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審決分類 審判 全部申し立て   G10H
審判 全部申し立て   G10H
管理番号 1004066
異議申立番号 異議1997-72796  
総通号数
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案決定公報 
発行日 2000-04-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 1997-06-11 
確定日 1999-06-16 
異議申立件数
事件の表示 実用新案登録第2519623号「自動演奏装置」の実用新案に対する実用新案登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。   
結論 実用新案登録第2519623号の実用新案登録を取り消す。
理由 1.手続の経緯
実用新案登録第2519623号考案は、昭和63年3月8日に出願された実願昭63-30510号に係るものであり、平成8年9月13日に設定登録されたものである。
これに対し、石原伴藏より実用新案登録異議の申立がなされ、当審より取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成10年6月29日に実用新案登録権者より訂正請求がなされ、これに対して当審より訂正拒絶理由通知がなされ、その指定期間内である平成10年10月19日に実用新案登録権者より訂正請求書について手続補正がなされたものである。
2.訂正請求書についての補正の適否
当審は、訂正請求書に記載の訂正請求については、いわゆる独立登録要件を満たしていないとして、次に示す訂正拒絶理由を通知した。
『1.訂正明細書の請求項1に係る考案
訂正明細書の請求項1に係る考案は、訂正明細書の実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載されている事項により特定されるとおりのものと認められる。
2.引用刊行物に記載の考案
刊行物:特開昭59-197088号公報
上記刊行物には、一般的な伴奏パターン情報を内部メモリにストアしておく一方、演奏曲独自の特殊な伴奏パターン情報及びパターン選択情報を演奏曲の音符情報と共にストアしておき、音符情報の読出しに伴ってパターン選択情報を読出し、読出されたパターン選択情報に基づいて一般的な伴奏パターン情報又は特殊な伴奏パターン情報を読出し、読出されたいずれかの伴奏パターン情報に応じて伴奏音発生を制御するようにした自動演奏装置((2)頁右上欄2?11行)が記載されており、第1図に1実施例のブロック図が示されている。この実施例において、第1図の演奏データメモリ(RAM)にメモリされるデータフォーマットとして例えば第3図のようにすること((3)頁左上欄3?5行)、特殊伴奏パターン指定データPST及び特殊伴奏パターン指定解除データPEDはそれぞれ特殊伴奏パターンに変更したい個所及びノーマル伴奏パターンに変更したい個所に挿入されること((3)頁右上欄1?4行)、演奏開始時においてノーマル伴奏パターンデータが読み出されるが、その後特殊伴奏パターン指定データPSTが読出されるとメモリからの特殊伴奏パターンデータの読出しを指令しいわゆる伴奏音は特殊伴奏パターンにしたがって発生され、この後、特殊伴奏パターン指定解除データPEDが読出されるとセレクタの選択信号が復帰し伴奏パターンメモリには初期伴奏パターン指定データが供給され、いわゆる伴奏音はノーマル伴奏パターンに対応したものに復帰すること((3)頁左下欄6行?(4)頁右上欄1行)が記載されており、第3図を見ると、PSTとPEDの間にMLLとMLPが交互に3個ずつ記載されている。
3.訂正明細書の請求項1に係る考案と引用刊行物に記載の考案との対比・判断
訂正明細書の請求項1に係る考案と引用刊行物に記載の考案とを対比すると、「楽曲の1つのパートの演奏データ」は「演奏データメモリにおける演奏データ」(第3図参照)と、「楽曲の1つのパートの演奏データを楽曲の進行に従って順次記憶している第1の演奏データメモリ」は「演奏データメモリ18(RAM)」と、「該第1の演奏データメモリから演奏データを順次読み出す第1の読み出し手段」は「データ読出回路24」と同等のものであること明らかである。
ところで、上記刊行物のものは、演奏すべき曲の自動演奏中は、通常はノーマルパターンの伴奏を行わせるが、曲の途中で演奏曲独自の特殊なパターンの伴奏を行わせたいときにはノーマルパターンの伴奏に代えて演奏曲独自の特殊なパターンの伴奏を行わせるようにし、その後特殊なパターンの伴奏を終えてノーマルパターンの演奏に戻りたいときにそのようにすることができるようにするために、ノーマル伴奏パターンメモリ22b(ROM)、特殊伴奏パターンメモリ22a(RAM)を備え、そのいずれかの読み出したいパターンを選択するためのセレクタ20によって、第3図のような演奏データがストアされている演奏データメモリから読出したデータ中にPSTがあればその時点でセレクタを切り替えて特殊伴奏パターンメモリを読出すようにし、その後所定の演奏すべき曲の演奏音を演奏中で読出したデータ中にPEDがあればその時点でセレクタの切換を復帰させて特殊伴奏を終えてノーマル伴奏に戻るようにしたものであるが、演奏すべき曲の演奏中は常にいずれかの伴奏を奏させるようにすることをやめて、伴奏が必要なときのみ特殊伴奏を奏させる(換言すれば特殊伴奏が必要ないときにノーマル伴奏を奏させない)ようにすることは、当業者ならば適宜きわめて容易に推考できる程度のものと認められる。そして、この場合の特殊伴奏もこれを演奏すべき曲のパートとは異なる1つのパートとも把握することができるのでそのように把握すると、訂正明細書の請求項1に係る考案と引用刊行物に記載の考案とは、「前記第1の演奏データメモリに記憶された演奏データのパートとは異なる他のパートの演奏データを前記楽曲に従って順次記憶する第2の演奏データメモリ」が「特殊伴奏パターンメモリ22a(RAM)」に、「該第2の演奏データメモリから演奏データを順次読み出す第2の読出手段」が「レジスタ40とセレクタ20およびカウンタ36」に、それぞれ相当するものと認められる。そして、引用刊行物の演奏データにおけるPSTとPEDは、特殊伴奏パターンメモリ(RAM)の読出開始と読出停止を指示する信号ということができ、第3図を見ると、PSTとPEDの間にMLLとMLPが交互に3個ずつ記載されており、PSTとPEDの間は、PSTの直前のMLPで指定された音高でPST直後のMLLで指定された長さのメロデイ音を発生させるとともに特殊伴奏を開始し、引き続いて特殊伴奏を奏させながら次のMLPとMLLの組2つによる2つのメロディ音を自動演奏し、次にPED直前のMLPで指定された音高でPED直後のMLLで指定された長さのメロディ音を発生させるとともに特殊伴奏を終了させるものと解されるから、結局、上記刊行物の記載から把握できるものも、第1の演奏データメモリには演奏データ中の第2の演奏データメモリ内の演奏データの読出開始を指示する読出開始信号を演奏進行上の第2の演奏データに基づく演奏を開始させる位置のみに記憶するとともに読出停止を指示する読出停止信号を演奏進行上の第2の演奏データに基づく演奏を停止させる位置のみに記憶し、前記第1の演奏データメモリからの演奏データの読み出し中に前記読出開始信号が読み出されると第2の演奏データメモリからの演奏データの読み出しを開始し、前記読出停止信号が読み出されると第2の演奏データメモリからの演奏データの読み出しを停止するようにし、読出開始信号が読み出されてから読出停止信号が読み出されるまでの間のみ、第1のパートの演奏に加えて、第2のパートの演奏を行うようにしているということができる。
なお、実用新案権者は実用新案登録異議意見書において、特開昭54-118224号公報記載の考案は、本件考案のように伴奏音に対してメロディの付加を任意に制御することについて、及びリズム音に対してメロディ音を任意に付加することなどを目的とするものでないから、本件考案と前記公報記載の考案とは考案の目的が相違する(点で前記公報に開示の事項は、本件考案のいわゆる進歩性否定の根拠となる先行技術とはなり得ない、という趣旨と解される。)旨主張しており、上記刊行物特開昭59-197088号公報に記載のものも伴奏音に対してメロディの付加を任意に制御することについて及びリズム音に対してメロディ音を任意に付加することなどを目的とする点について言及がない点で同様であるが、訂正明細書の請求項1に記載の考案は、伴奏音に対してメロディの付加を任意に制御することについて、及びリズム音に対してメロディ音を任意に付加することなどだけを目的とするものという点が構成として表れておらず、1つのパートの演奏に対してこれと異なる他のパートの演奏をするものはこれに含まれるのみならず、伴奏やリズム音を主体としてこれにメロディ(音)を伴奏やリズム音の進行の途中の所定個所だけ演奏させる意義について実用新案権者は説明しておらず格別のものは考えられがたいから、上記趣旨の主張は採用できない。
4.むすび
以上のとおりであるから、訂正明細書の請求項1に係る考案は、上記刊行物に記載の考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものと認められ、したがって、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録出願の際独立して実用新案登録を受けることができないものであるから、この訂正は、平成6年法律第116号附則第9条第2項で準用する特許法第120条の4第3項でさらに準用する同法第126条第4項の規定に適合しないので、本件訂正は認められない。』
この訂正拒絶理由通知に対応して実用新案登録権者が訂正請求書について平成10年10月19日付けでした補正は、訂正請求書に記載の訂正明細書の実用新案登録請求の範囲請求項1の記載「楽曲の1つのパートの演奏データを、該楽曲の進行に従って順次記憶している第1の演奏データメモリ、該第1の演奏データメモリから演奏データを順次読み出す第1の読出手段と、前記第1の演奏データメモリに記憶された演奏データのパートとは異なる他のパートの演奏データメモリを前記楽曲の進行に従って順次記憶する第2の演奏データメモリと、該第2の演奏データメモリから演奏データを順次読み出す第2の読出手段とを備え、前記第1の演奏データメモリには演奏データ中に第2の演奏データメモリ内の演奏データの読出開始を指示する読出開始信号を演奏進行上の第2の演奏データに基づく演奏を開始させる位置のみに記憶するとともに読出停止を指示する読出停止信号を演奏進行上の第2の演奏データに基づく演奏を停止させる位置のみに記憶し、前記第1の演奏データメモリからの演奏データの読み出し中に前記読出開始信号が読み出されると第2の演奏データメモリからの演奏データの読み出しを開始し、前記読出停止信号が読み出されると第2の演奏データメモリからの演奏データの読み出しを停止するようにし、読出開始信号が読み出されてから読出停止信号が読み出されるまでの間のみ、第1のパートの演奏に加えて、第2のパートの演奏を行うことを特徴とする自動演奏装置。」
を、不明りょうな記載の釈明を目的として、
「楽曲の伴奏音パートの演奏データを、該楽曲の進行に従って順次記憶している第1の演奏データメモリと、該第1の演奏データメモリから伴奏音パートの演奏データを順次読み出す第1の読出手段と、前記第1の演奏データメモリに記憶された演奏データメモリの伴奏音パートとは異なるメロディ音パートの演奏データを前記楽曲の進行に従って順次記憶する第2の演奏データメモリと、該第2の演奏データメモリからメロディ音パートの演奏データを順次読み出す第2の読出手段とを備え、前記第1の演奏データメモリには伴奏音パートの演奏データ中に第2の演奏データメモリ内のメロディ音パートの演奏データの読み出し開始を指示する読出開始信号を演奏進行上のメロディ音パートの演奏データに基づく演奏を開始させる位置のみに記憶するとともに読出停止を指示する読出停止信号を演奏進行上のメロディ音パートの演奏データに基づく演奏を停止させる位置のみに記憶し、前記第1の演奏データメモリからの伴奏音パートの演奏データの読み出し中に前記読出開始信号が読み出されると第2の演奏データメモリからのメロディ音パートの演奏データの読み出しを開始し、前記読出停止信号が読み出されると第2の演奏データメモリからのメロディ音パートの演奏データの読み出しを停止するようにし、競出開始信号が読み出されてから続出停止信号が読み出されるまでの間のみ、伴奏音パートの演奏に加えて、メロディ音パートの演奏の演奏を行うことを特徴とする自動演奏装置。」
と補正するとともに、考案の詳細な説明の請求項1の記載と対応する箇所の記載をこれとの整合を図る目的で同様の趣旨の記載となるよう補正をしようとするものであるので、これらの補正が訂正請求書との関係において適法なものか否かについて検討する。
実用新案登録請求の範囲請求項1についての補正は、要するに、「楽曲の1つのパートの演奏データ」を「楽曲の伴奏音パートの演奏データ」に、「(この)演奏データのパートとは異なる他の演奏データ」を「(伴奏音パートとは異なる)メロディ音パートの演奏データ」に補正しようとするものであるが、補正前の訂正明細書の考案の詳細な説明の記載をみると、「楽曲の1つのパートの演奏データ」が、メロディ音、伴奏音、リズム音等のうちの1つのパートの演奏データを意味しており、「(この)演奏データのパートとは異なる他の演奏データ」が、メロディ音、伴奏音、リズム音等のうちの1つのパートとして選択されていないパートの演奏データを意味していることは明らかであるから、実用新案登録請求の範囲請求項1についての補正は、楽曲のパートについて、考案の詳細な説明で例示されていたものの特定の1つとそれ以外の特定の1つにそれぞれ限定しようとするものと認められる。したがってこれらの補正は、不明りょうな記載の釈明に該当するとは言い難いが、実用新案登録請求の範囲の減縮には該当するということができる。
また、考案の詳細な説明に関する補正は、実用新案登録請求の範囲の記載と整合を図るものであるから、不明りょうな記載の釈明に該当するということができる。
そして、これらの全ての補正は、出願当初明細書に記載した事項の範囲内のものであって、実質上実用新案登録請求の範囲を拡張するものとも変更するものとも認められない。
3.訂正の適否
上記2.の検討から明らかなように、訂正請求書との関係でみれば補正書に記載の補正は訂正請求書の要旨を変更するものとは認められず適法なものと認められるので、補正後の訂正請求書に記載の明細書の実用新案登録請求の範囲請求項1に記載の考案が、いわゆる独立登録要件を満たすものであるか否かについて検討する。
補正前の訂正請求書に記載された明細書の請求項1に記載された考案に対して、当審が通知した訂正拒絶理由は、上記2.に摘記したとおりのものである。
この訂正拒絶理由に対して、実用新案登録権者は、意見書を提出するとともに上記趣旨の補正をしているが、この意見書において、訂正拒絶理由で引用の刊行物の考案はメロディに対して伴奏を一般的な伴奏パターンあるいは特殊伴奏パターンに切り換えることを意図するものである一方、本件補正後の考案は伴奏に対してメロディの開始/停止を制御するものであり、刊行物の考案とは基本的な技術思想が明らかに相違している旨主張している。この点、訂正拒絶理由で指摘したように引用した刊行物に開示されている考案において伴奏が必要なときのみ特殊伴奏パターンに相当するものを奏させるようにすることは当業者ならば適宜なし得る程度のものと認められるから、引用刊行物に記載されている考案と補正後の訂正請求書に記載の考案の主な相違点は、連続的に演奏させるメロディに対して伴奏を奏させたいところだけ奏させるようにするか、連続的に演奏させる伴奏に対してメロディを奏させたいところだけ奏させるようにするか、の違いであり、補正後の考案と引用刊行物に記載の考案は基本的技術思想が異なると言う実用新案登録権者の主張はこの違いのことを言っていると解されるのでこの点について検討すると、本件補正後の考案のように伴奏音に対してメロディ音を奏させたいところだけ奏させるようにすることについては、そのようにすべき格別の必要性あるいはそのようにしたことによる当業者の予想を越える格別の作用効果は考えられ難い一方、メロディ音を伴奏音と共に発生する自動演奏装置も伴奏音を発生する自動演奏装置もきわめて周知のものであるから、伴奏音を主体にしてこれにメロディ音を付加して発生できるようにすることは、当業者ならばきわめて容易に推考できる程度のものと認められ、したがって、補正前の考案に対して補正後の考案のようにすることは当業者が必要に応じて適宜なし得る事項の域を出ないものと認められる。そして、この補正以外の部分すなわち補正前の考案については、取消理由通知書で示した取消理由が依然妥当なものであるので、上記主張は、本件補正後の考案が引用刊行物に記載された考案から当業者がきわめて容易に推考できたものではないという主張の根拠としては採用することができない。
従って、補正後の考案も、訂正拒絶理由通知で引用した刊行物に記載された考案に基づいて当業者がきわめて容易になしえたものと認められ、実用新案法第3条第2項の規定により出願の際に独立して実用新案登録を受けることができないものであるから、本件訂正請求は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第9条第2項の規定により準用され、同附則第10条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる特許法第120条の4第3項でさらに準用する同法第126条第4項の規定に適合しないものであるので、本件訂正は認められない。
4.実用新案登録異議の申立について
ア.本件考案
本件実用新案登録に係る考案(以下、「本件考案」という。)は、実用新案登録明細書についての訂正が認められないので、実用新案登録時の実用新案登録請求の範囲請求項1に記載された次のとおりのものと認められる。
「楽曲の1つのパートの演奏データを、該楽曲の進行に従って順次記憶している第1の演奏データメモリと、該第1の演奏演奏データメモリから演奏データを順次読み出す第1の読出手段と、前記第1の演奏演奏データメモリに記憶された演奏データのパートとは異なる他のパートの演奏データを前記楽曲の進行に従って順次記憶する第2の演奏データメモリと、該第2の演奏データメモリから演奏データを順次読み出す第2の読出手段とを備え、前記第1の演奏データメモリには演奏データ中に第2の演奏データメモリ内の演奏データの読出開始を指示する読出開始信号および読出停止を指示する読出停止信号を記憶するとともに、演奏データの読み出し中に前記読出開始信号が読み出されると第2の演奏データメモリからの演奏データの読み出しを開始し、前記読出停止信号が読み出されると第2の演奏データメモリからの演奏データの読み出しを停止するようにしたことを特徴とする自動演奏装置。」
イ.実用新案法第3条第2項違反の有無
本件考案に対して当審が通知した取消理由において引用した本件出願前に頒布されたことが明らかな刊行物1(特開昭54-118224号公報、実用新案登録異議申立人が実用新案登録異議申立書において証拠方法として挙げた甲第1号証)には、「リズムのスタート/ストップデータを楽譜データとともに楽譜メモリに格納して、自動演奏時にリズムのスタート/ストップをメロデイ音と同期して行わせることのできるプログラマブル自動演奏装置」に関する考案が開示されており((1)頁右下欄16行?(2)頁左上欄1行参照。)、図面の記載を参酌して明細書の発明の詳細な説明欄の具体的な記載をみると、次のような技術開示があるということができる。
(a)楽譜メモリ9は、音高変換部2、音長一時記憶部5,及びスタート/ストップ一時記憶器8の出力信号を番地設定部10で設定された番地に記憶するものであり、音高入力部からの音高押圧信号が出力されるたびに音高コード変換部の出力信号と音長一時記憶部の出力信号と前記スタート/ストップ一時記憶器の出力信号とを所定の番地に記憶する。((2)頁左上欄11行?(3)頁左下欄19行参照)
(b)自動演奏時には、P/Aスイッチを自動演奏側にして楽譜メモリを読み出し状態にすることにより、楽譜メモリ9に記憶されている音高、音長、およびリズムスタート/ストップの各情報は、アドレスカウンタ11のカウントアップ出力に基づいて、出力すなわち読み出される。((3)頁左下欄20行?(4)頁右上欄19行参照)
(c)リズム音発生部16はリズムを発生するものであり、楽譜メモリの出力gを入力として、リズム選択スイッチ17によりリズム音発生部16のどのリズムを選択するかが決定されたものが発生される。((2)頁左下欄13行?19行参照)
(d)楽譜メモリには、音高入力部からの音高押圧信号が出力されるたびに音高コード変換部の出力信号と音長一時記憶部の出力信号とスタート/ストップー時記憶器の出力信号を所定の番地に格納され((2)頁右上欄9行?16行)、自動演奏時には、音長計数器の計数終了パルスに基づいてアドレスカウンタは1ステップカウントアップされ、楽譜メモリの1番地以下に格納されている音高、音長、リズムスタート/ストップの各内容が出力e、f、gにそれぞれ出力されるようになり、楽譜メモリ9の出力gがハイレベルにある限りリズム音は発生し、ロウレベルになるとリズム音は発生しない。((4)頁左上欄10行?右上欄19行参照)
そこで、本件考案と、刊行物1に記載された考案を対比検討する。
上記(a)(b)(d)によれば、後者においては音高コード変換部の出力信号と音長一時記憶部の出力信号に基づいてメロディが演奏されるものであり、また後者の楽譜メモリに記憶されているものに基づいて自動演奏が行われるものであるから、後者のメロディ演奏の基となる楽譜データは前者の「楽曲の1つのパートの演奏データ」に該当することは明らかであり、したがって後者の「楽譜メモリ」は、前者の「楽曲の1つのパート演奏データを、該楽曲の進行に従って順次記憶している第1の演奏データメモリ」に相当するということができる。
また、上記(b)によれば、後者はP/Aスイッチやアドレスカウンタ等によって楽譜メモリを順次読み出すものであるから、後者は前者の「該第1の演奏データメモリから演奏データを順次読み出す第1の読み出し手段」に相当するものを備えているべきことは明らかである。
また、上記(c)によれば、後者のものは、リズム音発生部がスタート信号が入力されたときからストップ信号が入力されるときまでの間選択したリズム音を発生させるものである以上、リズム音発生部にはリズム音源だけではなく選択されるリズム自体(リズムパターン)を発生させる手段も備えているべきことは当然のことであるが、刊行物1には、その具体的手段については言及がない。
したがって、前者と後者は、前者が「前記第1の演奏演奏データメモリに記憶された演奏データのパートとは異なる他のパートの演奏データを前記楽曲の進行に従って順次記憶する第2の演奏データメモリと、該第2の演奏データメモリから演奏データを順次読み出す第2の読出手段とを備え、前記第1の演奏データメモリには演奏データ中に第2の演奏データメモリ内の演奏データの読出開始を指示する読出開始信号および読出停止を指示する読出停止信号を記憶するとともに、演奏データの読み出し中に前記読出開始信号が読み出されると第2の演奏データメモリからの演奏データの読み出しを開始し、前記読出停止信号が読み出されると第2の演奏データメモリからの演奏データの読み出しを停止するようにし」ているのに対して、後者においては、前者の「第2の演奏データメモリ」と「第2の読み出し手段」について開示しておらず、第2の読み出し手段による読み出し開始と読み出し停止の態様も開示していないという点で相違する。
しかしながら、リズム音を含む伴奏音を自動的に発生させる装置において伴奏自体(伴奏パターン)を予め記憶しておいた記憶装置を読み出すことにより発生させこれによって伴奏音を発音させるようにすることは例えば実用新案登録異議申立人が異議申立書において甲第2号証として引用した特開昭59-197088号公報その他にみられるようにきわめて周知の事項であって、この周知のものを後者のものに適用することについて格別想到することが困難であるという理由も考えられないから、後者のものにおいてリズム音発生部にリズム自体(リズムパターン)を記憶しておくメモリを設けこのメモリを楽譜メモリの出力gによって読み出すようにすることは当業者ならば格別思考することなくなし得る程度のものと認められる。そして、本件明細書には、「この考案は、メロディ音、伴奏音、リズム音等の各パートの自動演奏を各々個別にオン/オフ制御することができる自動演奏装置に関する。」(発明の詳細な説明中の産業上の利用分野欄)、「各パートの自動演奏を任意のタイミングで開始/停止することができる共に、さらに、1のパートの自動演奏のオン/オフを他のパートの自動演奏の進行に応じて自動的に制御することができる自動演奏装置を提供することを目的とする。」(同考案が解決しようとする課題欄)と記載されており、リズム音も自動演奏のパートの1つと位置づけられていることを参酌すれば、後者においてリズム音発生部にメモリを設けてリズムを発生させる場合のメモリは、「前記第1の演奏データメモリに記憶された演奏データのパートとは異なる他のパートの演奏データを前記楽曲の進行に従って順次記憶する第2の演奏データメモリ」ということができ、この演奏データメモリには、演奏データを読み出すための専用の読み出し手段が必要なことは当業者にとっては自明のことと認められる。
また、上記(d)によれば、後者のものは、楽譜メモリに格納されているリズム音のスタート/ストップを指示する信号は、スタート信号によってリズム音を発生させストップ信号によってリズム音を発生させないものであるから、後者のものにおいてリズム音発生部にリズム自体を記憶したメモリを備えるものにあっては、「前記第1の演奏データメモリには演奏データ中に第2の演奏データメモリ内の演奏データの読出開始を指示する読出開始信号および読出停止を指示する読出停止信号を記憶するとともに、演奏データの読み出し中に前記読出開始信号が読み出されると第2の演奏データメモリからの演奏データの読み出しを開始し、前記読出停止信号が読み出されると第2の演奏データメモリからの演奏データの読み出しを停止するようにし」ているということができる。
そして、本件実用新案登録明細書の[考案の効果]欄に記載されている本件考案の効果はいずれも当業者の予想できるものの域を出ないものと認められるから、結局、本件考案は、刊行物1に記載された考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものと認められ、本件考案についての実用新案登録は、実用新案法第3条第2項の規定に違反してなされたものであるから、拒絶の査定をしなければならない実用新案登録出願に対してなされたのものである。
ウ.むすび
以上のとおりであるから、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第9条第7項の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の一部の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第3条第1項および第2項の規定により、上記結論のとおり決定する。
異議決定日 1999-04-15 
出願番号 実願昭63-30510 
審決分類 U 1 651・ 121- ZB (G10H)
U 1 651・ 113- ZB (G10H)
最終処分 取消  
前審関与審査官 渡邊 聡吉見 信明  
特許庁審判長 下野 和行
特許庁審判官 宮島 郁美
江頭 信彦
登録日 1996-09-13 
登録番号 実用登録第2519623号(U2519623) 
権利者 ヤマハ株式会社
静岡県浜松市中沢町10番1号
考案の名称 自動演奏装置  
代理人 渡邊 隆  
代理人 志賀 正武  
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