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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F15B
管理番号 1006241
審判番号 審判1998-12511  
総通号数
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2000-06-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1998-08-06 
確定日 1999-12-22 
事件の表示 平成2年実用新案登録願第1033号「磁気近接スイッチ付き流体圧シリンダ」拒絶査定に対する審判事件(平成7年10月9日出願公告、実公平7-43458)について、次のとおり審決する。   
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 1.手続の経緯
本願は、平成2年1月10日に出願されたものであって、原審において平成7年10月9日に出願公告されたところ、山田強から、実用新案登録異議の申立があり、その異議申立は、理由があるものと決定され、その理由によって拒絶査定されたものである。
2.本願考案
本願の請求項1に係る考案は、出願公告後の平成8年8月21日付け及び平成10年9月7日付けの各手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。
「流体圧シリンダのシリンダチューブの表面に、ピストンの摺動方向に沿って断面形状が半円形よりも大きい円弧状の凹溝を設け、この凹溝に嵌挿する磁気近接スイッチを、リードスイッチを内挿した非磁性体からなる小径円筒状のスイッチケースの先端側に該スイッチケースとほぼ同径の中実部分を延設し、且つこの中実部分にスイッチ固定用のねじ孔を設けることにより構成し、上記ねじ孔に螺挿した止めねじの先端を上記凹溝の溝底に圧接することにより、上記スイッチをシリンダチューブに固定したことを特徴とする磁気近接スイッチ付き流体圧シリンダ。」
3.引用例
これに対して、原査定の拒絶の理由となった実用新案登録異議の決定の理由において引用された、「エアチャック」カタログ(SMC株式会社発行、1988年3月30日初版、1989年7月印刷)(以下、「引用例」という。)は、「1988年(昭和63年)3月30日初版 1989年(平成元年)7月印刷」との記載及び、異議申立人 山田強が上記引用例と同時に提出した甲第2号証(「パワーデザイン」、Vol.26 No.5、株式会社日刊工業新聞社発行、昭和63年5月1日、p.24)の記載から本願出願前に頒布された刊行物であることは明らかである。
そして、上記引用例には、作動位置の検出が可能なインジケータランプ付無接点オートスイッチが取り付けられるエアチャックに関し、
(ア)第11頁「構造図/パーツリスト・パッキンリスト」には、「ボディ」内に「ピストンA」が配置され、「ピストンA」には「ラバーマグネット11」が取り付けられ、また、「ボディ」には「ピストンA」の摺動方向に沿って「オートスイッチ」が取り付けられていること、
(イ)第16頁「オートスイッチ外形寸法図D-Y59A・Y59B」には、「オートスイッチ」の外形寸法が示され、「オートスイッチ」には、そのスイッチケースの先端側に該スイッチケースとほぼ同断面寸法の部分が延設され、且つこの部分に「スイッチ取付ビス(スリ割付止メネジ)」が設けられていること、
(ウ)第18頁「オートスイッチの設定例及び取付位置設定方法」には、「オートスイッチ」を「ボディ」の「スイッチ取付溝」に嵌挿して取付けること及び
(エ)第19頁「オートスイッチの固定方法」には、「スイッチ取付溝」の断面形状が略四角形状で、「オートスイッチ」のスイッチケースが略四角筒状であり、「オートスイッチ」のネジ孔に「スイッチ取付ビス」をマイナス時計ドライバを使用して螺挿し、「オートスイッチ」を「スイッチ取付ビス」に締付トルクをかけることにより「ボディ」に固定すること、そして、その際、目安として締付感が出た位置から90°回転させた程度であることが記載されている。
4.対比・判断
本願考案と上記引用例に記載された考案とを比較すると、引用例に記載の「ボディ」、「スイッチ取付溝」及び「スイッチ取付ビス」は、本願考案の「シリンダチューブ」、「凹溝」及び「止めねじ」にそれぞれ相当し、
また、引用例に記載された「オートスイッチ」の位置検出の対象である「ピストンA」に「ラバーマグネット11」が取り付けられていること及び該「オートスイッチ」は無接点型のスイッチであることから、該「オートスイッチ」は、この種の装置において磁気近接スイッチがオートスイッチとして慣用されていることからみて、磁気近接スイッチであることは明らかなことであり、
該「オートスイッチ」のスイッチケースは、該「オートスイッチ」が磁気を検出するものであることから、当然非磁性体からなるものであること、「スイッチ取付ビス」のドライバによる締付トルクや締付感等に関する記載からみて、該「スイッチ取付ビス」は「スイッチ取付溝」の溝底に圧接されることは明らかなこと、
さらに、本願考案の「リードスイッチ」は「磁気検出部」であり、また、引用例に記載された「オートスイッチ」も磁気を検出するものであることから「磁気検出部」が内挿されていることは明らかなことより、
両者は、流体圧シリンダのシリンダチューブの表面に、ピストンの摺動方向に沿って凹溝を設け、この凹溝に嵌挿する磁気近接スイッチを、磁気検出部を内挿した非磁性体からなるスイッチケースの先端側に該スイッチケースとほぼ同断面寸法の部分を延設し、且つこの部分にスイッチ固定用のねじ孔を設けることにより構成し、上記ねじ孔に螺挿した止めねじの先端を上記凹溝の溝底に圧接することにより、上記スイッチをシリンダチューブに固定した磁気近接スイッチ付き流体圧シリンダである点で一致し、以下の各点で相違している。
a.凹溝の断面形状及びスイッチケースの形状が、本願考案では、それぞれ半円形よりも大きい円弧状及び小径円筒状であるのに対し、引用例に記載されたものでは、それぞれ略四角形状及び略四角筒状である点。
b.スイッチケースに内挿される磁気検出部が、本願考案では、リードスイッチであるのに対し、引用例に記載されたものでは、どのようなスイッチか明らかではない点。
c.ねじ孔が設けられるスイッチケースの延設部が、本願考案では、中実であるのに対し、引用例に記載されたものでは、中実であるかどうか不明な点。
そこで、上記各相違点について検討すると、
・相違点aについて
磁気近接スイッチ付き流体圧シリンダにおいて、スイッチ取付用の凹溝の断面形状及びスイッチケースの形状を、それぞれ半円形よりも大きい円弧状及び小径円筒状とすることは、実願昭60-123903号(実開昭62-32204号)のマイクロフィルムにも記載されているように周知の技術であり、そして、それらの形状を用いることによる該スイッチの固定に係る作用効果も付随的なものであり、当業者が予測し得る程度のものであるから、引用例に記載されたスイッチ取付用の凹溝の断面形状及びスイッチケースの形状を、それぞれ半円形よりも大きい円弧状及び小径円筒状に変更し、上記相違点aにおける本願考案のように構成することに格別な困難性は認められない。
・相違点bについて
磁気近接スイッチの磁気検出部に、リードスイッチを用いることは、実願昭60-123903号(実開昭62-32204号)のマイクロフィルムにも記載されているように周知の技術であるので、引用例に記載された該磁気検出部に、リードスイッチを採用し、上記相違点bにおける本願考案のように構成することに格別な困難性は認められない。
・相違点cについて
スイッチケースの延設部を中実にするかどうかは、スイッチケースの強度等を考慮して当業者が設計上適宜に決め得るものであり、また、引用例に記載されたものも、該延設部に設けられねじ孔に止めねじを螺挿して、スイッチをシリンダチューブに固定する作用において、本願考案と格別な差異は認められないことより、引用例に記載された該延設部を中実とし、上記相違点cにおける本願考案のように構成することに格別な困難性は認められない。
そして、本願考案が、上記各相違点を組み合わせる効果も、上記引用例に記載された考案及び上記周知の技術から、当業者が予測することができる程度のものである。
5.むすび
以上のとおりであるから、本願考案は、上記引用例に記載された考案及び上記周知の技術に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 1999-09-28 
結審通知日 1999-10-19 
審決日 1999-10-22 
出願番号 実願平2-1033 
審決分類 U 1 8・ 121- Z (F15B)
最終処分 不成立    
前審関与審査官 窪田 治彦  
特許庁審判長 舟木 進
特許庁審判官 佐藤 洋
鳥居 稔
考案の名称 磁気近接スイッチ付き流体圧シリンダ  
代理人 林 宏  
代理人 内山 正雄  

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