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審決分類 |
審判 全部申し立て A61F 審判 全部申し立て A61F 審判 全部申し立て A61F |
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管理番号 | 1006248 |
異議申立番号 | 異議1999-72511 |
総通号数 | 6 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 実用新案決定公報 |
発行日 | 2000-06-30 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 1999-06-23 |
確定日 | 1999-11-04 |
異議申立件数 | 2 |
事件の表示 | 実用新案登録第2588834号「使い捨ておむつ」の実用新案に対する実用新案登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 実用新案登録第2588834号の実用新案登録を維持する。 |
理由 |
I.手続の経緯 本件実用新案登録第2588834号に係る考案についての出願は平成4年1月23日に実用新案登録出願され、平成10年11月6日にその考案について実用新案登録の設定登録がなされ、その後、その登録実用新案について異議申立人岡本綾子及び田中正子より異議の申立てがなされたものである。 II.実用新案登録異議申立てについての判断 1.本件考案 本件請求項1に係る考案(以下、本件考案という。)は、実用新案登録明細書及び図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲に記載されたとおりの 「液透過性の表面シートと、透湿性の防漏シートと、上記両シート間に位置する吸収体とを有するおむつ本体を備え、該おむつ本体の背側部にはそのサイドフラップにテープファスナーが設けられており、該おむつ本体の腹側部の防漏シートの表面には、上記テープファスナーが貼着剥離自在な非透湿性のターゲットテープが接着剤により固着された使い捨ておむつにおいて、 上記防漏シートは、熱可塑性樹脂にフィラーを加えて延伸した透湿性のある液不透過性シートを用いて形成されており、 上記ターゲットテープと上記防漏シートとは、上記接着剤により部分的に且つそれらの非接着部が外気に連通するように接着されていることを特徴とする使い捨ておむつ。」 にあるものと認める。 2.異議申立の概要 異議申立人岡本綾子は、甲第1号証(実願平2-59660号のマイクロフィルム、以下、先願明細書という。)、甲第2号証(実願昭63-72576号のマイクロフィルム、以下、刊行物Aという。)、甲第3号証(特開昭62-282003号公報、以下、刊行物Bという。)、甲第4号証(特開昭60-158284号公報、以下、刊行物Cという。)、甲第5号証(実願昭58-19907号のマイクロフィルム、以下、刊行物Dという。)及び甲第6号証(実願昭54-89430号のマイクロフィルム、以下、刊行物Eという。)を提出し、本件考案は、甲第1号証に記載された考案であるから、実用新案法第3条の2の規定に違反し、甲第2号証に記載された考案であるから、同法第3条第1項第3号の規定に該当し、及び、甲第2?6号証に記載された考案に基づいて当業者がきわめて容易に想到し得るものであるから、同法第3条第2項の規定に違反して登録されたものであり、実用新案登録を取り消すべき旨主張している。 また、同じく異議申立人田中正子は、甲第1号証(特開昭62-282003号公報=刊行物B)、甲第2号証(特開平3-37062号公報、以下、刊行物Fという。)及び甲第3号証(「接着」VOL.32、No.12、19?23及び48頁、以下、刊行物Gという。)を提出して、本件考案は甲第1?3号証に記載された考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案できたものであるから、実用新案法第3条第2項の規定に違反して登録されたものであり、また、本件明細書の記載が不備であるので、登録実用新案が同法第5条第4項又は第5項の規定を満たしていない出願に対してなされたものであるから、本件登録を取り消すべきである旨主張している。 3.実用新案法第3条の2について 3-1 証拠記載の考案 先願明細書には、次の事項が記載されている。 ▲1▼透液性トップシートと不透液性バックシートとの間に吸収性コアーとを介在させて成るおむつ本体において、前記おむつ本体の前側腰囲り部分におけるバックシートの外面に補強片を固着させるに当り、当該固着を筋状に塗工した接着剤によって行うようにしたことを特徴とする使い捨ておむつ。(実用新案登録請求の範囲の請求項1) ▲2▼補強片に使用される材料について述べると、…2軸延伸したポリプロピレンフィルム(以下、OPPフィルムという)で、15?25μ厚のものが、最も一般的に使用されている。(4頁末8?1行) ▲3▼補強片の表側には、通常、係止テープ(約25mm幅)の自由端を取り外し自在に固定する必要があり、したがってその面には適当な剥離性を付与しておくのが、一般的である。(5頁1?5行) ▲4▼バックシート3は、ポリエチレンフィルムまたは該フィルムと不織布とをラミネートしたシート等が用いられる。(12頁14?16行) ▲5▼おむつ本体1の背側腰囲り1aの両側部には係止テープ5の基端が固着されている。…それらテープの表面には周知の感圧性接着剤が施されている。(12頁末2行?13頁4行) 刊行物Bには、柔軟性、引張・引裂き強度に優れた蒸気透過性かつ液不透過性の使い捨ておむつ用のバックシート(1頁右下欄)として、ポリオレフィン樹脂100重量部、充填材50?400重量部…よりなる組成物をシート状に成形後それぞれ延伸倍率1.1?2.5倍で1軸及び2軸方向に延伸する使い捨ておむつ用バックシートの製造方法(特許請求の範囲第2項)が記載されている。 3-2 対比・判断 本件考案と先願明細書に記載されたものとを対比する。 本件明細書【0008】の「本考案による使い捨ておむつは、装着時には、背側部のサイドフラップに設けられたテープファスナーを腹側部に接着されたターゲットテープに貼着して止める。」との記載と、先願明細書の記載▲1▼、▲3▼及び▲5▼の記載からみて、先願明細書のトップシート、バックシート、吸収コアー、補強片、係止テープ及びおむつ本体の背側腰囲りの両側部は、それぞれ表面シート、防漏シート、吸収体、ターゲットテープ、テープファスナー及びサイドフラップに相当するものと認められ、OPPフィルム(▲2▼)は非透湿性であること、及び、接着剤を筋状に塗工することは部分的接着剤により接着されていることは明らかであるので、両者は、液透過性の表面シートと、防漏シートと、上記両シート間に位置する吸収体とを有するおむつ本体とを備え、該おむつ本体の背側部にはそのサイドフラップにテープファスナーが設けられており、該おむつ本体の腹側部の防漏シートの表面には、上記テープファスナーが接着剤により固着された使い捨ておむつである点及びターゲットテープと防漏シートとが部分的に接着剤で接着されている点で一致し、防漏シートが、前者は熱可塑性樹脂にフィラーを用いて形成されたものであるのに対して、後者は不透液性であり、ポリエチレンフィルム又はポリエチレンフィルムと不織布とをラミネートしたシートなどである点、及びターゲットテープと防漏シートとの接着について、前者は非接着部が外気に連通するように接着されているのに対して、後者はこの点が記載されていない点で相違する。 そこで、この相違点を検討すると、先願明細書に記載の防漏シートは、不透液性については言及されている(▲1▼)ものの、先願明細書の記載▲4▼の材料として例示されているポリエチレンシートは、通常、不透湿性であるものと認められるので、防漏シートが透湿性であることは記載されていないものである。 つまり、先願明細書に防漏シートについて透湿性を示唆する記載がない以上、刊行物Bの記載によって、おむつの防漏シートとしてポリオレフィン樹脂(熱可塑性樹脂)に充填材(フィラー)を加えて延伸した透湿性のある液不透過性シートが周知であっても、先願明細書のおむつにこれが防漏シートとして用いられることは記載されているとはいえないのである。 さらに、先願明細書には、ターゲットテープと防漏シートとは部分的に接着されているものの、上記したように防漏シートが透湿性ではないのであるから、非接着部が外気と連通するものではない。 したがって、本件考案は、先願明細書に記載された考案ではない。 4.実用新案法第3条第1項第3号について 4-1 証拠の記載 刊行物Bには、上記3-1に記載した事項が記載されており、刊行物Aには、「透液性トップシートと、不透液性バックシートと、該両シート間に介在させた吸収性コアとからオムツ本体が構成され、前記オムツ本体の背側腰囲りの両側部に取り付けられた粘着テープの自由端の接着および剥離が繰り返されることができるように、前記オムツ本体の前側腰囲りの前記バックシートの外側に固着された補強片を有する使い捨ておむつであって、 前記補強片の前記バックシートヘの前記固着は、少なくとも該補強片の横方向両外側縁を残してホットメルト型接着剤によりなされているオムツ」(実用新案登録請求の範囲第1項)が記載され、バックシートはプラスチックフィルム・該フィルムと不織布とのラミネートシート等(5頁13?15行)であること、補強片はプラスチックフィル・上質紙等から作られる(6頁3?5行)こと、及び、効果として、補強片をバックシートの外面に固着するホットメルト型接着剤が補強片の横方向両外側縁から惨み出て、オムツの着用時ないし着用中に、該接着剤でトップシートがバックシートに接着してしまうことがないから、該補強片から粘着テープを剥離するとき、トップシートおよび/バックシートが破損することがない(7頁)ことが記載されている。 4-2 対比・判断 本件考案と刊行物Aに記載のものとを対比すると、両者は、液透過性の表面シートと、防漏シートと、上記両シート間に位置する吸収体とを有するおむつ本体とを備え、該おむつ本体の背側部にはそのサイドフラップにテープファスナーが設けられており、該おむつ本体の腹側部の防漏シートの表面には、上記テープファスナーが接着剤により固着された使い捨ておむつである点及びターゲットテープと防漏シートとが接着剤で接着されている点で一致し、防漏シートが、前者は熱可塑性樹脂にフィラーを用いて形成されたものであるのに対して、後者は不透液性であり、プラスチックフィルム・該フィルムと不織布とをラミネートしたシート等である点、及びターゲットテープと防漏シートとの接着について、前者は部分的に且つそれらの非接着部が外気に連通するように接着されているのに対して、後者はターゲットテープの横方向両外側縁を残して接着されている点で相違する。 そこで、この相違点を検討すると、刊行物Aに記載の防漏シートは、不透液性については言及されているものの、刊行物Aの材料として例示されているプラスチックシートは、通常不透湿性と認められるので、防漏シートが透湿性であることは記載されていないものである。そして、刊行物Aに防漏シートについて透湿性を示唆する記載がない以上、刊行物Bの記載によって、防漏シートとして熱可塑性樹脂にフィラーを加えて延伸した透湿性のある液不透過性シートが周知であっても、刊行物Aに記載のオムツにこの防漏シートを用いることは記載されてないのである。 さらに、刊行物Aには、ターゲットテープと防漏シートとは部分的に接着されていることは記載されているものの、これは接着剤が惨み出るのを防止するためのものである。すなわち、刊行物Aに記載の使い捨ておむつは、防漏シートは透湿性ではないのであるから、非接着部が外気と連通するものではない。 したがって、本件考案は、刊行物Aに記載された考案ではない。 5.実用新案法第3条第2項について 5-1 証拠の記載 刊行物A及びBは上記4-1及び3-1に記載された事項が記載されている。 刊行物Cには、使い捨ておむつに用いられる接着剤について記載され、この接着剤は、「慣用のマルチライン又はマルチドットタイプ構成に従い少量の接着剤の点を多数施与することを含むやり方を用いて、ポリエチレン又はポリプロピレン基材を織り組織又は不織布又は他のポリエチレン又はポリプロピレン基材に接着するために用いられること、接着剤は一般に物品の長さ方向に沿い一定隔たりの間隔の線(又はドット)として押し出される(6頁左上欄)ことが記載されている。 刊行物Dには、表面シートと、裏面シート(防漏シート)と、該両シート間に介在する吸収体と、一方のウエスト部の両側端部に一端部が取り付けられた感圧テープとを備え、使用に際して該感圧テープの自由端部を他方のウエスト部の前記裏面シートに固着すべき特定区域の内側にホットメルト接着剤の塗布による補強手段が設けられている使い捨ておむつにおいて、前記裏面シートと識別可能な着色を有し、該補強手段の位置が該裏面シートを介して外側から透視可能であるおむつ(実用新案登録請求の範囲)に関する考案が記載され、第4図に接着剤を縞、格子模様、散点状に塗布することが示されている。 刊行物Eには、液体浸透性の表面シート、液体不浸透性の裏面シート及び該両シートの間に位置する吸収層よりなるパッド組立体と、該パッド組立体の一方の長手方向端部付近の両側部に設けられたテープファスナーとから成るつかいすておむつにおいて、他方の長手方向端部付近の両側部周辺の裏面シート外側部分にホットメルトコーティングを施したつかいすておむつ(実用新案登録請求の範囲)が記載され、第4図に接着剤を縞、格子模様、散点状に塗布することが示されている。 刊行物Fには、使い捨ておむつ等の使い捨て製品の製造では、ホットメルト接着剤を塗布するために、多条のビード状に塗布するマルチビード法、貼り合わせ面の全面に塗布するコーティング塗布法などの方法が利用されている(1頁右下欄)こと、刊行物Gには、紙おむつ用ホットメルトの動向と題した報文が記載され、ターゲットテープの接着について、PPフィルムをバックシートに貼りつけファスニングテープの再剥離を可能にすること(20頁左欄)が記載されている。 5-2 対比・判断 本件考案と刊行物Aに記載のものとを対比すると、上記4-2で述べたように、防漏シートが、前者は熱可塑性樹脂にフィラーを用いて形成されたものであるのに対して、後者は不透液性であり、プラスチックフィルム・該フィルムと不織布とをラミネートしたシート等である点、及びターゲットテープと防漏シートとの接着について、前者は部分的に且つそれらの非接着部が外気に連通するように接着されているのに対して、後者はターゲットテープの横方向両外側縁を残して接着されている点で相違し、その他の点については一致する。 そこで、この相違点を検討すると、刊行物Bには、熱可塑性樹脂にフィラーを加えて延伸したシートが使い捨ておむつの透湿性の防漏シートに使われることが記載されているが、これは使い捨ておむつの素材として記載されているのであって、防漏シートとターゲットテープの接着、及び、両者の接着によっておむつの透湿性を保持することについては何等記載されていない。 刊行物Cには、使い捨ておむつに用いられる接着剤は、慣用のマルチライン又はマルチドットタイプ構成に従い少量の接着剤の点を多数施与することが記載されているが、ポリエチレン等の基材に接着するために用いられるのであってターゲットテープとの接着については記載されていない。 刊行物D及びEには、防漏シートにホットメルト接着剤を縞、格子模様、散点状に塗布することは記載されているが、これは感圧テープ(テープファスナー)と貼り合わせる部分の補強手段、つまり、接着剤層自体がターゲットテープの機能をもつ補強手段として接着剤を塗布しているのであって、ターゲットテープを接着するものではない。刊行物Fには、使い捨ておむつの製造で、接着剤を多条のビード状に塗布するマルチビード法が利用されていることが記載されているが、この方法を防漏シートとターゲットテープとの接着に利用することについては記載されてなく、刊行物Gには、防漏シートとターゲットテープが接着されていることは記載されているが、両者の接着剤の塗布方法については記載されてなく、防漏シートの透湿性と接着剤の塗布方法を選択することによって非接着部が外気に連通するように接着することについても記載されていない。 このように、刊行物B?Gには、いずれにも透湿性の防漏シートと非透湿性のターゲットテープの部分的に接着して、非接着部が外気に連通するように接着することは記載されていないので、刊行物Aの不透液性であって透湿性ではない防漏シートをもつ使い捨ておむつにおいて、透湿性の防漏シートと非透湿性のターゲットテープを部分的接着し、非接着部が外気に連通するように接着することは、刊行物B?Gに記載の事項を組合わせても想到できるものではない。 ところが、本件考案は、使い捨ておむつにおいて、透湿性の防漏シートと非透湿性のターゲットテープを部分的に接着することにより、その非接着部分が外気と連通して、腹側部における透湿性を保持するという効果を奏するものである。 したがって、本件考案は、刊行物A?Gに記載された考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案することができたものではない。 6.実用新案法第5条第4項及び第5項について 異議申立人は、請求項1に「非透湿性」のターゲットテープと記載されているが、この記載は出願後補正されたものであって、本件当初明細書及び図面にはこの規定を導き出せる記載はないので、考案の要旨を変更するものであり、補正後の考案は、考案の詳細な説明に記載されていないので明細書の記載が不備である旨主張している。 しかし、ターゲットテープを「非透湿性」とする補正は、透湿性のもの非透湿性のものを含むターゲットテープを「非透湿性」と限定するものであるから、明細書の要旨を変更するものではないし、当初明細書及び図面の記載から、非接着部には空間があり、全面に接着され空間のないものよりおむつの透湿性を保持するものと理解できるものであるから、本件明細書及び図面は当業者が容易に実施できる程度に記載されているものと認められる。 したがって、本件明細書及び図面の記載に不備はない。 III.むすび 以上のとおりであるから、実用新案登録異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件考案の登録を取り消すことはできない。 また、他に本件考案の登録を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 1999-10-13 |
出願番号 | 実願平4-1907 |
審決分類 |
U
1
651・
113-
Y
(A61F)
U 1 651・ 121- Y (A61F) U 1 651・ 161- Y (A61F) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 松縄 正登 |
特許庁審判長 |
加藤 孔一 |
特許庁審判官 |
深津 弘 宮本 和子 |
登録日 | 1998-11-06 |
登録番号 | 実用登録第2588834号(U2588834) |
権利者 |
花王株式会社 東京都中央区日本橋茅場町1丁目14番10号 |
考案の名称 | 使い捨ておむつ |