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審決分類 審判 査定不服 1項2号公然実施 特許、登録しない。 G03C
管理番号 1006207
審判番号 審判1999-3238  
総通号数
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2000-06-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1999-02-25 
確定日 1999-11-11 
事件の表示 昭和62年実用新案登録願第186708号「ロールフィルム用包装材料」拒絶査定に対する審判事件(平成5年9月28日出願公告、実公平5-38354)について、次のとおり審決する。   
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 1.手続の経緯
本願は、昭和62年12月7日の出願であって、平成5年9月28日付で出願公告された後、平成5年12月20日に登録異議申立があり、平成10年11月20日に登録異議の決定とともに拒絶査定がなされ、各謄本が平成11年1月26日に」出願人に送付されたものである。
2.本願考案
本願明細書の実用新案登録請求の範囲第1項に記載された考案(以下「本願考案」という。)の要旨は、平成6年7月28日付手続補正書で補正された明細書の記載の「ピカット法」が「ビカット法」の誤記であることは明らかであるから、次のとおりのものと認める。
「120サイズ又は220サイズ規格表示されるロールフィルムの遮光紙の面に塗工された熱可塑性樹脂のビカット法により得られる軟化点よりも該ロールフィルムの外周に貼付して巻き解け防止をする封紙に塗工された熱可塑性樹脂接着剤のビカット法により得られる軟化点を少なくとも20℃低くしたことを特徴とするロールフィルム用包装材料。」
3.原査定(登録異議の決定)の理由
これに対して、原査定の理由である登録異議の決定の理由は、異議申立人富士写真フィルム株式会社が提示した検甲第1号証、甲第7号証、甲第8号証、甲第9号証および証人鈴木収(以下「証人」という。)の証言により、本願考案が実用新案法第3条第1項第2号に該当し、実用新案登録を受けることができない、というものである。
4.上記各甲号証および証人の証言
(1)検甲第1号証
検甲第1号証は、「有効期限1987-12」および「乳剤番号1230456」なる記号が付された「フジカラーHR100 CN-120」なる商品名のロールフィルムおよびその包装材料に係るものと認められる。
(2)証人の証言
証人の証言内容が記載されている証拠調調書(以下「調書」という。)には、下記の事項が記載されている。
▲1▼「検甲第1号証のフィルムにつきましては、社内の規定でございまずけれども、有効期限が16ヵ月と当時定められておりましたので、」
(第8頁上段)
▲2▼「6.有効期限とか乳剤番号が刻印されておりますが、出荷しないフィルムと言いますか、たとえば試験のために製造したとか、そういう出荷も販売もしない物に乳剤番号や有効期限をつけることはあり得るんですか。
こういうことはあり得ません。出荷する物に対してのみこの有効期限と乳剤番号が打たれることになっております。」
(第8頁中段?下段)
▲3▼「14.住ベへ分析を依頼した事情について、・・(中略)・・依頼書は書かれたわけですね。
書きました。ある一定のもので、保存してあるものにつきまして本願に近いところの製品乳剤番号のものを、本来ならば中立の工業試験所等に申し込めばよろしいんでございますがそれが難しかったものですから、商売としてやっている、少なくとも第6製造部の加工課とは関係していないメーカーに中立の立場でお願いしたと、こういうことでございます。」
(第13頁中段)
▲4▼「16.検甲第1号証の保管はどなたがやられていたんですか。
第6製造部技術課で保管しております。技術課の歴代の保管する者がある期間保存しとくと、こういうルールで第6製造部に関わる技術に関して、何かあったときにそれを見るという目的で保存してあるサンプルでございます。・・(中略)・・保管は代々と言いましたけど、どなたが。
歴代の課長が、責任を持って受け継いで保管することになっています。課長が保管する人を命令し、責任としては課長が保管する。こういう形です。」
(第14頁中段?下段)
▲5▼「この乳剤についてはこの有効期限だと我々の加工場に回ってきまして、最終工程のところで、その一環になる伝票から照合して、この外箱に有効のエマルジョンナンバー(EMNo)と有効期限を書いております。」
(第21頁中段)
▲6▼「出荷する大きなロットの中から、もちろん同一のこのグループの中から取ってまいりまして、それと同じものを発売する。または製品出荷するときにサンプリングするということでありますから、その時点でサンプルしたものでございます。」
(第22頁下段)
▲7▼「30.トレイごとに分けて保存されているという話でしたけれども、それを取ってきたのはどなたですか。
私が指示をしまして、有効期限のここからここの間のもので有効なものを探してきてくださいとそこから持ってきてもらいました。」
(第27頁中段)
(3)甲第7号証
本願の出願前に頒布された刊行物である甲第7号証(写真工業、第42巻、第1号、昭和59年1月発行、第39?43頁)には、「フジカラーHR100」なる商品名のものが、昭和58年1月に発表され、同年2月には国内で発売されている点(第39頁図1)が記載されている。
(4)甲第8号証
本願の出願前に頒布された刊行物である甲第8号証(フォトマーケット、’83-5、昭和58年5月発行、第28?31頁)には、フジカラーHRシリーズが120サイズを含む全サイズにわたりラインアップした点(第28頁中欄第6行?第12行)が記載されている。
(5)甲第9号証
検甲第1号証検証物に係る調査結果をまとめた住ベテクノリサーチ株式会社研究部が作成した報告書2部(「G3-0751」と「G3-35」)であり、さらに、「フジカラーHR100」のEMNo.1230458なるものの端止めテープのシール両端接着剤がEVAであり、同一のEMNo.のものの遮光紙のオーバーコート材がPMMAである点および「フジカラーHR100」のEMNo.1230456なるものの端止めテープの接着剤がエチレン酢ビコポリマー(EVA)であり、推定軟化温度が40.7℃であるのに対して、同一のEMNo.のものの遮光紙のオーバーコート材がポリメチルメタクリレート(PMMA)であり、推定軟化温度が107.2℃である点が記載されている。
5.審判請求人の主張
審判請求人は、平成11年6月28日付手続補正書で補正された本件審判請求書(以下「請求書」という。)において、
▲1▼証人の証言によっては、検甲第1号証が本当に当時販売されていたかどうか証明できていない点(請求書第3頁第10行?第28行)、および
▲2▼証人の証言によっては、保管サンプル、検甲第1号証および実験対象物の同一性が明らかでない点(請求書第3頁最下行?第4頁第7行)の二点により、異議決定の理由に問題があり、
さらに、
▲3▼異議申立人が、何らかの意図をもって、証拠方法として外部に依頼して実験を行っている点(請求書第4頁第15行?第29行)および
▲4▼他の特許出願の審査過程における証人尋問およびその証言等の取り扱いと異なる判断を本件の異議審査の過程で行っており、証人の証言は根拠のあるものとして採用できないものである点(請求書第5頁第1行?第7頁第22行)を考慮すると、本願考案は本出願前公然実施されたものではなく登録性を有している旨主張している。
6.当審の判断
(1)審判請求人の主張
そこで、審判請求人が上記請求書で主張している点につきそれぞれ検討する。
▲1▼上記5.▲1▼の点につき検討すると、調書には、上記4.(2)の▲2▼および▲6▼の事項が記載されており、この証言を覆す根拠は見出せない。してみると、出荷しない物に有効期限、乳剤番号等を付することは証人の経験上あり得ないのであり、さらに、管理されていたサンプルが、同一の乳剤番号を有する大きなロットの中から製品出荷する際にサンプリングされたものであり、サンプリングされなかったものは、そのまま製品出荷されたものとするのが相当である。なお、審判請求人は、「証人のあずかり知らぬ処で番号が打たれる作業が行われる余地があったと考え」る旨主張している(請求書第3頁第16行?第18行)が、当該証人の知らぬ処で作業が行われた点を推認させ得る事項は、証人の証言内容になく、審判請求人の当該主張は、その根拠を欠くものであり、採用できないものである。
そして、調書には、上記4.(2)▲4▼の事項が記載されている。してみると、サンプルは、証人も含めた異議申立人富士写真フィルム株式会社の第6製造部技術課の課長が代々責任をもって保管していたものであって、さらにそのサンプルのうちの一つが検甲第1号証であるものとするのが相当である。なお、審判請求人は、「異議申立人の社内といえども、自由に出入りできる場所であるなら、厳重に販売当時の物品が保管・保存されていたとはいえ」ない旨主張している(請求書第3頁第23行?第24行)が、保管しているサンプルが、何者かにより他の物と入れ替えられた、あるいは入れ替えられた事実を推認させる根拠は、証人の証言その他から見出せない。したがって、審判請求人の上記主張は採用できない。
▲2▼次に、上記5.▲2▼の点につき検討すると、調書には、4.(2)▲7▼の事項が記載されており、この証言事項は、証人本人が責任をもって保管しているサンプルを、保管を解除して、保管場所から証人本人の手元に持ってくるよう命令を発したことを意味するものと解されるから、実質的に証人本人が保管物を取り出したに等しいものと認められる。
また、調書に記載された証言事項の全趣旨からみて、証人本人の手元から保管されていたサンプルである実験対象物が、実験依頼とともに甲第9号証の作成者である住ベテクノリサーチ株式会社に送付された点および住ベテクノリサーチ株式会社から返送されてきた実験対象物を、証人本人が検甲第1号証として提出した点について認められ、さらに、第三者である住ベテクノリサーチ株式会社が、証人から送付された実験対象物を実験・返送するまでの間で他の物に取り替えるべき事由が存在したものとは認められない。
したがって、保管サンプル、実験対象物および検甲第1号証は、同一であるものと認められるから、審判請求人の上記主張5.▲2▼は失当である。
▲3▼さらに、審判請求人の上記5.▲3▼の主張を検討すると、証拠方法は、当該証拠方法を提示する者が適宜自由に選択するものであって、第三者に実験を依頼しその実験結果をもって証拠とすることは、度々行われることであるから、審判請求人の上記主張5.▲3▼は失当である。
▲4▼そして、審判請求人の上記5.▲4▼の主張について検討すると、審判請求人が例示した他の特許出願の審査過程における証言では、審判請求人が請求書第5頁第15行?第21行に記載のとおりであるから、証言が証拠として採用されていないのであって、本願の審査過程で行われた証言では、上記6.(1)▲1▼および▲2▼のとおり、保管サンプルと同一のロットの物が販売されていた点が明らかであり、さらに保管サンプル、実験対象物および検甲第1号証が同一の物である点が明らかとなっているのであるから、上記他の特許出願に係る審査過程の証言に対する取り扱いとはその前提が異なり、本願の場合、調書における検甲第1号証検証物および甲第9号証についての証言は、検甲第1号証検証物が本願出願前に製造され、それと同一ロットの物が不特定多数に販売されていた事実を認定する根拠として採用することが可能である。
(2)本願考案の公然実施
したがって、証人の証言を総合すると、以下▲1▼?▲4▼の事実が認められる。
▲1▼保管サンプルは、販売する予定の商品フィルムロットの中から抽出して保管サンプルとなしたものであり、当該ロットの他のものは出荷・販売されていた点。
▲2▼本願出願前に製造された保管サンプルのうちの一つを、証人が選択し、住ベテクノリサーチ株式会社に実験を依頼した点。
▲3▼住ベテクノリサーチ株式会社は、証人から送付された保管サンプルを実験対象物とし実験を行いその実験結果に基づき報告書を作成し、当該報告書および実験対象物の残部を証人に返送した点。
▲4▼証人は、返送された実験報告書を甲第9号証とし、実験対象物の残部を検甲第1号証として、提示した点。
してみると、これらの事実関係からみて、検甲第1号証は、本願出願前に販売されていたものと同一のものであり、さらに甲第9号証に記載された検甲第1号証検証物に係る実験分析結果からみて、検甲第1号証のものは本願考案と同一であるものと認められる。
したがって、本願考案は、本願出願前に公然に実施されていたものである。
7.むすび
以上のとおりであるから、本願考案は、本願出願前公然に実施されていたものであるので、実用新案法第3条第1項第2号に該当し、実用新案登録を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 1999-08-05 
結審通知日 1999-08-24 
審決日 1999-09-01 
出願番号 実願昭62-186708 
審決分類 U 1 8・ 112- Z (G03C)
最終処分 不成立    
前審関与審査官 秋月 美紀子木村 敏康  
特許庁審判長 森 正幸
特許庁審判官 柏崎 正男
橋本 栄和
考案の名称 ロールフィルム用包装材料  

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