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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性 無効とする。(申立て全部成立) F16J
管理番号 1005197
審判番号 審判1998-35223  
総通号数
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2000-05-26 
種別 無効の審決 
審判請求日 1998-05-22 
確定日 1999-10-23 
事件の表示 上記当事者間の登録第2146766号実用新案「等速ジョイント用フレキシブルブーツ」の登録無効審判事件について、次のとおり審決する。   
結論 登録第2146766号実用新案の登録を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 I本件考案
本件実用新案登録第2146776号(昭和62年10月15日出願、平成7年10月25日出願公告、平成8年12月10日設定登録)に係る考案の要旨は、本件明細書及び図面の記載からみて、実用新案登録請求の範囲に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「ゴム硬度が50-80、オゾン雰囲気中での定伸長繰り返し破断回数が30万ー5000万回、100℃における空気透過量が25℃における空気透過量の4倍以下の物性を有するシリコーンゴムで作られていることを特徴とする等速ジョイント用フレキシブルブーツ。」
なお、上記「ゴム硬度」とは、JIS K63015のA形によるゴム硬度を意味し、また上記「空気透過量」は、ASTMDー1434-75M法によって測定し、面積1cm2及び厚さ1cmの試料片を圧力差1atmで1秒間に通過する空気量(ml)を意味している。また上記「オゾン雰囲気中での定伸長繰り返し破断回数」とは、次のようにして測定した破断回数を意味している。即ち、まず厚さ2mmのJIS K6301,3.2.2に示されるダンベル3号形を試験片としてゴムシートから打ち抜き、この試験片に、JIS K6301,3 2.6に示される伸び測定用の標線20mmを付した後に、その試験片を、JIS K6301,163.1及び2に示されているオゾン発生装置のある試験槽内に設けられて試験片に繰り返し定伸長を与えることができるようになっている試験機にセットする(この試験機は、試験片の一端を保持するつかみのある固定部分と、試験片の他端を保持するつかみのある往復運動をする可動部分とがある。)。そして、試験条件が、オゾン濃度が50±5ppm,標線間距離が最大40mm,最小20mm(伸長率0-100%)になるようにセットして、試験片に往復速度60回/分(cpm)での繰り返し伸長荷重を与えて試験片が破断するまでの回数が、上記破断回数である。
II請求人の主張
1 証拠方法
甲第1号証 信越化学工業株式会社 カタログ「信越シリコーン・ゴムコンパウンド・データガイド」(1986)
甲第1号証の2 財団法人 化学品検査協会「試験報告書」
甲第1号証の3 東ソー株式会社 報告書「シリコーンゴムのオゾン雰囲気中定伸長疲労試験」
甲第1号証の4 東レリサーチセンター結果報告書「シリコーンゴムのガス透過試験」
甲第1号証の5 信越化学工業株式会社 文書「シリコーンゴムコンパウンド“KE555ーU”の件」
甲第2号証 JIS K6301の規格
甲第3号証 IS06943-1984(E)「Rubber,vulcanizedーDetermination of tension fatigue(加硫ゴム、未加硫ゴムの繰り返し伸長破断試験法」の規格
2.主張の概要
甲第1号証には、シリコーンゴムであって、用途が「振動、衝撃を受ける部分のブーツ」のものとして、KE555ーU(表の品名欄第17行目)が記載されている。
このKE555ーUについて、第三者機関に物性値の測定を依頼した結果、ゴム硬度が53(甲第1号証の2)、オゾン雰囲気中での定伸長繰り返し破断回数が60万回以上又は50万回以上(甲第1号証の2又は甲第1号証の3)、100℃における空気透過量が25℃における空気透過量の2.5倍(甲第1号証の4)となり、いずれの特性も本件実用新案登録に係る考案の上記条件一を満たしている。
また、シリコーンゴムKE555ーUが本件実用新案登録に係る考案の出願以前である1986年(昭和6年)4月以降甲第1号証のカタログと共に市場で販売された商品であること、更には「販売当初から今日までその配合内容は一切変更されていない」ことも証明されている(甲第1号証の4)。
したがって、本件実用新案登録に係る考案はその出願前に販売されたシリコーンゴムKE555ーUの用途であるブーツの用途を更に等速ジョイント用フレキシブルブーツに特定したにすぎない。
よって、本件実用新案登録は、実用新案法第3条第2項の規定に違反して登録されたものであり、実用新案法第37条の規定に基づきこれを無効とする審決を求めるというものである。
また、請求人は、被請求人の主張に対して以下のように主張している。
(1)試験条件について
(1)-1 オゾン雰囲気中での定伸長繰り返し破断回数
甲第1号証の2及び甲第1号証の3には、試験条件として、試験方法はJIS K6301によるものであり、また使用した試験片はJIS3号ダンベルであることが記載されている。
弁駁書に添付した甲第2号証のJIS K6301の規格「3.2試験片]の項にJIS3号ダンベル形状の寸法が、標線距離20mm、試験片厚さ3mm以下と規定されている。試験片厚さ3mm以下ということは、この範囲であれば厚みが多少変わっても定伸長繰り返し破断回数影響しないことを意味している。そして、ゴム工業では試験片厚さは標準として2mmを使用している
被請求人は、標線を20mmにしたという記載はないと主張しているが、甲第2号証のJIS K6301の「3.4.4計算」に、「伸びは標線間距離の初期寸法L_(0)を基準に算出する」ことが記載されており、ゴム工業では、ゴムの「伸び」といえば、標線間の伸びを意味している。
更に往復周波数であるが、弁駁書に添付した甲第3号証の規格7.「Test conditions(試験条件)」の7.2「Test frequency(試験周波数)」の「NOTE(注意書)」に「1?5Hzの範囲では周波数による著しい差はない」ことが記載されている。
(1)-2ガス透過試験
ガス透過試験は、3気圧と6気圧の圧力の違いでガス透過係数に大きな差異が生じないから、6気圧で実施したにすぎない。
(2)甲第1号証の5の「配合内容は一切変更していない」ことの信憑性について
弁駁書に添付した甲第4号証は、KE555ーUの1998年10月から12月の10ロットの特性値を統計処理した結果である。
「硬さ」の平均値(X)及びそのσをみると、Xが52、σが0.6であり、X±σは51.4から52.6となり、二つのカタログの硬さに有為差はなく、「ばらつき」の範囲内である。また、伸びを除いて他の諸物性値についても同様である。(伸びは、他の物性値に比べて「ばらつき」が大きい。)したがって、カタログの改訂にあたって、その時点の平均値に変えたとしても該カタログが信憑性がない理由とはならない。
(3)等速ジョイント用フレキシブルブーツと甲第1号証の「振動、衝撃を受ける部分のブーツ」の関係について
KE555ーUが被請求人が上申書に添付した乙第3号証の「自動車」以外の欄に記載されているのであればともかく、いずれの欄にも記載されていないのであるから、KE555ーUの用途として等速ジョイント用フレキシブルブーツを否定するものではない。
III被請求人の主張
1.証拠方法
乙第1号証 信越化学工業株式会社 カタログ「信越シリコーン・ゴムコンパウンド」(1994)
乙第2号証 KE555-U カタログ物性の比較表
乙第3号証 乙第1号証のカタログの補充
乙第4号証 本件明細書に記載された条件(1Hz)で被請求人がした「KE555-Uオゾン雰囲気中での定伸長疲労試験」の報告書。
2.主張の概要
(1)試験条件について
甲第1号証の2から甲第1号証の4までにおける試験条件は、以下のとおり本件明細書に記載されている試験条件に従っていない。
(1)-1 オゾン雰囲気中での定伸長繰り返し破断回数
本件明細書には、試験片厚さは2mm、標線は20mm、伸長率は0?100%(標線間距離20mm?40mm)、往復速度(周波数)は60回/分(60cpm1Hz)、試験槽はJIS K6301,163.1及び2準拠と記載されているのに対して、甲第1号証の2では、試験片厚さは記載されておらず、標線を20mmにしたという記載はなく、伸長率は0?100%と記載されているが標線間距離20mm?40mmの繰り返しで試験を実施したという記載はなく、往復速度(周波数)は0.5Hzと試験条件が異なる。
同じく、甲第1号証の3では、試験片厚さは記載されておらず、標線を20mmにしたという記載はなく、伸長率は0?100%と記載されているが標線間距離20mm?40mmの繰り返しで試験を実施したという記載はなく、往復速度(周波数)は1.54Hzと試験条件が異なる。
乙第4号証は、KE555ーUを本件明細書に記載した条件(1Hz)で試験した結果を示し、資料10本の内3本が30万回未満で破断している。すなわち、KE555ーUの全てが、本件実用新案登録に係る考案のオゾン雰囲気中での定伸長繰り返し破断回数を満たすわけではない。
(1)-2ガス透過試験
本件明細書には、試験方法はASTM Dー1434-75M法と記載されていて、試験圧力は規格(ASTM)中に0.5?3気圧と記載されているのに対して、甲第1号証の4では、試験方法はASTM D-1434に概ね準拠と記載されていて、試験圧力は6気圧と規格(ASTM)に記載された条件と異なる。
(2)甲第1号証の5の「配合内容は一切変更していない」ことの信憑性について
甲第1号証の5で「配合内容は一切変更していない」は、以下の理由で信慧性がない。
同じシリコーンゴムKE555ーUでも、甲第1号証に記載されたものと、甲第1号証の後に発行された乙号証のカタログに記載されたもでは乙第2号証のように物性の相違がある。
甲第1号証の5の作成名義人の足立修三氏は本件実用新案登録に係る考案の特性について知悉している筈はない。
空気加熱老化試験についてみると、甲第1号証に記載された硬さの変化は、250℃で72時間後の変化率が+2%であるのに対して、乙1号証では200℃で72時間後の変化率が+8%であることは、試験結果の「ばらつき」を考慮しても通常考えられないことで、材料が相違するものと推定される。
乙第3号証(乙第1号証のカタログで未提出の部分を補充したもの)の末尾に「当カタログのデータは、規格値ではありません。また記載内容は、性能向上、仕様変更などのため断りなく変更することがあります。」と記載してある点に注目すべきである。
(3)等速ジョイント用フレキシブルブーツと甲第1号証の「振動、衝撃を受ける部分のブーツ」の関係について
甲第1号証の「振動、衝撃を受ける部分のブーツ」が「等速ジョイント用フレキシブルブーツ」を含むとは認められない。
等速ジョイント用フレキシブルブーツは、自動車の業界において用いられるのに、乙第3号証の第2頁の産業別業界一覧において、「業界分類」の「自動車」に使用される「代表製品」にKE555ーUが記載されていないことに注目すべきである。
振動、衝撃を受ける機械として、例えば土木用のハンマ、ハンドブレーカなど多くのものが挙げられる。甲第1号証の「振動、衝撃を受ける部分のブーツ」とは、かようなハンドブレーカ等を意図したものであって、等速ジョイント用フレキシブルブーツ等を意図したものではない。
IV当審の判断
1 カタログに記載されたシリコーンゴムコンパウンドと試験報告されたシリコーンゴムの関係
甲第1号証の記載によれば、「信越化学工業株式会社製のシリコーンゴムコンパウンドのうち、品名KE555ーUなるものは、加硫剤名C-8,標準添加量2.0によってシリコーンゴムとされ、その用途に振動・衝撃を受ける部分のブーツが含まれていること。」及び「品名KE555ーUなるシリコーンゴムコンパウンドについて記載されているカタログは、昭和61年4月に作成されていたこと。」が認められる。
甲第1号証の2(報告日 平成9年3月28日),甲第1号証の3(報告日.平成9年4月17日)及び甲第1号証の4(報告日 平成9年4月3日)の試験の対象となったシリコーンゴムは、いずれも、KE555ーU 100部とC-8 2部からなるものと認められる。
そして、甲第1号証の5の記載によれば、信越化学工業株式会社のKE555ーUなるシリコーンゴムコンパウンドは、平成6年4月以降、甲第1号証のカタログと共に公然と販売されていて、販売当初から平成9年4月までその配合内容が変えられていないものと認められる。
また、シリコーンゴムコンパウンドの配合内容を変えなければ、該シリコーンゴムコンパウンドからなるシリコーンゴムの特性は変わるものではないと認められる。
してみると、甲第1号証の2,甲第1号証の3及び甲第1号証の4の試験の対象となったシリコーンゴムは、信越化学工業株式会社製の品名KE555ーUなるシリコーンゴムコンパウンドから得られたもの(以下、「KE555-Uシリコーンゴム」という。)であって、該KE555ーUは、振動、衝撃を受ける部分のブーツを用途とするものとして、本件の出願日の前である、昭和61年4月には、公知であって、公然に販売されたものと認める。
なお、被請求人は、甲第1号証の5の「配合内容は一切変更していない」は信憑性がない旨、上記IIIの2.(2)のように主張している。
しかしながら、被請求人が指摘する甲第1号証に記載されたKE555ーUと、乙1号証のカタログに記載されたKE555ーUとの物性の相違は、甲第4号証にもみられるようにこの種製品に現れる「ばらつき」の範囲内のものと認められる。
特に、被請求人が指摘する、「甲第1号証に記載された硬さの変化は、250℃で72時間後の変化率が+2%であるのに対して、乙1号証では200℃で72時間後の変化率が+8%であること」は、加熱温度の差に起因する硬さの変化にすぎず、物性そのものの差ではないものと認められる。
また、被請求人は甲第1号証の5の作成名義人の足立修三氏は本件実用新案登録に係る考案の特性について知悉している筈はないと主張しているが、該特性を知悉しなければ「配合内容は一切変更していない」ことを知悉できないものでもない。
これらを総合すると、被請求人の上記主張に合理性があるとすることができない。2 KE555ーUシリコーンゴムの特性について
(1)ゴム硬度について
甲第1号証の2にはKE555ーUシリコーンゴムのゴム硬度に関して次の事項が記載されている。
▲1▼硬さ(HsーJIS A)が53であること。
▲2▼試験方法がJIS K6301であること。
これらの記載からみて、KE555ーUシリコーンゴムと本件考案のシリコーンゴムは、ゴム硬度において一致していると認めることができる。
(2)オゾン雰囲気中での定伸長繰り返し破断回数について
甲第1号証の2には、破断回数について次のような事項が記載されている。
▲1▼試験方法はJIS K6301によるものであって、試験条件はオゾン濃度が50±5pphm、温度が40±2℃、試験片がJIS3号形、伸長が0?100%動的、試験回数が60万回、周波数が0.5Hzであること。
▲2▼▲1▼の試験方法及び条件において、き裂の状態が異常なしであったこと。
甲第1号証の3には、破断回数について次のような事項が記載されている。
▲3▼試験条件は、オゾン濃度が50ppkm、温度が40±2℃、試験片がJIS3号形ダンベル、伸長率が0?100%、試験回数が50万回、周波数が1.54Hz、試験機がデマツチヤ式オゾンウェザーメーター(型式.OMS-HD-5Cu)スガ試験機株式会社製であること。
▲4▼▲3▼の試験方法及び条件において、亀裂の状態が異常なしであったこと。
そして甲第2号証には、加硫ゴム物理試験方法であるJIS K6301に関して次のような事項が記載されている。
▲5▼3号形のダンベル状の試験片の平行部分の厚さは、3mm以下で標線距離は20mmであること。
▲6▼ダンベル状試験片は、打ち抜き型によって打ち抜かなければならないこと。
▲7▼ダンベル状試験片の研磨後の平行部分の厚さは原則として2?3mmとし、加硫したゴム板からダンベル状試験片をとる場合、2?3mmの厚さにプレス加硫したゴム板からとること。
▲8▼伸びの計算は、標線距離の変化を求めることによって行うこと。
これらの記載からみて、KE555ーUシリコーンゴムと本件考案のシリコーンゴムは、オゾン雰囲気中での定伸長繰り返し破断回数において一致していると認めることができる。
なお、被請求人は、甲第1号証の2及び甲第1号証の3の試験条件は、往復速度において本件考案のものと相違し、被請求人が自らの試験においてKE555ーUシリコーンゴムの破断回数は、試料10本の内3本が30万回未満で破断したとして、KE555ーUシリコーンゴムと本件考案のシリコーンゴムの特性が相違する旨主張している。
しかしながら、第三者が実施した複数の試験において、本件考案の往復速度(周波数)1Hzより小さい方(0.5Hz)と大きい方(1.54Hz)の双方とも、30万回より相当多い60万回と50万回でも破断しないことからみて、それらのほぼ中間である1Hzの往復速度(周波数)において30万回未満で破断が生じるとすることに合理性がないので、上記被請求人の主張は採用することができない。
(3)空気透過量について
甲第1号証の4には、KE555ーUシリコーンゴムの空気透過量について次のような事項が記載されている。
▲1▼KE555ーUシリコーンゴムの25℃及び100℃における空気透過率をASTM D1434(差圧法)に概ね準拠して評価したこと。
▲2▼試験条件は、温度が25℃,100℃、試験ガスが乾燥空気、試験ガス圧力差が6Kgf/cm^(2)=約0.6MPa=約6atm、試料厚さが615μm、透過面積が15.2cm^(2)であること。
▲3▼着目する1番目の成分ガスに関する透過率Piを下式から求めること。
ここに、i:i番目の成分ガスの透過量、Pi:i番目の成分ガスの透過率(透過係数)、Pi1i番目の成分ガスの高圧側圧力,Pi2:i番目の成分ガスの低圧側圧力=0、L:試料厚さ、A:試料におけるガスの透過面積、t:透過ガスを貯蔵する時間(透過時間)である。
▲4▼空気透過率の平均値は、25℃のときで2.8×10^(-8)cm^(3)・cm/(cm^(2)・s・cmHg)であり、100℃のときで7.1×10^(-8)cm^(3)・cm/(cm^(2)・s・cm Hg)であること。
上記▲3▼の記載事項によると、ガスの透過量は、ガスの圧力差、ガスの透過面積、時間に比例し、試料厚さに反比例するものであって、その比例係数がガスの透過率であるとみることができる。
そこで、25℃における空気透過量に対する100℃における空気透過量の比は、25℃における空気透過率に対する100℃における空気透過率の比と同じと解することができるので、その平均値は、7.1×10^(-8)/2.8×10^(-8)≒2.5であって、4以下であることは明らかである。
ここでは、ガスの圧力差、ガスの透過面積、時間、試料厚さの相違は、空気透過量の25℃におけるものと100℃におけるものの比においては、相違として現れないと解することができる。
してみると、こららの記載事項からみて、KE555ーUシリコーンゴムと本件考案のシリコーンゴムは、空気透過量に係る特性において一致していると認めることができる。
なお、被請求人は、本件考案のシリコーンゴムの特性を特定するための試験条件が0.5?3気圧であるのに対して、甲第1号証の4の試験条件が6気圧であるので、KE555ーUシリコーンゴムと本件考案のシリコーンゴムの特性が相違する旨主張している。
しかしながら、ガスの圧力差が1気圧と6気圧で相違する場合において、両者の空気透過量の25℃におけるものと100℃におけるものの比を計算するとき、両者において格別な相違として現れるものと解することができないので、上記請求人の主張は採用することができない。
(4)特性についてのむすび
以上のとおり、本件考案において特定されるシリコーンゴムの特性とKE555-Uシリコーンゴムの特性を対比すると、両者に相違することがなく一致しているので、両者の特性は同じものと認めることができる。
3.KE555ーUシリコーンゴムを等速ジョイント用フレキシブルブーツに適用することの容易性について
甲第1号証には、KE555ーUシリコーンゴムの用途として「振動、衝撃を受ける部分のブーツ」が例示されている。
そして、等速ジョイント部にフレキシブルブーツを設けることは従来周知であって、該等速ジョイント部が振動、衝撃を受ける部分と解することができる。
してみると、当業者であれば、等速ジョイント部のフレキシブルブーツの材料を選択する際に、甲第1号証に記載されたにKE555ーUシリコーンゴムに接すれば、まず、該KE555ーUシリコーンゴムを採用することは自然であり、その耐久性についての効果も当業者が実施に際して通常行う試験などを通してきわめて容易に得られるものと認められる。
したがって、本件出願前に公知であって、公然実施されたKE555ーUシリコーンゴムに関する考案を従来周知の等速ジョイント用フレキシブルブーツに適用することは、当業者にとって格別困難なこととは認められない。
なお、被請求人は、この点に関して、「等速ジョイント用フレキシブルブーツは、自動車の業界において用いられるのに、乙第3号証の第2頁の「業界分類」の「自動車」に使用される「代表製品」にKE555ーUが記載されていないことに注目すべきである。」と主張している。
しかしながら、乙第3号証の第2頁の産業別用途一覧において、「業界分類」の「自動車」に使用される「代表製品」は、「業界分類」の「自動車」のダイヤフラム,プラグブーツ等の「用途例」に対応したものであって、「用途例」はあくまで例であり、ここに自動車関係の全てが記載されているわけではなく、しかも、KE555ーUが乙第3号証の第2頁の産業別用途一覧の「自動車」以外の欄に記載されているのであればともかく、いずれの欄にも記載されていないのであるから、上記被請求人の主張に合理性がなく、これをもって、KE555ーUシリコーンゴムの用途として等速ジョイント用フレキシブルブーツを阻害する根拠とすることはできない。
4.むすび
以上のとおりであるから、本件実用新案登録に係る考案は、甲第1号証として提示されたKE555ーUシリコーンゴムに係る考案及び上記従来周知の考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案することができたものと認められる。
よって、本件実用新案登録は、実用新案法第31条第2項の規定に違反してされたものであり、実用新案法第37条第1項第1号の規定により、これを無効とすべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 1999-07-07 
結審通知日 1999-07-23 
審決日 1999-07-29 
出願番号 実願昭62-157587 
審決分類 U 1 112・ 121- Z (F16J)
最終処分 成立  
前審関与審査官 千葉 成就野村 亨  
特許庁審判長 舟木 進
特許庁審判官 西村 敏彦
佐藤 洋
登録日 1996-12-10 
登録番号 実用登録第2146766号(U2146766) 
考案の名称 等速ジョイント用フレキシブルブーツ  
代理人 高塚 一郎  
代理人 浅村 皓  
代理人 浅村 肇  
代理人 森 徹  
代理人 吉田 裕  
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