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審決分類 審判 全部申し立て   B23K
管理番号 1004070
異議申立番号 異議1998-74467  
総通号数
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案決定公報 
発行日 2000-04-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 1998-09-08 
確定日 1999-08-11 
異議申立件数
事件の表示 実用新案登録第2565096号「レーザマーキング装置」の請求項1ないし2に係る実用新案に対する実用新案登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。   
結論 実用新案登録第2565096号の請求項1ないし2に係る実用新案登録を取り消す。
理由 I.手続の経緯
本件実用新案登録第2565096号の請求項1及び2に係る考案は、平成5年12月3日に出願され、その後、平成9年12月5日に、その実用新案登録の設定登録がされたものである。これに対して、サンクス株式会社、ウシオ電機株式会社及び高木ますみより、それぞれ実用新案登録異議の申立があったので、当審において、当該申立の理由を検討し、実用新案登録取消理由を通知したところ、それで指定した期間内の平成11年2月6日に実用新案登録異議意見書が提出されると共に訂正請求がされ、さらに、当審において、前記訂正請求に対し訂正拒絶理由を通知したところ、それで指定した期間内の平成11年5月10日に意見書が提出された。
II.訂正の適否
1.訂正される請求項1及び2に係る考案
訂正される請求項1及び2に係る考案(以下、それぞれ「訂正第1考案」及び「訂正第2考案」という。)は、訂正明細書の実用新案登録請求の範囲の請求項1及び2に記載された次の事項により構成されるものである。
「【請求項1】移動する対象物の表面にレーザ光を照射しつつ、該レーザ光を2次元方向に走査することによって、対象物表面に文字、記号等の図形を描画するレーザマーキング装置であって、レーザ源と、レーザ源からのレーザ光を2次元方向へ偏向せしめる光学走査系と、光学走査系の偏向動作を描画のためのデータにしたがい制御する制御系と、移動する対象物の変位情報を逐次入力する手段とを具え、制御系には、逐次入力された前記変位情報ごとに、その変位情報で得られた対象物の位置変化分だけ、描画すべき図形に対応するデータを位置変化の方向に補正する補正手段が設けられ、該補正手段から得られる補正後のデータを前記描画のためのデータとして前記光学走査系の偏向動作を制御してなることを特徴とするレーザマーキング装置。
【請求項2】移動する対象物の表面にレーザ光を照射しつつ、該レーザ光を2次元方向に走査することによって、対象物表面に文字、記号等の図形を描画するレーザマーキング装置であって、レーザ源と、レーザ源からのレーザ光を2次元方向へ偏向せしめる光学走査系と、光学走査系の偏向動作を描画のためのデータにしたがい制御する制御系と、移動する対象物の変位情報を逐次入力する手段とを具え、制御系には、描画すべき図形に対応する座標データを発生する座標発生手段と、逐次入力された前記変位情報ごとに、その変位情報で得られた対象物の位置変化分だけ前記座標データを前記位置変化の方向に補正する座標補正手段とが設けられ、該座標補正手段から得られる補正座標データを前記描画のためのデータとして前記光学走査系の偏向動作を制御してなることを特徴とするレーザマーキング装置。」
2.引用刊行物
上記訂正第1及び2考案に対し、当審が前記訂正拒絶理由通知に示した刊行物1(実願昭62-131663号(実開昭64-36817号)のマイクロフィルム)、刊行物2(特公平5-79439号公報)及び刊行物3(特開平1-120349号公報)には、それぞれ以下の事項が記載されている。
[刊行物1]
2組のガルバノメータ型のオプティカルスキャナにより回転する2個のミラーを用いて、レーザ光のビームを移動する物体上の被照射体に二次元的にレーザマーキングを行う装置に関し、
一定の速度ベクトルVで移動する平面上の物体W_(2)の表面上の点P_(11)、P_(12)…、P_(21)…、に二次元的にレーザマーキングを行うには、まず物体W_(2)が静止しているときレーザマーキングを行うためにガルバノメータG_(1)およびG_(2)に与える入力信号xおよびyに、物体の移動の速度ベクトルVに等しい速度成分V_(x)およびV_(y)に対する信号V_(x)およびV_(y)を、ガルバノメータG_(1)およびG_(2)にそれぞれ加算して与えること及び、第3図にはガルバノメータG_(1)およびG_(2)に入力信号を与えて制御する制御回路(第3頁15行?第4頁4行、第3図参照)が記載されている。
[刊行物2]
レーザ光線により被加工物に孔開けをするレーザ孔開け装置に関し、
被加工物1の移動速度に比例した電圧を発生する速度検出器2、速度検出器2の出力電圧をパルス周波数に変換し出力するパルス発生器3及びパルス発生器3の信号により被加工物1への孔開けのピッチが一定となるような周波数スロープ信号を発生するスロープ発生器4を備え、スキャナミラー駆動装置10はスロープ発生器4の信号によりスキャナミラー9を駆動してその角度を制御することができ、パルスレーザ発振器11より出力されたパルスレーザ光12を光学系を介して被加工物1上に集光照射する際に、パルスレーザ光12の焦点位置を被加工物の移動速度と同じ方向へ移動させること、そしてパルスレーザ光12の焦点位置の移動速度を被加工物1の移動速度と同じにすることにより、被加工物1には真円形状の孔を開けることができること(第5欄12行?第6欄26行、第1及び2図参照)が記載されている。
[刊行物3]
フラットベッド型ラスタ走査レーザホトプロッタに関し、
レザー光を直線移動台7上に載置された感光材上で走査し、印刷配線板の回路パターンを描画するホトプロッタであって、直線移動台7の両側に配置され直線移動台7の移動量を計測する2つの光電式リニアエンコーダ8と、レーザ発振器1と、レーザ発振器1から出射したレーザ光をスイッチングする電気光学変調器2と、該レーザ光を直線移動台7の移動方向と直角方向に走査する回転多面体鏡4と、直線移動台の移動方向にレーザ光を偏向させる音響光学偏向器3と、描画タイミングを調整する描画時刻制御部12と、前記2つの光電式リニアエンコーダ8に接続されて前記直線移動体のヨーイング運動誤差に起因する描画点の移動量と等しくレーザ光スポット6を移動させるレーザ偏向角と描画時刻調整時間を演算して前記音響光学偏向器3と描画時刻制御部12とを制御する演算処理部11とを含んで構成され、前記2つの光電式リニアエンコーダ8により計測される直線移動台の両端の移動量により演算処理部11で描画点位置の位置補正量を演算し、光学偏光器2及び3により描画位置補正を行うこと(第1頁右下欄11行?第2頁左上欄4行、第2頁左上欄15行?同頁右下欄19行及び第1?3図参照)が記載されている。
3.対比・判断
.訂正第1考案について
訂正第1考案と上記刊行物1に記載された考案とを比較すると、刊行物1に記載の「物体」、
「ガルバノメータ型のオプティカルスキャナにより回転する2個のミラー」、「制御回路」は、それぞれ訂正第1考案の「対象物」、「レーザ源からのレーザ光を2次元方向へ偏向せしめる光学走査系」、「制御系」に相当し、
また、刊行物1に記載されたものは、「物体W_(2)が静止しているときレーザマーキングを行うためにガルバ人メータG_(1)およびG_(2)に与える入力信号xおよびyに、物体の移動の速度ベクトルVに等しい速度成分V_(x)およびV_(y)に対する信号v_(x)およびv_(y)を、ガルバノメータG_(1)およびG_(2)にそれぞれ加算して与えている」という記載から、入力信号xおよびyは、レーザ光により描画される図形に対応するデータであり、また、物体の移動の速度ベクトルVに等しい速度成分V_(x)およびV_(y)に対する信号v_(x)およびv_(y)は、移動する物体の変位情報であるとともに、物体の単位時間当たりの位置変化分に相当するものであるから、刊行物1に記載されたものも、移動する物体の変位情報で得られた物体の位置変化分だけ、描画すべき図形に対応するデータを位置変化の方向に補正する補正手段を有することは明らかであることから、
両者は、移動する対象物の表面にレーザ光を照射しつつ、該レーザ光を2次元方向に走査することによって、対象物表面に図形を描画するレーザマーキング装置であって、レーザ源と、レーザ源からのレーザ光を2次元方向へ偏向せしめる光学走査系と、光学走査系の偏向動作を描画のためのデータにしたがい制御する制御系とを具え、制御系には、移動する対象物の変位情報で得られた対象物の位置変化分だけ、描画すべき図形に対応するデータを位置変化の方向に補正する補正手段が設けられ、該補正手段から得られる補正後のデータを前記描画のためのデータとして前記光学走査系の偏向動作を制御してなる点で一致し、
描画すべき図形に対応するデータを位置変化の方向に補正するために、訂正第1考案では、移動する対象物の逐次入力された変位情報を用いているのに対し、刊行物1に記載されたものでは、一定の速度ベクトルに等しい速度成分に対する信号を変位情報として用いている点で相違する。
そこで、上記相違点について検討すると、
上記刊行物2には、レーザ光線により被加工物に孔開けをするレーザ孔開け装置において、被加工物1の移動速度を速度検出器2により検出し、その検出された移動速度にしたがって、スキャナミラー9を駆動してその角度を制御し、パルスレーザ発振器11より出力されたパルスレーザ光12を光学系を介して被加工物1上に集光照射する際に、パルスレーザ光12の焦点位置を被加工物の移動速度と同じ方向へ移動させること、そしてパルスレーザ光12の焦点位置の移動速度を被加工物1の移動速度と同じにすることにより、被加工物1には真円形状の孔を開けることができることが記載され、ここで、速度検出器2により検出される被加工物1の移動速度は、被加工物1の変位情報であり、また、パルスレーザ光12の焦点位置を被加工物1の移動速度と同じ速度で移動させるものであることより、上記速度検出器2による被加工物1の移動速度の検出は、当然、逐次行われるものである。
また、上記刊行物3には、レザー光を直線移動台7上に載置された感光材上で走査し、印刷配線板の回路パターンを描画するホトプロッタにおいて、光電式リニアエンコーダ8により計測されるヨーイング運動誤差に起因する直線移動台の両端の移動量により演算処理部11で描画点位置の位置補正量を演算し、光学偏光器2及び3により描画位置補正を行うことが記載され、ここで、光電式リニアエンコーダ8により計測される直線移動台の両端の移動量は、レーザ光が走査される感光材の変位情報であり、また、直線移動台のヨーイング運動誤差は常時発生しているものであるから、このヨーイング運動誤差に起因する直線移動台の両端の移動量の計測は、光電式リニアエンコーダ8により、当然、逐次行われるものである。
したがって、刊行物2及び3には、いずれもレーザ光を移動する対象物の表面に照射しつつ、該レーザ光によって対象物表面の加工を行うレーザ加工装置において、レーザ光の照射位置に対応するデータを移動する対象物の位置変化の方向に補正するために、移動する対象物の逐次入力された変位情報を用いる技術が記載されおり、そして、刊行物2及び3に記載されたものも、対象物上の正確な位置にレーザ光を照射でき、また、対象物の移動速度が変動した場合においてもレーザ光の照射位置に係わるデータを補正することで該変動に係わらず適正な加工ができるという訂正第1考案と同様な作用効果を奏するものである。そして、刊行物2及び3に記載されたものと刊行物1に記載されたものは、レーザ光を移動する対象物の表面に照射しつつ、該レーザ光によって対象物表面の加工を行うという同一の技術分野に属するものであるから、刊行物2及び3に記載された技術を刊行物1に記載されたものに適用して、訂正第1考案のように構成することに格別の困難性は認められない。
そうすると、訂正第1考案は、上記刊行物1乃至3記載された考案に基づいて当業者が極めて容易に考案をすることができたものである。
・訂正第2考案について
訂正第2考案は、上記訂正第1考案において、描画すべき図形に対応する座標データを発生する座標発生手段を設け、補正手段により補正されるデータを前記座標データとするように構成を変更するものであるから、訂正第2考案と上記刊行物1に記載された考案とを比較すると、上記訂正第1考案との対比・判断で指摘した相違点のほかに、訂正第2考案では、描画すべき図形に対応する座標データを発生する座標発生手段を設け、補正手段により補正されるデータを前記座標データとしているのに対し、刊行物1に記載されたものでは、そのような座標発生手段について明記されていない点で一応相違し、その他の点では一致している。
そこで、上記各相違点について検討すると、
上記訂正第1考案との対比・判断で指摘した相違点については、そこでの検討と同様に、上記刊行物2及び3に記載された技術を刊行物1に記載されたものに適用して、訂正第2考案のように構成することに格別の困難性は認められない。
そして、上記座標発生手段についての相違点については、刊行物1に記載されたものにおいても、描画される図形に対応した入力信号xおよびy並びに、それら入力信号に加算される物体の移動の速度ベクトルVに等しい速度成分V_(x)およびV_(y)に対する信号v_(x)およびv_(y)は、それぞれX軸座標及びY軸座標に対応する値として与えられており、そしてこれらの値は、最終的には、描画される図形に対応する座標データに対応して、各ガルバノメータG_(1)及びG_(2)の回転変位データに変換されることは明らかなことより、刊行物1には、描画すべき図形に対応する座標データを発生する座標発生手段を設け、補正手段により補正されるデータを前記座標データとすることについて実質的に示されていることから、刊行物1に記載されたものと訂正第2考案とは、描画すべき図形に対応する座標データを発生する座標発生手段を設け、補正手段により補正されるデータを前記座標データとしている点において実質的に差異はない。
そうすると、訂正第2考案は、上記刊行物1乃至3に記載された考案に基づいて当業者が極めて容易に考案をすることができたものである。
なお、実用新案権者は、平成11年5月10日付け意見書において、刊行物1に記載されたガルバノメータG_(1)およびG_(2)の回転速度xおよびyを物体のX方向およびY方向の移動速度(VxおよびVy)に追従させようとするものであって、結果的に位置を補正するものであるとしても、その補正する技術的手段は訂正各考案とは、原理原則において全く異なること及び、刊行物1には、訂正各考案における描画のためのデータにしたがい制御することの記載も示唆もない旨の主張しているが、刊行物1に記載されたものも、レーザ光により描画される図形に対応する入力信号xおよびyを、物体の移動の速度ベクトルVに等しい速度成分V_(x)およびV_(y)に対する信号v_(x)およびv_(y)により、物体の位置変化分に対応して補正し、ガルバノメータG_(1)及びG_(2)の回転変位を制御するものであるから、刊行物1における光学走査系であるガルバノメータGl及びG2は、当然、描画のためのデータにしたがい制御されるものである。一方訂正各考案の実施例においても、運搬台(41)の移動距離に応じて発生されるエンコーダパルスPの周期Tと、その1周期T内に対象物(81)が移動する距離dとにより、対象物の移動速度にあたるd/Tを求めて、該移動速度に追従するようにレーザ光照射位置の補正を行っている(本件特許公報段落【0015】?【0019】及び【数1】参照)こと、また、刊行物1に記載されたものと同様に一定速度で移動する対象物の表面に図形を描画する実施例も示されているなど、刊行物1に記載されたものと訂正各考案のものとは、格別な差異があるものではなく、実用新案権者の主張は認められない。
4.むすび
以上のとおりであるから、訂正第1及び2考案は、上記刊行物1乃至3に記載された考案に基づいて当業者が極めて容易に考案をすることができたものであり、実用新案法第3条第2項の規定により本件実用新案登録出願の際独立して実用新案登録を受けることができないものであるから、この訂正は、平成6年法律第116号附則第9条第2項において準用する特許法第120条の4第3項でさらに準用する同第126条4項の訂正の規定が平成6年法律第116号附則第6条第1項の規定により「なお従前の例による」とされることより適用される平成5年改正特許法第126条第3項の規定に適合しないもので、当該訂正は認められない。
III.実用新案登録異議申立について
1.本件考案
本件実用新案登録第2565096号の請求項1及び2に係る考案は、その実用新案登録明細書及び図面の記載から、その実用新案登録請求の範囲の請求項1及び2に記載された次の事項により構成されるものである。
「【請求項1】移動する対象物の表面にレーザ光を照射しつつ、該レーザ光を2次元方向に走査することによって、対象物表面に文字、記号等の図形を描画するレーザマーキング装置であって、レーザ源と、レーザ源からのレーザ光を2次元方向へ偏向せしめる光学走査系と、光学走査系の動作を制御する制御系と、移動する対象物の変位情報を逐次入力する手段とを具え、制御系には、逐次入力された前記変位情報に基づいて、対象物の位置変化分だけ、前記レーザ光の描画のためのデータを位置変化の方向に補正する座標補正手段が設けられ、該座標補正手段から得られる補正データを光学走査系へ供給すべくなしたことを特徴とするレーザマーキング装置。
【請求項2】移動する対象物の表面にレーザ光を照射しつつ、該レーザ光を2次元方向に走査することによって、対象物表面に文字、記号等の図形を描画するレーザマーキング装置であって、レーザ源と、レーザ源からのレーザ光を2次元方向へ偏向せしめる光学走査系と、光学走査系の動作を制御する制御系と、移動する対象物の変位情報を逐次入力する手段とを具え、制御系には、描画すべき図形に対応する座標データを発生する座標発生手段と、逐次入力された前記変位情報に基づいて、対象物の位置変化分だけ座標データを前記位置変化の方向に補正する座標補正手段とが設けられ、該座標補正手段から得られる補正座標データを光学走査系へ供給すべくなしたことを特徴とするレーザマーキング装置。」
2.引用刊行物
上記本件考案に対し、当審が取消理由通知に示した刊行物1乃至3には、上記「II.訂正の適否」における「2.引用刊行物」の項に記載のとおりの事項が記載されている。
3.対比・判断
・本件第1考案について
本件第1考案と上記刊行物1に記載された考案とを比較すると、上記「II.訂正の適否」での訂正第1考案との比較と同様に、両者は、移動する対象物の表面にレーザ光を照射しつつ、該レーザ光を2次元方向に走査することによって、対象物表面に図形を描画するレーザマーキング装置であって、レーザ源と、レーザ源からのレーザ光を2次元方向へ偏向せしめる光学走査系と、光学走査系の動作を制御する制御系とを具え、制御系には移動する対象物の変位情報に基づいて、対象物の位置変化分だけ、前記レーザ光の描画のためのデータを前記位置変化の方向に補正する補正手段が設けられ、該補正手段から得られる補正データを光学走査系へ供給すべくなした点で一致し、以下の各点で相違する。
a.レーザ光の描画のためのデータを位置変化の方向に補正するために、本件第1考案では、移動する対象物の逐次入力された変位情報を用いているのに対し、刊行物1に記載されたものでは、一定の速度ベクトルに等しい速度成分に対する信号を変位情報として用いている点。
b.レーザ光の描画のためのデータを位置変化の方向に補正する補正手段を、本件第1考案においては、座標補正手段としているのに対し、刊行物1に記載されたものでは、座標を補正することについての記載がない点。
そこで、上記各相違点について検討すると、
相違点aについては、上記「II.訂正の適否」での訂正第1考案との対比・判断における理由と同様な理由により、上記刊行物2及び3に記載された技術を刊行物1に記載されたものに適用して本件第1考案のように構成することに格別の困難性は認められない。
相違点bについては、上記「II.訂正の適否」での訂正第2考案との対比・判断において述べたように、刊行物1には、補正手段により補正されるデータを前記座標データとすることについて実質的に示されていることから、刊行物1に記載されたものと本件第1考案とは、レーザ光の描画のためのデータを位置変化の方向に補正する補正手段を、座標補正手段としている点において実質的に差異はない。
そうすると、本件第1考案は、上記刊行物1乃至3記載された考案に基づいて当業者が極めて容易に考案をすることができたものである。
・本件第2考案について
本件第2考案は、上記刊行物1に記載された考案と比較すると、上記本件第1考案との対比・判断で指摘した相違点aのほかに、以下の点で一応相違し、その他の点では一致している。
c.本件第2考案では、描画すべき図形に対応する座標データを発生する座標発生手段を設け、補正手段により補正されるデータを前記座標データとしているのに対し、刊行物1に記載されたものでは、そのような座標発生手段について明記されていない点。
そこで、上記各相違点について検討すると、
相違点aについては、上記「II.訂正の適否」での訂正第1考案との対比・判断における理由と同様な理由により、上記刊行物2及び3に記載された技術を刊行物1に記載されたものに適用して本件第2考案のように構成することに格別の困難性は認められない。
相違点cについては、上記「II.訂正の適否」での訂正第2考案との対比・判断における理由と同様な理由により、刊行物1に記載されたものと本件第2考案とは、描画すべき図形に対応する座標データを発生する座標発生手段を設け、補正手段により補正されるデータを前記座標データとしている点において実質的に差異はない。
そうすると、本件第2考案は、上記刊行物1乃至3記載された考案に基づいて当業者が極めて容易に考案をすることができたものである。
4.むすび
以上のとおりであるから、本件第1及び2考案は、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができなく、本件第1及び2考案に係る実用新案登録は、拒絶の査定をしなければならない実用新案登録に対してされたものである。
よって、本件第1及び2考案に係る実用新案登録は、平成6年法律第116号附則第9条第7項の規定に基づき適用される、平成7年政令205号第3条第1項及び第2項の規定により、取り消されるべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
異議決定日 1999-06-16 
出願番号 実願平5-64800 
審決分類 U 1 651・ 121- ZB (B23K)
最終処分 取消    
前審関与審査官 金 公彦  
特許庁審判長 酒井 雅英
特許庁審判官 鳥居 稔
清水 英雄
登録日 1997-12-05 
登録番号 実用登録第2565096号(U2565096) 
権利者 株式会社キーエンス
大阪府大阪市東淀川区東中島1丁目3番14号
考案の名称 レーザマーキング装置  
代理人 川崎 勝弘  
代理人 名越 秀夫  
代理人 長澤 俊一郎  
代理人 飯高 勉  
代理人 生田 哲郎  

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