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審決分類 審判 全部申し立て   H01G
管理番号 1004095
異議申立番号 異議1998-76274  
総通号数
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案決定公報 
発行日 2000-04-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 1998-12-25 
確定日 1999-09-08 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 実用新案登録第2576022号「チップ型アルミ電解コンデンサ」の実用新案に対する実用新案登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。   
結論 訂正を認める。 実用新案登録第2576022号の実用新案登録を維持する。
理由 1.手続の経緯
本件実用新案登録第2576022号に係る考案についての出願は、平成3年9月4日に実用新案登録出願され、平成10年4月17日にその設定登録がなされ、その後、その実用新案登録について、小林恵子及び日本ケミコン株式会社より実用新案登録異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成11年6月18日に訂正請求がなされたものである。
2.訂正の適否
ア.訂正明細書の請求項1に係る考案
訂正明細書の請求項1に係る考案(以下、本件考案という)は、次のとおりのものである。
「コンデンサ素子より導出した引き出しリードを封口体に設けたリード穴に挿通し、円筒状金属ケースに収納してなる電解コンデンサと、該コンデンサのリードを引き出した端面に当接するように配設した絶縁板とで構成し、上記金属ケースの内部底面部に肉薄部分となる溝を形成し、防爆構造を備えたチップ型アルミ電解コンデンサにおいて、
上記金属ケースの外部底面部をフラットに形成し、該底面部にナイロン系の絶縁性樹脂を塗布し、その上に定格、極性を表示したことを特徴とするチップ型アルミ電解コンデンサ。」
なお、訂正明細書の実用新案登録請求の範囲の請求項1には「上記金属ケースの内部底面部をフラットに形成し、」と記載されているが、訂正請求書の「(3)訂正の要旨」の欄の記載及び同「(4)請求の原因」の欄の記載並びに登録明細書の実用新案登録請求の範囲の記載からみて、当該「内部底面部」は「外部底面部」の誤記であることが明らかであるので、訂正明細書の請求項1に係る考案を上記のように認定した。
イ.訂正の目的の適否及び拡張・変更の存否
上記訂正は、実用新案登録請求の範囲の減縮に該当し、実質的に実用新案登録請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
ウ.独立登録要件の判断
a.引用刊行物
当審は、本件考案は下記刊行物1ないし刊行物3に記載された考案に基いて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるとして取消理由を通知したが、当該取消理由で引用した刊行物1ないし刊行物3には次の事項が記載されている。
刊行物1(実願昭59-87690号(実開昭61-4421号)のマイクロフィルム)
・チップ型アルミ電解コンデンサに係るものであること、(明細書第1頁第19行)
・構造が簡単でしかも製造の容易なチップ型アルミ電解コンデンサを得ることを目的としていること、(同書第4頁第1?3行)
・第1図Aにおいて、1は、リード線2、3を同一端面に有する円筒型アルミ電解コンデンサであり、そのケース下端局面には封口用のゴム栓を加締する際に生じた加締くびれ4が存在すること、(明細書第4頁第18行?第5頁第2行)
・ベース5はモールド成型体であり、上面にアルミ電解コンデンサ1のケース下端を係合させる円形凹入部6とその局面に設けられ前記加締くびれ4に係合するロック爪7とを有し、第1図B、Cのように凹入部底面にはリード線挿通用の透孔8、9が設けられており、さらに、ベース5の下面には透孔8、9を連ねる線上に位置して各透孔から最寄りのベース縁部におよぶ溝10、11が設けられていること、(同書第5頁第3?11行)
・円筒型アルミ電解コンデンサIのリード線2、3をベース5の透孔8、9、に挿通し、コンデンサ1をベース5の凹入部に押込めば、ロック爪7が加締くびれ4に係合し、両者は結合されること、(同書第5頁第12?15行)
・その後、各リード線2、3を溝10、11の幅と深さに対応する幅と厚さにたたきつぶし、これを溝10、11に沿って折曲げ、ベース5からはみ出した部分を切断すること、(同書第5頁第19行?第6頁第2行)
・リード線2、3の陽、陰極判別のためには、第1図Aのようにケース頂面に印刷等によりマーク付けするか、ベース5の隅角を切落してマーク付けすること、(同書第6頁第3?6行)
・第1図Aには、陽、陰極判別のためのマークと並んで「50V」なるマークが付されている様子が示されていること、
刊行物2(実願昭57-153104号(実開昭59-56735号)のマイクロフィルム)
・防爆効率の極めて良好なコンデンサケースを提供しようとするものであること、(明細書第1頁第13?14行)
・有底筒状に形成したアルミニウム製のケースの底板の内側面に、一点において相互に交叉する複数個の溝を形成した溝底を肉薄にすると共に上記複数個の溝の交叉部分を底板の中心部分から左右或いは前後いずれか一方に偏位した位置に設けるように構成したこと、(明細書第1頁第14?20行)
・ケースの底部に防爆用の溝を形成することは従来周知であるが、従来の防爆溝は、複数個の溝の交叉部分をケース底部の中心部分に集中させており、防爆機能において製品にバラツキの出る欠点があったこと、(同書第2頁第2?10行)
刊行物3(特開平2-226711号公報)
・アルミニウム板からなる有底円筒状の容器本体の内面又は内外面に特定の合成樹脂層を設けた電子部品用外装容器に係るものであること、(公報第1頁右下欄第9?11行)
・当該電子部品用外装容器は、チップ型アルミ電解コンデンサーに好適に使用できること、(同第1頁右下欄第12?15行)
・外装容器として天面部の絶縁性又は天面部の印刷が要求される場合には、容器の外面全面に合成樹脂を設ける必要があること、その場合にはアルミニウム板に化成処理層を介してポリアミド樹脂層を設けた積層板を絞り加工して容器とすればよいこと、(同第3頁左下欄第1?9行)
・ポリアミド樹脂層としては、6-ナイロン、66-ナイロン等が挙げらること、(同第3頁左下欄第10?15行)
b.対比・判断
本件考案(以下、本項において前者という)と、上記刊行物1に記載された考案(以下、本項において後者という)とを対比すると、後者のリード線は、封口体であるゴム栓を通して外部に引き出されており、また引き出されたリード線は、モールド成形体であるベースに形成した溝に沿って折曲げられているから、両者は、コンデンサ素子より導出した引き出しリードを封口体に設けたリード穴に挿通し、円筒状金属ケースに収納してなる電解コンデンサと、該コンデンサのリードを引き出した端面に当接するように配設した絶縁体とで構成し、金属ケースの外部底面部に定格、極性を表示したチップ型アルミ電解コンデンサである点で一致し、
▲1▼前者がチップ型アルミ電解コンデンサを防爆構造とする場合に、自動装着機によるプリント基板への実装時に吸着不良が生じないようにし、かつプリント基板への装着後の検査効率を容易にしようとすることを目的とする考案であるのに対し、後者は構造が簡単でしかも製造の容易なチップ型アルミ電解コンデンサを得ることを目的とする考案である点、
▲2▼リードを引き出した端面に当接するように配設した絶縁体が、前者では絶縁板であるのに対し、後者ではアルミ電解コンデンサのケース下端を係合させる円形凹入部とその周面に設けられ前記加締くびれに係合するロック爪を有するベースである点、
▲3▼前者が金属ケースの内部底面部に肉薄部分となる溝を形成し、防爆構造を備えているのに対し、後者は防爆構造を備えていない点、
▲4▼前者が金属ケースの外部底面部にナイロン系の絶縁性樹脂を塗布し、その上に定格、極性を表示しているのに対し、後者は金属ケースの外部底面部に定格、極性の表示があるものの、ナイロン系の絶縁性樹脂を塗布した上に表示することの記載がない点
で相違する。
そこで検討するに、相違点▲1▼、すなわち本件考案が課題としている点に関しては、上記刊行物2及び刊行物3のいずれにも記載がない。また、相違点▲4▼に関して、刊行物3には、チップ型アルミ電解コンデンサーの外装容器の天面部の印刷が要求される場合には、容器の外面にナイロン系の合成樹脂層を設けることが記載されているが、刊行物3におけるナイロン系の合成樹脂層は、アルミニウム板を絞り加工してコンデンサ用の容器とする前に、化成処理層を介してポリアミド樹脂層を設けた積層板とするものであり、金属ケースの外部底面部にナイロン系の絶縁性樹脂を塗布するものではない。したがって、刊行物2に金属ケースの内部底面部に肉薄部分となる溝を形成して防爆構造とする点の開示があるとしても、本件考案が課題としている点は刊行物1ないし刊行物3のいずれにも開示がなく、かつ、本件考案と、刊行物1に記載された考案に刊行物2及び刊行物3に記載された考案を組み合せた考案とを対比すると、両者には依然として相違点が存在するものと認められる。
したがって、本件考案は、上記刊行物1ないし刊行物3に記載された考案に基いて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであると認めることはできないから、上記取消理由によっては、本件考案が実用新案登録出願の際独立して実用新案登録を受けることができない考案であるとすることはできず、また、他に本件考案が実用新案登録出願の際独立して実用新案登録を受けることができない考案であるとする理由を発見しない。エ.「訂正の適否」のむすび
以上のとおりであるから、上記訂正請求は、実用新案法(平成6年12月14日法律第116号)の付則第2項で準用する特許法第120条の4第2項及び同条第3項で準用する同法第126条第2乃至4項の規定に適合するので、当該訂正を認める。
3.実用新案登録異議申立てについて
ア.申立ての理由の概要
申立人小林恵子は、本件考案は、甲第1号証(実開昭61-4421号公報)、甲第2号証(実開昭59-56735号公報)及び甲第3号証(特開平1-175222号公報)に記載された考案に基いて、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、実用新案法第3条第2項の規定に違反してなされたものであり、実用新案登録を取り消すべき旨主張している。
申立人日本ケミコン株式会社は、本件考案は、甲第1号証(特開平2-226711号公報)及び甲第2号証(特開昭60-245106号公報)に記載された考案に基いて、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、実用新案法第3条第2項の規定に違反してなされたものであり、実用新案登録を取り消すべき旨主張している。イ.申立人が提出した甲各号証の記載事項
申立人小林恵子の提出した甲第1号証は上記刊行物1に係る実用新案登録出願の実用新案出願公開公報である。
申立人小林恵子の提出した甲第2号証は上記刊行物2に係る実用新案登録出願の実用新案出願公開公報である。
申立人小林恵子の提出した甲第3号証には、以下の点が記載されている。
・有底円筒形状のアルミニウムケースの外側にポリアミド樹脂層を被覆した容器であって、特に電気絶縁性に優れたコンデンサー外装容器及びその製造方法に関するものであること、(第1頁右下欄第11?14行)
・アルミニウム板とポリアミド樹脂層からなる積層板を用いて絞り加工後、打ち抜き加工を行なうとその切断機構のために外装容器の開口端部のアルミニウムが一部露出した状態となることが避けられず、このような容器を用いたコンデンサーは配線基盤等に実装後、巻締め部分の先端部で絶縁不良になり易いという問題があったこと、巻締め先端部でのアルミニウム露出量を、変形長さを大きくし、適切な曲率半径を有する押さえゴマを使用することにより減少させる提案をしたが、変形長さを大きくできない場合や、曲率半径が小さい押さえゴマを使用すると、絶縁性が不足したり巻締めが充分になされないという問題があったこと、(第2頁左上欄第13行?同頁右上欄第14行)
・本発明は、外装容器を特定形状とすることにより、変形長さを減少させても絶縁性が良好なコンデンサーが得られる外装容器及びその製造方法を見出したものであること、(第2頁右上欄第16?19行)
・アルミニウムケースの外側面には、ポリアミド樹脂層が被覆してあり、ポリアミド樹脂としては、例えば6ナイロン、6-6ナイロン、ナイロン系ポリマーアロイ、ナイロン系エラストマー及び6-12ナイロン共重合体等が好適に使用できること、(第2頁左下欄第9?15行)
・アルミニウム板にポリアミド樹脂層を被覆する方法としては、アルミニウム板表面に各種接着剤を塗布した後、あらかじめ製膜したポリアミド樹脂フィルムを同時に積層する方法や、押出機により樹脂を溶融押出して積層する方法が生産性が良好で好ましいこと、(第2頁右下欄第5?11行)
申立人日本ケミコン株式会社の提出した甲第1号証は上記刊行物3である。
申立人日本ケミコン株式会社の提出した甲第2号証には、以下の点が記載されている。・アルミ電解コンデンサ、さらに詳しくいえば、チップ形アルミ電解コンデンサに関するものであること、(第1頁右下欄第1?3行)
・従来のチップ形アルミ電解コンデンサは、コンデンサ素子、金属ケース等の内部ユニットを外装樹脂で樹脂モールドしていたが、小形、軽量化する際樹脂成形の肉厚を薄くすることが望ましいが、肉厚を薄くすると樹脂成形注入時において流入圧力により樹脂が動くため内部ユニットのケース表面が露出する問題があり、また、全面を樹脂モールドしているため防爆弁構造が不可能であったこと、(第1頁右下欄第5行?第2頁左上欄第13行)
・本発明は従来の欠点を除去し、封口材を含むコンデンサユニットの全長の1/3?2/3のコンデンサユニットの上部周囲に均一な薄い肉厚樹脂モールドを施して、小型化と爆発に対する安全化を図ることを目的とすること、(第2頁左上欄第15?19行)
・電極箔と電解紙を巻回してなるコンデンサ素子9を電解液とともにケース底部に防爆弁10を設けた有底金属ケース11に収納し、封口材12で封口し、この封口材12を貫通するようにコンデンサ素子9から引き出した陽極リード線13、陰極リード線14を引出してコンデンサユニットを構成し、樹脂モールド成型金型でコンデンサユニットのケース底部全長寸法の約1/2?1/3部分と外部電極となるリード線13、14部をチャックしてこの部分に樹脂が囲りこまないように固定して、残りのコンデンサユニットの部分に樹脂を流し込んで樹脂モールド層を形成し、成形後、樹脂モールド層より外側に引出されたリード線13、14を樹脂モールド層の表面に沿って折曲し外部電極とすること、(第2頁右上欄第16行?同頁左下欄第11行)
・コンデンサユニット本体を成形金型でチャックするためコンデンサユニットと成形金型のセンターを容易に合わすことができ、樹脂肉厚を0.5mm以下にしかも安定した形状に成形でき、封口部を樹脂成形にて固定しているため熱ストレス、機械的強度も強く、さらに防爆弁を有することから安全性が確保でき、片側だけ樹脂モールド層成形のため寸法的に小形で有利である、という効果を生ずること、(第2頁左下欄第19行?同頁右下欄第10行)
・第2図には、防爆弁10として有底金属ケースの内部底面に溝を形成し、外部底面はフラットである様子が示されていること、
ウ.判断
a.申立人小林恵子の申立理由について
甲第1号証及び甲第2号証は上記刊行物1及び刊行物2に係る実用新案出願公開公報であり、甲第3号証には、上記2.ウ.で示した上記刊行物3と同様に、本件考案の課題について及び金属ケースの外部底面部にナイロン系の絶縁性樹脂を塗布する点について記載がなく、さらに、ナイロン系の絶縁性樹脂を塗布した上に定格、極性を表示することについても記載がない。
したがって、上記2.ウ.で示したと同様の理由により、本件考案が甲第1号証ないし甲第3号証に記載された考案に基いて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものと認めることはできない。
b.申立人日本ケミコン株式会社の申立理由について
本件考案(以下、本項において前者という)と、甲第2号証に記載された考案(以下、本項において後者という)とを対比すると、両者は、コンデンサ素子より導出した引き出しリードを封口体に設けたリード穴に挿通し、円筒状金属ケースに収納してなる電解コンデンサの金属ケースの内部底面部に肉薄部分となる溝を形成し、防爆構造を備えたチップ型アルミ電解コンデンサにおいて、金属ケースの外部底面部をフラットに形成したチップ型アルミ電解コンデンサである点で一致し、
▲1▼前者がチップ型アルミ電解コンデンサを防爆構造とする場合に、自動装着機によるプリント基板への実装時に吸着不良が生じないようにし、かつプリント基板への装着後の検査効率を容易にしようとすることを目的とする考案であるのに対し、後者はチップ型アルミ電解コンデンサの小型化と爆発に対する安全化を図ることを目的とする考案である点、
▲2▼前者がリードを引き出した端面に当接するように絶縁板を配設しているのに対し、後者はケース上部と封口体の周囲をリード線を外部に引出しつつ樹脂モールドしている点、
▲3▼前者が金属ケースの外部底面部にナイロン系の絶縁性樹脂を塗布し、その上に定格、極性を表示しているのに対し、後者はこれについて記載がない点
で相違する。
そこで検討するに、相違点▲1▼、すなわち本件考案が課題としている点に関しては甲第1号証にも記載がなく、また、相違点▲2▼及び▲3▼についても甲第1号証に記載はない。甲第1号証におけるナイロン系の合成樹脂層は、アルミニウム板を絞り加工してコンデンサ用の容器とする前に、化成処理層を介してポリアミド樹脂層を設けた積層板とするものであり、容器にナイロン系の絶縁性樹脂を塗布するものではない。したがって、本件考案が課題としている点は甲第1号証及び甲第2号証のいずれにも開示がなく、かつ、本件考案と、甲第2号証に記載された考案に甲第1号証に記載された考案を組み合せた考案とを対比すると、両者には依然として相違点が存在するものと認められる。
したがって、本件考案は、甲第1号証及び甲第2号証に記載された考案に基いて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるとは認められない。
4.むすび
以上のとおりであるから、実用新案登録異議申立ての理由及び証拠によっては本件請求項1に係る実用新案登録を取り消すことはできない。
また、他に本件実用新案登録を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
発明の名称 (54)【考案の名称】
チップ型アルミ電解コンデンサ
(57)【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】 コンデンサ素子より導出した引き出しリードを封口体に設けたリード穴に挿通し、円筒状金属ケースに収納してなる電解コンデンサと、該コンデンサのリードを引き出した端面に当接するように配設した絶縁板とで構成し、上記金属ケースの内部底面部に肉薄部分となる溝を形成し、防爆構造を備えたチップ型アルミ電解コンデンサにおいて、
上記金属ケースの内部底面部をフラットに形成し、該底面部にナイロン系の絶縁性樹脂を塗布し、その上に定格、極性を表示したことを特徴とするチップ型アルミ電解コンデンサ。
【考案の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本考案は自動装着装置にて基板に装着され、リフロ一半田付け装置によって基板に接着固定してなるチップ型アルミ電解コンデンサに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般にアルミ電解コンデンサの防爆装置は、図2のように該コンデンサのケース3外部底面に各種形状の肉薄部分の溝2を設けることによって構成され、該アルミ電解コンデンサに異常が生じ、内圧上昇した場合にケース3の肉薄部分が割れることで内部ガスを逃がし電解コンデンサが爆発することを未然に防止する構造が実用化されている。
【0003】
【考案が解決しようとする課題】
電解コンデンサは電子機器の高密度化および電子部品のチップ化により表面実装形状への進展が計られ、表面実装型アルミ電解コンデンサのサイズの拡大要求が高まっている。ところが、現状の表面実装型アルミ電解コンデンサは一般にサイズの小さい小形品が実用されているため、コンデンサに異常が生じ内圧の上昇による破壊が起こってもその破壊力が小さいので、一般に防爆弁が付けられていない。
【0004】
しかし近年の部品の表面実装化の応用拡大により、表面実装型アルミ電解コンデンサのサイズ(8φ以上)拡大は不可欠となる。ところが、このサイズのコンデンサに異常が生じると内圧上昇による破壊力が大きいため、アルミケース外部底面に各種形状の肉薄部分の溝を設け防爆構造としているが、プリント基板への実装に係る自動装着機は製品吸着ヘッドが図4のようにコンデンサの外部底面を吸着するため、ケース底面の肉薄部分の溝によってエアー漏れが起こり吸着不良となり、吸着率を落とす原因となっている。また表示文字を図3のようにケース底に印刷すると文字の欠けを生じる。したがって、ケース側面に表示位置を変更しているが、その後の検査が非常に困難であり、効率が悪い状況にある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本考案は上記の問題を解決するため、コンデンサ素子より導出した引き出しリードを封口体に設けたリード穴に挿通し、円筒状金属ケースに収納してなる電解コンデンサと、該コンデンサのリードを引き出した端面に当接するよう配設した絶縁板とで構成し、上記金属ケースの内部底面部に肉薄部分となる溝を形成し、防爆構造を備えたチップ型アルミ電解コンデンサにおいて、
上記金属ケースの外部底面部をフラットに形成し、該底面部にナイロン系の絶縁樹脂を塗布し、その上に定格、極性を表示したことを特徴とするチップ型アルミ電解コンデンサである。
【0006】
【作用】
本考案はチップ型アルミ電解コンデンサにおける電解コンデンサのケース内部底面部に肉薄部分の防爆機能部を設けているので、ケース外部底面が平面となる。したがって、自動装着機の吸着ヘッドの吸着エラーを減少させることができ、かつ防爆弁を装備しているため、異常が生じたとき電解コンデンサの破裂を防止することも可能となる。また、ケース外部底面がフラットで、その上に樹脂が塗布されているため、定格、極性などの表示印刷が可能となり、基板に装着後定格、極性を判読することが容易となる。
【0007】
【実施例】
以下、本考案を図1の実施例に基づき詳細に説明する。
図1は本考案のチップ型アルミ電解コンデンサの断面図で、1はコンデンサ素子であり、アルミニウム箔の表面を粗面化し、その後酸化皮膜を形成してなる陽極箔と陰極アルミニウム箔とを電解紙を介して巻回し、その巻回素子に駆動用電解液を含浸することにより構成し、該コンデンサ素子1は、あらかじめ有底筒状で、かつ底部内面部に肉薄部分の溝2を構成する金属ケース3内に収納している。また、該コンデンサ素子1の陰極箔、陽極箔にはそれぞれリード線が接続され、金属ケース3の開口部は弾性を有する封口体5を挿着し、封口されて構成されたアルミ電解コンデンサと、該コンデンサのリード線4を引き出し端面に当接するように配設した絶縁板6を備え、該絶縁板6に形成した貫通孔7より前記リード線4を引き出し、該絶縁板6の外表面に設けられた凹部にリード線4の先端部を折り曲げ構成したチップ型アルミ電解コンデンサである。なお、絶縁板6の外表面に折り曲げるリード線4は偏平加工されている。
また金属ケースの外表面は、ナイロンなどの絶縁性の樹脂が塗布されている。すなわち、上記肉薄部分の溝の面と反対側の外面に絶縁性の樹脂が塗布されており、その上に定格、極性などの表示印刷がなされている。
このように構成されたチップ型アルミ電解コンデンサをプリント基板に実装する際、チップ型アルミ電解コンデンサは自動装着機の製品吸着ヘッド8で吸着され、正確にプリント基板の所定位置に装着される。
【0008】
【考案の効果】
上記の実施例で明らかなように、本考案はチップ型アルミ電解コンデンサのアルミケースの底部外面の肉薄部分の溝が形成されないため、自動装着工程における製品吸着ヘッドによる吸着エラーを減少させることができ、生産性を更に向上させることが可能であり、安全性についても維持させることができたものである。また、加えてケース底部外面に定格、極性などの表示記号を表示することも可能となり、基板装着後の検査も容易となるなど、工業上有益な考案である。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本考案のチップ型アルミ電解コンデンサに係る一実施例で、(イ)は断面図、(ロ)は吸着状態図である。
【図2】
従来のアルミ電解コンデンサのアルミケースで、(イ)はケースの断面図、(ロ)はケース外部底面平面図である。
【図3】
従来のアルミ電解コンデンサの底面図である。
【図4】
従来のチップ型アルミ電解コンデンサで、(イ)は断面図、(ロ)は吸着状態図である。
【符号の説明】
1:コンデンサ素子
2:溝
3:金属ケース
4:リード線
5:封口体
6:絶縁板
7:貫通孔
8:吸着ヘッド
訂正の要旨 訂正の要旨
・実用新案登録第2576022号の明細書中実用新案登録請求の範囲の請求項1のうち「上記金属ケースの外部底面部にナイロン系の絶縁性樹脂を塗布し、」
とあるのを、実用新案登録請求の範囲の減縮を目的として、
「上記金属ケースの外部底面部をフラットに形成し、該底面部にナイロン系の絶縁性樹脂を塗布し、」
と訂正する。
・考案の詳細な説明の段落番号【0005】欄の記載を、明りょうでない記載の釈明を目的として実用新案登録請求の範囲の訂正に整合させる。
異議決定日 1999-08-24 
出願番号 実願平3-79974 
審決分類 U 1 651・ 121- YA (H01G)
最終処分 維持    
前審関与審査官 大澤 孝次  
特許庁審判長 下野 和行
特許庁審判官 治田 義孝
新川 圭二
登録日 1998-04-17 
登録番号 実用登録第2576022号(U2576022) 
権利者 ニチコン株式会社
京都府京都市中京区御池通烏丸東入一筋目仲保利町191番地の4 上原ビル3階
考案の名称 チップ型アルミ電解コンデンサ  

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