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審決分類 |
審判 全部申し立て H01R 審判 全部申し立て H01R |
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管理番号 | 1005285 |
異議申立番号 | 異議1998-70159 |
総通号数 | 5 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 実用新案決定公報 |
発行日 | 2000-05-26 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 1998-01-09 |
確定日 | 1999-05-26 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 実用新案登録第2541164号「コネクタ」の請求項1ないし4に係る実用新案に対する実用新案登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 実用新案登録第2541164号の請求項1、4に係る実用新案登録を取り消す。 同請求項2ないし3に係る実用新案登録を維持する。 |
理由 |
1.手続の経緯 本件実用新案登録第2541164号の考案についての出願は、平成3年5月13日に出願され、平成9年4月18日にその考案について実用新案登録の設定登録がされ、その後、実用新案登録異議申立人(以下、「申立人」という)・矢崎総業株式会社より実用新案登録異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成10年6月16日に訂正請求がなされ、訂正拒絶理由通知及び審尋がなされ、その指定期間内である平成10年9月28日に意見書及び回答書が提出され、更に2回目の訂正拒絶理由通知がなされ、その指定期間内である平成11年1月21日に意見書が提出されたものである。 2.訂正の適否についての判断 (1)訂正明細書の請求項1?3に係る考案 訂正明細書の請求項1?3に係る考案は、その実用新案登録請求の範囲の請求項1?3に記載されている事項により特定される次のとおりのものである。 【請求項1】コネクタハウジングの上面より左右両側にかけてリテーナ挿入部を凹設する一方、該リテーナ挿入部に着脱自在に挿入する端子抜け止め用のリテーナを備え、 上記リテーナの左右両側に夫々前後一対の本止め用の係止片と仮止め用の係止片とを設け、上記仮止め用の係止片は本止め用の係止片上り長尺とすると共に、上記両係止片に可撓性を持たせる一方、 上記コネクタハウジング内のリテーナ挿入部の内壁の前後両側に係止部を設け、いずれか一方の係止部を仮止め用係止部、いずれか他方の係止部を本止め用係止部とし、 上記仮止め用係止部に上記仮止め用の係止片を係止して仮止め位置とし、該仮止め位置からリテーナを押し込んで上記本止め用の係止片を上記本止め用係止部に係止させる構成としているコネクタ。 【請求項2】上記リテーナの左右両側に設ける前後一対の上記本止め用の係止片と仮止め用の係止片は、上記リテーナ挿入部の下端開口部の前後両端縁の一方に仮止め用の係止片の下端係止部を係止して仮止め位置とし、該仮止め位置からリテーナを押し込んで本止め用の係止片の下端係北部を他方の端縁に係止している請求項1に記載のコネクタ。 【請求項3】上記リテーナは、コネクタハウジングに設けた端子収容室と連通する端子収容室を設けた格子枠形状とすると共に、これら各端子収容室の上面に端子係止用の突起部を設け、上記本止め用の係止片が上記リテーナ挿入部の係止部と係止する本止め位置において、上記リテーナの端子係止用の突起部が端子と係止する構成としている請求項1または請求項2に記載のコネクタ。 (2)引用例の発明 訂正拒絶理由で引用した、特願平3-88291号出願(特開平4-322079号公報参照)の願書に最初に添付した明細書又は図面(以下「引用例」という)には、 コネクタ端子の二重係止機構について、 「図1において、二重係止コネクタAは係止用リテーナ1及びハウジング2から構成され、コネクタハウジング2の一方の側面から後述する端子収容室3と交叉する方向にリテーナ1用の孔4が設けられている。上下2段に複数の端子挿通孔1cを設けられたリテーナ1は両端に仮係止突起1a_(1)を突設した可撓係止片1aと本係止突起1b_(1)を突設した可撓係止片1bがそれぞれ連接されている。 【0010】図2において、上下段各々に複数の端子収容室3を設けたハウジング2には端子収容室3と交叉する方向にリテーナ1用の孔4が設けられるとともに、該孔4の一対の相対する内壁側面の一方には前記リテーナ1の仮係止突起1a_(1)と係合する仮係合突起4aがもうけられ他方には本係止突起1b_(1)と係合する本係合突起4bがそれぞれ設けられている(図6,図7参照)。」(公報・第2欄44行?第3欄8行)、「リテーナ1によるコネクタ端子の二重係止は、図2に示すように、先ずハウジング2の孔4にリテーナ1を挿入して可撓係止片1aの仮係止突起1a_(1)を孔4の相対する内側面の仮係合突起4aと係合させて仮係止の状態として(図6参照)、・・・次いで、ハウジング2と仮係止状態のリテーナ1をD方向に圧入してリテーナ1の両端に設けられた可撓係止片1bの本係止突起1b_(1)と孔4の相対する内側面の本係合突起4bと係合させて本係止の状態とする(図5,図7参照)。この時リテーナ1の挿通孔1cの端縁1c_(1)は接触端子5の第2肩部5bに当接して後抜け方向に対して接触端子5は二重に係止される(図5参照)。」(公報・第3欄20?36行)と記載されている。 (3)対比・判断 訂正明細書の請求項1に係る考案と引用例に記載された発明(以下、「引用例の発明」という)とを比較すると、引用例の発明の「孔4」、「孔4の一対の相対する内壁側面の一方に設けた仮係合突起4a及び他方に設けた本係合突起4b」が、訂正明細書の請求項1に係る考案の「リテーナ挿入部」、「リテーナ挿入部の内壁の前後両側に設けた係止部」に相当するから、両者は、 「コネクタハウジングにリテーナ挿入部を左右両側にかけて凹設する一方、該リテーナ挿入部に着脱自在に挿入する端子抜け止め用のリテーナを備え、 上記リテーナの左右両側に夫々前後一対の本止め用の係止片と仮止め用の係止片とを設け、上記仮止め用の係止片と本止め用の係止片とは長短の関係とすると共に、上記両係止片に可撓性を持たせる一方、 上記コネクタハウジング内のリテーナ挿入部の内壁の前後両側に係止部を設け、いずれか一方の係止部を仮止め用係止部、いずれか他方の係止部を本止め用係止部とし、 上記仮止め用係止部に上記仮止め用の係止片を係止して仮止め位置とし、該仮止め位置からリテーナを押し込んで上記本止め用の係止片を上記本止め用係止部に係止させる構成としているコネクタ。」 の点で一致し、以下の点で相違する。 相違点1 リテーナ挿入部を、訂正明細書の請求項1に係る考案は、コネクタハウジングの「上面より」凹設したのに対して、引用例の発明は、コネクタハウジングの「一方の側面に」凹設している点。 相違点2 訂正明細書の請求項1に係る考案は、仮止め用の係止片は本止め用の係止片上り長尺とするのに対して、引用例の発明は、仮止め用の係止片と本止め用の係止片の長短の関係が逆である点。 以下、上記相違点について検討する。 相違点1について 訂正明細書の請求項1に係る考案のように、リテーナ挿入部を、コネクタハウジングの「上面より」凹設した点は、周知技術である(例えば、実開昭55-92284号公報、実開昭60-94780号公報、実開平2-141974号公報を参照)から、この点は、単なる設計変更にすぎない。 相違点2について 権利者は、平成10年9月28日付けの意見書及び平成11年1月21日付けの意見書において、訂正明細書の請求項1に係る考案の相違点2の構成の相違により、仮止め用の係止片と本止め用の係止片の長短の差よりも、仮止め位置と本止め位置の差異を小さくできるという作用効果を奏する旨の主張及び相違点2の判断には実用新案法第3条の2の審査基準の2.3が適用されるべき旨の主張をしている。 しかしながら、上記主張の作用効果は考案の効果として格別なものではなく、また、本件訂正請求のように構成の相違がある場合は、上記主張のように審査基準2.3が適用されるのではなく、審査基準4.4の「両者に構成の相違点がある場合であっも、それが課題解決のための具体的手段における微差(周知技術、慣用技術の付加、削除、転換などであって、新たな効果を奏するものではないもの)である場合(実質同一)は同一とする。」が適用され、本件訂正請求の場合、この基準4.4にいう具体的手段における「微差」に該当する。 したがって、訂正明細書の請求項1に係る考案は、本件実用新案登録出願の日前の他の特許出願であって、本件実用新案登録出願後に出願公開された引用例の発明と同一であり、しかも、訂正明細書の請求項1に係る考案をした者が上記発明をした者と同一であるとも、また、本件実用新案登録出願の時にその出願人が上記他の特許出願の出願人と同一であるとも認められないので、実用新案法第3条の2の規定により実用新案登録出願の際独立して実用新案登録を受けることができないものであるから、訂正明細書の請求項2及び3に係る考案について改めて検討するまでもなく、本件訂正請求は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第9条第2項によって準用する特許法120条の4第3項でさらに準用する特許法第126条第4項の規定に適合しないので、当該訂正は認められない。 3.実用新案登録異議の申立てについての判断 (1)申立ての理由 申立人は、証拠方法として甲第1号証(上記「先願の発明」を記載した特開平4-322079号公報)、甲第2?4号証(いずれも上記「周知技術」として引用した公報)を提示して、本件請求項1?3に係る考案は、甲第1号証に記載された発明と同一であるから、本件請求項1?3に係る考案についての実用新案登録は実用新案法第3条の2の規定に違反してされ、また本件請求項4に係る考案についての実用新案登録は、実用新案法第5条第5項第1号に違反してされたものであり、各実用新案登録は取り消されるべきである旨主張している。 (2)当審の取消理由 当審において、「本件請求項1?4に係る考案は本件実用新案登録出願の日前の他の特許出願であって、本件実用新案登録出願後に出願公開された甲第1号証に記載された発明すなわち訂正拒絶理由で引用した上記引用例の発明と同一であるから、本件請求項1?4に係る考案についての実用新案登録は、実用新案法第3条の2の規定に違反してされたものである」旨の取消理由通知をした。 (3)申立人の主張する実用新案法第5条第5項第1号に違反について まず、本件請求項4に係る考案についての実用新案登録が、申立人が主張するように実用新案法第5条第5項第1号に違反してされたか否か検討すると当審の取消理由でも述べたように、本件請求項4における記載「仮止め」が「本止め」の誤記であることは明白であるから、このことだけで本件請求項4に係る考案についての実用新案登録が、実用新案法第5条第5項第1号に違反してされたとすることはできない。 (4)本件請求項1?4に係る考案 してみると、本件請求項1?4に係る考案は、実用新案登録明細書及び図面の記載からみて、実用新案登録請求の範囲第1?4項に記載されている事項により特定される次のとおりのものである。なお、請求項4については、「仮止め」は「本止め」の誤記として、誤記を正したものである。 【請求項1】コネクタハウジングの上面より左右両側にかけてリテーナ挿入部を凹設する一方、該リテーナ挿入部に着脱自在に挿入する端子抜け止め用のリテーナを備え、 上記リテーナの左右両側に夫々前後一対の本止め用の係止片と仮止め用の係止片とを設ける一方、 上記コネクタハウジング内のリテーナ挿入部の内壁の前後両側に係止部を設け、いずれか一方の係止部に上記本止め用の係止片を係止し、いずれか他方の係止部に上記仮止め用の係止片を係止させる構成としている事を特徴とするコネクタ。 【請求項2】上記リテーナの左右両側に設ける前後一対の上記本止め用の係止片と仮止め用の係止片は、上記リテーナ挿入部の下端開口部の前後両端縁の一方に仮止め用の係止片の下端係止部を係止して仮止め位置とし、該仮止め位置からリテーナを押し込んで本止め用の係止片の下端係止部を他方の端縁に係止している請求項1に記載のコネクタ。 【請求項3】上記リテーナの仮止め用の係止片は本止め用の係止片より長尺とすると共に、上記両係止片に可撓性を持たせ、上記コネクタハウジング内のリテーナ挿入部の下端開口の前後端縁の一方の下端部を仮止め用係止部として、上記仮止め用の係止片の下端係止部を係止しする一方、上記リテーナ挿入部の下端開口の前後端縁の他方の下端部を本止め用係止部として 上記仮止め位置からリテーナを押し込んで上記本止め用の係止片の下端係止部と係止する構成としている請求項1または請求項2に記載のコネクタ。 【請求項4】上記リテーナは、コネクタハウジングに設けた端子収容室と連通する端子収容室を設けた格子枠形状とすると共に、これら各端子収容室の上面に端子係止用の突起部を設け、上記本止め用の係止片が上記リテーナ挿入部の係止部と係止する本止め位置において、上記リテーナの端子係止用の突起部が端子と係止する構成としている請求項1乃至請求項3のいずらか1項に記載のコネクタ。 (5)本件請求項1及び4に係る考案と引用例の発明との対比・判断 まず、本件請求項1に係る考案と上記引用例の発明とを比較すると、本件請求項1に係る考案は、訂正請求された請求項1に係る考案よりも特定する事項が少ないから、訂正の適否についての判断で述べたのと同じ理由で、両者は同一である。 次に、本件請求項4に係る考案と上記引用例の発明とを比較すると、引用例の発明の「リテーナの挿通孔1cの端縁1c_(1)」が本件請求項4に係る考案の「端子係止用の突起部」に相当するから、同様に両者は同一である。 したがって、本件請求項1及び4に係る考案は、引用例の発明と同一であるから、本件請求項1及び4に係る実用新案登録は、実用新案法第3条の2の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。 (6)本件請求項2及び3に係る考案と引用例の発明との対比・判断 本件請求項2及び3に係る考案と引用例の発明とを比較すると、コネクタハウジング内のリテーナ挿入部の内壁の前後両側に設けた係止部が、本件請求項2及び3に係る考案が「リテーナ挿入部の下端開口部の前後両端縁」であるのに対して、引用例の発明は「内壁側面の一方に設けた仮係合突起4a及び他方に設けた本係合突起4b」である点で両者は構成が相違する。 そして、本件請求項2及び3に係る考案は、該構成を備えることにより、「コネクタハウジング側に専用の係止部を設けることなく、仮止め用および本止め用の係止部を設けることができる。」(【0035】・公報第8欄39?41行)という実用新案登録明細書の【考案の効果】の欄に記載の効果を奏するものである。 したがって、本件請求項2及び3に係る考案は、引用例の発明と同一とすることはできない。 したがって、実用新案登録異議申立ての理由及び証拠方法によっては、本件請求項2及び3に係る考案についての実用新案登録を取り消すことはできない。 また、他に本件請求項2及び3に係る考案についての実用新案登録を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 1999-03-31 |
出願番号 | 実願平3-33105 |
審決分類 |
U
1
651・
534-
ZE
(H01R)
U 1 651・ 161- ZE (H01R) |
最終処分 | 一部取消 |
前審関与審査官 | 前田 仁 |
特許庁審判長 |
舟木 進 |
特許庁審判官 |
神 悦彦 西村 敏彦 |
登録日 | 1997-04-18 |
登録番号 | 実用登録第2541164号(U2541164) |
権利者 |
住友電装株式会社 三重県四日市市西末広町1番14号 |
考案の名称 | コネクタ |
代理人 | 瀧野 秀雄 |
代理人 | 松村 貞男 |
代理人 | 大和田 和美 |