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審決分類 審判 一部申し立て   A47J
管理番号 1004119
異議申立番号 異議1999-71249  
総通号数
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案決定公報 
発行日 2000-04-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 1999-03-26 
確定日 1999-07-26 
異議申立件数
事件の表示 実用新案登録第2582368号「無煙ロースター」の請求項2に係る実用新案に対する実用新案登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。   
結論 実用新案登録第2582368号の請求項2に係る実用新案登録を維持する。
理由 1.本件の請求項2に係る考案
本件実用新案登録第2582368号(平成5年6月18日出願、平成10年7月24日設定登録)の請求項2に係る考案は、実用新案登録請求の範囲の請求項2に記載された次の通りの事項により特定されるものである。
「環状のロストル(2)と、当該ロストル(2)の下部に配置された熱源(3)と、前記ロストル(2)の内周を通って立設されて上端が上板(15)で閉塞された筒体(8)と、前記ロストル(2)の内周縁の上部において前記筒体(8)の側面から外方に向かって開口する煙吸入口(6)と、前記ロストルの外周縁の上部に内方に向って開口する排気口(10)と、前記煙吸入口(6)から筒体(8)内を通って前記排気口(10)に連結する煙道(7,9)と、当該煙道(7,9)に設けられたファン(12)と、前記煙道(7,9)における筒体(8)の上部に設けられた消煙部材(11)とを有し、前記ファン(12)の作用で前記ロストル(2)上の空気を前記煙吸入口(6)から吸入し、消煙部材(11)で煙及び臭気を除去し、煙道(7,9)を経て清浄な空気を前記排気口(10)からロストル(2)上に排気し、その空気を再度煙吸入口(6)から吸入して循環せしめることを特徴とする、無煙ロースター」
2.実用新案登録異議申立ての理由
これに対して、実用新案登録異議申立人、佐々木正幸は、甲第1号証(実公平5-23171号公報)、及び、甲第2号証(特開平4-64824号公報)を証拠方法として提出して、本件実用新案登録請求の範囲の請求項2に係る考案の実用新案登録に対して、「本件請求項2に係る考案は、特許法等の一部を改正する法律による改正前の実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができない。したがって、本件考案についての実用新案登録は拒絶の査定をしなければならない実用新案登録出願に対してなされたものである。よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第9条第7項の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の一部の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第3条第1項及び第2項の規定により、本件実用新案登録を取り消すべき旨の決定をすべきものである。」(平成11年3月26口付け実用新案登録異議申立書第6頁第21?29行)と主張している。
3.そこで、本件実用新案登録の請求項2に係る考案が、上記甲第1号証に記載されたもの、及び、上記甲第2号証に記載されたものに基づいて、極めて容易に考案できたものであるか否かについて検討する。
3-1.上記甲第1号証、及び、上記甲第2号証に記載の事項
上記甲第1号証には、「テーブル1の段穴26に上方から嵌脱自在に嵌合される外装ケース2と、該外装ケース2の中心部に上方から嵌脱自在に嵌合されて立設される吸煙筒5と、該吸煙筒5が挿脱自在に挿入される中心穴部10aを有すると共に上記外装ケース2内に上方から嵌脱自在に嵌合される内装ケース10と、該内装ケース10の上縁部10cに上方から載置される鉄板12と、を備えたロースターであって、上記吸煙筒5の先端吸煙口を上記鉄板12の中央部から僅かに突出させると共に、該鉄板12上の煙を下方へ吸い込むためのファン22を、上記吸煙円筒5内部乃至その近傍に設け、さらに、ファン駆動により上記吸煙筒5内に吸引された煙を濾過するフィルタ部材21を、該吸煙筒5内に設けると共に、該フィルタ部材21を通過して濾過されたエアが入る通路6を、上記外装ケース2と内装ケース10との間に形成し、かつ、上記フィルタ部材21にて濾過されて通路6に入ったエアを上方に向けて鉄板12の周縁部25近傍から円錐状に排出するための排気開口部13を、該通路6に形成したことを特徴とするロースター。」が記載されており、この「ロースター」に関し、上記甲第1号証には、「ファンを作動させることによって、鉄板の中央部から吸煙筒内に吸い込まれ、該吸煙円筒内を下方に向かう気流が生じ、該鉄板上で肉等を焼くことにより生じる煙や油煙は、吸煙筒に吸い込まれる。この吸煙筒に吸い込まれた、煙や油煙を含む空気は、該吸煙筒の内部又はこれに連通する通路に設けられたフィルタを通過する際に、該フィルターにより濾過されて、清浄とされ、その後、上記鉄板の周縁部に配設した排気開口部より、該鉄板上の空間をエアカーテン状をなして周囲より区切るように、吹き出す。したがって、肉等を焼くことにより生じる後続の煙や油煙の極一部に、たとえ吸煙筒に吸い込まれずに広がろうとするものがあっても、この煙や油煙等は、上記排気開口部より吹き出す清浄な空気流にて囲まれる空間内に封じ込まれて集中し、客席側に広がるのが防止されて、後続の煙や油煙と共に、吸煙筒より下方へ吸い込まれ、上記フィルタを通過する際に確実に除かれる。以上のことが、連続的に繰り返されて、煙や油煙は確実に除かれ、したがって、客室内に煙が充満することはない。熱を外部に排出しないので、暖房等の熱効率を低下させたりしない。排気管やダクト等の配管、敷設等を必要としないから、夫々独立して、移動させることができる。また、テーブルの下が排気管等により狭くなることもなくまた、被覆床等を設ける必要がない等、設備費等を低く押さえることができる。」(第2頁左欄第37行?右欄第20行)こと、及び、「発生した煙や油煙等は、ファン22の作動により、キャップ15の下端縁と鉄板12の間を通って、吸煙筒5内に入り、該吸煙筒5内を下方に向かう空気の流れが発生しているので、この流れと共に、吸煙筒5内に吸い込まれ、大径部5bを通過する際に、フィルタ部材21により濾過されて、清浄とされた後、開口部5c内、開口8を経て、通路6内に流入し、該通路6を通って、排気開口部13より、鉄板12上の空間をエアカーテン状をなして円錐状に区切るように、吹き出す。したがって、肉23を焼くことにより生じる後続の煙や油煙の極く一部に、吸煙筒5に吸い込まれずに広がろうとするものがあっても、この煙や油煙等は、上記排気開口部13より吹き出す清浄な空気流、つまり排気14にて囲まれる空間24内に封じ込まれて集中し、客席側に広がるのが防止され、後続の煙や油煙と共に、吸煙筒5より下方へ吸い込まれて、フィルタ部材21を通過する際に、確実に除かれる。以上のことが、連続的に繰り返されるから、肉23等を焼いて発生する煙や油煙は、確実に除かれ、排気開口部13から清浄な空気が排気されることと相俟って、客室内に煙が広がったりすることはない。そしてキャップ15の下端縁15aと鉄板12の間を通って、鉄板12の中央部より、吸煙筒内へ煙を吸い込むようにしているので、煙が優先的に吸い込まれ、清浄な空気がむやみに吸い込まれたりしない。」(第4頁右欄第2?29行)ことが記載されているけれども、キャップの下端縁と鉄板の間を通って吸煙筒内に入る空気の吸引流速が大きいと、ファンが小型であっても十分に強力に煙や油煙を吸い込むことができる旨の記載や、鉄板の周縁部に配設した排気開口部から鉄板上に排気した空気を再度キャップの下端縁と鉄板の間を通って吸煙筒内に吸入して同じ空気を繰り返し循環させる旨の記載は見当たらない。
また、上記甲第2号証には、「複数の開口部を有する食品載置台と、前記食品載置台の下方に設けた加熱用ヒータと、食品の加熱により発生する油煙や蒸気を吸引するファンと、油煙や臭気を浄化・除去する浄化装置とを備え、前記食品載置台、前記ファン、前記浄化装置の順に空気が循環するよう構成した加熱調理器。」が記載されており、この「加熱調理器」に関し、上記甲第2号証には、「加熱調理中に食品から発生した油煙はファンにより吸引され、触媒を設けた浄化装置により浄化され油煙は除去される。浄化された空気は再度ファンに吸引され、調理器内を循環するので、油煙が調理器外に漏出しない。また、加熱された空気が加熱調理器内を循環する構成になっているので、熱が器外に逃げ難く、加熱調理時の熱効率が高くて、食品が充分に加熱される。さらに、循環する空気が高温となり、浄化触媒が高温に保たれ、触媒の活性度が高くなって、油煙の浄化が効率的に行われることとなる。」(第2頁左上欄第19行?右上欄第9行)こと、「第1図に示すように、内箱1の上部に複数の開口部12を有し、下方に熱源となるヒータ3を設けた食品載置台2が配設されている。ヒータ3は第2図に示すように、食品載置台2の開口部12を避けて配設されている。内箱1の底面の中央付近には吸込口4が、吸込口4の下方にはファン5が配設され、内箱1の底部中央の吸込口4から空気を吸引し、内箱1と外箱6により構成された空間からなるダクト7に排気する。ダクト7の中間部には油煙を浄化するハニカム状の触媒8が設けられている。外箱6の上端は、内側に湾曲されていて、触媒8を通過した空気は食品載置台2に載置された食品13に向かって流れるよう構成されている。」(第2頁右上欄第17行?左下欄第9行)こと、及び、「調理中に発生した油煙をファン5により吸引し、触媒8で浄化し、浄化された空気は食品載置台2の中央部に向かって流れ、食品載置台2に載置された食品13の周囲を通過して食品13を加熱し、ふたたびファン5に吸引されて器内を循環する構成となっている。そのため、循環する空気は高温となり、食品13を効率的に加熱することができるとともに触媒8も高温に加熱され、触媒8の活性度が向上し、油煙を効率よく浄化できる。また、油煙が触媒8により浄化されるとき、油煙の燃焼熱により触媒8を通過した空気はさらに高温となり、より効率的に食品を加熱できる。」(第2頁左下欄第110行?右下欄第2行)ことは記載されているけれども、ファン5に吸引される空気が通過する食品載置台2の開口部12の面積を小さくすることにより、ファン5に吸引される空気の食品載置台2の開口部12における吸引流速を大きくする旨の記載や、ファン5に吸引される空気の食品載置台2の開口部12における吸引流速を大きくすると、ファンが小型であっても十分に強力に煙や油煙を吸い込むことができる旨の記載は見当たらない。
3-2.本件実用新案登録の請求項2に係る考案と、上記甲第1号証に記載されたもの、及び、上記甲第2号証に記載されたものとの対比・判断
本件実用新案登録明細書の考案の詳細な説明には、「排気ダクトで煙や臭気を排出するものでは、設備が大型になるため家庭用には使用できない。また本体内で無煙処理するものにおいても、テーブル型のロースターにおける脚部において無煙処理するものであって、焼肉店などの業務用の大型機である。小型機では高温の排出ガスの処理が困難であると共に、ロースターの内部に収容できる程度の小型のファンでは、煙や臭気を十分に吸引することが困難であるので、家庭用に使用することはできない。本考案はかかる事情に鑑みなされたものであって、家庭においても手軽に使用することのできる、小型で煙や臭気を排出しない無煙ロースターを提供することを目的とするものである。」(第6?8段)こと、「図3の実施例ばおいては、ロストル2の内周に外方に向かって煙吸入口6が設けられ、ロストル2の外周には前記煙吸入口6に対向して、内方に向かって排気口10が形成されている。従ってこの実施例においては、ロストル2で煙及び臭気を含んだ空気は、内周の煙吸入口6から吸入され、消煙部材11で煙及び臭気を除去された後、ファン12の作用で中央部の煙道9から環状の煙道7に流れ、外周の排気口10からロストル2上に向かって吹き出す。そして、排気口10から吹き出した空気が、ロストル2上を通って、さらに煙及び臭気を含み、再度煙吸入口6から吸入されることとなるのであって、同じ空気を繰返し循環する。」(第32?34段)こと、「一般にこの種のロースターにおいては、ロストル2の外周から煙を吸入するものが多いが、本考案においてはロストル2の内周に煙吸入口6を形成しているので、空気が通過する面積が小さくなるためそこを通る空気の流速が大きくなり、モーター13やファン12が小型であっても十分に強力に煙を吸い込むことができる。」(第30段)こと、及び、「排気口10から排出された空気を煙吸入口6から再度吸入して、繰返し消煙部材11を通すので、一度消煙部材11を通すことにより除去しきれなかった煙や臭気も、繰返して通すことによって除去効率を高めることができる。」(第39段)ことが記載されている。
そして、煙吸入口から所定距離離れたロストル上における煙吸入口方向への空気の流速は、煙吸入口における空気の吸入流速が大きい程大きくなることは、いわゆる流体の連続の関係から明らかなことであり、このことから、排気口から排気されたロストル上の空気を再度煙吸入口から吸入して循環せしめることができるようにするためには、煙吸入口における空気の吸入流速を大きくする必要があると言うことができると思慮され、また、ファンの吸入口面積を小さくする程その吸入口における空気吸入速度を大きくすることができることは、送風容量、流路面積、及び、流速の三者の関係から明らかなことであり、このことから、煙吸入口の面積を小さくすれば、送風容量の小さい小型のファンを用いても、煙吸入口における空気の吸入流速を叙上の循環に必要な大きさにすることができて、十分強力に煙や臭気を吸い込むことができるようになると思慮されるところ、本件実用新案登録明細書の第30段における「空気が通過する面積が小さくなるためそこを通る空気の流速が大きくなり、モーター13やファン12が小型であっても十分に強力に煙を吸い込むことができる。」(第30段)の記載は、このことを意味するものと解することができる。
これらの本件実用新案登録明細書の記載内容からすれば、本件実用新案登録の請求項2に係る考案は、排気口からロストル上に排気される空気を再度煙吸入口から吸入して循環せしめ、繰返し消煙部材を通るようにして煙や臭気の除去効率を高めると同時に、叙上の循環を送風容量の小さい小型のファンで実現できるようにし、以て、家庭においても手軽に使用することのできる、小型で煙や臭気を排出しない無煙ロースターを提供しようとするものであると解することができ、そのために、本件実用新案登録の請求項2に記載された構成をとるものであると解することができる。
そして、本件実用新案登録の請求項2に係る考案は、叙上の如き循環のないロースターに用いるファンを小型化しようとするものではないと解することができる。
これに対して、上記甲第1号証の記載からみて、上記甲第1号証に記載されたものに用いられているファンは、鉄板上の煙を吸煙筒内に吸引し、フィルタ部材で濾過されたエアを上方に向けて鉄板の周縁部近傍から円錐状に吹出すためのものであって、鉄板の周縁部に配設した排気開口部から鉄板上に排気した空気を再度キャップの下端縁と鉄板の間を通って吸煙筒内に吸入して同じ空気を繰り返し循環させるためのものではないと解することができる。
加えて、上記甲第1号証には、キャップの下端縁と鉄板の間を通って吸煙筒内に入る空気の吸引流速が大きいと、ファンが小型であっても十分に強力に煙や油煙を吸い込むことができるようになることを示唆する記載も見当たらない。
また、上記甲第2号証に記載されたものは、上記甲第2号証の記載からみて、内箱の上部に複数の開口部を有する食品載置台を有し、食品の加熱により発生する油煙や蒸気を吸引するファンと、油煙や臭気を浄化・除去する浄化装置とを内箱と外箱の間に配置し、外箱の上端を内側に湾曲して浄化装置を通過した空気をそこから排気するようにし、その排気された空気を、食品載置台に載置された食品に向かって吹出した後この食品載置台から再びファンに吸引されて器内を循環するようにした加熱調理器であると言うことはできるけれども、この加熱調理器は、食品載置台の内周縁の上部において筒体の側面から外方に向かって開口する煙吸入口とを有しておらず、ファンの作用で食品載置台上の空気をこの煙吸入口から吸入し、清浄な空気を外箱の湾曲した部分から食品載置台上に排気し、その空気を再度煙吸入口から吸入して循環せしめるようにしたものではない。
しかも、上記甲第2号証には、上記甲第2号証にいう循環を送風容量の小さい小型のファンで実現できるようにすることを示唆する記載や、吸引される空気が通過する食品載置台の開口部の面積を小さくして食品載置台の開口部における吸引流速を大きくすることを示唆する記載は見当たらない。
そうすると、本件実用新案登録の請求項2に係る考案が、上記甲第1号証に記載されたもの、及び、上記甲第2号証に記載されたものに基づいて、極めて容易に考案できたものであるとすることはできない。
5.むすび
以上の通りであるから、実用新案登録異議申立ての理由及び証拠によっては、請求項2にかかる考案の実用新案登録を取り消すことはできない。
また、他に本件実用新案登録を取り消すべき理由も発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
異議決定日 1999-07-06 
出願番号 実願平5-38195 
審決分類 U 1 652・ 121- Y (A47J)
最終処分 維持    
前審関与審査官 種村 慈樹鵜飼 健  
特許庁審判長 寺尾 俊
特許庁審判官 歌門 恵
岡田 和加子
登録日 1998-07-24 
登録番号 実用登録第2582368号(U2582368) 
権利者 象印マホービン株式会社
大阪府大阪市北区天満1丁目20番5号
考案の名称 無煙ロースター  

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