• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て   A61M
審判 全部申し立て   A61M
管理番号 1007633
異議申立番号 異議1998-75466  
総通号数
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案決定公報 
発行日 2000-07-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 1998-11-11 
確定日 1999-10-27 
異議申立件数
事件の表示 実用新案登録第2573055号「接続管」の請求項1ないし2に係る実用新案に対する実用新案登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。   
結論 実用新案登録第2573055号の請求項1ないし2に係る実用新案登録を取り消す。
理由 1.手続きの経緯
実用新案登録第2573055号の請求項1及び2に係る考案は、平成4年11月6日に出願され、平成10年3月13日に設定登録され、その後その実用新案登録ついて異議申立人 小椋久男より実用新案登録異議の申立てがなされたものである。
2.本件考案
実用新案登録第2573055号の請求項1に係る考案(以下本件考案1という)は、明細書の請求項1に記載された下記の事項により特定されるとおりのものである。

【請求項1】医療用具の途中に設置される接続管であって内管4の外周に隙間6を隔てて外管5を形成し、
外管5の内径をチューブの外径より小さく形成し、
チューブの内径を内管4の外径と略同一あるいは大きく形成した、ことを特徴とする接続管。
そして、同請求項2に係る考案(以下、本件考案2という)については以下のとおりである。
「工業所有権に関する手続等の特例に関する法律」第3条第1乃至3項に規定される、ファイルに記録された、本件登録時の請求項2の記載は下記のとおりである。

【請求項2】医療用具の途中に設置される接続管であって、内管4の隙間6を隔てて外管5を形成し、
内管4の外径をチューブの内径より大きく形成し、
チューブの外径を外管5の内径と略同一あるいは小さく形成した、ことを特徴外周にとする接続管。
上記請求項2の記載において、「内管4の隙間6」及び「ことを特徴外周にとする」とは、本件明細書の実施例の記載及び実用新案登録異議意見書の記載からみて「内管4の外周に隙間6」及び「ことを特徴とする」の記載であることは自明のことであるから、本件考案2は下記の事項により特定されるとおりのものであると認める。

【請求項2】医療用具の途中に設置される接続管であって、内管4の外周に隙間6を隔てて外管5を形成し、
内管4の外径をチューブの内径より大きく形成し、
チューブの外径を外管5の内径と略同一あるいは小さく形成した、ことを特徴とする接続管。
3.引用刊行物の記載事項
先の取消理由通知において引用した刊行物1乃至6には以下のとおりの記載がある。
刊行物1:特開平3-21263号公報
「本発明は、輸液セットや輸血セットなどの各種医療用具においてしばしば見られる軟質チューブと硬質部材の嵌合接続構造の改良に関する」(公報1頁左下欄下から2行-1行)
「第1図は第1の発明の実施例を示す正面図であり、チューブと硬質部材とを分離した状態を示す。また、第2図は、この硬質部材の右側面図である。硬質部材2は、チューブ挿入部3と鍔4を有しており、軟質チューブ1をその端部が鍔4に当接するまで挿入するのは、従来と同様である。本発明においては、この鍔4に突起5が設けられている(図の実施例では2個の突起を設けている)。この突起5を設けたことによって、上述したようにチューブの脱落が阻止される。すなわち、第3図に示すように、チューブを押し込む力が作用したとき、チューブの端部は突起5によって挿入部3に押しつけられて密着しているので、次にチューブを引き抜く力が作用しても摩擦力によって脱落が阻止されるのである。図の実施例においては、突起を2個設けたが、個数や大きさにはとくに制限はない。しかし、1つの周状突起によって全周をカバーした場合には、嵌合力はやや低くなるので、部分周的な突起を設ける方がより好ましい。」(公報2頁右下欄12行-3頁左上欄10行)
また、第1図及び第3図を参酌すれば、径の大きさが、先端においても変化していない軟質チューブ1が、硬質部材2に装着されることにより、その先端形状が、径が小さくなるように突起5により変形されており、また、チューブの径が変形していない部分のチューブの内周面と、硬質部材のチューブ挿入部の外周面との間に間隙があることから、チューブ挿入部の外径よりもチューブの内径は大きく、突起の内径はチューブの外径よりも小さいことが見て取れる。
刊行物2:実願昭61-42502号(実開昭62-153493号)のマイクロフィルム
「成形品本体から筒状の継手が突出しているプラスチック成形品の筒状継手構造において、
前記継手の周囲には筒状の補強環が前記継手との間に隙間をあけて同心円状に前記成形品本体の上に設けられており」(実用新案登録請求の範囲)
「継手にホースが嵌められたとき、ホースは補強環で外から押さえれることになる」(明細書5頁10-11行)
刊行物3:実公平2-32295号公報
「本考案は点滴筒、特に小児用または精密点滴用の点滴筒に薬液の注入速度を安定させて滴下させるための装置に関する」(公報1欄9-11行)
そして第2図の記載を参酌すれば、接続管2は点滴筒1の上部に設けられた蓋状の部分に嵌着されており、該嵌着される蓋状の部分の形状は、内側と外側に環状の管が形成され、該内側と外側の管の間に、上記接続管が設けられ、接続管の内周と内側の管の外周および、接続管の外周と外側の管の内周がそれぞれ接触しており、さらに、上記接続管は、内側の管の先端部より嵌着された部分において、該嵌着されていない部分と比べ、その径が拡大していることが見て取れる。
刊行物4:実願昭51-90008号(実開昭53-7718号)のマイクロフィルム
「図において1はポリエチレンパイプ・・8はパイプ1の口部に挿入されて該部を補強する中空状のテーパーコアー・・
叙上の構成に係る本継ぎ手は、これを使用するに当たり、第2図に示したように接続すべきパイプ1に・・コアー8をパイプ1の口部に挿入して該パイプを継手本体9に差し込み、上記袋ナット11を継手本体9に螺合せしめれば・・該リング6はパイプ1と本体9の間隙12に更に圧迫されて食い込み高い密着度によって該部を封止する。」(明細書2頁12行-3頁15行)
そして、第1図及び第2図を見れば、パイプの内周は、該パイプの内周と接するコアーの外周よりその径が小さいことが見て取れる。
刊行物5:特公昭52-41884号公報
「まず、第1図に示すように、接続しようとする硬管1と未硬化樹脂管2とをほぼ同一軸芯3上に配置する。・・
前述したように同一軸芯3上に配置した硬管1と未硬化樹脂管2とを互に近づくべく相対移動させる。すると未硬化樹脂管2はまず先側傾斜部8aの先端に外嵌し、そしてさらに相対移動させる事により該先側傾斜部8aから中側傾斜部8bへと外嵌してゆく。すなわち未硬化樹脂管2は先すぼまり傾斜外周面8に案内されながら外嵌してゆくのであるが、このとき未硬化であることから次第に拡径され、所定量の外嵌を終えたときには第2図に示すように筒状操作体10の雌螺子部13に近づく拡径部2Aをその端部に形成する。次いで筒体5の移動と筒状操作体10の回転とにより両螺子部6、13を螺合させる。そして筒体5の回転を阻止した状態で筒状操作体10をさらに回転させる。すると筒体5が管端部1A側に移動するが、このとき端面5aの移動経路中に位置する前記拡径部2Aの未硬化の樹脂2aが該端面5aにより絞られるように後押しされ、この後押しされる樹脂2aは前記管端部1Aと筒状操作体10との間の空隙Aを次第に埋め」(公報1欄37行-3欄14行)
刊行物6:特公昭56-16316号公報
「而して第2図の如くこの冷媒配管1は耐候性を有する樹脂チューブ6で外表面を被覆し前記接続端子9、9の構成金属である銅よりもイオン化傾向の大きいアルミニウムで構成されている。7aは接続端子9のテーパー状接続面19に合致する形状の円錐状ステンレス製第1カラー、7aは配管1の端部外周に嵌着される円筒状のステンレス製第2カラーで、第2図イに示す如く接続端子9の螺溝16と内周に形成される螺溝17とによって締結関係をもち押圧面21を形成した締結部材としてのフレヤーナット11を金属製配管1の外周に嵌着した状態で、第2図ロに示す如く金属製管1及び第2カラー7bの端部にテーパー状の接合部20,22を図示しないフレアー工具により同時に加工成形し」(公報2欄26-3欄3行)
4.対比・判断
a.本件考案1について
よって、上記刊行物1には「医療用具の途中に配置される硬質部材であってチューブ挿入部3の外周に隙間を隔てて突起5を形成し、突起5の内側の壁は、チューブの外径よりも狭い間隔で配置されており、チューブの内径はチューブ挿入部の外径よりも大きい硬質部材」が記載されている。
そして、本件考案1と上記刊行物1に記載された考案とを対比すると、上記刊行物1に記載された「医療用具の途中に配置される硬質部材」、「チューブ挿入部3の外周に隙間を隔てて形成し」、「内側の壁は、チューブの外径よりも狭い間隔で配置」、「チューブの内径はチューブ挿入部の外径よりも大きい」、「硬質部材」は、それぞれ、本件考案1の「医療用具の途中に設置される接続管」、「内管4の外周に隙間6を隔てて形成し」、「内径をチューブの外径より小さく形成」、「チューブの内径を内管4の外径と略同一あるいは大きく形成した」、「接続管」に対応するから、本件考案1と上記刊行物1に記載された考案とは「医療用具の途中に設置される接続管であって内管4の外周に隙間6を隔てて形成し、内径をチューブの外径より小さく形成し、チューブの内径を内管4の外径と略同一あるいは大きく形成した、ことを特徴とする接続管」で一致し、以下の点で相違する。
(相違点)
本件考案1の「内管4の外周に隙間6を隔てて形成し、内径をチューブの外径より小さく形成」されているものは「(環状の)外管」であるのに対し、上記刊行物1に記載されたものは、(実施例では)二ヶ所に設けられた突起である点。
(相違点について)
上記刊行物1には、「しかし、1つの周状突起によって全周をカバーした場合には、嵌合力はやや低くなるので、部分周的な突起を設ける方がより好ましい。」の記載に見られるとおり、環状の突起に対する技術思想も開示されており、また、上記刊行物2には、管の継手において、「継手の外周に隙間を隔てて形成し、内径をチューブの外径より小さく形成」された筒状の補強環が記載されている。さらに、上記刊行物1及び2に記載された考案はいずれも管の継手に関する考案であり同一の技術分野に属する。
したがって、刊行物1に記載された突起に換えて刊行物2に記載された筒状の補強環を用いることにより(環状の)外管とすることになんら困難性を見いだせず、上記相違点は当業者がきわめて容易になし得るものである。また、これらを組み合わせることによる効果も当業者が予測しうる程度のものである。
b.本件考案2について
上記刊行物3には「医療用具の途中に設置される点滴筒であって、内側と外側に環状の管が形成され、該内側と外側の管の間に、上記接続管が設けられ、接続管の内周と内側の管の外周および、接続管の外周と外側の管の内周がそれぞれ接触しており、さらに、上記接続管は、内側の管の先端部より嵌着された部分において、該嵌着されていない部分と比べ、その径が拡大している点滴筒」が記載されている。
よって、本件考案2と上記刊行物3に記載された考案とを対比すると、上記刊行物3に記載された「医療用具の途中に設置される点滴筒」、「内側と外側に環状の管が形成」、「接続管の外周と外側の管の内周が接触」、「点滴筒」は、本件考案2の「医療用具の途中に設置される接続管」、「内管4の外周に隙間6を隔てて外管5を形成」、「チューブの外径を外管5の内径と略同一あるいは小さく形成」、「接続管」に相当するから、本件考案2と上記刊行物3に記載された考案とは「医療用具の途中に設置される接続管であって、内管4の外周に隙間6を隔てて外管5を形成し、チューブの外径を外管5の内径と略同一あるいは小さく形成した、ことを特徴とする接続管」で一致し以下の点で相違する。
(相違点)
本件考案2のものは「内管4の外径をチューブの内径より大きく形成」しているのに対し、上記刊行物3に記載のものは、接続管は、内側の管の先端部より内側の管と嵌着された部分において、嵌着されていない部分と比べ、その径が拡大してはいるが、接続管の内径が内側の管の外径よりも小さいために、接続管はその径が内側の管の挿入により拡大しているのか、あるいは単に、内側の管に嵌着される部分の接続管の内径だけがもともと拡大されているのか、格別の記載はない。
(相違点について)
ところで、通常の継ぎ手において、内管の外径がチューブの内径より大きいことは、例えば、上記刊行物4乃至6に記載されるとおり通常行われていることである。すなわち、上記刊行物4乃至6に記載のものにおいては、いずれも、テーパー状の内管により、該内管に嵌着されるチューブの径が、嵌着される前と比べて拡大されているから、該チューブの内径と内管のテーパー部の外径とを比較すれば、内管のテーパー部の外径の方が大きいことは自明のことである。
なお、上記刊行物4乃至6に記載のものは、一般的な管継ぎ手に用いられるものであるが、ガス管等の継ぎ手と、医療用のチューブに用いられる継ぎ手とが同一の技術範囲に属することは、例えば、実願昭51-28531号(実開昭52-119516号公報)のマイクロフィルムに記載されるとおり当業者には周知のことである。
したがって、上記刊行物3に記載された接続管において、内側の管が嵌着された部分の内径が内側の管が嵌着されていない部分の内径と同じであり、内側の管の挿入によってその径を拡大するよう構成することは、継ぎ手において上記通常行われていることを参照すれば、当業者がきわめて容易になし得ることである。
そして、上記刊行物3に記載された考案に上記4乃至6に記載された考案を適用することによる効果も当業者が予測しうる程度のものである。
5.むすび
以上のとおりであるから、本件考案1は上記刊行物1乃び2に記載された考案に基づき、また、本件考案2は上記刊行物3乃至6に記載された考案に基づき当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであり、実用新案法第3条第2項の規定に違反して実用新案登録されたものであり、本件考案1乃び2に対する実用新案登録は、平成6年法律第116号附則第9条第2項の規定で準用する、特許法第113条第1項第2号の規定により取り消されるべきである。
よって、結論のとおり決定する。
異議決定日 1999-09-07 
出願番号 実願平4-82811 
審決分類 U 1 651・ 113- Z (A61M)
U 1 651・ 121- Z (A61M)
最終処分 取消    
前審関与審査官 小川 慶子  
特許庁審判長 新宮 佳典
特許庁審判官 柏木 悠三
渡邊 聡
登録日 1998-03-13 
登録番号 実用登録第2573055号(U2573055) 
権利者 川澄化学工業株式会社
東京都品川区南大井3丁目28番15号
考案の名称 接続管  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ