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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01M
管理番号 1005210
審判番号 審判1998-630  
総通号数
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2000-05-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1998-01-08 
確定日 1999-11-05 
事件の表示 平成4年実用新案登録願第4634号「円筒形集合電池」拒絶査定に対する審判事件(平成5年8月27日出願公開、実開平5-65054)について、次のとおり審決する。   
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 1.手続の経緯・本願考案
本願は、平成4年2月7日に出願されたものであって、その考案は、平成9年9月16日付で補正された明細書及び図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。
「イ.円筒形外装ケースにその内径よりすこし小さな外径の安全弁付き円筒形素電池が複数個収納され、
ロ.その外装ケースの底板部と蓋板部との間で各素電池が直列接続状態に当接されて保持され、前記底板部または前記蓋板部に取り付けられた端子部と前記素電池とが内部配線された円筒形集合電池であって、
ハ.前記外装ケース内における素電池と素電池の当接位置の周囲にあく隙間に対応する部分の前記外装ケースの円筒部に、その隙間に臨んで前記安全弁の至近位置に小さなガス抜き穴が多数形成され、
ニ.そのガス抜き穴が前記外装ケース円筒部の外周を被覆する薄い外装フィルムで塞がれていることを特徴とする円筒形集合電池。」(以下、これを本願考案という。なお、符号イ?二は、審決の便宜上付与したものである。)
2.引用例とそれに記載及び認定される事項
原査定の拒絶の理由に引用した、本願出願前に頒布された刊行物である実願昭59-21072号(実開昭60-133575号)のマイクロフイルム(以下、引用例という。)には、次の事項が記載されているものと認められる。
◆引用例には、集合電池の収納容器に関して、
摘示1:電流引出し端子を機密性のある構造に改良すると収納容器内部が密封された状態となる。このため一般ユーザーがこの密閉した収納容器を用いた集合電池を間違って使用した場合、収納されている電池からガスが放出されると内圧が上昇するため収納容器の耐圧が破れ、収納容器が破裂する危険性がある。(第2頁第14?20行)
摘示2:本考案の目的は、このような危険性を除去したもので、その要旨は、内部に複数個の円筒形電池を収納した集合電池において、前記集合電池の収納容器の一部にガス排出孔を設け、該ガス排出孔の上面にラベルを貼付けることにより容器内を機密に保持し、容器内圧の異常上昇時に前記ラベルの貼付部を内圧により開封するように構成する(第3頁第1?8行)、及び、フィルムからなるラベルが貼り付けられる(第4頁第2行)、が記載され、そして、直方体状の外装ケースの実施例を示す第1,2図が示されている。
これら事項より、引用例には、
a.直方体状の外装ケースに安全弁付き円筒形素電池が複数個収納される、
b.前記外装ケース内で前記素電池は直列に接続されるとともに、その外装ケースに取り付けられた端子部に接続されて内部配線される、
c.前記外装ケースに、ガス抜き穴が形成される、
d.前記ガス抜き穴が前記外装ケース一部を被覆する薄いフイルムからなるラベルで塞がれている、ことが開示されているものと認められる。
(なお、このa?dの認定は、請求人自身が審判請求書で引用例について述べた事項と同等である。)
3.対比・判断:
本願考案と引用例記載の事項とを対比すると、両者は、電池内から外装ケース内に排出されたガスにより外装ケースの内圧が高まって、外装ケース自体が破壊されたり、該ケース内のガスに引火するのを防止するために、外装ケース内が所定圧以上になるとガス抜き孔を被覆している保護膜が破れ、ガスをケースに形成されたガス排出穴を介してケース外部に排出させるという課題とその対処策は共通している。
そして、その具体的な構成については、請求人が審判請求書で述べるように、集合電池において円筒状の外装ケースは周知(例えば、実開昭49-5282号公報参照)であり、また、引用例のラベルは本願考案の外装フィルムに相当するから、本願考案の上記イ、口、二の構成は、引用例の上記a、b、dに実質上開示されており、そして、引用例には、上記事項cに示されているように、本願考案が特徴として備えている上記構成事項ハのうち、「外装ケースにガス抜き穴が形成される。」という点は示されている。
しかしながら、引用例には、本願考案の上記構成事項ハの「前記外装ケース内における素電池と素電池の当接位置の周囲にあく隙間に対応する部分の前記外装ケースの円筒部に、その隙間に臨んで前記安全弁の至近位置に小さなガス抜き穴が多数形成され、」のうち、ガスを抜くための「素電池相互の当接隙間に臨んで安全弁の至近位置に小さなガス抜き穴を多数形成する」という要件が備えられておらず、引用例の具体的な実施例では、外装ケース内に充満するガスを1つのガス抜き穴から外部に放出している点で相違している。
以下、この相違点について検討する。
請求人はこの点に関し、ガス発生箇所全てに複数のガス抜き穴を設けていないと、素電池の外周面と外装ケースの内周面との間に隙間がない場合には、素電池から放出されるガスは、素電池が当接してその周囲にあいている隙間に充満し、単一のガス抜き穴しか有さない外装ケースではガスを速やかに放出できず内圧が高まり破裂の危険があると主張する。
そもそも、密閉容器の破裂防止のために、容器内のガスを放出する穴を設けるという場合に、その穴はガスが存在する箇所に設けなければならないことは道理であるから、発生したガスが、容器内で流動できない或いは流動しにくい構造の場合には、そのガスが発生し、滞る場所に穴を設ける必要があることは自明である。
してみれば、所定圧を超えると被覆フィルムが破れ、容器ケースに形成されたガス排出穴を介してガスを外部に排出させるという解決手段が既に知られている技術水準において、ガスが流動しにくい構造の容器内のガスの排出を考えるとき、ガスの発生源近傍であり、且つ、ガスの滞留する空間毎に、ガス排出用の穴を設けることは、上記従来の対処手段の延長上にして、しかも極めて至近の思考範囲のものであり、格別の創意工夫を要すことなく想い到るものと認められる。
そして、その穴を、具体的に、ガス発生源である素電池の当接位置周囲にあく隙間付近に小さく、多数形成することは、放出されるガス圧力に応じて必要な放出穴面積等を考慮して当業者が適宜になし得る設計的事項と認められ、その作用効果も当然に予期しうる程度のものと認められる。
結局、本願のように「容器内の隙間でガス発生箇所になる近傍全てに小さな複数のガス抜き穴を設け」て、即ち、ガス抜き穴の場所とその数とを定めて、本願考案を構成することに格別に困難性があったものとは認められない。
4.むすび
したがって、実用新案登録が、物品の形状構造それらの組み合わせを登録の対象とするとはいえ、考案は自然法則を利用した技術的思想の創作であって、登録要件として、公知のものに対して進歩性を有していなければならないところ、本願考案は、上記引用例に記載の事項及び周知の事項に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものと認められるから、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 1999-08-03 
結審通知日 1999-08-17 
審決日 1999-08-16 
出願番号 実願平4-4634 
審決分類 U 1 8・ 121- Z (H01M)
最終処分 不成立    
前審関与審査官 小川 武  
特許庁審判長 小野 秀幸
特許庁審判官 山岸 勝喜
柿沢 恵子
考案の名称 円筒形集合電池  
代理人 原島 典孝  
代理人 鈴木 知  
代理人 一色 健輔  

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