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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B65D |
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管理番号 | 1005222 |
審判番号 | 審判1998-11642 |
総通号数 | 5 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 実用新案審決公報 |
発行日 | 2000-05-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 1998-07-23 |
確定日 | 1999-12-06 |
事件の表示 | 昭和63年実用新案登録願第112894号「容器の易開封注出装置」拒絶査定に対する審判事件〔(平成7年4月19日出願公告、実公平7-16592)、実用新案登録請求の範囲に記載された請求項の数(1)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の考案は、実用新案登録をすべきものとする。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願考案 本願は、昭和63年8月29日の出願であって、その請求項1に係る考案(以下、「本願考案」という。)は、出願公告後の平成10年8月24日付け手続補正により補正がされた明細書および図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲に記載された、次のとおりのものである。 「バリア性のある容器の壁面に形成した開口に、筒状注出具が嵌入され、その内端外周から張出す取付フランジが、前記開口周縁に沿う容器壁面の内面に接合され、筒状注出具の内側に、開封用薄肉線部を有する仕切壁とバリア性の薄膜が設けられている、容器の易開封注出装置であって、筒状注出具の内外方向に見た場合、容器壁面にバリア性を与えるバリア層に対し、筒状注出具のバリア性薄膜がその周縁部で重合するようにし、取付フランジと前記仕切壁の内側面にわたって薄板状凹陥部を形成し、この凹陥部に凹陥部の深さと同じ厚さをもつ前記バリア性薄膜をはめ込んで、バリア性薄膜の露出側底面と前記取付フランジ周縁部の底面が同一平面をなすようにし、バリア性薄膜の内部に、バリア層をその周縁部がバリア性薄膜の外周縁部に露出しないように積層状に埋め込み、凹陥部の内面に対向する前記バリア性薄膜の面およびその外周縁部を凹陥部を構成する仕切壁に対し接合したとを特徴とする易開封注出装置」 2.拒絶理由の概要 当審で通知した拒絶理由の概要は、本願考案は実願昭59-198790号(実開昭61-113224号)のマイクロフィルム(以下、「引用例A」という。)、実願昭61-101355号(実開昭63-7639号)のマイクロフィルム(以下、「引用例B」という。)に記載された考案に基づいて当業者かきわめて容易に考案をすることかできた、というものである。 3.引用例等 上記引用例A、引用例Bおよび原査定の拒絶の理由である実用新案登録異議の決定の理由において引用した特公昭58-3902号公報(以下。「引用例C」という。)には、それぞれ、図面と共に、次の記載があることが認められる。 ・引用例A: 「容器の開口部に取付られるフランジ部を有する注出口栓において、該フランジ部に天壁部が連設され、該天壁部上部に引張りリングが連接され、かつ該フランジ部および天壁部の裏面にアルミ箔を含むバリヤーフィルムが付着され、このバリヤーフィルムの端面を前記フランジ部周縁下面に重設されたL字状の突設部で被覆したことを特徴とする注出口栓」(実用新案登録請求の範囲) ・引用例B: 「入れものの口部に取付ける合成樹脂製の取付部(1);該取付部(1)に一体に設けられた注筒(2);該注筒(2)の内側に形成された、無端状の裂溝(3)を形成した隔壁(4);該隔壁(4)に、かつ前記裂溝(3)の内側に形成された裂取部(5);該裂取部(5)上に設けられた裂取部材(6);前記裂溝(3)に、又はその対応する隔壁(4)の部分に、付着させて設けられた、片面のみに合成樹脂製の液体遮断層(7)を有する金属箔(8)から成ることを特徴とする入れものの注出口」(実用新案登録請求の範囲) 「この金属箔8は▲第▼1図から理解されるように、取付部1にインサート成形されており、この考案の注出口の射出成型の際に予め図示しない金型内に置かれてあり、その金型内に溶融した合成樹脂を注入して、インサート成形する。このため金属箔8の切断した端面12は取付部1の樹脂中に埋設されることになる。」(5頁5?12行) ・引用例C: (第1図において)「符号22は熱および圧力の作用下で外層 および内層10から押出されたポリエチレン体を示す。」(2頁4欄5?6行) (第2図において)「チューブ管2はポリエステル製の遮断層の代りにアルミニウム製の遮断層34を外層6と内層10との間に有している。」(2頁4欄16?18行) 4.対比・判断 そこで、各引用例記載の発明について検討するに、まず、本願考案と引用例Aに記載された考案とを対比すると、後者の「アルミ箔」「ハリヤーフィルム」「天壁部」「開口用の薄肉部」は、前者の「バリア層」「バリア性薄膜」「仕切壁」「開封用薄肉線部」にそれぞれ対応し、後者においても、容器壁面にバリア性を与えるアルミ箔に対し、注出口栓に付着されたバリヤーフィルムがその周縁部で重ね合わされた構造となっている。 また、後者において、バリヤーフィルムの端部を被覆する目的は、該フィルムに含まれる金属箔が容器内容物を接触し腐蝕することを防ぐためのものであり、本願考案と同じ課題を解決しようとするものである。 そうすると、両者の相違点は、バリア性薄膜の取付に関し、前者か次の構成イおよび構成ロ、 イ:取付フランジと仕切壁の内側面にわたって薄板状凹陥部を形成し、この凹陥部に、凹陥部の深さと同じ厚さをもつバリア性薄膜をはめ込んで、バリア性薄膜の露出側底面と取付フランジ周縁部の底面が同一平面をなすようにし、 ロ:バリア性薄膜の内部に、バリア層をその周縁部がバリア性薄膜の外周縁部に露出しないように積層状に埋め込んでなる 点の構成を採るものであるのに対し、後者においてはそのような構成とはなっていない点、ということになる。 そこで、該相違点について検討する。 上記引用例Bに記載される容器の注出口における「液体遮断層7」、「金属箔8」および「取付部」は本願考案の「バリア性薄膜21」、「バリア層22」および「取付フランジ」にそれぞれ相当するものであり、上記摘記事項および図面からみて、引用例Cの取付部下面は液体遮断層下面と同一平面をなすものである。すなわち引用例Bには上記構成イが開示されている。 しかしながら、引用例Bの前記摘記記載は、金属箔の切断端面かインサート成形により取付部を構成する合成樹脂中に埋設されることになる点を示唆するに留まり、その切断端面において、金属箔が液体遮断層の外周縁部に「露出しないように積層状に埋め込んでなる」構成となっているとは認め難く、上記構成ロまで示唆するものではない。 それに対し、本願考案は、「取付フランジと仕切壁の内側面にわたって薄板状凹陥部を形成し、この凹陥部に、凹陥部の深さと回し厚さをもつバリア性薄膜をはめ込んで、バリア性薄膜の露出側底面と取付フランジ周縁部の底面が同一平面をなすようにし」「バリア性薄膜の内部に、バリア層をその周縁部がバリア性薄膜の外周縁部に露出しないように積層状に埋め込んでなる」構成を採ることによって、すなわち、上記構成ロを採用してはじめて、構成イを採用し「筒状注出具の内面へのバリア性薄膜の取付を正確かつ容易に行おうとする場合においても、金属薄膜のようなバリア層の腐食を防ぐことができるという効果を奏するものと認められる(本願明細書〔考案の効果〕の欄参照)。 そうすると、引用例Bの記載を考慮しても、上記相違点を当業者がきわめて容易に想到することができたものとはいえない。 また、引用例Cには、バリア層に相当する遮断層の端部が内外層であるポリエチレンに埋め込まれた構造が開示されてはいるが、取付フランジを有する注出口に関するものでもなく、上記相違点に係る構成まで示唆するものではない。 したがって、引用例Aないし引用例Cをもってしては、本願考案を当業者がきわめて容易に考案をすることができたものとすることができない。 5.むすび 以上のとおりであるから、本願考案は上記引用例Aおよび引用例Bに記載された考案に基づいて、さらには引用例Cに記載された考案を考慮しても、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるとすることはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 1999-10-15 |
出願番号 | 実願昭63-112894 |
審決分類 |
U
1
8・
121-
WY
(B65D)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 大久保 好二、伏見 隆夫 |
特許庁審判長 |
小林 武 |
特許庁審判官 |
大槻 清寿 船越 巧子 |
考案の名称 | 容器の易開封注出装置 |
代理人 | 永井 浩之 |
代理人 | 佐藤 政光 |
代理人 | 前島 旭 |
代理人 | 佐藤 一雄 |