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審決分類 審判 全部申し立て   E04F
管理番号 1004102
異議申立番号 異議1998-75206  
総通号数
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案決定公報 
発行日 2000-04-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 1998-10-16 
確定日 1999-08-20 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 実用新案登録第2569283号「造作材」の実用新案に対する実用新案登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。   
結論 訂正を認める。 実用新案登録第2569283号の実用新案登録を維持する。
理由 I.手続きの経緯
本件実用新案登録第2569283号に係る考案は、平成4年10月14日に出願されたもので、平成10年1月30日にその実用新案の設定登録がなされ、その後、平成10年10月16日にホクシン株式会社より、用新案登録異議の申立てがなされ、平成11年3月4日(起案日)に取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成11年5月17日に意見書提出と共に訂正請求がなされた後、平成11年6月4日(起案日)に訂正拒由が通知され、同日付けで手続補正書が提出されたものである。
II.訂正請求について
1.訂正請求に対する補正の適否について
平成11年6月4日付け手続補正書による補正は、訂正請求書の訂正事項である実用新案登録請求の範囲の請求項1及び考案の詳細な説明の段落【0009】に記載の「中比重繊維板の硬質層が……造作材の幅方向に沿って延長しており」を「中比重繊維板の硬質層が……造作材の長手方向に沿って延長しており」と補正するものであり、訂正請求書の該訂正事項は、願書に添付した図面の図1?3の記載に照らしてみて、意味不明瞭な記載であるところ、これを補正して明瞭にしたものであるから、上記補正は、明りようでない記載の釈明を目的としたものと認められ、訂正請求書の要旨を変更するものでなく、特許法等の一部を改正する法律(平成6年第116号)附則第9条第2項の規定により準用される特許法第120条の4第3項の規定によりさらに準用される同法第131条第2項の規定に適合し、上記補正は、認められる。
2.請求の趣旨及び訂正事項
訂正請求の趣旨は、実用新案登録第2569283号の明細書を請求書に添付した訂正明細書のとおり訂正することを求めるものであり、そして、その訂正事項は、上記平成11年6月4日付け手続補正書により補正された以下の(1)及び(2)のとおりのものである。
(1)実用新案登録請求の範囲の請求項1を下記のとおりに訂正する。
「【請求項1】表裏部及び内部に少なくとも1層の比重の高い硬質層を有する中比重繊維板を基材とし、該基材の表面に化粧シート状物が貼着されてなる造作材であって、中比重繊維板の硬質層が水平方向に長尺である造作材の長手方向に沿って延長しており、且つ硬質層が垂直方向となるように用いられることを特徴とする造作材。」
(2)考案の詳細な説明の段落【0009】を下記のように訂正する。
「【0009】即ち、本考案による造作材は、表裏部及び内部に少なくとも1層の比重の高い硬質層を有する中比重繊維板を基材とし、該基材の表面に化粧シート状物が貼着されてなる造作材であって、中比重繊維板の硬質層が水平方向に長尺である造作材の長手方向に沿って延長しており、且つ硬質層が垂直方向となるように用いられることを特徴とする。」
3.訂正の要件の適否
3-1.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
訂正事項(1)は、実用新案登録明細書の実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された「中比重繊維板の硬質層」の配設位置及び「造作材」を限定し、「中比重繊維板の硬質層が水平方向に長尺である造作材の長手に沿って延長しており」とするものであるから、実用新案登録請求の範囲の減縮を目的とするものと認められ、願書に添付した図面の図1?3の記載では、中比重繊維板の硬質層3?5が夫々の造作材1の長手方向に沿って延長しているものが示されており、また願書に添付した明細書の記載では、造作材として廻り縁、手摺、幅木等を例示し、図1?3にこれら例示の造作材が水平方向に長尺であることが示されており、訂正事項(1)は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるということができる。そして、実質上、実用新案登録請求の範囲を拡張し又は変更するものとも認められない。
訂正事項(2)は、実用新案登録請求の範囲の請求項1の訂正に伴い、実用新案登録請求の範囲の記載と考案の詳細な説明との整合を図るためのもので、明りようでない記載の釈明を目的とするものであり、また、訂正事項(1)と内容自体は同じであるから、訂正事項(1)と同様、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上、実用新案登録請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。
3-2.独立実用新案登録要件
3-2-1.訂正拒絶理由
訂正拒絶理由は、実用新案登録請求の範囲及び課題を解決するための手段で限定された構成事項の「造作材の幅方向に延長し」は、図面の記載と対応しておらず、不明瞭で、実用新案法第5条第4項及び第5項の規定により、出願の際、独立して実用新案登録を受けることができないとしている。
これに対して、実用新案権者は、前記「II.1.訂正請求に対する補正の適否について」に記載したように、手続補正書を提出し、訂正請求書の訂正事項及び訂正明細書を補正し、上記訂正拒絶理由で指摘した明細書の記載不備を直したものであるから、上記訂正拒絶理由は解消するものとなった。
3-2-2.その他の独立実用新案登録要件についての判断
訂正事項(1)による訂正後における実用新案登録請求の範囲に記載された事項により構成される考案は、後述する「III.4.対比・判断」でしたように、取消理由及び実用新案登録異議申立ての理由では、実用新案登録を受けることができないとすることができず、また、他に実用新案登録を受けることができないとする理由も発見できないから、実用新案登録出願の際独立して実用新案登録を受けることができるものである。
4.むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年第116号)附則第9条第2項の規定により準用され、同附則第10条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第2項、同条第3項で更に準用する第126条第2項乃至第4項の規定に適合し、当該訂正は認められる。
III.実用新案登録異議申立てについて
1.本件請求項1に係る考案
本件実用新案登録第2569283号の訂正明細書の請求項1に係る考案(以下、「本件請求項1に係る考案」という。)は、平成11年6月4日付け手続補正書により補正された訂正明細書の実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものである。
「【請求項1】表裏部及び内部に少なくとも1層の比重の高い硬質層を有する中比重繊維板を基材とし、該基材の表面に化粧シート状物が貼着されてなる造作材であって、中比重繊維板の硬質層が水平方向に長尺である造作材の長手方向に沿って延長しており、且つ硬質層が垂直方向となるように用いられることを特徴とする造作材。」
2.実用新案登録異議申立ての理由及び取消理由の概要
2-1.実用新案登録異議申立ての理由の概要
実用新案登録異議申立人は、甲第1号証〔実願平2-10860号(実開平3-101626号)のマイクロフィルム〕、甲第2号証〔実願昭60-58943号(実開昭61-175437号)のマイクロフィルム〕及び甲第3号証〔実願昭53-78370号(実開昭54-178786号)のマイクロィルム〕を提出し、本件請求項1に係る考案は、甲第1?3号証に記載された考案に基づいて、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができないものであり、実用新案登録は取り消されるべきものである旨主張している。
2-2.取消理由の概要
取消理由は、実用新案登録異議申立人が提出した甲第1号証を刊行物1、甲第2号証を刊行物2として引用し、本件請求項1に係る考案は、刊行物1、2記載の考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであり、本件請求項1に係る考案の実用新案登録は、実用新案法第3条第2項の規定に違反してなされたものである。
3.甲第1?3号証及び刊行物1、2に記載の事項
甲第1?3号証及び刊行物1、2には、以下の事項が記載されている。
甲第1号証(刊行物1)には、
「複数枚の中比重ファイバーボードを重合接着して、所定の厚さとしたことを特徴とする中比重ファイバーボードによる木ネジ保持基材。」(明細書第1頁実用新案登録請求の範囲)、
「中質繊維板が厚み方向に比重傾斜を有し、表・裏両層の数mm間は岩盤層といわれて硬度も高く、0.8?1.2と高比重であるのに対して中層は0.4?0.8程度であるという特性を利用し、複数枚の中質繊維板を重合接着して必要な厚みのドア枠基材を構成したことによって、中質繊維板からなる木ネジ保持基材の前記課題を解決したものである。」(明細書第2頁第9?16行)及び「図示した実施例では、上記中質繊維板の単体1を三枚重ね合わせて接着し、目的のドア枠基材の厚みとしたものであって、これに木ネジ4を締め込んだ場合、そのネジ部は少なくとも比重の高い各単体の表・裏層2を通過することになるから、木ネジ性能が大幅に向上されるのである。」(明細書第3頁第8?13行及び第1図)
が記載され、これらの明細書及び図面の記載からみて、甲第1号証(刊行物1)には、以下の考案が記載されていると認める。
「厚み方向に比重傾斜を有し、表・裏両層の数mm間は岩盤層といわれて硬度も高く、0.8?1.2と高比重である中質繊維板の単体1を、複数枚重合接着して、表裏部及び内部に上記岩盤層を有する所定の厚みの中質繊維板を用いてなるドア枠基材。」
甲第2号証(刊行物2)には、
「本考案は、木質繊維板の表面に必要に応じて化粧シート状物が貼着され、切削凹溝が形成されてなる化粧パネルに関する。」(明細書第2頁第6?8行)及び
「得られた複合木質繊維板の表面に必要に応じて化粧紙、化粧含浸紙、化粧合成樹脂シート、突板などの化粧シート状物4を接着剤を介して接着する。」(明細書第4頁第15?17行)と記載されている。
甲第3号証には、
「木質繊維板…からなる合成板を主材とし、その木端面においてその表裏の岩盤層を残して断面矩形の条溝を穿設し、これと同一断面の合板からなる補強体に間隙充填正接着剤を塗布して、上記条溝に嵌挿接着せしめたことを特徴とする木質繊維板等からなる構造用材。」(明細書第1頁実用新案登録請求の範囲第1項)及び
「単板の面方向を垂直にした場合は、木端面1’からの荷重に対する強度向上に効果的であることはいうまでもない。」(明細書第6頁第7?9行)と記載されている。
4.対比・判断
4-1.取消理由について
本件請求項1に係る考案と刊行物1記載の考案とを比較すると、
刊行物1記載の考案の「岩盤層」及び「中質繊維板」は、本件請求項1に係る考案の「硬質層」及び「中比重繊維板」に相当するから、本件請求項1に係る考案と刊行物1記載の考案とは、以下の点で相違しているが、その余の点では一致していると認められる。
相違点
(1)本件請求項1に係る考案は、中比重繊維板の硬質層が水平方向に長尺である造作材の長手方向に沿って延長しており、且つ中比重繊維板の硬質層が垂直方向となるように用いられる造作材であるのに対して、刊行物1記載の考案は、ドア枠基材である点。
(2)本件請求項1に係る考案は、基材の表面に化粧シート状物が貼着されたものであるのに対して、刊行物1記載の考案は、そのようになっていない点。
そこで、上記相違点を検討すると、
相違点(2)については、刊行物2には、木質繊維板の表面に化粧シート状物を接着する化粧加工手段が記載されており、また、一般的に、木質基材の表面に化粧シート状物を接着して化粧することは、本件の出願前、慣用されている手段であり、当業者であれば、必要に応じてきわめて容易に付加できることにすぎないと認められるが、
相違点(1)については、刊行物1記載の考案は、上記摘示したように、木ネジの保持機能を有する事を目にし、中比重繊維板からなる基材を使用したものが、ドア枠基材であるから、本件請求項1に係る考案の強度特性と寸法安定性を目的とし、中比重繊維板からなる基材を使用したものが、水平方向に長尺である造作材であるものとは、相違し、かつ、刊行物1記載の考案は、相違点(1)における本件請求項1に係る考案の「中比重繊維板の硬質層が長手方向に沿って延長しており、且つ垂直方向となるように用いられる」点を具備しているとは認められない。
そして、本件請求項1に係る考案は、相違点(1)における事項を構成要件とすることにより、「中比重繊維板の表裏部及び内部に各々比重の高い硬質層が配されたものが造作材の基材として用いられているので、軽量でありながら、寸法安定性及び強度特性に優れた板材が提供される。…硬質層が垂直方向となるように造作材として用いられ、上方及び側方からの荷重に耐える優れた曲げ強度を有する。」という実用新案登録明細書に記載の特有な効果を奏するものと認められる。
したがって、本件請求項1に係る考案は、刊行物1及び刊行物2記載の考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案できたものであるとすることはできない。
4-2.実用新案登録異議申立ての理由について
実用新案登録異議申立人が提出した甲第1号証及び甲第2号証は、前記のように、取消理由で刊行物1及び刊行物2として引用したものであるから、本件請求項1に係る考案と甲第1号証及び甲第2号証記載の考案とは上記「III.4-1.取消理由について」で判断したとおりである。
そして、実用新案登録異議申立人が提出した甲第1号証及び甲第2号証以外の甲第3号証にも、上記「III.4-1.取消理由について」において示した相違点(1)における本件請求項1に係る考案の構成要件であ「中比重繊維板の硬質層が水平方向に長尺である造作材の長手方向に沿って延長しており、且つ中比重繊維板の硬質層が垂直方向となるように用いられる造作材である」点が記載されておらず、本件請求項1に係る考案は、該事項を構成要件とすることにより、上記「III.4-1.取消理由について」において記載したような特有の効果を奏するものと認められる。
したがって、本件請求項1に係る考案は、甲第1?3号証記載の考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案できたものであるとすることはできない。
5.むすび
以上のとおりであるから、取消理由及び実用新案登録異議申立ての理由並びに証拠によっては、本件請求項1に係る考案の実用新案登録を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1に係る考案の実用新案登録を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
発明の名称 (54)【考案の名称】
造作材
(57)【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】表裏部及び内部に少なくとも1層の比重の高い硬質層を有する中比重繊維板を基材とし、該基材の表面に化粧シート状物が貼着されてなる造作材であって、中比重繊維板の硬質層が水平方向に長尺である造作材の幅方向に延長しており、且つ硬質層が垂直方向となるように用いられることを特徴とする造作材。
【考案の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本考案は、家屋等における廻り縁、階段の手摺、幅木等として用いられる造作材に関する。
【0002】
【従来の技術】中比重繊維板は、比重が0.4?0.8であって比較的軽量でありながら、強度特性に優れまた加工性も良好であることから、必要に応じて表面に任意化粧を施して、壁面材、床材、建具部材、造作材、家具部材等の各種用途に広範に使用されている。
【0003】中比重繊維板は、例えば乾式法によるときは、木材を解繊して得られる木質繊維に接着剤を塗布し、これをフォーミング、仮圧締して繊維マットとし、この繊維マットを一定寸法に裁断して定尺マットとした後、加熱圧締することによって得られる。
【0004】
【考案が解決しようとする課題】中比重繊維板は上記のように概ね満足すべき総合性能を有するものではあるが、その軽量性を保持しながら、更に諸物性を向上させることが望まれている。
【0005】特に廻り縁や階段の手摺等の造作材として用いられる場合、側方からの荷重も受けるが、より大きな荷重を上方から受けることになるので、この上方からの荷重に対するたわみ変化量を極小化するような強度特性を与えることが望まれる。
【0006】また、中比重繊維板は比較的軟質であるために、含水率変化による膨張収縮が生じやすい欠点があるため、これを抑制してより寸法安定性を向上させることが望まれる。
【0007】一般にハードボードと呼ばれる硬質繊維板は広く工業的に生産されており、0.8以上の比重を有する高比重繊維板であって、曲げ強度や寸法安定性にも優れているが、軽量性が損なわれ、作業性、取扱性に問題がある。
【0008】
【課題を解決するための手段】そこで本考案は、中比重繊維板を基材としながら、その物性を強化し、特に造作材としての用途に好適に用いられる新規な材を提供することを目的とする。
【0009】即ち、本考案による造作材は、表裏部及び内部に少なくとも1層の比重の高い硬質層を有する中比重繊維板を基材とし、該基材の表面に化粧シート状物が貼着されてなる造作材であって、中比重繊維板の硬質層が水平方向に長尺である造作材の幅方向に延長しており、且つ硬質層が垂直方向となるように用いられることを特徴とする。
【0010】本考案の造作材の基本となる中比重繊維板は0.4?0.8の全体比重を有するが、表裏部及び内部に少なくとも一層、他部よりも高比重の硬質層、好ましくは0.8?1.4の比重を有する硬質層が配される。
【0011】内部の硬質層は表裏部の硬質層よりも層厚を大きくすることが好ましい。
【0012】内部の硬質層は必要に応じて複数設けることができる。
【0013】板材の表面には必要に応じて合成樹脂等による非透水層を形成することができる。
【0014】
【作用】比重0.4?0.8の中比重繊維板を基材とするため、軽量であって、作業性・取扱性に優れる。
【0015】表裏部及び内部に比重0.8?1.4の硬質層によって基材が強化され、寸法安定性が向上される。
【0016】硬質層が垂直方向となるように造作材として用いられるため、表裏の硬質層によって側方からの荷重に対する曲げ強度が向上されると共に、垂直方向に延長する複数の硬質層によって上方からの荷重に対する曲げ強度が顕著に向上される。
【0017】
【実施例】図1は本考案の一実施例であって、天井の四周にめぐらせて天井板を支持する廻り縁として用いられる造作材1を示す。この廻り縁1は、表部硬質層3、裏部硬質層4、及び2層に設けられる内部硬質層5、5の各硬質層を有する中比重繊維板よりなる基材2の表面に化粧シート状物6が貼着されてなる。
【0018】表部硬質層3及び裏部硬質層4は図示のように基材の表裏面に露出させることが好ましい。
【0019】中比重繊維板の全体比重は0.4?0.8であるが、各硬質層は比重0.8?1.4を有する。
【0020】このように、中比重繊維板において、比重が高く、引張り強度及び圧縮強度が優れた硬質層が板材の表裏部及び内部に形成されるため、軽量でありながら、曲げ強度が大きく、荷重に対するたわみ変化量の少ないものとなる。
【0021】即ち、側方から受ける荷重に対しては、非作用面側の硬質層の圧縮強度と反対側の硬質層の引張り強度とが相俟って優れた曲げ強度を発揮すると共に、廻り縁として使用された場合に上方から受ける荷重に対しては、垂直方向に延長する複数の硬質層3、4、5によって極めて優れた曲げ強度を発揮する。上方からの荷重に対する強度特性は内部硬質層5を多数設けることによってより一層向上される。
【0022】各硬質層の層厚は一般に0.3?5mmであるが、内部硬質層5,5の層厚を表裏部硬質層3、4よりも大きくすることにより、基材2の強度物性が一層向上される。
【0023】高比重で非透水性である硬質層3、4が基材の表裏部に形成されることで、表裏面からの水分吸収が実質的に防止される。しかも、内部硬質層5、5が鉄筋のごとく働くことにより、含水率変化に伴う膨張収縮の発生が抑制される。これらにより、極めて優れた寸法安定性を有する板材が得られる。
【0024】このような構成を有する基材2は次のようにして製造することができる。
【0025】すなわち、一般に中比重繊維板は、例えば乾式法による木質繊維板の製造工程において、解繊され接着剤等を添加、乾燥された木質繊維を、フォーミング装置によりスクリーンコンベア上に堆積し、仮圧締して木質繊維マットを得、次いで、一定寸法に裁断して定尺木質繊維マットとした後、これを加熱圧締することによって得られるものであるが、上記製造工程において、木質繊維に対する接着剤の添加量を多くし、或いは木質繊維の含水率を高くすれば、表裏の硬質層の層厚がより大きく形成される。また、定尺木質繊維マットの上面又は下面に水を塗布し、或いは不織布、紙、布等の保水性のあるシート状物に含水させたものを該木質繊維マットの上面又は下面に載置し、この状態で加熱すると、表裏部の含水率が高められた状態で加熱圧締されることとなるため、硬質層の層厚が増大する。このようにして、表裏に所定層厚の硬質層を有する中比重繊維板が得られる。
【0026】得られた中比重繊維板は、加熱圧締時の接着剤のプレキュアによる低比重薄表層が形成されるため、必要に応じてサンディングを施して該低比重薄表層を除去し、硬質層を表裏面に露出させる。
【0027】このようにして得られた中比重繊維板を接着剤を介して2枚重ね、圧締接着することにより、表裏部及び内部に各々硬質層を有する中比重繊維板が得られ、これを所定形状に切削することにより、本考案の造作材における基板2として用いられる。
【0028】上記方法によって得られる基材において、内部硬質層は、積層した上方の中比重繊維板の裏部硬質層と下方の中比重繊維板の表部硬質層とが複合されたものとして形成されるので、板材の表裏部硬質層よりも必然的に層厚が大きくなり、強度的に好ましいものが得られる。
【0029】図1に示す実施例におけるように複数層の内部硬質層5、5を有する基材2は、前記した方法により製造された表裏に硬質層を有する中比重繊維板を複数枚、同実施例においては3枚用い、これらを積層圧締接着したものを、所定形状に切削することによって製造可能である。
【0030】このようにして得られる基材2の表面に任意化粧シート状物6を貼着して、本考案による造作材1が得られる。
【0031】化粧シート状物5としては、天然木材を厚さ0.2?3mm程度に切削して得られる天然木突板、人工突板、不織布、紙、合成樹脂シート等のシート状物で裏打ちした突板シート、20?40g/m^(2)の化粧紙、32?500g/m^(2)の不織布、50g/m^(2)のパーチメント紙等において任意の柄模様印刷や単色の塗装が施されたものが例示される。これらの化粧シート状物5には、基材4に貼着した後、任意の上塗り塗装を施すことができる。
【0032】基材4の表面に対する化粧シート状物5の貼着は、例えば酢酸ビニル樹脂等の熱可塑性接着剤に、耐水性向上のために熱硬化性樹脂又は尿素粉末等を混入したものを用いて行うことができる。化粧シート状物5は、吸放湿による収縮膨張率が小さな中比重繊維板よりなる基材4上に貼着されるため、化粧シート状物5として突板を用いた場合にも突板に割れが生じにくい。
【0033】図2は階段の手摺として用いられる本考案の別の実施例を示す。
【0034】図3は幅木として用いられる本校案の更に別の実施例を示す。
【0035】
【考案の効果】中比重繊維板の表裏部及び内部に各々比重の高い硬質層が配されたものが造作材の基材として用いられているので、軽量でありながら、寸法安定性及び強度特性に優れた板材が提供される。
【0036】硬質層が垂直方向となるように造作材として用いられ、上方及び側方からの荷重に耐える優れた曲げ強度を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本考案の一実施例による造作材である廻り縁の構成を示す斜視図である。
【図2】本考案の別の実施例による造作材である階段手摺の構成を示す斜視図である。
【図3】本考案の更に別の実施例による造作材である幅木の構成を示す斜視図である。
【符号の説明】
1 造作材
2 基材
3 表部硬質層
4 裏部硬質層
5 内部硬質層
6 化粧シート状物
訂正の要旨 訂正の要旨
本件訂正の要旨は、以下のとおりである。
(1)実用新案登録請求の範囲の減縮を目的として、実用新案登録明細書の実用新案登録請求の範囲の請求項1を、
「【請求項1】 表裏部及び内部に少なくとも1層の比重の高い硬質層を有する中比重繊維板を基材とし、該基材の表面に化粧シート状物が貼着されてなる造作材であって、中比重繊維板の硬質層が水平方向に長尺である材の長手方向に沿って延長しており、且つ硬質層が垂直方向となるように用いられることを特徴とする造作材。」と訂正する。
(2)上記実用新案登録請求の範囲の請求項1の訂正に伴い、実用新案登録請求の範囲の記載と考案の詳細な説明の記載との整合を図るため、明りようでない記載の釈明を目的として、実用新案登録明細書の考案の詳細な説明の段落【0009】を下記のように訂正する。「【0009】即ち、本考案による造作材は、表裏部及び内部に少なくとも1層の比重の高い硬質層を有する中比重繊維板を基材とし、該基材の表面に化粧シート状物が貼着されてなる造作材であって、中比重繊維板の硬質層が水平方向に長尺である造作材の長手方向に沿って延長しており、且つ硬質層が垂直方向となるように用いられることを特徴とする。」
異議決定日 1999-07-05 
出願番号 実願平4-77836 
審決分類 U 1 651・ 121- YA (E04F)
最終処分 維持    
前審関与審査官 蔵野 いづみ  
特許庁審判長 樋口 靖志
特許庁審判官 小野 忠悦
白樫 泰子
登録日 1998-01-30 
登録番号 実用登録第2569283号(U2569283) 
権利者 株式会社ノダ
東京都台東区浅草橋5丁目13番6号
考案の名称 造作材  
代理人 ▲桑▼原 史生  
代理人 濱田 俊明  
代理人 ▲桑▼原 史生  

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