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審決分類 |
審判 全部申し立て A01B |
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管理番号 | 1006254 |
異議申立番号 | 異議1998-72574 |
総通号数 | 6 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 実用新案決定公報 |
発行日 | 2000-06-30 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 1998-05-20 |
確定日 | 1999-11-01 |
異議申立件数 | 2 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 実用新案登録第2555878号「水田用溝切作業機」の実用新案に対する実用新案登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 訂正を認める。 実用新案登録第2555878号の実用新案登録を維持する。 |
理由 |
1.手続の経緯 本件実用新案登録第2555878号は、平成3年5月30日に実願平3-39832号として出願され、平成9年8月8日にその設定登録がなされ、その後、その実用新案登録について、異議申立人ヤンマー農機株式会社(以下、申立人1という。)、及び、三菱農機株式会社(以下、申立人2という。)より実用新案登録異議の申し立てがなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成11年4月13日に訂正請求がなされたものである。 2.訂正の適否について (2-1)訂正の内容 (1)【実用新案登録請求の範囲】【請求項1】を、「乗用機体(3)の後部に備えた昇降リンク機構(7)に、苗植付装置に代えて着脱自在に取り付けた作業装置連結部材(10)に、前記乗用機体(3)の後車輪(2),(2)の車輪跡を溝状に成形することにより排水用の溝を形成する溝切り金具(9),(9)を取り付けてあり、 この溝切り金具(9),(9)は、乗用機体(3)に対して高さ調節可能に設けられ、かつ各後車輪(2),(2)幅よりも幅広に形成してある水田用溝切作業機。」と訂正する。 (2)段落【0005】【課題を解決するための手段】「...乗用機体の後部に備えた昇降リンク機構に、...特徴構成とする。...」を、 「...乗用機体の後部に備えた昇降リンク機構に、苗植付装置に代えて着脱自在に取り付けた作業装置連結部材に、前記乗用機体の後車輪の車輪跡を溝状に成形することにより排水用の溝を形成する溝切り金具を取り付けてあり、この溝切り金具は、乗用機体に対して高さ調節可能に設けられ、かつ各後車輪幅よりも幅広に形成してあることを特徴構成とする。...」と訂正する。 (2-2)訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否 上記訂正事項(1)は、実用新案登録明細書に記載された事項の範囲内において、実用新案登録請求の範囲を減縮したものに相当し、新規事項に該当しない。 また、上記訂正事項(2)は、実用新案登録明細書に記載された事項の範囲内において、上記実用新案登録請求の範囲の訂正に整合させる明りょうでない記載の釈明に相当し、新規事項に該当しない。 そして、上記いずれの訂正も実質上実用新案登録請求の範囲を拡張し、又は、変更するものでもない。 (2-3)独立特許要件 当審が通知した前記取消理由は、訂正前の本件実用新案登録の考案がその出願前に頒布された下記刊行物1?3に記載された考案に基づき当業者がきわめて容易に考案できたものであるから、訂正前の本件実用新案登録の考案に係る実用新案登録は、実用新案法第3条第2項の規定に違反してされたというものである。 記 刊行物1:実願平1-27905号(実開平2-120101号)のマイクロフィルム(申立人2提出の甲第4号証の1) 刊行物2:特開平3-119914号公報(申立人2提出の甲第3号証の1) 刊行物3:特開昭58-190301号公報(申立人2提出の甲第3号証の2) 刊行物1(実願平1-27905号(実開平2-120101号)のマイクロフィルム)には、「図において、1は乗用田植機の走行機体で、該走行機体1後部には図示しなかったが油圧シリンダ、リフトアーム等を介して機体側を支点として上下回動するアッパーリンク2a及びロアリンク2bからなる平行リンク2が設けられ、.....5はヒッチ6を一体的に設けた溝堀機で、該溝堀機5は、取付用ブラケット7がヒッチ6に一体的に設けられ、取付用ブラケット7の下方寄りに固着のメインフレーム8が機体前後方向に設けられている。.....且つ先端に操作ハンドル15によりリンク16の基端部16aを支点に上下回動固定自在に犂17が設けられている。」(第3頁第5行?第4頁第7行)、「そして、溝堀機5を設置させて溝堀り作業を開始すると、ディスクコールター13,13及び犂17が徐々に土中に食込んで圃場に溝が切られ、この溝によって圃場内の水が容易に排水される。」(第8頁第5?9行)、「水田圃場は勿論、必要に応じて野菜畑等畦間が狭くトラクタ等が入り込むことができない場所であっても作業を行うことができる。」(第9頁第16?19行)が記載されている。 したがって、刊行物1には、「走行機体1の後部に備えた平行リンク2に、苗植付装置に代えて着脱自在に取り付けたヒッチ6に、排水用の溝を形成する犂17を取り付けてあり、この犂17は、乗用機体に対して高さ調節可能に設けられた水田用溝切作業機」が記載されているということができる。 刊行物2(特開平3-119914号公報)には、「...該走行車輪跡を作溝しながらこの作溝内に施肥案内させる作溝器と、この作溝を埋戻すフロートとを設けてなる施肥機。」(特許請求の範囲)が記載されている。 刊行物3(特開昭58-190301号公報)には、「...前記走行車体の車輪通過跡に前記作溝器を位置ならしめてなる水田用作業機。」(特許請求の範囲)、「...その後をレーキ(22)が通過して確実に埋められる。」(第2頁右下欄第1?2行)が記載されている。 訂正された実用新案登録請求の範囲の請求項1に係る考案と、上記刊行物1記載の考案とを対比すると、少なくとも、訂正された実用新案登録請求の範囲の請求項1に係る考案が、(a)「前記乗用機体(3)の後車輪(2),(2)の車輪跡を溝状に成形することにより排水用の溝を形成する溝切り金具(9),(9)を取り付けてあり、この溝切り金具(9),(9)は乗用機体(3)に対して高さ調節可能に設けられ、かつ各後車輪(2),(2)幅よりも幅広に形成してある」構成を有するのに対して、上記刊行物1記載の考案はこのような構成を有しない点で相違する。 上記相違点を検討すると、刊行物2,3記載の考案は、確かに、車輪の車輪跡を溝状に成形することにより溝を形成する溝切り金具(作溝器)を設けているが、いずれも、形成された溝を埋め戻すものであるから、これら刊行物記載の考案は、排水用の溝を形成する溝切り金具が設けてあるとはいえず、刊行物1記載のものに刊行物2又は3記載のものを組み合わせることが、当業者にとってきわめて容易になしえたこととは認められない。 したがって、本件考案は、本件出願前に頒布された上記刊行物1?3記載された考案に基づき当業者がきわめて容易に考案できたものではなく、本件考案を、本件出願の際独立して実用新案登録を受けることができないものとすることはできない。 (2-4)むすび 以上のとおりであるから、本件訂正請求は、平成6年法律第116号附則第9条第2項の規定により準用され、同附則第10条第1項の規定によりなお従前の例とされる、特許法第120条の4第2項、同条第3項で準用する第126条第2?4項の規定に適合するので、当該訂正を認める。 3.本件考案 前記のように、平成11年4月13日付の訂正請求による明細書及び図面の訂正が認められ、本件実用新案登録に係る考案(以下、本件考案という。)は、その実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。「乗用機体(3)の後部に備えた昇降リンク機構(7)に、苗植付装置に代えて着脱自在に取り付けた作業装置連結部材(10)に、前記乗用機体(3)の後車輪(2),(2)の車輪跡を溝状に成形することにより排水用の溝を形成する溝切り金具(9),(9)を取り付けてあり、 この溝切り金具(9),(9)は、乗用機体(3)に対して高さ調節可能に設けられ、かつ各後車輪(2),(2)幅よりも幅広に形成してある水田用溝切作業機。」 4.実用新案登録異議申立てについて (4-1)申立人1の申立てについて 申立ての概要は、訂正前の本件考案は、下記甲第1号証?甲第4号証に記載された考案に基づいて、当業者がきわめて容易に考案できたものであるから、本件登録は実用新案法第3条第2項の規定に違反してなされたというものである。 記 甲第1号証:実願平1-71486号(実開平3-10701号)のマイクロフィルム 甲第2号証:実開昭61-6521号公報 甲第3号証:実願昭58-95605号(実開昭60-1208号)のマイクロフィルム 甲第4号証:実開昭61-92203号公報 甲第1号証(実願平1-71486号(実開平3-10701号)のマイクロフイルム)には、「乗用田植機(1)の後部に備えたトップリンク(8)と左右一対のロアリンク(9)に、苗植付装置に代えて着脱自在に取り付けたヒッチ受枠(26)に、溝を形成する溝堀体(15)を取り付けてある水田用溝切作業機」が記載されている。 甲第2号証(実開昭61-6521号公報)には、「車輪(20)跡を溝状に成形することにより溝を形成する溝切り金具(Q)を取り付けてある一輪歩行型の水田用溝切機」が記載されている。 甲第3号証(実願昭58-95605号(実開昭60-1208号公報)のマイクロフィルム)には、「家庭菜園等に使用する小規模な圃場向きの小型管理機であって、左右一対の車輪(8)(8)の車輪跡を溝状に成形することにより2条づつ溝を形成する溝掘機本体(7b)(7b)を取り付けてある溝掘機」が記載されている。 甲第4号証(実開昭61-92203号公報)には、「水田溝切り板(1)の左右側板(1a)(1b)の後端部が左右のリンク(3a)(3b)よりなるドッグル機構で拡開状態を保持しうるよう拡縮可能に構成した水田溝切り機」が記載されている。 本件考案と、上記甲第1号証記載の考案とを対比すると、少なくとも、本件考案が(a)「前記乗用機体(3)の後車輪(2),(2)の車輪跡を溝状に成形することにより排水用の溝を形成する溝切り金具(9),(9)を取り付けてあり、この溝切り金具(9),(9)は、乗用機体(3)に対して高さ調節可能に設けられ、かつ各後車輪(2),(2)幅よりも幅広に形成してある」構成を有するのに対して、上記甲第1号証記載の考案はこのような構成を有しない点で相違する。 上記相違点を検討すると、甲第2号証記載の考案は「車輪跡を溝状に成形することにより溝を形成する溝切り金具を取り付けてある水田用溝切機」設けているものの、一輪歩行型の水田用溝切機であり、本件考案のように乗用機体(3)に対して高さ調節可能に設けられたものではなく、甲第3号証記載の考案は「車輪の車輪跡を溝状に成形することにより2条づつ溝を形成する溝掘機本体を取り付けてある溝掘機」であるものの、家庭菜園等に使用する小規模な圃場向きの小型管理機であって、これを直ちに水田用溝切作業機に適用できるものではない。また、甲第4号証記載の考案は、「水田溝切り板の左右側板の後端部が左右のリンクよりなるドッグル機構で拡開状態を保持しうるよう拡縮可能に構成した水田溝切り機」であって、上記相違点についての記載はない。 したがって、本件考案は、本件出願前に頒布された上記甲第1号証?甲第4号証に記載された考案に基づき当業者がきわめて容易に考案をすることができたものではない。 (4-2)申立人2の申立てについて 申立ての概要は、訂正前の本件考案は、その出願前に頒布された下記甲第1号証?甲第4号証の3に記載された考案に基づいて、当業者がきわめて容易に考案できたものであるから、本件登録は実用新案法第3条第2項の規定に違反してなされたというものである。 記 甲第1号証:実願昭57-134634号(実開昭59-38718号)のマイクロフルム 甲第2号証の1:実公昭58-49045号公報 甲第2号証の2:実開平1-125013号公報 甲第2号証の3:特開平2-245101号公報 甲第3号証の1:特開平3-119914号公報 甲第3号証の2:特開昭58-190301号公報 甲第4号証の1:実開平2-120101号公報 甲第4号証の2:実開平3-10701号公報 甲第4号証の3:特開平2-69101号公報 甲第1号証(実願昭57-134634号(実開昭59-38718号)のマイクロフルム)には、「乗用機体1の後部に備えた昇降リンク機構25に、苗植付装置14に代えて着脱自在に取り付けた作業機連結フレーム28に、前記乗用機体1の後車輪13,13の車輪跡に位置して中耕ロータリ爪34及び培土板40からなる中耕作業機27を取り付けてある乗用作業機」が記載されている。 甲第2号証の1(実公昭58-49045号公報)には、「牽引車のヒッチに取付棒1を介して装着する水田溝切装置a」が記載されている。 甲第2号証の2(実開平1-125013号公報)には、「乗用田植機1の側部フロート23に構成形部24を設けて、植付と同時に排水溝を成形する乗用型の排水構成形装置」が記載されている。 甲第2号証の3(特開平2-245101号公報)には、「肥料供給体11によって掘られた跡を溝状に成形することによって排水溝を形成する溝切装置4を有する水田の排水用溝切機」が記載されている。 甲第3号証の1(特開平3-119914号公報)には、上記刊行物2記載のとおりの考案が記載されている。 甲第3号証の2(特開昭58-190301号公報)には、上記刊行物2記載のとおりの考案が記載されている。 甲第4号証の1(実開平2-120101号公報)には、上記刊行物1記載のとおりの考案が記載されている。 甲第4号証の2(実開平3-10701号公報)、甲第4号証の3(特開平2-69101号公報)には、「乗用田植機の走行機体を利用して、この植付部に代えて溝切り金具を装着しする」ことが記載されている。 本件考案と、上記甲第4号証の1記載の考案とを対比すると、少なくとも、本件考案が(a)「前記乗用機体(3)の後車輪(2),(2)の車輪跡を溝状に成形することにより排水用の溝を形成する溝切り金具(9),(9)を取り付けてあり、この溝切り金具(9),(9)は、乗用機体(3)に対して高さ調節可能に設けられ、かつ各後車輪(2),(2)幅よりも幅広に形成してある」構成を有するのに対して、上記甲第4号証の1記載の考案はこのような構成を有しない点で相違する。 上記相違点を検討する。 甲第1号証記載の考案は、後車輪(13)の後方に溝切り金具(培土板40)を設けているが、後車輪(13)と溝切り金具(培土板40)との間に、中耕ロータリ爪34が設けられており、後車輪(13)の車輪跡は中耕ロータリ爪34により掻き消され、その後に溝切り金具(培土板40)により溝を形成するものであるから、甲第1号証記載の溝切り金具(培土板40)は、本件考案のように「後車輪(2),(2)の車輪跡を溝状に成形する溝切り金具」であるとはいえない。 甲第2号証の1及び甲第2号証の2記載の考案は、水田用溝切作業機ではあるが、該溝切り金具は、乗用機体に対して高さ調節可能に設けられかつ各後車輪幅よりも幅広に形成してあるものではない。 甲第3号証の1及び甲第3号証の2記載の考案は、車輪の車輪跡を溝状に成形することにより溝を形成する溝切り金具(作溝器)が設けてあるが、いずれも、形成された溝を埋め戻すものであるから、同号証には、排水用の溝を形成する溝切り金具が設けてあるとはいえない。 甲第4号証の2及び甲第4号証の3記載の考案は、乗用田植機の走行機体を利用して、この植付部に代えて溝切り金具を装着しするものであるが、該溝切り金具が後車輪(2),(2)の車輪跡を溝状に成形するものではない。 上述のとおり、甲第1号証?甲第3号証の2、甲第4号証の2、及び、甲第4号証の3には、上記相違点が記載されておらず、これらを甲第4号証の1記載の考案に組み合わせることが、当業者にとってきわめて容易であるとはいえない。 したがって、本件考案が、本件出願前に頒布された甲第1号証?甲第4号証の3に記載された考案に基づき当業者がきわめて容易に考案をすることができたものではなく、本件考案に係る実用新案登録は実用新案法第3条第2項の規定に違反してされたものということはできない。 5.むすび 以上のとおりであるから、申立人の実用新案登録異議申立ての理由及び申立人の提出した証拠方法によっては、本件実用新案登録を取り消すことはできない。 また、他に本件実用新案登録を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【考案の名称】 水田用溝切作業機 (57)【実用新案登録請求の範囲】 【請求項1】 乗用機体(3)の後部に備えた昇降リンク機構(7)に、苗植付装置に代えて着脱自在に取り付けた作業装置連結部材(10)に、前記乗用機体(3)の後車輪(2),(2)の車輪跡を溝状に成形することにより排水用の溝を形成する溝切り金具(9),(9)を取り付けてあり、 この溝切り金具(9),(9)は、乗用機体(3)に対して高さ調節可能に設けられ、かつ各後車輪(2),(2)幅よりも幅広に形成してある水田用溝切作業機。 【考案の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】 本考案は、田植機の汎用性を高めるために、田植機に着脱自在に取り付けることのできる水田用溝切作業機に関する。 【0002】 【従来の技術】 田植作業に関連する作業として、圃場に苗を植え付けた後、2?3週間たってから圃場の水を一旦抜き出してしまう水抜き作業が行われる。これは、生育途中の苗に一時的に苛酷な条件を与えることで、逆境に強い頑状な苗を育てようとするものであり、その水抜きをスムースに行うために、圃場面に溝状の水路を形成していた。 この溝状の水路を形成するための作業は、従来では、溝切り金具を取り付けた歩行型管理機によって1条ずつ行っていた。 【0003】 【考案が解決しようとする課題】 従って、従来においては、泥面を歩行しながらの作業であったので、形成された溝を踏み崩さないように注意する必要もあって、作業者にとって疲労し易い作業となるとともに、その作業に多大の時間が費やされる等の欠点があった。 【0004】 本考案は、上記実情に鑑みてなされたものであって、短時間でかつ楽に溝切作業ができるとともに、良好に溝形成することのできる水田用溝切作業機の提供を目的とする。 【0005】 【課題を解決するための手段】 本考案にかかる水田用溝切作業機は、上記目的を達成するために、乗用機体の後部に備えた昇降リンク機構に、苗植付装置に代えて着脱自在に取り付けた作業装置連結部材に、前記乗用機体の後車輪の車輪跡を溝状に成形することにより排水用の溝を形成する溝切り金具を取り付けてあり、この溝切り金具は、乗用機体に対して高さ調節可能に設けられ、かつ各後車輪幅よりも幅広に形成してあることを特徴構成とする。 かかる特徴構成による作用・効果は、次の通りである。 【0006】 【作用】 すなわち、田植機を構成する乗用機体に運転者が搭乗した状態で乗用機体を走行させながら、圃場の溝切作業を行える。 そして、溝を形成する溝切り金具は、後車輪によって掘られた車輪跡を溝状に成形することにより溝を形成するものであるから、泥面に新たに溝を堀り込むための動力を必要とせず、少ない動力で効率良く溝を形成することができる。また、溝形成と同時に車輪跡が掘り返されたままの凹凸面状態で圃場面に残るのではなく、それが排水溝として残ることになるので、車輪跡消しだけのための動力も必要なくなる。 【0007】 【考案の効果】 したがって、本考案によれば、運転者は溝切作業で圃場を歩く必要がなく、楽な作業となるとともに、溝も左右一対の後車輪の車輪跡に形成することで2条づつ形成されるようになるので、従来に比べ、走行距離も少なく、短時間の作業で済む。 また、車輪跡を利用して溝を形成するので、溝堀り動力を軽減し、少ない動力で排水溝を形成することができるとともに、同時に車輪跡消しの作用も生じることとなり、効率の良い溝切作業を行うことができる。 【0008】 【実施例】 以下、本考案の実施例を図面に基づいて説明する。 図1に、乗用型田植機の後部に溝切り金具9を取り付けた状態を示している。この乗用型田植機は、左右一対の前車輪及び後車輪2,2を備えた乗用機体3に、エンジン及び運転部等を搭載するとともに、乗用機体3の後部に、苗植付装置を後端部に着脱自在に設ける昇降リンク機構7を、油圧シリンダ8で昇降可能に備えて構成される。 【0009】 図1に示すように、昇降リンク機構7の後端部の縦リンク部材7Aから苗植付装置を取り外して、左右一対の溝切り金具9,9を着脱自在に設ける作業装置連結部材10を、その縦リンク部材7Aのフックに係止してロック固定している。作業装置連結部材10は、縦リンク部材7Aの前記フックヘの係止部とロック機構とを備えるとともに、その後部に、左右一対の溝切り金具9,9を着脱自在に設けるためのヒッチ部10Aを備えている。図1乃至図3に示すように、溝切り金具9,9と一体の支持棒部材9a,9aを把持した固定金具11,11は、ヒッチ部10Aに対する取り付け部を中央に備えかつ左右方向に水平に配設されるバー部材12に夫々外嵌固定されて、溝切り金具9,9の支持がなされている。固定金具11,11は、図3に示すように、バー部材12への固定位置を左右に変更可能にしており、このため、溝切り金具9,9が夫々後車輪2,2の直後方に位置するように設定してセットボルト13,13で固定金具11,11を固定する。さらに、溝切り金具9,9を高さ調節できるように、支持棒部材9a,9aを固定金具11,11に上下移動可能に内嵌し、支持棒部材9a,9aに形成されたラック14,14に、固定金具11,11に枢着されたピニオンギア15,15を歯合して、外部に露出させたピニオンギア15,15のピニオン軸15a,15aにハンドルを嵌め付けてこのハンドルを回動操作する構成にしている。溝切り金具9,9を適宜な高さに設定した状態で固定するために、支持棒部材9a,9aと固定金具11,11とを、セットボルト又はロック機構で固定する。 【0010】 溝切り金具9,9は、図2に示すように、左右一対の溝切り板9A,9Aの後向きに開いたその相対角度を調整できるように、両溝切り板9A,9Aをその前端で縦軸心周りに枢着しかつ両者を互いに連結するターンバックル9Bで両溝切り板9A,9Aの間隔を変更できる構造にしている。この調整により、任意の幅に溝を形成できる。 【0011】 図1に示すように、作業装置連結部材10の上端部の第2ヒッチ10Bに、エンジン及びポンプのセットからなる薬剤散布装置18と肥料タンク19とを支持する支持フレーム20を着脱自在に取り付けている。そして、この肥料タンク19に貯留された液状肥料或いは粉粒状肥料を溝切り金具16での溝形成と同時にその溝に施肥できるよう、後端に薬剤吐出用の開口を備えたノスル管21,21を、図1、図2及び図4に示すように、溝切り金具16の左右の溝切り板16A,16Aにおける外側面に設けているとともに、溝切り板16A,16Aの内側に設けた前記ノズル管21,21の薬剤供給口と前記ポンプとを薬剤供給管22,22で接続している。従って、溝形成と同時に深層施肥又は側条施肥を行えるものである。尚、肥料散布に代えて防除用薬剤を散布するようにしても良い。 【0012】 図2に示すように、左右一対の溝切り金具9,9左右での中間に深層施肥用の回転ディスク23を配設した構成にしており、この回転ディスク23によって形成された深溝に薬剤散布装置18から肥料を供給するようにしている。 【0013】 尚、実用新案登録請求の範囲の項に図面との対照を便利にするために符号を記すが、該記入により本考案は添付図面の構造に限定されるものではない。 【図面の簡単な説明】 【図1】 田植機の後部に苗植付装置に代えて取り付けた水田用溝切り作業機を示す側面図 【図2】 水田用溝切作業機を示す平面図 【図3】 溝切り金具を示す縦断側面図 【図4】 作業状態の溝切り金具を示す後面図 【符号の説明】 2 後車輪 3 乗用機体 7 昇降リンク機構 9 溝切り金具 10 作業装置連結部材 |
訂正の要旨 |
訂正の要旨 特許第2555878号発明の明細書を、訂正明細書のとおりに、次のように訂正する。 (1)実用新案登録請求の範囲の減縮を目的として、【実用新案登録請求の範囲】【請求項1】を、 「乗用機体(3)の後部に備えた昇降リンク機構(7)に、苗植付装置に代えて着脱自在に取り付けた作業装置連結部材(10)に、前記乗用機体(3)の後車輪(2),(2)の車輪跡を溝状に成形することにより排水用の溝を形成する溝切り金具(9),(9)を取り付けてあり、 この溝切り金具(9),(9)は、乗用機体(3)に対して高さ調節可能に設けられ、かつ各後車輪(2),(2)幅よりも幅広に形成してある水田用溝切作業機。」と訂正する。 (2)明りょうでない記載の釈明を目的として、段落【0005】【課題を解決するための手段】「...乗用機体の後部に備えた昇降リンク機構に、特徴とする。...」を、 「乗用機体の後部に備えた昇降リンク機構に、...苗植付装置に代えて着脱自在に取り付けた作業装置連結部材に、前記乗用機体の後車輪の車輪跡を溝状に成形することにより排水用の溝を形成する溝切り金具を取り付けてあり、この溝切り金具は、乗用機体に対して高さ調節可能に設けられ、かつ各後車輪幅よりも幅広に形成してあることを特徴構成とする。」と訂正する。 |
異議決定日 | 1999-10-18 |
出願番号 | 実願平3-39832 |
審決分類 |
U
1
651・
121-
YA
(A01B)
|
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 番場 得造 |
特許庁審判長 |
藤井 俊二 |
特許庁審判官 |
木原 裕 佐藤 昭喜 |
登録日 | 1997-08-08 |
登録番号 | 実用登録第2555878号(U2555878) |
権利者 |
株式会社クボタ 大阪府大阪市浪速区敷津東一丁目2番47号 |
考案の名称 | 水田用溝切作業機 |
代理人 | 北村 修一郎 |
代理人 | 北村 修一郎 |