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審決分類 |
審判 全部申し立て F16C |
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管理番号 | 1005303 |
異議申立番号 | 異議1999-70209 |
総通号数 | 5 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 実用新案決定公報 |
発行日 | 2000-05-26 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 1999-01-22 |
確定日 | 1999-09-29 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 実用新案登録第2577108号「自動車の車軸軸受」の実用新案に対する実用新案登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 実用新案登録第2577108号の実用新案登録を取り消す。 |
理由 |
1,手続の経緯 本件実用新案登録第2577108号に係る出願は、平成4年9月22日に実用新案登録出願され、平成10年5月1日に設定登録がされたものである。 これに対して、平成11年1月22日に実用新案登録異議申立人・日本精工株式会社より登録異議申立がなされ、平成11年4月6日付けで取消理由が通知された後、平成11年6月28日付けで実用新案権者よりこの取消理由に対して意見書が提出されたものである。 2,本件考案 本件考案は、実用新案登録に係る明細書の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。 【請求項1】自動車の車軸部に装着され、ホイールを回転自在に支持するものであって、複列軌道を有する軸受鋼製の内輪と、複列軌道を有する軸受鋼製の外輪と、内輪の軌道と外輪の軌道との間に介在し、前記両輪とアンギュラコンタクトするセラミック製のボールとを備えた自動車の車軸軸受。 3,取消理由及び意見書の概要 ▲1▼,上記取消理由は、概要次のとおりである。 本件に係る出願の出願日前に頒布された刊行物である特開平3-316号公報(異議申立人が提示した甲第3号証。以下「引用例イ」という。)には、その特許請求の範囲の欄、第3頁の右上欄第1行?第5行及び第1図に、 「ヘリコプターの回転翼駆動装置に装着され、回転軸を回転自在に支持するものであって、内輪の軌道と外輪の軌道との間に介在し、前記両輪とコンタクトするセラミック製のボールとを備えたヘリコプターの回転軸軸受。」 が記載されている。 そこで、本件考案と引用例イ記載の考案とを対比すると、両者は次のA,B点で相違し、その余に格別の差違はない。 A,本件考案は自動車の車軸用であるのに対し、引用例イ記載の考案はヘリコプターの回転軸用である点。 B,本件考案は複列軌道を有する軸受鋼製の内輪と、複列軌道を有する軸受鋼製の外輪と、内輪の軌道と外輪の軌道との間に介在し、前記両輪とアンギュラコンタクトするものであるのに対し、引用例イ記載の考案は併設することにより複列軌道を有するもので、かつ、内外輪とボールの接触態様について記載がない点。 そこで、先ず上記相違点Aについて検討すると、へリコプターの回転軸軸受においても剛性や転動疲労寿命の向上が要求されており、これを同じく剛性や転動疲労寿命の向上が要求される自動車の車軸用に転用することに困難はない。 また、相違点Bについては、複列軌道を有する軸受鋼製の内輪と、複列軌道を有する軸受鋼製の外輪と、内輪の軌道と外輪の軌道との間に介在し、前記両輪とアンギュラコンタクトするボールとを備えた自動車の車軸軸受は、いわゆる複列アンギュラ玉軸受として周知のものである。[必要であれば、「NTNベアリングエンジニアTECHNICAL REVIEW No.52」第41頁、昭和61年3月、エヌ・テー・エヌ東洋ベアリング株式会社発行」{異議申立人が提示した甲第2号証。(以下、「引用例ロ」という。)}を参照。] そして、セラミック製のボールが鋼製のものに較べて軽量で縦弾性係数が大きい点は、セラミック材料の特性として周知の事項であるから、セラミック製のボールを自動車の車軸軸受に用いた場合に、ボールのスピン運動やジャイロモーメントによる滑り摩擦が低減されることは、当業者において容易に想到できるものと認められる。 したがって、引用例イ記載の考案における過酷な条件において用いられるベアリングにセラミック製のボールを用いる点を、例えば引用例ロに記載されている周知の複列アンギュラ玉軸受に適用して本件の請求項1に係る考案とすることは、当業者がきわめて容易になし得ることと認められる。 ▲2▼,これに対する実用新案権者の意見書の主張は、概要次のとおりである。 自動車の車軸部用の軸受は、高いモーメント荷重剛性と転動疲労寿命の向上が要求されつつある。 その要求に応えるため、本件考案は請求項1に係る構成を備えており、軸受寸法、余圧量を増大することなく、ホイールからのモーメント荷重に対するモーメント荷重剛性を高めると共にモーメント荷重に対する荷重対応性との機能バランスを実現したものである。 しかし、引用例イには、単列軸受しか記載されておらず、モーメント荷重を支持するものではないから、本件考案の技術思想を示唆するものではない。 4,当審の判断(実用新案登録異議申立についての判断) 引用例イ記載の考案は、単列軸受に係るものである点は、実用新案権者の主張のとおりであるが、引用例イの、第3頁右上欄の表には転動体のみセラミックスとする点が、第2頁右上欄にはセラミックスが軸受鋼に較べて密度が1/2以下である点が、第2頁左下欄にはセラミックスを採用することで転動体の遠心力を軽減できるとともにジャイロモーメント下での滑りの発生を防止できる点が、それぞれ記載されている。また、セラミックスの縦弾性係数が鋼に較べて大きいことは周知である。 また、引用例ロの図1には、自動車ホイール用軸受として各種形式の複列アンギュラ玉軸受が記載されており、ボールがセラミック製でない点を除き、形状が本件考案のものと全く同じ車軸軸受が記載されている。 そして、引用例ロ記載の複列アンギュラ玉軸受のボールが自動車の挙動により受けるモーメント荷重等は、本件考案のセラミック製のボールとほぼ同じであることはきわめて容易に想到し得ることであるから、複列アンギュラ玉軸受のボールをセラミック製とした場合の機能・作用も、引用例イ記載の考案の示唆に基づいて、きわめて容易に想到し得るものと認められる。 したがって、引用例イ記載の考案のベアリングにセラミック製のボールを用いる点を、引用例ロ記載の周知の複列アンギュラ玉軸受のボールに適用して本件の請求項1に係る考案とすることは、当業者がきわめて容易になし得ることと認められ、単に引用例イ記載の考案との相違点のみ列挙したものにすぎない実用新案権者の意見は採用することはできない。 5,むすび 以上のとおりであるから、本件考案は、引用例イに記載された考案及び例えば引用例ロに記載された周知技術に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、実用新案法第3条第2項の規定に違反して実用新案登録されたものである。 したがって、本件考案に係る実用新案登録は、取り消されるべきものである。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 1999-07-29 |
出願番号 | 実願平4-65910 |
審決分類 |
U
1
651・
121-
Z
(F16C)
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最終処分 | 取消 |
前審関与審査官 | 秋月 均 |
特許庁審判長 |
佐藤 洋 |
特許庁審判官 |
舟木 進 西村 敏彦 |
登録日 | 1998-05-01 |
登録番号 | 実用登録第2577108号(U2577108) |
権利者 |
エヌティエヌ株式会社 大阪府大阪市西区京町堀1丁目3番17号 |
考案の名称 | 自動車の車軸軸受 |
代理人 | 江原 省吾 |
代理人 | 小林 研一 |
代理人 | 田村 敬二郎 |