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審決分類 |
審判 全部申し立て G01N |
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管理番号 | 1005306 |
異議申立番号 | 異議1998-75772 |
総通号数 | 5 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 実用新案決定公報 |
発行日 | 2000-05-26 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 1998-11-24 |
確定日 | 1999-11-15 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 実用新案登録第2572783号「ガス検出装置」の実用新案に対する実用新案登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 訂正を認める。 実用新案登録第2572783号の実用新案登録を維持する。 |
理由 |
1 手続の経緯 実用新案登録第2572783号(平成4年2月13日出願、平成10年3月13日登録。)の請求項1に係る考案について、申立人エフアイエス株式会社より実用新案登録異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成11年6月24日に訂正請求がなされた。 2 訂正の適否について (ア)訂正の内容 実用新案登録権者が求めている訂正の内容は次のとおりである。 ▲1▼訂正事項a 請求項1の「参照表」(2カ所)を、「1次元の参照表」と訂正する。 ▲2▼訂正事項b 【0007】(2カ所)、【0008】(実用新案登録公報3欄46?47行)、【0010】(同4欄34?35行)及び【0011】(同4欄42行)の「参照表」を、「1次元の参照表」と訂正する。 ▲3▼訂正事項c 【0009】の「例えばサーミスタ出力と補正係数の1次元の参照表で補正を行うことができる。」を、 「サーミスタ出力と補正係数の1次元の参照表で補正を行うことができる。」と訂正する。 ▲4▼訂正事項d 【0017】の「補償することができる。」を「補償することができ、(4)1次元の小規模な参照表で補正係数を求めることができる。」と訂正する。 (イ)訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否 訂正事項aは、実用新案登録請求の範囲に記載された「参照表」を、下位概念の「1次元の参照表」と限定するものである。したがってこの訂正は、実用新案登録請求の範囲の減縮を目的とし、また、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上実用新案登録請求の範囲を拡張ないし変更するものではない。 訂正事項b,c,dは、実用新案登録請求の範囲の「参照表」を「1次元の参照表」と訂正することに伴い、考案の詳細な説明の記載の整合を図るもので、不明瞭な記載の釈明を目的とし、また、願書に添付した明細書または図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上実用新案登録請求の範囲を拡張ないし変更するものではない。 (ウ)独立登録要件 (本件考案) 訂正後の明細書の請求項1に係る考案(以下、「訂正後の考案」という。)は、請求項1に記載された次のとおりのものと認められる。 「【請求項1】金属酸化物半導体ガスセンサの周囲温度依存性を、サーミスタで補正するようにしたガス検出装置において、 ガスセンサの出力とサーミスタの出力とを、AD変換するための手段と、 AD変換したガスセンサの出力を、ガスセンサの抵抗値または電気伝導度に換算するための手段と、 サーミスタの出力から、ガスセンサの抵抗値または電気伝導度に対する補正係数を求めるための1次元の参照表と、 1次元の参照表で得られた補正係数を、ガスセンサの抵抗値または電気伝導度に乗算または除算して温度補正済みの信号を得るための手段、とを設けたことを特徴とするガス検出装置。」 (引用刊行物) これに対して、取消理由に引用した刊行物1?4は、次のとおりであり、以下に摘示する技術的事項が記載されている。 刊行物1:特開昭61-18816号公報 刊行物2:特開昭63-149552号公報 刊行物3:実願昭62-175632号(実開平1-78941)のマイクロフィルム 刊行物4:特開昭63-205529号公報 [刊行物1] 「1は温度センサであって、測定器本体内部あるいは近傍に設けられ、測定器本体の周囲温度Taを検出する機能を有する。周囲温度Taに対応する温度センサ1の出力はA/D変換器2によりデジタルに変換され信号処理部内に読み込まれる。3はこの測定器が計測、表示する物理量を測定するセンサであって、例えば湿度センサである。温度センサ1の出力と同様に、湿度センサ3の出力もA/D変換器4によりデジタルに変換され信号処理部内に読み込まれるものである。」(2頁右上欄14行?左下欄4行) 「第4図に示す本発明の実施例にあっては、測定器として湿度を測定対象とするものにより説明を行ったが、もちろんこれに限られるものではない。」(3頁左下欄16?18行) 「湿度センサ3の検出値Sinは、周囲温度による誤差△の変化を受けてマイクロコンピュータ本体内に読み込まれるが、上記の誤差△は一般に、Sinの大きさと周囲温度Taの関数である。すなわち、△≡△(Sin,Ta)である。本発明では第6図に示すように、予めこの△のデータ値を実験又は理論的により採集し、ROM9にテーブル表としてメモリしておくものである。そして本発明は、マイクロコンピュータが湿度センサ3のデータ値Sin+△を読み取ったとき、このSin+△とTaがこのテーブル表のどの〔Si,Si+1〕、〔Tj,Tj+1〕のゾーンに属する値であるかを判断し、所定の演算式によりSin+△とTaの値に対応する△inの値を求めてSin+△-△in=Sin’を算出し、このSin’を用いて所定の換算式に従って求めるものである。」(2頁左下欄19行?右下欄20行) 「このSin’を用いて所定の換算式に従って求まる湿度値は温度補償されたものであって、測定器の周囲温度による誤差を吸収するものである。」(3頁右上欄4?6行) [刊行物2] 「ガス検知素子の電気抵抗値の可変に応じた方形波パルス信号を出力する発振手段と、前記発振手段から出力された方形波パルス信号の周波数を計数し、該計数結果に基づいて測定雰囲気中のガス濃度値を求めるディジタル演算処理手段とを有する」(特許請求の範囲第1項)「ガス検出装置」に関して、「前記マイクロコンピュータ9のCPUは、前述した方形波パルス発振器1から出力される方形波パルス信号の周波数fをカウントし、該カウントした方形波パルス信号の発振周波数fと前記メモリに記憶されている▲1▼式とから前記ガス検知素子3の電気抵抗値Rを演算し、該演算した前記ガス検知素子3の電気抵抗値Rと前記メモリに記憶されている第2図にて示した前記湿度検知素子3のガス濃度-R/ROr値特性データとから測定雰囲気中のガス濃度値を求めることとなる。」(4頁右上欄17行?左下欄7行)と記載されている。 [刊行物3] 「ガス検出装置」に関し、「センサ6の出力(負荷抵抗26の電圧)を、A/Dコンバータ32でA/D変換し、演算装置38で処理する。」(10頁17?19行)と記載され、「センサの出力(例えば電気伝導度σ)」(5頁16行)と記載されている。 [刊行物4] 「多素子検知器を用いた赤外線撮像装置の測温方式に関し、特に簡易な方法で各素子ごとに検知感度を補正して測温誤差を少なくするようにした赤外線撮像装置」(1頁左下欄12?15行)に関し、「多素子赤外検知器内の1素子の検知出力電圧に対する温度値特性を基準テーブルとして格納するとともに、他の各素子ごとに各素子間の検知感度を補正する補正係数を格納するROM13を設けている。」(3頁14?18行)もので、「ROM13は、素子4-1の検知出力電圧に対しては格納されている素子4-1の基準テーブルより該当する温度値を読み出して乗算器14に出力する。この場合補正係数は1に設定されている。 また、ROM13は、他の素子4-2から4-nの検知出力電圧に対しては基準テーブルの該当する温度値と当該素子に対応する補正係数を読み出して乗算器14に出力する。」(3頁右下欄18行?4頁左上欄5行)と記載されている。 (対比判断) 訂正後の考案は、「ガスセンサの周囲温度依存性をサーミスタで補正するようにしたガス検出装置」に係り、従来のものでは「極端な高温域や低温域ではガスセンサ2の温度依存性とサーミスタRTによる温度補償回路側の温度依存性がマッチングせず、狭い温度範囲でしか正確な温度補償ができなくなる。」(【0004】)こと、また、「例えばガスセンサ2のばらつきや経時変動等でRsが変化すると、温度補償の精度が低下する。」こと等の問題を解消するために、訂正後の請求項1に記載した構成を採用したものである。 訂正後の考案と刊行物1?4に記載された考案とを対比すると、各刊行物記載の考案のいずれにも、「サーミスタの出力から、ガスセンサの抵抗値または電気伝導度に対する補正係数を求めるための1次元の参照表と、1次元の参照表で得られた補正係数を、ガスセンサの抵抗値または電気伝導度に乗算または除算して温度補正済みの信号を得るための手段」を備えていない。 すなわち、刊行物1記載の考案は、周囲温度Taと湿度センサの検出値Sinの2次元の見出しを持った参照表を用いるものであり、刊行物2?4に記載された考案もガスセンサの周囲温度依存性をサーミスタで補正するガス検出装置において、温度補償の精度をあげるために用いられる1次元の参照表を開示ないし示唆するものではない。 そして、訂正後の考案は、上記構成を採用することにより、ガスセンサの抵抗値のばらつき、経時的な変動に対しても、温度補償の精度が低下せず、広い範囲にわたって補償でき、1次元の小規模な参照表で補正係数を求めることができるという効果を奏することが認められる。 したがって、訂正後の考案は、刊行物2?4に記載された考案に基づいて、当業者がきわめて容易に考案をすることができたとはいえない。よって、訂正後の請求項1に係る考案は、実用新案登録出願の際、独立して実用新案登録を受けることができるものである。 (エ)むすび 以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律116号、以下「平成6年改正法」という。)附則9条2項の規定により準用され、同附則6条1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法120条の4第3項で準用する平成6年改正法による改正前の特許法126条1項ただし書、2項及び3項の規定に適合するので、訂正を認める。 3 実用新案登録異議申立について (ア)本件考案 本件考案は、訂正後の請求項1に記載されたとおりのものである。 (イ)申立の理由の概要 申立人は、本件考案は、甲第1号証?甲第4号証(上記刊行物1?4に同じ)に記載された考案に基づいて、その考案の属する技術の分野における通常の知識を有するものがきわめて容易に考案をすることができたものであるから、本件実用新案登録は実用新案法3条2項の規定に違反してなされたものであるから、取り消すべきである旨主張している。 (ウ)判断 甲第1?4号証には、2(ウ)で刊行物1?4について述べたとおりの考案が記載されている。 しかしながら、2(ウ)で述べた理由と同一の理由により、甲第1?4号証に記載された考案に基づいて、当業者がきわめて容易に考案をすることができたとすることはできない。 申立人は、甲第4号証(刊行物4)には、温度値と素子に対応する補正係数を乗算器で乗算する点が記載されており、本件考案の「補正係数を、ガスセンサの抵抗値または電気伝導度に乗算または除算する」点は技術常識にすぎず、甲第1号証に記載されたものに適用することはきわめて容易に推考し得るものであると主張している。 しかしながら、本件考案は、「ガスセンサの周囲温度依存性をサーミスタで補正するようにしたガス検出装置」に係り、従来のものでは狭い温度範囲でしか正確な温度補償ができず、また、ガスセンサのばらつきや経時変動等でセンサ抵抗が変化すると、温度補償の精度が低下すること等の問題を解消するために、訂正後の請求項1に記載されているとおり、「サーミスタの出力から、ガスセンサの抵抗値または電気伝導度に対する補正係数を求めるための1次元の参照表」を備え、「1次元の参照表で得られた補正係数を、ガスセンサの抵抗値または電気伝導度に乗算または除算して温度補正済みの信号を得るための手段」を備えるものである。 これに対して、甲第4号証に記載されたものは、「多素子検知器を用いた赤外線撮像装置の測温方式」に関し、「各素子ごとに検知感度を補正して測温誤差を少なくする」ために、各素子による測温値に補正係数を乗算するものであり、技術分野も相違し、本件考案の技術課題ないしその解決手段を開示ないし示唆するものではない。また、甲第1号証に記載された二次元の参照表を1次元に変更し、検出値の加減算で補正することに代えて、ガスセンサの抵抗値または電気伝導度に補正係数を乗算または除算して補正することを示唆するものではない。 したがって、異議申立人の主張は採用できない。 (エ)むすび 以上のとおりであるから、実用新案登録異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件実用新案登録を取り消すことはできない。 また、他に本件実用新案登録を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【考案の名称】 ガス検出装置 (57)【実用新案登録請求の範囲】 【請求項1】金属酸化物半導体ガスセンサの周囲温度依存性を、サーミスタで補正するようにしたガス検出装置において、 ガスセンサの出力とサーミスタの出力とを、AD変換するための手段と、 AD変換したガスセンサの出力を、ガスセンサの抵抗値または電気伝導度に換算するための手段と、 サーミスタの出力から、ガスセンサの抵抗値または電気伝導度に対する補正係数を求めるための1次元の参照表と、 1次元の参照表で得られた補正係数を、ガスセンサの抵抗値または電気伝導度に乗算または除算して温度補正済みの信号を得るための手段、とを設けたことを特徴とするガス検出装置。 【考案の詳細な説明】 【0001】 【考案の利用分野】 この考案は金属酸化物半導体ガスセンサを用いたガス検出装置に関し、特にその温度補償に関する。 【0002】 【従来技術】 金属酸化物半導体ガスセンサの周囲温度依存性を、サーミスタで補償することは周知である。ガスセンサには周囲の絶対湿度への依存性があり、日本の気候では気温と絶対湿度とは相関するので、サーミスタで周囲温度依存性の他にガスセンサの絶対湿度依存性も補償することができる。 【0003】 図4にマイクロコンピュータを用いる場合の、温度補償の原理を示す。図において、2はガスセンサ、4は金属酸化物半導体、6はヒータ、RLは負荷抵抗、RTはサーミスタである。ここでは固定抵抗R1への電圧をAD変換の基準電圧とし、 ガスセンサ2の温度依存性を補償する。 【0004】 図5に示すように、ガスセンサ2の温度依存性とサーミスタRTの温度依存性では、サーミスタRTの方が温度依存性が大きく、これを補うためサーミスタRTに直列あるいは並列に固定抵抗R2を接続し、温度依存性をガスセンサ2とマッチングさせる。しかしこのようにすると、サーミスタRTの抵抗値が大きい低温域と、サーミスタRTの抵抗値が小さい高温域とで、抵抗R1への出力の温度依存性が異なってくる。即ち低温域では抵抗R1への出力に大きな温度依存性が有り、高温域では温度依存性が小さくなる。このため極端な高温域や低温域ではガスセンサ2の温度依存性とサーミスタRTによる温度補償回路側の温度依存性とがマヅチングせず、狭い温度範囲でしか正確な温度補償ができなくなる。 【0005】 同様の問題はガスセンサ2の側にもあり、ガスセンサ2の抵抗値が所定の範囲にないと、サーミスタRTによる温度補償を正確に行うことができない。AD変換の対象は、負荷抵抗RLへの電圧あるいはセンサ2への電圧である。負荷抵抗RLへの電圧をVRLとすると、 VRL=(RL×VC)/(RS十RL) (1) となる。ここにRSはセンサ抵抗、VCは回路電圧を現す。センサ抵抗RSの温度依存性が同じでも、RSが大きい時と小さい時ではVRLに現れる温度依存性は異なる。このことを図6に示す。RSが小さい場合VRLの温度依存性は小さく、RSが大きい場合VRLの温度依存性は大きい。サーミスタRTで与えることができる温度依存性の補償曲線は1種類で、RS毎に変化するのではない。すると特定のRSの範囲で正しい補償ができるように、サーミスタRTのB定数や抵抗R1,R2の値を設定するしかないことになる。このようにするとセンサ抵抗RSが所定の範囲から外れると、温度補償の精度が低下することになる。例えばガスセンサ2のばらつきや経時変動等でRSが変化すると、温度補償の精度が低下する。またガス濃度の高低あるいは空気中かガス中かでセンサ抵抗RSが広範囲に変化すると、温度補償精度が低下する。 【0006】 【考案の課題】 この考案の課題は、ガスセンサの周囲温度依存性を、広範囲にかつ高精度に補償することにある。 【0007】 【考案の構成】 この考案のガス検出装置は、金属酸化物半導体ガスセンサの周囲温度依存性を、サーミスタで補正するようにしたガス検出装置において、ガスセンサの出力とサーミスタの出力とを、AD変換するための手段と、AD変換したガスセンサの出力を、ガスセンサの抵抗値または電気伝導度に換算するための手段と、サーミスタの出力から、ガスセンサの抵抗値または電気伝導度に対する補正係数を求めるための1次元の参照表と、1次元の参照表で得られた補正係数を、ガスセンサの抵抗値または電気伝導度に乗算または除算して温度補正済みの信号を得るための手段、とを設けたことを特徴とする。 【0008】 【考案の作用】 この考案ではサーミスタ出力を基に1次元の参照表を探り、該当する補正係数を求めて、ガスセンサの抵抗値または電気伝導度に乗算あるいは除算して、温度補正済みのセンサ出力とする。補正の対象はガスセンサの電気伝導度または抵抗値とし、負荷抵抗への出力とはしない。これはガスセンサの温度依存性が同じでも、その抵抗値により、負荷抵抗への出力では温度依存性が異なるからである。この結果、サーミスタ出力と補正係数の1次元の参照表で補正を行うことができる。これに対し負荷抵抗の出力で直接補正すると、サーミスタ出力と負荷抵抗の出力の2次元の見出しの参照表が必要で、補正に要するメモリが増加する。またガスセンサ抵抗RSのばらつきの影響を避けるため、補正係数は抵抗値あるいは電気伝導度に乗算もしくは除算し、足し算や引算は行わない。 【0009】 【実施例】 図1,図2に実施例を示す。図1において、2は金属酸化物半導体ガスセンサで、4はその金属酸化物半導体、6はヒータである。金属酸化物半導体4には、例えば酸化第2錫や酸化インジウム、酸化タングステン等を用いれば良い。RLはガスセンサ2の負荷抵抗、RTはサーミスタ、R1はサーミスタRTの負荷抵抗である。8は電源回路で、その出力VCを電源とする。 【0010】 10は信号処理用のマイクロコンピュータで、12はそのADコンバータ、14はセンサ出力VRLをセンサ抵抗RSに変換するためのRS算出回路、16はサーミスタの出力から補正係数Kを求めるための1次元の参照表、18はセンサ抵抗RSに補正係数Kを乗算するための乗算回路、20は乗算回路18で温度依存性を補正したセンサ抵抗RS・Kに基づきガスを検出するための信号処理回路である。マイクロコンピュータ10の規模は例えば4ビットのワンチップマイクロコンピュータ程度のものが適当で、参照表16は例えばマイクロコンピュータ10内のROM等で実現する。 【0011】 図2に1次元の参照表16の内容を示す。ADコンバータ12はサーミスタ出力VTをAD変換し、次いで図示しない変換回路によりこれを周囲温度Tに変換する。AD変換の精度は8ビットであるので、参照表16では例えば-13.75℃?+50℃までの範囲について0.25℃刻みで参照表を設ける。参照表16の上の欄は周囲温度Tであり、下の欄には補正係数Kを配置する。そして求めた周囲温度Tにより補正係数Kを求め、これを乗算回路18でセンサ抵抗RSに乗算して補正済みの出力RS・Kとする。 【0012】 実施例の動作を示す。ADコンバータ12は、負荷抵抗RLへの出力VRLと固定抵抗R1への出力VTとをAD変換し、出力VTから周囲の温度Tを求める。参照表16では周囲の温度Tを基に補正係数Kを求める。一方RS算出回路14でVRLをセンサ抵抗RSに換算し、乗算回路18でセンサ抵抗RSに補正係数Kを乗算する。このようにして得られた信号RS・Kは周囲温度依存性を補正した信号であり、これを基に信号処理回路20でガスを検出する。 【0013】 ここでは負荷抵抗RLへの出力VRLをAD変換することとしたが、例えば金属酸化物半導体4への電圧をAD変換しても良い。また固定抵抗R1への出力VTをAD変換する代わりに、サーミスタRTへの出力をAD変換しても良い。参照表16を参照する際には、サーミスタの出力VTを一旦周囲温度Tに換算して参照した。しかしながら参照表16をVTと補正係数Kとの関係を示した参照表とし、VTで直接参照表16を参照するようにしても良い。またここではセンサ抵抗RSを用いたが、その逆数のセンサの電気伝導度を用いても良い。さらに乗算回路18ではセンサ抵抗RSに補正係数Kを乗算したが、補正係数の種類を上記の逆数とし、乗算回路18では乗算の代わりりに除算を行うようにしても良い。 【0014】 実施例ではセンサ抵抗RSに対して補正係数Kを乗算する。このためVRLに対し直接補正係数Kを乗算する場合と異なり、参照表は周囲温度Tと補正係数Kの1次元の参照表でよい。これに対してVRLに対し補正係数を乗算する場合、センサの温度依存性が同じであってもセンサの抵抗値RSと負荷抵抗RLとの比によりVRLの温度係数が異なるので、参照表は周囲温度TとをVRLの2次元の見出しの参照表が必要となる。このような場合に実施例と同じ補正精度を得ようとすると、VRLに対する参照表の規模は周囲温度Tに対して8ビットの256点、VRLに対し8ビットの256点で、データの個数は約65Kとなる。このような参照表は極めて大規模で、ワンチップマイクロコンピュー夕のレベルでは達成し難い。 【0015】 【実施例2】 図3にタグ付きの信号処理を用いたマイクロコンピュータ30を示す。なおこの実施例は他の点では図1の実施例と同等である。図において、32は周囲温度TSが基準となる温度Tと一致するか否かを検出するための比較回路で、34は新たな参照表、36はメモリである。 【0016】 図3の実施例の動作を示す。センサ出力VRLとサーミスタ出力VTとをAD変換すると、これをセンサ抵抗RSと周囲温度TSの対とし、センサ抵抗RSに周囲温度TSのタグを付けて比較回路32に入力する。比較回路32では基準温度Tを記憶し、周囲温度TSが基準温度Tに一致するかどうかを検出する。ここで基準温度Tとしては、例えば信号処理回路20でセンサ抵抗RSに対する基準値を定めた時点での周囲温度等を用いる。周囲温度TSが基準温度Tに一致する場合、参照表34を参照せずにそのままその時点での抵抗値RSをメモリ36に記憶させる。一方周囲温度TSが基準温度Tと異なる場合には、参照表34を参照する。ここでの参照表34は図1の参照表16を簡略したもので、周囲温度TSと基準温度Tとの差△Tと補正係数Kとの関係を記憶させたものである。△Tの範囲は例えば-10℃?+10℃程度の20℃程度の範囲とし、これを処理するために例えば6ビットの64個の参照データを設ける。この結果参照表34の規模は、8ビット255個の参照データを記憶した図1の参照表16よりも小規模となる。参照表34で補正係数Kを求めると、この値をセンサ抵抗RSに乗算しRS・Kをメモリ36に入力する。メモリ36では基準温度Tを記憶して置き、個別の測定温度TSは特に記憶せず、必要な個数のセンサ抵抗RSのデータ、例えばRS1?RSXを測定順に記憶しておく。そして信号処理回路20で適宜これらの信号を取り出し、ガスを検出する。 【0017】 【考案の効果】 この考案では、ガスセンサの抵抗値によらず、精密にその周囲温度依存性を補償できるので、 (1)ガスセンサの抵抗値にばらつきがあっても、温度補償の精度が低下しない、 (2)ガスセンサの抵抗値が経時的に変動しても、温度補償の精度が低下しない、 (3)空気中や低濃度領域から高濃度領域まで広い範囲に渡って、ガスセンサの周囲温度依存性を補償することができ、 (4)1次元の小規模な参照表で補正係数を求めることができる。 【図面の簡単な説明】 【図1】 実施例のガス検出装置のブロック図 【図2】 図1の実施例で用いた参照表を示す図 【図3】 第2の実施例のガス検出装置の要部ブロック図 【図4】 従来例のガス検出装置のブロック図 【図5】 ガスセンサとサーミスタの温度依存性を示す特性図 【図6】 ガスセンサの抵抗値による、VRLの温度依存性の変化を示す特性図 【符号の説明】 2 ガスセンサ 4 金属酸化物半導体 6 ヒータ 8 電源回路 10 マイクロコンピュータ 12 ADコンバータ 14 RS算出回路 16 参照表 18 乗算回路 20 信号処理回路 32 比較回路 34 参照表 36 メモリ RL 負荷抵抗 RT サーミスタ R1,R2 抵抗 |
訂正の要旨 |
訂正の要旨 ▲1▼ 訂正事項a 実用新案登録請求の範囲の範囲の減縮を目的として、請求項1の「参照表」(2カ所)を、「1次元の参照表」と訂正する。 ▲2▼ 訂正事項b 不明瞭な記載の釈明を目的として、【0007】(2カ所)、【0008】(特許公報3欄46?47行)、【0010】(同4欄34?35行)【0011】 (同4欄42行)の「参照表」を、「1次元の参照表」と訂正する。 ▲3▼ 訂正事項c 不明瞭な記載の釈明を目的として、【0009】の「例えばサーミスタ出力と補正係数の1次元の参照表で補正を行うことができる。」を、「サーミスタ出力と補正係数の1次元の参照表で補正を行うことができる。」と訂正する。 ▲4▼ 訂正事項d 不明瞭な記載の釈明を目的として、【0017】の「補償することができる。」を「補償することができ、 (4)1次元の小規模な参照表で補正係数を求めることができる。」と訂正する。 |
異議決定日 | 1999-10-15 |
出願番号 | 実願平4-13964 |
審決分類 |
U
1
651・
121-
YA
(G01N)
|
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 宮澤 浩 |
特許庁審判長 |
伊坪 公一 |
特許庁審判官 |
橋場 健治 志村 博 |
登録日 | 1998-03-13 |
登録番号 | 実用登録第2572783号(U2572783) |
権利者 |
フィガロ技研株式会社 大阪府箕面市船場西1丁目5番3号 |
考案の名称 | ガス検出装置 |
代理人 | 塩入 明 |
代理人 | 塩入 みか |
代理人 | 西川 ▲恵▼清 |
代理人 | 塩入 明 |
代理人 | 森 厚夫 |
代理人 | 塩入 みか |