインダクタ素子であり、共に外部電極との接続強度を高めることを技術課題とするものであるから、刊行物2に記載のものを刊行物1のものに施して、磁性体層間に外部電極に接続される露出部分を形成することは、当業者がきわめて容易に想到し得るところと認められる。そして、これによって導電体と同じく前記露出部分も磁性体層間に形成されるわけであり、一方、刊行物1において、導電体とその始端部分の露出部分、又は導電体とその終端部分の露出部分とをそれぞれ同一面上に形成した構成が開示されている以上、磁性体層上に形成される導電体と外部電極に接続される露出部分とを同一面上のみに形成することに格別の構成の困難性は何ら認められない。 【5】むすび 以上のとおりであるから、訂正明細書の請求項1に係る考案は、前記刊行物1乃至2に記載されたものに基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであり、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録出願の際独立して実用新案登録を受けることができないものであるから、本件訂正請求は、平成6年法律第116号附則第9条第2項によって準用する特許法第120条の4第3項でさらに準用する同法第126条第4項の規定に適合しないので、当該訂正請求は認められない。 III.実用新案登録異議申立てについての判断 【1】請求項1に係る考案 本件請求項1に係る考案は実用新案登録明細書及び図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】両外層面をなす一対の磁性体板と、これらの間に面の所定部分に切り欠き窓が透通形成された磁性体層とを有し、前記切り欠き窓を通して終端部分と始端部分とが長手方向に接続される渦帯状導電体と前記磁性体層とが交互に重畳積層され成る積層型インダクタにおいて、 前記一方の磁性体板と密着する前記導電体の始端部分と前記他方の磁性体板に密着する前記導電体の終端部分とがともに前記磁性体板の縁辺に沿って露出するように形成されており、かつ、該露出部分が外部電極に接続され、更に、各前記磁性体層間に前記外部電極に接続される露出部分が形成されていることを特徴とする積層型インダクタ。」 【2】引用刊行物記載の考案 当審が通知した取消理由に引用した刊行物1(特開平2-135715号公報)中、特に第4図?第6図、及び関連する説明箇所には、内部電極の始端及び終端部分と外部電極との接続強度を大きくすべく、次の構成を有する積層型インダクタ、が記載されている。 両外層面をなす一対の磁性体板1、1´と、これらの間に面の所定部分に切り欠き部6が透通形成された磁性体層5とを有し、前記切り欠き部6を通して終端部分と始端部分とが長手方向に接続される導電体4と前記磁性体層5とが交互に重畳積層され成る積層型インダクタにおいて、 前記一方の磁性体板1と密着する前記導電体4の始端部分2´と前記他方の磁性体板1´に密着する前記導電体4の終端部分3´とがともに前記磁性体板1、1´の縁辺に沿って露出するように形成されており、かつ、該露出部分が外部電極7に接続されている積層型インダクタ。 同じく取消理由に引用した刊行物2(実願昭63-6835号(実開平1-112008号)のマイクロフィルム)には、チップインダクタに関し、内部電極と外部電極の接合面の強度を向上させることを目的として、 チップインダクタを構成する各フェライト層2間に、接合補強用電極1を外部電極4に接続されるように露出部分を形成したチップインダクタ、が記載されている。 【3】対比・判断 そこで、請求項1に係る考案と刊行物1の考案とを比較すると、両者は、 「両外層面をなす一対の磁性体板と、これらの間に面の所定部分に切り欠き窓が透通形成された磁性体層とを有し、前記切り欠き窓を通して終端部分と始端部分とが長手方向に接続される渦帯状導電体と前記磁性体層とが交互に重畳積層され成る積層型インダクタにおいて、 前記一方の磁性体板と密着する前記導電体の始端部分と前記他方の磁性体板に密着する前記導電体の終端部分とがともに前記磁性体板の縁辺に沿って露出するように形成されており、かつ、該露出部分が外部電極に接続されている積層型インダクタ」である点で一致し、 請求項1に係る考案は、 各前記磁性体層間に外部電極に接続される露出部分が形成されている点、 で、刊行物1の考案と相違する。 そこで、前記相違点につき、以下に検討する。 前記刊行物2には、内部電極と外部電極の接合面の強度を向上させることを目的として、 チップインダクタを構成する各フェライト層2(請求項1に係る考案の磁性体層に対応する)間に、接合補強用電極1を外部電極4に接続されるように露出部分(請求項1に係る考案の、磁性体層間に形成された「外部電極に接続される露出部分」に相当する)を形成したチップインダクタ、が記載されている。 そして、刊行物1のものも刊行物2のものも磁性体板を積層して構成したインダクタ素子であり、共に外部電極との接続強度を高めることを技術課題とするものであるから、刊行物2に記載のものを刊行物1のものに施して、磁性体層間に外部電極に接続される露出部分を形成することは、当業者がきわめて容易に想到し得るところと認められる。 【4】むすび 以上のとおりであるから、本件請求項1に係る考案は、前記刊行物1、2に記載された考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるので、旧実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることが出来ない。 したがって、本件請求項1に係る実用新案登録は拒絶の査定をしなければならない実用新案登録出願に対してされたものである。 よって、平成6年法律第116号附則第9条第4項及び第7項並びに第14条の規定に基づく、平成7年政令第205号第3条第1項及び第2項の規定により、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 1999-02-25 |
出願番号 | 実願平3-43652 |
審決分類 |
U
1
651・
121-
ZB
(H01F)
|
最終処分 | 取消 |
前審関与審査官 | 田中 友章 |
特許庁審判長 |
鈴木 伸夫 |
特許庁審判官 |
岩本 正義 西川 一 |
登録日 | 1997-07-04 |
登録番号 | 実用登録第2552048号(U2552048) |
権利者 |
株式会社トーキン 宮城県仙台市太白区郡山6丁目7番1号 |
考案の名称 | 積層型インダクタ |
代理人 | 池田 憲保 |
代理人 | 後藤 洋介 |
代理人 | 山本 格介 |