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審決分類 |
審判 全部無効 2項進歩性 無効としない B65D |
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管理番号 | 1005205 |
審判番号 | 審判1998-35067 |
総通号数 | 5 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 実用新案審決公報 |
発行日 | 2000-05-26 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 1998-02-20 |
確定日 | 1999-10-18 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第1712320号実用新案「包装用トレー」の登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 |
理由 |
1.本件登録実用新案 本件実用新案登録第1712320号の考案(以下「本件考案」という。)は、昭和54年4月11日に出願され、出願公告(実公昭62-15155号)された後、昭和62年12月21日に設定登録されたものであって、その考案の要旨は、明細書および図面の記載からみて、実用新案登録請求の範囲に記載された次のとおりのものと認める。 「被包装物を盛付けしたトレーの上面にストレッチフィルムをオーバーラップして糊付面に接着させたのちトレーの周囲上縁の近傍でフィルムを切断して包装体を形成するために使用するトレーであって、平坦な底板と、上記底板の周囲から上方へ拡開傾斜して一体に延長された周壁と、上記周壁の上部外側面全周に形成された略垂直な接着剤塗布面とを具備し、上記トレーの接着剤塗布面を、多数個のトレーを重ね合わせたとき、各トレーの接着剤塗布面が露呈して連続した略垂直な面として柱状を呈する如く形成したことを特徴とする包装用トレー。」 2.当事者の主張 (1)請求人の主張 新たな証拠方法(甲第4号証)を追加し、同甲号証には本件実用新案登録に対して、先に請求した無効審判(平成6年審判第17428号)の審決(甲第6号証)において公知でないとされた事項が記載されているので、本件考案は、甲第2号証に記載された考案および甲第3号証?甲第5号証に記載された考案にもとづき当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、その考案に係る実用新案登録は、実用新案法第3条第2項の規定に違反してされたものであり、無効とすべきものである。 そして上記の主張事実を立証するために引用した証拠方法は次のとおりである。 甲第1号証:実公昭62-15155号公報(本件公報) 甲第2号証:実公昭39-38574号公報 甲第3号証:実願昭51-126274号(実開昭53-45102号)のマイクロフィルム 甲第4号証:米国特許第3593909号明細書 甲第5号証:実願昭48-27622号(実開昭49-128604号)のマイクロフィルム 甲第6号証:平成6年審判第17428号審決 (2)被請求人の主張 新たに引用された甲第4号証には、本件考案の技術思想を開示、示唆していないので、本件考案は、甲第2号証乃至甲第5号証に記載された考案にもとずききわめて容易に考案をすることができたものでないので、その考案に係る実用新案登録は無効にされるものではない。 そして上記の主張事実を立証するために引用した証拠方法は次のとおりである。 乙第1号証:米国特許第3593909号明細書(甲第4号証)の訳文 乙第2号証:平成7年(行ケ)第173号審決取消訴訟事件判決 3.当審の判断 (1)甲第2号証に記載された考案 「大体平らな底の部分と、上方に延びた側壁と、前記側壁の頂部から下方に延び、該側壁の全周囲のまわりに接している唇とを持った容器、前記容器の中に置かれた包装さるべき品物、および前記品物と容器との頂部を覆い、前記容器の全周囲のぐるりに前記唇の下に延びた後縁のある熱収縮性フィルム材料のシートを備えて居り、前記シート後縁は前記容器の唇と拘束係合をするように唇の全周囲の下に収縮され、前記シートの残りの部分は品物と容器との頂部を覆うて緊張したしわのないカバーを形成するように熱収縮されている所の容器包装。」(実用新案登録請求の範囲)が記載されており、さらに、容器の細部に関して次のとおり記載されている。 「容器の側壁は一般に底から外方に開いていて、容器を取扱つたり貯蔵したり、その他の目的に対して容器を整然と積重ねることを可能としている。」(2頁左欄5?8行) 「下方に延びた唇あるいはフランジは、フイルム・カバー・シートを緊張する好適の縁を形成し、接着剤を施こすことの出来る表面積を持ち」(2頁左欄14?17行) 「側壁の頂部から下方に延びて僅かに開いている唇24が縁21の外縁に接して容器の全周囲のまわりに備えられている。」(2頁右欄17?19行) これらの記載によると、甲第2号証には、 「被包装物を収納したトレーの上面にフィルムをオーバーラップして糊付面に接着させたのちトレーの周囲上縁の近傍でフィルムを切断して包装体を形成するために使用するトレーであって、平坦な底板と、上記底板の周囲から上方へ拡開傾斜して一体に延長された側壁と、上記側壁の頂部の外周面全周から下方に延びて僅かに開いている接着剤を施すことの出来る表面積を持つ唇とを具備した包装用トレー。」 の考案(以下「甲第2号証に記載された考案」という。)が記載されていると認める。 (2)対比・検討 本件考案と甲第2号証に記載された考案とを対比するに、甲第2号証に記載された考案における「容器」は、皿状を呈し、品物を収納するものであるから、トレーということができ、また、甲第2号証に記載された考案における「唇」は、本件考案における「周壁の上部外周面全周に形成された略垂直な面」に相当するので、本件考案と甲第2号証に記載された考案とは、被包装物を盛付けしたトレーの上面をフィルムで被覆して包装体を形成するために使用するトレーであって、平坦な底板と、上記底板の周囲から上方へ拡開傾斜して一体に延長された周壁と、上記周壁の上部外側面全周に形成された下方に延びる接着剤塗布面とを具備した点で一致し、次の(イ)、(ロ)および(ハ)の点で相違している。 (イ)周壁の上部外側面全周に形成された下方に延びる面は、本件考案では、略垂直な接着剤塗布面として構成されているのに対し、甲第2号証に記載された考案では、僅かに開いた接着剤塗布可能な唇として構成されている点。 (ロ)周壁の上部外側面全周に形成された下方に延びる面は、本件考案では、多数個のトレーを重ね合わせたとき、各トレーの接着剤塗布面が露呈して連続した略垂直な面として柱状を呈する如く構成されているのに対し、甲第2号証に記載された考案では、唇は下方に向かい僅かに開いているので、多数個のトレーを重ね合わせても、その面は鋸歯状となり連続した略垂直な面を呈しない点。 (ハ)包装体として使用する際のフィルムが、本件考案では、ストレッチフィルムであるのに対し、甲第2号証に記載された考案では、熱収縮性フィルムである点。 そこで、上記相違点について検討するに、相違点(イ)で指摘した、本件考案が備え、甲第2号証に記載された考案が備えていないとした構成は、先の審決において公知の事項でないとされた構成であり、請求人は上記のとおりこの構成は、甲第4号証に記載されていると主張するので、まず、甲第4号証に請求人の主張するような事実が記載されているかどうか検討する。 甲第4号証には、「少量の液体用の反応容器で、鋭い金属管で突き破るようにした蓋を備えており、この蓋は容器の口全体を実質的に覆う箔からなっており、この箔は破られた穴のふちが金属管の外壁に弾性変形して密着するように十分な弾性を備えている。」(特許請求の範囲1)の発明が記載されており、おり、さらに、その発明の好ましい例として、「この反応容器の上端には外方に広がる端フランジ2を備えており、箔3がフランジ上に展張され、その周囲に融着されている。」(2欄34?37行)と記載されている。 ところで、上記引用箇所の文脈からして、箔はフランジの上面では展張されるだけで、容器本体に対する融着はフランジの上面以外で行っていると解することもできるので、「その周囲」は、フランジの外側面を意味するものと取れないこともないが、甲第4号証には、端フランジの外側面が垂直であると文言をもって記載されていないし、さらには、その外側面が接着剤塗布面であることも何等記載されていない。 また、甲第2号証、甲第3号証および甲第5号証には、相違点(イ)で指摘した、本件考案が備え、甲第2号証に記載された考案が備えていないとした構成は記載されていない。 なお、甲第4号証に記載された反応容器は、多数重ね合わせたとき、フランジの周壁面が連続した略垂直な面として柱状を呈するべく構成されているともいえない。 (3)まとめ 甲第2号証、甲第3号証、甲第5号証のいずれも、先の審決(甲第6号証)において証拠方法として検討されたものであり、本件考案が、それらの甲号証に記載された考案にもとづき当業者がきわめて容易に考案をすることができないことは、平成7年(行ケ)第173号審決取消訴訟事件判決(乙第2号証)において維持された先の審決(甲第6号証)で説述したとおりであり、甲第4号証には、先の審決(甲第6号証)で、周知または公知でないと指摘した構成が記載されていないから、さらに検討するまでもなく、本件考案は、甲第2号証?甲第5号証に記載された考案にもとづき当業者がきわめて容易に考案をすることができたものということはできない。 4.むすび 以上のとおりであるから、請求人の主張する理由および引用した証拠方法によって、本件考案に係る登録を無効にすることはできない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 1998-09-18 |
結審通知日 | 1998-09-29 |
審決日 | 1998-10-09 |
出願番号 | 実願昭54-48866 |
審決分類 |
U
1
112・
121-
Y
(B65D)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 大槻 清寿、新井 正男、橋爪 良彦 |
特許庁審判長 |
佐藤 久容 |
特許庁審判官 |
藤 文夫 高木 彰 |
登録日 | 1987-12-21 |
登録番号 | 実用登録第1712320号(U1712320) |
考案の名称 | 包装用トレー |
代理人 | 峯 唯夫 |
代理人 | 城村 邦彦 |
代理人 | 白石 吉之 |
代理人 | 江原 省吾 |
代理人 | 田中 秀佳 |