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審決分類 審判 全部申し立て   E04F
管理番号 1004122
異議申立番号 異議1996-70029  
総通号数
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案決定公報 
発行日 2000-04-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 1996-10-01 
確定日 1999-08-18 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 実用新案登録第2508228号「手摺笠木」の実用新案に対する実用新案登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。   
結論 訂正を認める。 実用新案登録第2508228号の実用新案登録を維持する。
理由 I.手続きの経緯
本件実用新案登録第2508228号に係る考案は、平成1年12月4日に出願され、平成8年5月30日に実用新案権の設定の登録がなされ、その後、ケージーパルテック株式会社より実用新案登録異議の申立てがなされ、次いで、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成10年5月21日に訂正請求がなされたものである。
II.訂正請求について
1.請求の趣旨及び訂正事項
訂正請求の趣旨は、実用新案登録第2508228号の明細書を訂正請求書に添付した訂正明細書のとおり訂正することを求めるものであり、そして、その訂正事項は以下のとおりのものである。
訂正事項(1)
明細書の実用新案登録請求の範囲の請求項1を、「天井壁とその両端から垂下する両側壁とを有し、該天井壁と該両側壁との両交差部および該両側壁の両下縁部は厚肉に形成され、上位の該両厚肉部の外面では該天井壁外端から同側の該側壁外側面より外方に突出した位置にかけて、又下位の該両厚肉部の外面では該下縁部下方から同側の該側壁外側面より外方に突出した位置にかけて同一円の円周に添う円弧面が4個所の該厚肉部外面のそれぞれに間隔をおいて形成された略コ字状断面を有する金属製笠木芯材と、該笠木芯材の各円弧面を形成する該同一円の円周に添う内周面と該内周面から突設され該笠木芯材の天井壁上面両外側に当接すべき両当接突条とを有すると共に、該笠木芯材の両下縁部外周に係合すべき係止条をその両下端に有する略C字条断面の柔軟材料製被覆材とよりなり、該笠木芯材に対し、該被覆材はその両当接突条が該笠木芯材の天井壁上面両外側に当接され、その内周面が該笠木芯材の各円弧面に当接されると共に、その両係止条が該笠木芯材の両下縁部を覆うように係止されて、該被覆材内周面と該天井壁上面との間及び該被覆材内周面と該両側壁外側面との間には空隙が介在された状態で該笠木芯材が該被覆材により被覆されていることを特徴とする手摺笠木。」と訂正する。
訂正事項(2)
明細書第2頁第14行の「該笠木芯材の各円弧面に添う内周面」を、
「該笠木芯材の各円弧面を形成する該同一円の円周に添う内周面」と訂正する。
訂正事項(3)
明細書第3頁第18行?19行の「これに笠木芯材の各円弧面に添う内周面」を、
「これに笠木芯材の各円弧面を形成する該同一円の円周に添う内周面」と訂正する。
訂正事項(4)
明細書第4頁第28行の「笠木芯材2の円弧面3,3,3,3に添う円弧」を、
「笠木芯材2の円弧面3,3,3,3を形成する該同一円の円周に添う円弧」と訂正する。
訂正事項(5)
明細書第5頁第9?10行の「笠木芯材2の各円弧面3,3,3,3に添う内周面」を、
「笠木芯材2の各円弧面3,3,3,3を形成する該同一円の円周に添う内周面」と訂正する。
訂正事項(6)
明細書第8頁第15?16行の「これに笠木芯材の各円弧面に添う内周面」を、
「これに笠木芯材の各円弧面を形成する該同一円の円周に添う内周面」と訂正する。
2.訂正の要件の適否
上記訂正事項(1)は、明細書の実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された、「該笠木芯材の各円弧面に添う内周面」を、「該笠木芯材の各円弧面を形成する該同一円の円周に添う内周面」と限定しようとするものである。そして、上記訂正事項(1)は、明細書の実施例及び第1図に記載されていたものであり、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、また、実質上実用新案登録請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。
訂正事項(2)?訂正事項(6)については、実用新案登録請求の範囲の請求項1の訂正に伴い、実用新案登録請求の範囲の記載と考案の詳細な説明との整合を図るための訂正で、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、また、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実用新案登録請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。
そして、上記訂正事項(1)において、訂正後の実用新案登録請求の範囲に記載されている事項により構成される考案は、後述する「III.5.対比・判断」でしたように、取消理由及び登録異議申立ての理由では、それぞれ実用新案登録を受けることができないとすることができず、また、他に独立して実用新案登録を受けることができない理由も発見しないから、実用新案登録出願の際独立して実用新案登録を受けることができるものである。
3.むすび
以上のとおりであるから、上記訂正請求は、平成6年法律第116号附則第9条第2項の規定により準用され、同附則第10条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第2項及び同条第3項で準用する同法第126条第2項乃至第4項の規定に適合し、当該訂正は認められる。
III.登録異議申立てについて
1.訂正後の本件請求項1に係る考案
訂正後の本件請求項1に係る考案は、本件訂正請求書に添付された訂正明細書の実用新案登録請求の範囲に記載された次のとおりのものである。
「天井壁とその両端から垂下する両側壁とを有し、該天井壁と該両側壁との両交差部および該両側壁の両下縁部は厚肉に形成され、上位の該両厚肉部の外面では該天井壁外端から同側の該側壁外側面より外方に突出した位置にかけて、又下位の該両厚肉部の外面では該下縁部下方から同側の該側壁外側面より外方に突出した位置にかけて同一円の円周に添う円弧面が4個所の該厚肉部外面のそれぞれに間隔をおいて形成された略コ字状断面を有する金属製笠木芯材と、該笠木芯材の各円弧面を形成する該同一円の円周に添う内周面と該内周面から突設され該笠木芯材の天井壁上面両外側に当接すべき両当接突条とを有すると共に、該笠木芯材の両下縁部外周に係合すべき係止条をその両下端に有する略C字条断面の柔軟材料製被覆材とよりなり、該笠木芯材に対し、該被覆材はその両当接突条が該笠木芯材の天井壁上面両外側に当接され、その内周面が該笠木芯材の各円弧面に当接されると共に、その両係止条が該笠木芯材の両下縁部を覆うように係止されて、該被覆材内周面と該天井壁上面との間及び該被覆材内周面と該両側壁外側面との間には空隙が介在された状態で該笠木芯材が該被覆材により被覆されていることを特徴とする手摺笠木。」
2.登録異議申立ての理由の概要
異議申立人ケージーパルテック株式会社は、甲第1号証(実願昭55-106215号(実開昭57-31429号)のマイクロフイルム(当審で通知した取消理由で引用した刊行物1))を提出し、本件実用新案登録の考案は、甲第1号証記載の考案と同一若しくは甲第1号証記載の考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、実用新案法第3条第1項に該当し若しくは第2項の規定により実用新案登録を受けることができないものである旨主張している。
3.取消理由の概要
取消理由は、刊行物1として、登録異議申立人ケージーパルテック株式会社が甲第1号証として提出した実願昭55-106215号(実開昭57-31429号)のマイクロフイルムを引用し、
本件請求項1に係る考案は、刊行物1に記載された考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、実用新案法第3条第2項の規定に違反して実用新案登録されたものである、としている。
4.甲第1号証(刊行物1)に記載の事項
甲第1号証(刊行物1)には、明細書の記載および図面を参考にすると、
『上面と、その両端の上部側片から内方に寄った位置から垂下する両側面とを有し、該上面の両端部および該両側面の両下縁部に曲面が全4箇所形成された略コ字状断面を有する金属製芯材と、該芯材の各曲面に沿う内周面、この内周面から突設され該芯材の上面の各上部側片上面に当接すべき各突出部、および芯材の各側面に対面する各側面突部を有すると共に、該芯材の各下縁部外周に係合すべき係合突部をその各下端に有する、外周面が円形の柔軟材料製笠木とよりなり、該芯材に対し、該笠木はその両突出部および両側面突部が該芯材の両上部側片の上下面に接触し、その内周面が該芯材の各曲面に当接されると共に、その両係合突部が該芯材の両下縁部を覆うように係止されて、該笠木内周面とそれぞれ該上面および該両側面との間に空隙が介在された状態で該芯材が該笠木により被覆されている手摺構造。』
が記載されているものと認められる。
5.対比・判断
5-1.取消理由について
訂正後の本件請求項1に係る考案と前記取消理由に引用した刊行物1記載の考案とを対比すると、上記刊行物1には、訂正後の請求項1に係る考案を構成する事項である以下の点が記載されておらず、また、示唆もされていない。
(1)笠木芯材が天井壁とその両端から垂下する両側壁とを有し、該天井壁と該両側壁との両交差部が厚肉に形成され、その外面に同一の円周に添う円弧面が形成されている点、および
(2)笠木芯材を被覆する柔軟材料製被覆材が、該笠木芯材の各円弧面を形成する該同一円の円周に添う内周面を有する点。
そして、訂正後の本件請求項1に係る考案は、上記事項を備えることによって、「笠木芯材の四隅部が厚肉によって補強され、いずれの方向への曲げ加工でも加工による断面形状の崩れを最小限に止めることができる上に、・・・充分な耐力を保有し強固な手摺を得ることができ・・・笠木芯材への被覆材の装着操作を容易とすると共に、笠木芯材の両下縁部外周への被覆材の係止条の係止操作を容易とすることができる。」という訂正明細書記載の効果を奏するものである。
したがって、訂正後の本件請求項1に係る考案は、前記取消理由に引用した刊行物1記載の考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものとすることができない。
5-2.登録異議申立ての理由について
訂正後の本件請求項1に係る考案と登録異議申立人ケージーパルテック株式会社が提示し、前記取消理由において刊行物1として引用した甲第1号証記載の考案との対比・判断は、上記「5-1.取り消し理由について」でしたとおりであり、訂正後の本件請求項1に係る考案は、登録異議申立人ケージーパルテック株式会社が提出した甲第1号証記載の考案と同一若しくは甲第1号証記載の考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるとすることはできない。
よって、登録異議申立人ケージーパルテック株式会社の主張する理由は、採用することができない。
6.むすび
以上のとおりであるから、取消理由及び登録異議申立ての理由並びに証拠方法によっては、訂正後の本件請求項1に係る考案の実用新案登録を取り消すことはできない。
また、他に訂正後の本件請求項1に係る考案の実用新案登録を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
発明の名称 (54)【考案の名称】
手摺笠木
(57)【実用新案登録請求の範囲】
天井壁とその両端から垂下する両側壁とを有し、該天井壁と該両側壁との両交差部および該両側壁の両下縁部は厚肉に形成され、上位の該両厚肉部の外面では該天井壁外端から同側の該側壁外側面より外方に突出した位置にかけて、又下位の該両厚肉部の外面では該下縁部下方から同側の該側壁外側面より外方に突出した位置にかけて同一円の円周に添う円弧面が4個所の該厚肉部外面のそれぞれに間隔をおいて形成された略コ字状断面を有する金属製笠木芯材と、該笠木芯材の各円弧面を形成する該同一円の円周に添う内周面と該内周面から突設され該笠木芯材の天井壁上面両外側に当接すべき両当接突条とを有すると共に、該笠木芯材の両下縁部外周に係合すべき係止条をその両下端に有する略C字状断面の柔軟材料製被覆材とよりなり、該笠木芯材に対し、該被覆材はその両当接突条が該笠木芯材の天井壁上面両外側に当接され、その内周面が該笠木芯材の各円弧面に当接されると共に、その両係止条が該笠木芯材の両下縁部を覆うように係止されて、該被覆材内周面と該天井壁上面との間及び該被覆材内周面と該両側壁外側面との間には空隙が介在された状態で該笠木芯材が該被覆材により被覆されていることを特徴とする手摺笠木。
【考案の詳細な説明】
[産業上の利用分野]
本考案は、壁面、あるいは階段に設置される手摺の笠木に関する。
[従来の技術]
金属製笠木芯材の外面に柔軟材料製の被覆材を被覆した手摺笠木は周知であり、例えば第6図にその断面が示されるような手摺笠木も提案されている。しかしながら、かかる手摺笠木は、側方に突出片6が突設された断面形状を有する笠木芯材2に被覆材5を被覆するものであるから、通路壁面や階段側面の出隅部入隅部に添ってこのような手摺を設置する目的で、笠木芯材2に曲げ加工を施して使用する場合に、笠木芯材2の曲げ加工時に、側方に突出している突出片6が曲げ加工と同時に曲げの内方に向って変形を起こし、笠木芯材2の断面形状が崩れてしまう欠点があり、このような欠点を生じさせないためには、加工時に特別な変形防止用の装置を使用する必要がある。
[考案が解決しようとする課題]
本考案が解決しようとする課題は、前記のような欠点を解消して、笠木芯材の断面形状を崩すことなく曲げ加工を容易に行うことができるとともに、笠木芯材への被覆材の装着が容易且つ確実に遂行可能であり、更に完成された手摺が頑丈な構造を有する手摺笠木を提供することにある。
[課題を解決するための手段]
前記課題を解決するために、本考案の手摺笠木は、天井壁とその両端から垂下する両側壁とを有し、該天井壁と該両側壁との両交差部および該両側壁の両下縁部は厚肉に形成され、上位の該両厚肉部の外面では該天井壁外端から同側の該側壁外側面より外方に突出した位置にかけて、又下位の該両厚肉部の外面では該下縁部下方から同側の該側壁外側面より外方に突出した位置にかけて同一円の円周に添う円弧面が4個所の該厚肉部外面のそれぞれに間隔をおいて形成された略コ字状断面を有する金属製笠木芯材と、該笠木芯材の各円弧面を形成する該同一円の円周に添う内周面と該内周面から突設され該笠木芯材の天井壁上面両外側に当接すべき両当接突条とを有すると共に、該笠木芯材の両下縁部外周に係合すべき係止条をその両下端に有する略C字状断面の柔軟材料製被覆材とよりなり、該笠木芯材に対し、該被覆材はその両当接突条が該笠木芯材の天井壁上面両外側に当接され、その内周面が該笠木芯材の各円弧面に当接されると共に、その両係止条が該笠木芯材の両下縁部を覆うように係止されて、該被覆材内周面と該天井壁上面との間及び該被覆材内周面と該両側壁外側面との間には空隙が介在された状態で該笠木芯材が該被覆材により被覆されていることを特徴とする。
[作用]
前記手段を有する本考案の手摺笠木は、その笠木芯材が、天井壁とその両端から垂下する両側壁とを有し、該天井壁と両側壁との両交差部および両側壁の両下縁部は厚肉に形成されているから、屈曲した手摺笠木を得る目的で笠木芯材を曲げ加工した場合に、最大の軸方向力が加わる笠木芯材の四隅部が厚肉によって補強され、いずれの方向への曲げ加工でも加工による断面形状の崩れを最小限に止めることができる上に、被覆材を当接して支持する笠木芯材に於ける四隅部の円弧面はすべて変形の少ない厚肉部の外面に形成されていて、曲げ加工による位置ズレは生じないから、所定断面に設計された被覆材が手摺笠木屈曲部で装着不能や装着困難になることはなく、所期の収り状態に被覆材を装着することができる。従来提案に見るように、笠木芯材の周囲に自由端が突出するような被覆材当接用の突出片は皆無であり、このような突出片の曲げ加工による変形は基より存在しない。
又、このような断面を有する笠木芯材は、手摺完成後に手摺に加わる各方向からの曲げ応力等に対しても、大きい断面係数を有することから充分な耐力を保有し強固な手摺を得ることができると共に、手摺笠木の屈曲部に於いても笠木芯材の断面形状が維持できるので、手摺笠木屈曲部における断面変形に伴う力学的欠陥が生じない。
更に、略コ字状断面に形成されている笠木芯材は、例えばベンダーマシン等を使用して曲げ加工を行う際には、マンドレルの挿入及び抜出しが容易であるから曲率の小さな曲げ加工を行うことができる。
又、笠木芯材の4隅の厚肉部の外面には、上位の該両厚肉部の外面では該天井壁外端から同側の該側壁外側面より外方に突出した位置にかけて、又下位の該両厚肉部の外面では該下縁部下方から同側の該側壁外側面より外方に突出した位置にかけて同一円の円周に添う円弧面が間隔をおいて形成されており、これに笠木芯材の各円弧面を形成する該同一円の円周に添う内周面と該内周面から突設され笠木芯材の天井壁上面両外側に当接すべき両当接突条とを有する被覆材が被覆されるので、被覆材内周面と両当接突条間に於ける天井壁上面との間、及び手摺断面の左右に於いて被覆材内周面とこれに対向する円弧面間に於ける両側壁外面との間には空隙が形成される結果、笠木芯材に被覆材を被覆する際に、これらの空隙を利用して円弧状をなす被覆材の一部を一時的に直線状に変形させて係止条部分を下位に向け変位させることにより、笠木芯材への被覆材の装着操作を容易とすると共に、笠木芯材の両下縁部外周への被覆材の係止条の係止操作を容易とすることができる。
かかる空隙は、手摺笠木を手摺支持具に固着する際に、ネジ頭等の取付部材の収容空間としても役立つ。
笠木芯材の両下縁部外周に被覆材の両係止条が係合されると、笠木芯材は外部に露出しない状態で被覆材により被覆されるので、外観が優美であると同時に利用者に対し危険をもたらすことがない。
又、被覆材は、その内周面が当接される笠木芯材の4隅部に形成された円弧面、被覆材の両当接突条が当接する笠木芯材の天井壁、及び被覆材の両係止条が係止される笠木芯材の両下縁部によって安定的に支持され、装着後のずれや回転等が効果的に防止される。被覆材に突設された両当接突条は捩れに対する抵抗力を高め、又被覆材装着時に形成される前記空隙は手摺のクッション性を向上させる。
[実施例]
本考案の詳細な特徴について、添付図面に記載された実施例により説明する。
第1図は、本考案に係る手摺笠木を示す断面図であり、図中2はアルミニュウム材に押出し加工を施して得られる笠木芯材を示している。
この笠木芯材2は、天井壁70とその両端から垂下する両側壁8,8とを有する略コ字状断面の長尺材であって、天井壁70と両側壁8,8との両交差部および両側壁8,8の両下縁部1,1は厚肉に形成されている。
上位の両厚肉部の外面では、交差部の天井壁70の外端から同側の側壁8の外側面より外方に突出した位置にかけて、又下位の両厚肉部の外面では、下縁部1下方から同側の側壁8の外側面より外方に突出した位置にかけて同一円の円周に添う円弧面3,3,3,3が4個所の厚肉部外面のそれそれに間隔をおいて形成されている。
又笠木芯材2の両下縁部1,1の内面には、横向き突条20が形成されると共に、天井壁70の内面には、下向き突条21が形成されており、下向き突条21,21間、横向き突条20,20の先端間は、手摺笠木を支持するため後述する手摺支持具の挿入間隙とされている。
図中5は、軟質あるいは半硬質の合成樹脂材等の柔軟材料によって成形され笠木芯材2を被覆する被覆材であって、全体の柔軟性が均等となり、且つ成型時のヒケ等が発生しないように、全体が略均等肉厚とされた略C字状断面形状を具備する。
この被覆材5の内周面は、笠木芯材2の円弧面3,3,3,3を形成する該同一円の円周に添う円弧をなし、内周面上方には、笠木芯材2の天井壁70の上面両外側に当接すべき当接突条50,50が突設されている。又両下端には、笠木芯材2の両下縁部1,1の外周を覆うように係合される係止条4,4が形成されている。
被覆材5の笠木芯材2への装着は、該被覆材5を適温に加熱して全体の柔軟性を向上させた後、係止条4,4間の間隔を押し広げ、該係止条4,4を笠木芯材2の下縁部1,1に係合させることにより行われるが、笠木芯材2の各厚肉部の外面には、上位の両厚肉部の外面では天井壁70外端から同側の側壁8の外側面より外方に突出した位置にかけて、又下位の両厚肉部の外面では下縁部1下方から同側の側壁8の外側面より外方に突出した位置にかけて円弧面3,3,3,3が形成されており、これに対して、笠木芯材2の各円弧面3,3,3,3を形成する該同一円の円周に添う内周面と、該内周面に突設され笠木芯材の天井壁70上面両外側に当接すべき両当接突条50,50とを有する被覆材5が被覆されるので、両当接突条50,50間に於ける被覆材5内周面と天井壁70上面との間、及び手摺断面の左右に於いて被覆材5内周面とこれと対向する円弧面3,3間に於ける側壁8外側との間には空隙が形成される結果、笠木芯材2に被覆材5を装着する際に、これらの空隙を利用して円弧状をなす被覆材5の一部を一時的に直線状に変形させて係止条4の部分を下位に向け変位させることにより、笠木芯材2への被覆材5の嵌合操作を容易に遂行することができると共に、笠木芯材2の両下縁部1,1外周への被覆材5の係止条4の係合操作を容易に遂行することができる。更に、被覆材5内周面に於いて、笠木芯材2の両側壁8,8に対応する部位や天井壁70に対応する部位に凹凸条51を刻設しておけば、被覆材5の変形をより容易に行いうるので、装着作業の作業性を向上させると共に、被覆材5の笠木芯材2への装着後の収りを良好にすることができる。
本考案の特徴として、第2図及び第4図に図示されるような、通路壁面あるいは踊場を含む階段の側面に添って設置される手摺に使用される屈曲した手摺笠木を支障なく加工して容易に提供できる点が挙げられる。
このような屈曲した手摺笠木を得るために、手摺笠木の支持体である笠木芯材2にベンダーマシン等による曲げ加工を施すが、笠木芯材2には、その後、笠木芯材2の断面形状に対応してその形状が設計された被覆材5の装着や、壁面への取付金具の取付を行わなければならないことや、又笠木芯材2の所期の力学的特性を発揮させる必要性があることから、曲げ加工による笠木芯材2の断面形状の崩れを最小にしなければならない。
本考案の手摺笠木では、その笠木芯材2が、天井壁70とその両端から垂下する両側壁8,8とを有し、天井壁70と両側壁8,8との両交差部および両側壁8,8の両下縁部1,1は厚肉に形成されているから、曲げ加工時に最大の軸方向力が加わる笠木芯材の四隅部が厚肉によって補強され、いずれの方向への曲げ加工でも加工による断面形状の崩れを最小限に止めることができる上に、被覆材5を当接して支持する笠木芯材2に於ける四隅部の円弧面3,3,3,3はすべて変形の少ない厚肉部の外面に形成されていて、曲げ加工による位置ズレは生じないから、所定断面に設計された被覆材5が手摺笠木屈曲部で装着不能や装着困難になることはなく、所期の収り状態に被覆材5を装着することができる。従来提案に見るように、笠木芯材の周囲に自由端が突出するような被覆材当接用の突出片は皆無であり、このような突出片の曲げ加工による変形は基より存在しない。
尚略コ字状断面に形成されている笠木芯材2は、例えばベンダーマシン等を使用して曲げ加工を行う際には、マンドレルの挿入及び抜出しが容易であるから曲率の小さな曲げ加工を行うことができる。
本考案の手摺笠木は、その笠木芯材2が、天井壁70とその両端から垂下する両側壁8,8とを有し、天井壁70と両側壁8,8との両交差部および両側壁8,8の両下縁部1,1は厚肉に形成されているから、手摺完成後に手摺に加わる各方向からの曲げ応力等に対しても、大きい断面係数を有することによって充分な耐力を保有し強固な手摺を得ることができると共に、手摺笠木の屈曲部に於いても笠木芯材の断面形状が維持できるので、手摺笠木屈曲部における断面変形に伴う力学的欠陥が生じない。
笠木芯材2の両下縁部1,1外周に被覆材5の両係止条4,4が係合されると、笠木芯材2は外部に露出しない状態で被覆材5により被覆されるので外観が優美であると同時に利用者に対し危険をもたらすことがない。
被覆材5は、その内周面が当接される笠木芯材2の4隅部に形成された円弧面3,3,3,3、被覆材5の両当接突条50,50が当接する笠木芯材2の天井壁70、及び被覆材5の両係止条4,4が係合される笠木芯材の両下縁部1,1によって安定的に支持され、装着後のずれや回転等が効果的に防止される。被覆材5に突設された両当接突条50,50は捩れに対する抵抗力を高め、又被覆材5装着時に形成される前記空隙は手摺のクッション性を向上させる。
第2図及び第3図は、以上のようにして形成される手摺笠木を壁面に沿って設置した状態を示すもので、該笠木は、壁面9に固定された手摺支持具90により固定されている。
この手摺支持具90は、前記手摺笠木2の下端に形成される挿入溝52に嵌合する手摺支持部92をその上端に形成した手摺支持部材93と、壁面9側にアンカー94を使用して固定される座金部材95とを、該座金部材95の表面突出部96に螺合するスペーサ97を介して連結して固定するように構成されており、スペーサ97の螺合寸法を調節することにより、壁面9からの間隔を調節しつつ手摺笠木を設置することができるようにされている。尚第3図において、98は手摺支持部材93を座金部材95に連結するための締結ネジ、99は手摺支持部材93の手摺支持部92に手摺笠木を固定するためのビスを示す。笠木芯材2の側部に形成される前記空隙はビス99のビス頭を収容する空間として役立つ。
第4図及び第5図は、本考案の手摺笠木を階段用手摺として設置した状態を示すもので、この場合には手摺子91の上端に、前述した手摺支持具90に於ける手摺支持部材93の手摺支持部92と同様な手摺支持部92を形成しておき、ビス99により手摺笠木が固定される。
[考案の効果]
本考案は、次のような効果を奏する。
A.その笠木芯材が、天井壁とその両端から垂下する両側壁とを有し、該天井壁と両側壁との両交差部および両側壁の両下縁部は厚肉に形成されているから、屈曲した手摺笠木を得る目的で笠木芯材を曲げ加工した場合に、最大の軸方向力が加わる笠木芯材の四隅部が厚肉によって補強され、いずれの方向への曲げ加工でも加工による断面形状の崩れを最小限に止めることができる上に、被覆材を当接して支持する笠木芯材に於ける四隅部の円弧面はすべて変形の少ない厚内部の外面に形成されていて、曲げ加工による位置ズレは生じないから、所定断面に設計された被覆材が手摺笠木屈曲部で装着不能や装着困難になることはなく、所期の収り状態に被覆材を装着することができる。従来提案に見るように、笠木芯材の周囲に自由端が突出するような被覆材当接用の突出片は皆無であり、このような突出片の曲げ加工による変形は基より存在しない。
B.このような断面を有する笠木芯材は、手摺完成後に手摺に加わる各方向からの曲げ応力等に対しても、大きい断面係数を有することから充分な耐力を保有し強固な手摺を得ることができると共に、手摺笠木の屈曲部に於いても笠木芯材の断面形状が維持できるので、手摺笠木屈曲部における断面変形に伴う力学的欠陥が生じない。
C.略コ字状断面に形成されている笠木芯材は、例えばベンダーマシン等を使用して曲げ加工を行う際には、マンドレルの挿入及び抜出しが容易であるから曲率の小さな曲げ加工を行うことができる。
D.笠木芯材の4隅の厚肉部の外面には、上位の該両厚肉部の外面では該天井壁外端から同側の該側壁外側面より外方に突出した位置にかけて、又下位の該両厚肉部の外面では該下縁部下方から同側の該側壁外側面より外方に突出した位置にかけて同一円の円周に添う円弧面が間隔をおいて形成されており、これに笠木芯材の各円弧面を形成する該同一円の円周に添う内周面と該内周面から突設され笠木芯材の天井壁上面両外側に当接すべき両当接突条とを有する被覆材が被覆されるので、被覆材内周面と両当接突条間に於ける天井壁上面との間、及び手摺断面の左右に於いて被覆材内周面とこれに対向する円弧面間に於ける両側壁外面との間には空隙が形成される結果、笠木芯材に被覆材を被覆する際に、これらの空隙を利用して円弧状をなす被覆材の一部を一時的に直線状に変形させて係止条部分を下位に向け変位させることにより、笠木芯材への被覆材の装着操作を容易とすると共に、笠木芯材の両下縁部外周への被覆材の係止条の係止操作を容易とすることができる。
E.かかる空隙は、手摺笠木を手摺支持具に固着する際に、ネジ頭等の取付部材の収容空間としても役立つ。
F.笠木芯材の両下縁部外周に被覆材の両係止条が係合されると、笠木芯材は外部に露出しない状態で被覆材により被覆されるので、外観が優美であると同時に利用者に対し危険をもたらすことがない。
G.被覆材は、その内周面が当接される笠木芯材の4隅部に形成された円弧面、被覆材の両当接突条が当接する笠木芯材の天井壁、及び被覆材の両係止条が係止される笠木芯材の両下縁部によって安定的に支持され、装着後のずれや回転等が効果的に防止される。被覆材に突設された両当接突条は捩れに対する抵抗力を高め、又被覆材装着時に形成される前記空隙は手摺のクッション性を向上させる。
【図面の簡単な説明】
第1図は本考案による手摺笠木を示す断面図、
第2図は壁面への固定状態を示す斜視図、
第3図は第2図に於ける手摺笠木支持部分の断面図、
第4図は階段手摺として使用した状態を示す斜視図、
第5図は第4図に於ける手摺笠木支持部分の断面図、
第6図は従来提案例を示す断面図である。
1……下縁部
2……笠木芯材
3……円弧面
4……係止条
5……被覆材
8……側壁
50……当接突条
70……天井壁
訂正の要旨 〔訂正の要旨〕
本件訂正は、願書に添付された明細書の記載を、実用新案登録請求の範囲の減縮を目的として下記(1)のとおり、明瞭でない記載の釈明を目的として下記(2)?(6)のとおり訂正するものである。
(1)明細書の実用新案登録請求の範囲の請求項1を、
「天井壁とその両端から垂下する両側壁とを有し、該天井壁と該両側壁との両交差部および該両側壁の両下縁部は厚肉に形成され、上位の該両厚肉部の外面では該天井壁外端から同側の該側壁外側面より外方に突出した位置にかけて、又下位の該両厚肉部の外面では該下縁部下方から同側の該側壁外側面より外方に突出した位置にかけて同一円の円周に添う円弧面が4個所の該厚肉部外面のそれぞれに間隔をおいて形成された略コ字状断面を有する金属製笠木芯材と、該笠木芯材の各円弧面を形成する該同一円の円周に添う内周面と該内周面から突設され該笠木芯材の天井壁上面両外側に当接すべき両当接突条とを有すると共に、該笠木芯材の両下縁部外周に係合すべき係止条をその両下端に有する略C字条断面の柔軟材料製被覆材とよりなり、該笠木芯材に対し、該被覆材はその両当接突条が該笠木芯材の天井壁上面両外側に当接され、その内周面が該笠木芯材の各円弧面に当接されると共に、その両係止条が該笠木芯材の両下縁部を覆うように係止されて、該被覆材内周面と該天井壁上面との間及び該被覆材内周面と該両側壁外側面との間には空隙が介在された状態で該笠木芯材が該被覆材により被覆されていることを特徴とする手摺笠木。」と訂正する。
(2)明細書第2頁第14行(実用新案登録公報(以下、「公報」という。)第2頁第3欄第28行参照)の「該笠木芯材の各円弧面に添う内周面」を、
「該笠木芯材の各円弧面を形成する該同一円の円周に添う内周面」と訂正する。
(3)明細書第3頁第18?19行(公報第2頁第4欄第23?24行参照)の「これに笠木芯材の各円弧面に添う内周面」を、
「これに笠木芯材の各円弧面を形成する該同一円の円周に添う内周面」と訂正する。
(4)明細書第4頁第28行(公報第3頁第5欄第26?27行参照)の「笠木芯材2の円弧面3,3,3,3に添う円弧」を、
「笠木芯材2の円弧面3,3,3,3を形成する該同一円の円周に添う円弧」と訂正する。
(5)明細書第5頁第9?10行(公報第3頁第5欄第40?41行参照)の「笠木芯材2の各円弧面3,3,3,3に添う内周面」を、
「笠木芯材2の各円弧面3,3,3,3を形成する該同一円の円周に添う内周面」と訂正する。
(6)明細書第8頁第15?16行(公報第4頁第8欄第14行?15行参照)の「これに笠木芯材の各円弧面に添う内周面」を、
「これに笠木芯材の各円弧面を形成する該同一円の円周に添う内周面」と訂正する。
異議決定日 1999-07-12 
出願番号 実願平1-139899 
審決分類 U 1 651・ 121- YA (E04F)
最終処分 維持    
前審関与審査官 高橋 祐介  
特許庁審判長 幸長 保次郎
特許庁審判官 阿部 綽勝
鈴木 公子
登録日 1996-05-30 
登録番号 実用登録第2508228号(U2508228) 
権利者 ナカ工業株式会社
東京都千代田区神田司町2丁目6番地
考案の名称 手摺笠木  
代理人 富田 健三  
代理人 富田 健三  

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