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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G10K
管理番号 1005218
審判番号 審判1996-16342  
総通号数
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2000-05-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1996-09-26 
確定日 1999-11-17 
事件の表示 平成3年実用新案登録願第69061号「複合制振板材」拒絶査定に対する審判事件(平成5年3月12日出願公開、実開平5-20098)について、次のとおり審決する。   
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 1.手続きの経緯、本願考案の要旨
本願は、平成3年8月29日の出願であって、その考案の要旨は、平成8年6月21日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲第1項に記載された次のとおりのものと認める。
「所定形状の基板に対して重ね合わされる複合層の上記基板に対する相対変動により、基板に加わる振動エネルギを減衰させる複合制振板材において、上記複合層が上記基板に接着すると共に低弾性率を示す粘弾性体層と、この粘弾性体層に接着する剛性材からなる拘束層と、この拘束層に接着する軽量厚板からなる自由層とを順次重ね合わせて形成されており、上記自由層を軽石粒を混入したアスファルトで形成し、上記自由層の厚さを上記基板の厚さの2倍より大きくしたことを特徴とする複合制振板材。」
2.当審の拒絶理由
これに対して、当審において平成11年3月17日付で通知した拒絶の理由の概要は、本願考案は、特開昭59-12497号公報(以下、引用例1という)、特開昭50-9401号公報(以下、引用例2という)及び特開昭52-63701号公報(以下、引用例3という)に記載された考案に基いて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができない、というにある。
3.引用例の記載
引用例1には、以下の点の記載がある。
・「本発明は、制振方法、特に自動車車体のような連続的な振動入力のある発音部に用いて騒音低減効果の高い制振方法に関する。」(公報第1頁左下欄第16?18行)
・「粘弾性物質の特性を利用し、構造体の振動を減衰し、騒音発生を低減する材料を制振材と称するが、制振材は、作用機構の点から、次の2種に大別できる。すなわち、その第一は粘弾性物質の伸縮変形による内部発熱を利用して被制振体の振動減衰をはかる単層型制振材で、第二は、粘弾性物質を比較的高い弾性率をもつ拘束層で挟み付けることにより剪断変形を生じさせることにより同様に振動減衰をはかる積層型制振材である。」
(同第1頁右下欄第8?17行)
・「従来の制振方法にあっては、制振材層が厚くすなわち重量が大でなければ、振動減衰性能の低い単量型制振材または振動減衰性能は比較的高いが、軽量の積層型制振材の一方のみまたは双方を別々に用いる方法となっていたため、単量型制振材にたよると重量がかさみ、自動車のように軽量化が望まれる対象物には不利であった。また、積層型制振材は拘束層として金属を用いようが、あるいは硬化性樹脂組成物を用いようが、制振材の価格が単層型のものより高くなり、軽量で高い減衰性能を発揮することだけが利点であるにすぎないという問題点があった。」(同第2頁右上欄第15行?同頁左下欄第6行)
・「第1図に示すように、被制振体1であるパネル体の片面には、粘弾性層2および拘束層3よりなる積層型制振材4が施されて、制振処理されている。この積層型制振材4の拘束層3の表面には、実質的に均一な質量分布を有するシート状物5が密着されて制振処理が施されている。」(同第3頁左上欄第7?12行)
・「均一質量分布シート材料としては、さきに単層型制振材として挙げた熱融着性アスファルトシ一トは、比重が1.5以上と充分大きく、また価格も他の合成樹脂系ホットメルト材とは比較にならぬほど安価であるから、特に好ましい材料である。しかして、この均一質量分布シート状物の比重は好ましくは1.4以上である。これは1.4未満では制振材層の厚さがいたずらに厚くなり、不利となるからである。」(同第3頁左下欄第3?11行)
・「実施例1
第1表に示す組成を有する厚さ05mmのブチルゴム系粘弾性層、第2表に示す組成を有する厚さ1mmのエポキシ樹脂系拘束層および第3表に示す組成を有する厚さ1.8mmのアスファルトシートを順に重ね、これを厚さ0.8mmの鋼板上へ載置したのち、140℃で50分間加熱して拘束層の硬化および各層間の密着をはかった。」(同第3頁左下欄第13?20行)
・「 第 3 表
成 分 重量部
アスファルト 100
再生ゴム 15
タルク 115
アスベスト 30
以上を二一ダで溶融混合したのち、シート化した。」(同第4頁左上欄第2?8行)
引用例2には、以下の点の記載がある。
・「本発明者らはアスファルト合材の吸音特性に着目し、特に低音域において十分なる吸音効果を得る方法について研究を行ない、本発明を完成したのである。すなわち、本発明は1.5?10mmの範囲の粒径を有する骨材と該骨材の重量に基づいて3?5%の量の結合材からなり、かつ空隙率を15?40%とした吸音性構造体である。」(公報第1頁右下欄第12?19行)
・「骨材としては、砂、砂利、砕石、木材チップ、木材片、プラスチック片、繊維、金属粒子などの固体を使用できる。また、軽量の火山石、パーライト、軽石、シラス等や石灰石、ドロマイト等の粉末、コークス、カーボンブラック等の炭素製品も利用できる。」(同第1頁右下欄第20行?第2頁左上欄第5行)
・「結合材は瀝青物またはその混合物であって、主にアスファルトを使用する。」(同第2頁左上欄第10?11行)
引用例3には、以下の点の記載がある。
・「パーライト、蛭石、軽石、火山灰、シリカ、発泡シリカ、雲母、硅石、雲母の層間に産出する軽量無機物、フライアッシュ、硅藻土、鹿沼の土、九州のしらす、石膏、石綿、岩綿、ガラス繊維、発泡コンクリート、耐熱材を含ませた鋸屑、硝子抽出後の残土若しくはアタパルガイト等の単体若しくはいずれか二種以上の混合物にアスファルト、耐熱接着剤又は耐水接着剤を含ませてなることを特徴とする防吸音材。」(特許請求の範囲、公報第1頁左下欄第5?13行)
4.対比
本願考案(以下、前者という)と引用例1に記載された考案(以下、後者という)とを対比すると、前者の「拘束層に接着する軽量厚板からなる自由層」は、軽石粒を混入したアスファルトで形成されており、後者の拘束層に接着する均一質量分布シート状物としては、アスファルトに再生ゴム、タルクおよびアスベストを混入したものが例示され、また、後者で例示されている各層の厚さの値からみて、後者のアスファルト組成物からなる層の厚さは基板の厚さの2倍よりも大きいから、両者は、所定形状の基板に対して重ね合わされる複合層の上記基板に対する相対変動により、基板に加わる振動エネルギを減衰させる複合制振板材において、上記複合層が上記基板に接着すると共に低弾性率を示す粘弾性体層と、この粘弾性体層に接着する剛性材からなる拘束層と、この拘束層に接着するアスファルト組成物からなる層を順次重ね合わせて形成されており、アスファルト組成物からなる層の厚さを基板の厚さの2倍より大きくした点で一致し、前者のアスファルト組成物がアスファルトに軽石粒を混入したものであるのに対し、後者のアスファルト組成物がアスファルトに再生ゴム、タルクおよびアスベストを混入したものである点で相違する。
5.当審の判断
相違点につき検討する。アスファルトに軽石を混入することは、本願考案と同一ないし類縁の技術分野の技術である引用例2および引用例3に例示するように周知のものであり、後者におけるアスファルト組成物に代えて、軽石粒を混入したアスフアルトを採用することに当業者において格別の考案力を要したものとは認められない。
請求人は、当審における拒絶理由通知に対する意見書において、いずれの引用例にも、自由層の軽量化に関する記載はなく、引用例1には、むしろ「また、均一質量分布シート材料としては、先に単層型制振材として挙げた熱融着性アスファルトシートは、比重が1.5以上と充分大きく、また価格も他の合成樹脂系ホットメルト材とは比較にならぬほど安価であるから、特に好ましい材料である。」と記載があるように重量を維持するという、本願考案とは全く逆の思想が開示されている旨主張しているので、以下この点につき検討する。引用例1には、従来技術に関して、「自動車のように軽量化が望まれる対象物には不利であった。」と記載があるように、軽量化を全く考慮していないわけではなく、請求人が引用した個所に続けて「この均一質量分布シート状物の比重は好ましくは1.4以上である。これは1.4未満では制振材層の厚さがいたずらに厚くなり、不利となるからである。」と記載があるように、均一質量分布シート状物をあまりに軽くすると、制振材の厚さが大きくなるという点を考慮した結果、比重が1.5以上となる熱融着性アスファルトシートが安価であることもあり、特に好ましい材料である、としているのである。すなわち、引用例1では、制振板材として基板に加わる振動エネルギの減衰性能の高いことが望ましいことは言うまでもないが、さらに自動車内で使用することを念頭に置いていることから、制振性能に加えて、軽量であること、多くのスペースを占有しないこと等をも勘案して設計しているものと認められる。本願考案においても、自動車内で使用することを念頭に置いている(本願明細書の段落【0003】「このような目的で用いられる制振板材は、車両のダッシュボード、エンジンルームの内壁板あるいは、各種機器の騒音発生源を覆う遮音板等に使用されることが知られている。」、同段落【0009】「図1には車両のエンジンルームの内壁を成す複合制振板材10の要部が示されている。」等)ことから、引用例1との相違点である軽石粒をアスファルトへ混入することによる効果について評価するにあたっては、軽石粒が多孔質であって嵩比重の小さいことは広く知られていて、これを混入することにより軽量化が図れることは予期し得るところにすぎないというべきである点及び基板に対して重ね合わされる複合層の構成が異なれば、複合層の基板に対する相対変動の態様も変化し振動エネルギの減衰効果も影響を受けると考えられる点を考慮すると、単に軽量化が図られるというだけでなく、軽石粒のアスファルトヘの混入により複合制振板材の制振性能やスペースファクタ等へいかなる影響が及ぼされるかについても配慮しなければならない。一方において、本願明細書及び図面についてみると、その願書に最初に添付した明細書または図面には、「軽石粒」に関しては、「なお、自由層15のアスファルト中に有孔の軽石粒を混入してアスファルトの軽量化をより図る様にしてもよい。」(段落【0011】)なる記載しかなく、その後提出された手続補正書においても、アスファルトに軽石粒を混入することによる効果を認めることかできるような具体的データは一切示されていない。そして、前記当審拒絶理由通知において、前記具体的データが一切示されていない旨を指摘したところ、請求人は、当該拒絶理由通知に対する意見書において、「本願考案は、有効容積を減じるといったデメリットになるほど板厚を厚くすることなしに、十分な制振機能が発揮でき、しかも従来の材質により同じ厚さで構成した場合に比して重量は抑える、というものです。」と主張するのみで、その主張を裏付ける根拠となるデータは依然として示していない。さらに、本願考案においては、軽石粒を混入したアスファルトで形成した自由層の厚さを基板の厚さの2倍より大きくしたとして、自由層の厚さの基板の厚さに対する比率の下限値は示しているものの、その上限値を示してはいないことからしても、制振性能、重量及び厚さ等を総合的に検討した結果優れた効果を見出したものとはいえないというべきである。
以上検討したところからすると、引用例1に記載された考案におけるアスファルト組成物に代えて、軽石粒を混入したアスファルトを採用することは当業者のきわめて容易に想到し得るところと認められ、また、その効果についても格別のものがあると認めることができない。
6.むすび
以上のとおりであるから、本願考案は引用例1に記載された考案並びに引用例2及び引用例3に例示するごとき周知の事項に基いて当業者のきわめて容易に考案をすることができたものであるから、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができない。
よって結論のとおり審決する。
審理終結日 1999-09-06 
結審通知日 1999-09-17 
審決日 1999-09-27 
出願番号 実願平3-69061 
審決分類 U 1 8・ 121- WZ (G10K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 高橋 泰史  
特許庁審判長 下野 和行
特許庁審判官 藤井 浩
宮島 郁美
考案の名称 複合制振板材  
代理人 本多 章悟  
代理人 樺山 亨  
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