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審決分類 審判 全部申し立て   A61J
管理番号 1005298
異議申立番号 異議1998-73775  
総通号数
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案決定公報 
発行日 2000-05-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 1998-07-27 
確定日 1999-09-08 
異議申立件数
事件の表示 実用新案登録第2560817号「眼科用容器」の請求項1ないし5に係る実用新案に対する実用新案登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。   
結論 実用新案登録第2560817号の請求項1ないし3に係る実用新案登録を取り消す。 同請求項4ないし5に係る実用新案登録を維持する。
理由 1.手続きの経緯
実用新案登録第2560817号の請求項1乃至5に係る考案は、平成4年8月4日に出願され、平成9年10月3日に設定登録され、その後その実用新案登録ついて異議申立人参天製薬株式会社より実用新案登録異議の申し立てがなされた。
上記考案のうち、請求項1乃至3に係る考案について平成10年11月11日付けで取消理由を通知し、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、実用新案権者からは何らの応答もない。
2.本件考案
実用新案登録第2560817号の請求項1乃至5に係る考案(以下、それぞれ、本件考案1乃至5という。)は、実用新案登録明細書及び図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲の請求項1乃至5に記載された次の事項により特定されるものである。
【請求項1】 中空成形品にして、流出口側の端部が閉塞されて、内部に所定の液体が封入されてなる密封状態の容器本体と、
有底筒状を呈し、底部の内側面に中空の針状凸部が設けられていると共に、底部の外側面に該針状凸部の中空部位に連通する液体吐出口が設けられてなり、内側面にて、前記容器本体の閉塞された流出口側端部に取り付けられ、該針状凸部が該容器本体の閉塞された流出口側端部から該容器本体内に挿通せしめられることによって、該容器本体を開封する中栓と、
該中栓に取り付けられて、前記液体吐出口を覆蓋するキャップとを、
含むことを特徴とする眼科用容器。
【請求項2】 前記容器本体に対する前記中栓の取付け、及び前記中栓に対する前記キャップの取付けが、何れも螺合によって為されると共に、該容器本体と該中栓との間にそれらの取外しを阻止する回り止め機構が設けられていることを特徴とする請求項1記載の眼科用容器。
【請求項3】 前記容器本体が、その流出口側端部を除く部位を中空成形し、所定の液体を注入せしめてなる成形体を用い、該成形体の前記流出口側端部部分を閉塞状態に成形して、完成されたものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の眼科用容器。
【請求項4】 前記容器本体の閉塞された流出口側端部において、成形によるパーティングラインが、前記中栓の針状凸部が挿入される位置から偏倚させられていることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の眼科用容器。
【請求項5】 前記中栓が、前記容器本体に比して硬い成形材料で成形されていることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の眼科用容器。
3.本件考案1乃至3について
平成10年11月11日付け取消理由通知に対し、実用新案権者から応答がないのは上記のとおりである。
そして、上記の取消理由は妥当なものと認められるので、本件考案1乃至3に対する実用新案登録は、この取消理由によって取り消すべきである。
4 実用新案登録異議申立人の主張
a.申立の概要
異議申立人は登録異議申立時に、証拠として甲第1乃至4号証を提出し、本件考案1乃至5は、下記の甲第1乃至4号証に記載された発明に基づき当業者がきわめて容易に考案できたものであるから実用新案法第3条第2項の規定に該当し、本件考案1乃至5に係る実用新案の登録は、平成6年法律第116号第9条第2項の規定で準用する、特許法第113条第1項第2号の規定により取り消されるべきである旨主張している。
b 各甲号証の記載事項
異議申立人の提出した各甲号証には以下のとおりの記載がある。
甲第1号証.実公平3-44686号公報
「従来公知の、内部に液を収納して閉鎖された口部を有する容器の該口部に取付け、締め込みによって閉鎖された口部を開封して内溶液をノズルから抽出するようになしたノズル付キャップ」
(公報1欄21行一2欄1行)
「また、容器本体20における口部21は、上端に薄膜状の閉鎖壁28を張設して内溶液収納後の容器本体20を密封状態に保持し、該閉鎖壁28はノズル付キャップ23を締め込むことにより、閉鎖壁28が突起26で開封され、同時に液抽出用の透孔27から液抽出できる。」(公報2欄12-17行)
「この考案のノズル付キャップ1は、硬質合成樹脂料をもって形成したので、キャップ内周面に雌ねじ2を刻設すると共に、上面中央にはノズル6を突出形成している。
該ノズル6には長さ方向の中央軸線を通って、同径をもって構成された液抽出用の通孔7を設けると共に、ノズル付キャップ1の内部中央には、円錐状の刺通部3を尖鋭部を下向きにして突設したもので、この刺通部3の周壁には、ノズル6の通孔7と連通するスリット状をなした液流通用の透孔5が4本均等に配設されている。」(公報4欄37行-5欄3行)
「しかして、使用に際して、ノズル付キャップ1を容器本体10側に締め込めば、刺通部3の先端部4が閉鎖壁13の中心部を破断するので、閉鎖壁13が容易に開封でき、容器本体10を傾けることによって封入された内溶液は、刺通部3の周壁に形成した複数の透孔5を通ってノズル6の通孔7に流出するものである」(公報5欄15-21行)
甲第1号証の2:実願昭61-174150号(実開昭63-79360号公報)のマイクロフィルム
「各種の薬液、接着剤などの抽出用液体を密封状態に保持する容器」(明細書2頁14-15行)
「前述のような液体抽出容器ならびにノズル付キャップは、一般に、第9図に示すように、薄肉のチューブ状容器本体10(一部のみを示す)の上端に比較的厚肉で保形性を有する円筒状首部12が接続された液体抽出容器14と、ノズル抽出孔16を有するノズル18の下部に有底円筒状のキャップ基部20が一体的に形成されたノズル付キャップ22とからなり、ノズル付キャップ22が、キャップ基部20に設けられた雌ねじ部20aと首部12に設けられた雄ねじ部12aとを介して、液体抽出容器14の首部12に螺合取付けられるように構成されている。」(明細書3頁3-15行)
「また参照符号26で示す保護キャップはノズル18を保護するキャップである。そして、液体抽出容器14の首部12の開口面12bには容器内の液体を密封状態に保持するためのアルミ箔などでなる閉鎖薄膜28が張設されており、またノズル付キャプ22のキャップ基部20の底面にはノズル抽出孔16の開口16aが開口されていると共にこの開口16aを囲繞して開封手段30が設けられている。
しかして、このような構成になる容器本体10内の液体を抽出するときは、ノズル付キャップ22のキャップ基部20を液体抽出容器14の首部12に対して製造時の規制位置から更に螺入進出させる。これにより、第10図に示すように、キャップ基部20の進出に伴ってねじ込み停止リング24が破断除去されると共に、開封手段30が閉鎖薄膜28を破断開封し、ノズル注出孔16の開口16aが首部12内において液体注出容器14に対して連通される。このとき、保護キャップ26はノズル付キャップ22から取外されている。したがって、この状態で、容器本体10を押圧すると、容器内の液体が進出されたキャップ22に備えられているノズル18の開口16a、ノズル注出孔16,注入口16bを介して対象物に向けてあるいはその内部へ抽出される。」(明細書3頁19行-5頁5行)
甲第2号証:実開昭63-197541号公報
「(1)点眼薬を充填し、充填された瓶のキャップを外して点眼に用いる点眼瓶において、点眼キャップと、前記点眼瓶に薬を充填後キャップをする本体キャップと、点眼瓶本体とから構成され、前記本体キャップに設けられている点眼キャップ用のネジ部回転方向と前記本体に設けられている前記本体キャップ用のネジ部の回転方向とを逆方向にしたことを特徴とする点眼用瓶。
(2)前記実用新案登録請求の範囲第1項記載におけるネジ部において前記本体キャップに設けられている点眼キャップ用のネジ部の回転方向を右ネジとし、前記本体に設けられている前記本体キャップ用のネジ部の回転方向を左ネジとしたことを特徴とする点眼用瓶。」(実用新案登録請求の範囲)
甲第3号証:実願昭54-172835号(実開昭56-88644号公報)のマイクロフィルム
「而して使用に際しては需要者がキャップ(10)の本体(11)外周を摘んでそのままねじ込む方向に回動すれば、まづ保持部(13)がスリット(13’)部分で拡開してねじ込みによる推力でもってその下端部(13’’)が容器(1)の肩部(5)斜面に沿い外方に拡開変位し、開封阻止力が解除されて突起(12)により閉鎖壁(7)が突破され開封するのであり、これと同時にキャップ本体(11)内周の係止歯(15)が容器(1)首基部(2)外周の突条(4)に次第に係合するも該係止歯(15)はねじ込み方向に逃げ勝手となっており突条(4)も次第に高さを増すのでこれを無理なく乗越えて移動し、突起(12)による閉鎖壁(7)の開封が完全に終了した時点(キャップ本体(11)の雌ねじ部(14)が首部外周ねじ部(3)に最も深くねじ込まれた状態となる)で、係止歯(15)と突条(4)とは整数倍の数で形成されているから両者が係合状態となり、最早逆方向にキャップ(10)を回動しょうとしても阻止された状態となり、容器(1)の首部(2)にキャップ本体(11)が固着される。」(明細書7頁18行-8頁15行)
「なお、保護キャップのキャップ本体に対する係止手段としては上記実施例のほか・・或いは比較的ピッチの粗いねじによる螺合方式等を採用することも任意になし得る。」(明細書9頁19行-10頁5行)
甲第3号証の2.特開昭63-22356号公報
「第1図にはガラス容器3の雄ねじ付きの首部2と協働するアダプタ1が全体的に示してある。アダプタ1は円錐台形状をなし、端部にはキャップ5により閉じられる開口部4を備えている。
・・
アダプタ1の内部には首部2の雄ねじと螺合する雌ねじを備えた中央スカート7が設けられている。」(公報2頁左下欄11行-右下欄1行)
「保護バンド11の歯15はガラス容器3の首部2へのアダプタ1の締付けに際し環状部6の歯6aに対し横倒しとなってその回転を可能とするように非対称形に形成されている。従って保護バンド11を破壊することなくアダプタ1を緩めることは不可能であり、これによってガラス容器3内の内容物の信頼性の保証が与えられている。」(公報3頁左上欄6-12行)
甲第4号証.実公昭61-31934号公報
「(1)軟質プラスチックをブロー成形して一体に構成された折たたみ可能な容器であって、ブロー成型時のパーティングラインを折たたみ線より一方へ偏らせて形成したことを特徴とするブロー成型用器」(実用新案登録請求の範囲)
「パーティングラインは成型時に他の部分よりも肉厚となるので、容器が折たたみにくいばかりでなく、折曲げ線がずれて折たたみが不完全となる等の欠点があった」(公報1欄23-26行)
c 本件考案4,5に対する判断
▲1▼本件考案4について
本件考案4と上記甲第1乃至4号証に記載の発明とを対比すると、上記いずれの証拠に記載の発明にも、本件考案4を特定する事項である「成形によるパーティングラインが、前記中栓の針状凸部が挿入される位置から偏倚させられている眼科用容器」は記載されていない。上記甲第4号証のものは、折りたたみ可能な容器の折りたたみを容易かつ完全にするために、そのパーティングラインを折りたたみ部から偏倚させたものであるから、本件考案4の、容器本体の一部である閉塞部に開口を設けるためのものにおいて、その開口を容易とするためにパーティングラインを偏倚させたものとは、適用する技術分野も、また、その適用の目的も異なるものである。
そして、当該事項により本件考案4は「成形によるパーティングライン24が中央部分から偏倚させられており、穴が開け易い」という効果を奏するものであり、本件考案4が上記甲第1乃至4号証に記載のものからきわめて容易に考案をすることができたとはいえない。
▲2▼本件考案5について
本件考案5と上記甲第1乃至4号証に記載の発明とを対比すると、上記いずれの証拠に記載の発明にも、本件考案5を特定する事項である「中栓が、容器本体に比して硬い成形材料で成形されている眼科用容器」の構成が記載も示唆もされていない。また、異議申立人も「ノズル付キャップを容器本体に比して硬い成形材料で成形することは必要に応じて容易になし得たこと」と主張するのみで、前記主張の裏付けとなる証拠も格別提出されていない。
そして、当該構成により本件考案5は「中栓28を、容器本体10に比して硬い成形材料で成形することによって、そのような開封が容易に行なわれる」という効果を奏するものであり、本件考案5が上記甲第1乃至4号証に記載のものからきわめて容易に考案をすることができたとはいえない。
したがって、登録異議申立の理由および、証拠によっては、本件考案4,5の登録を取り消すことはできない。
5.むすび
以上のとおりであるから、本件考案1乃至3に対する実用新案登録は、平成6年法律第116号第9条第2項の規定で準用する、特許法第113条第1項第2号の規定により取り消されるべきである。
本件考案4,5は上記甲第1乃至4号証に記載された考案とも、また、上記刊行物1,2に基づききわめて容易に考案できたものとも認められないし、他に取り消す理由も発見しない。
よって結論のとおり決定する。
異議決定日 1999-07-06 
出願番号 実願平4-60537 
審決分類 U 1 651・ 121- ZC (A61J)
最終処分 一部取消    
前審関与審査官 津野 孝  
特許庁審判長 高瀬 浩一
特許庁審判官 島田 信一
渡邊 聡
登録日 1997-10-03 
登録番号 実用登録第2560817号(U2560817) 
権利者 株式会社トーメー
名古屋市西区則武新町二町目11番33号
考案の名称 眼科用容器  
代理人 中島 三千雄  
代理人 神戸 典和  
代理人 北村 修一郎  
代理人 池田 治幸  

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