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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65D
管理番号 1009128
審判番号 審判1998-7930  
総通号数
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2000-08-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1998-05-14 
確定日 2000-01-14 
事件の表示 平成4年実用新案登録願第92476号「バリアー紙カップ容器」拒絶査定に対する審判事件(平成5年9月17日出願公開、実開平5-68817)について、次のとおり審決する。   
結論 本件審判の諦求は、成り立たない。
理由 I.手続の経緯・本願考案
本願は、平成4年12月24日の出願であって、その請求項1に係る考案は、平成10年6月5日付け手続補正書により補正された明細書および出願当初の図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものと認められる。
「【請求項1】ケイ素酸化物薄膜層とポリエステル層と紙層とを含み、アルミニウム層を有しない積層物で胴部(1)と底部(2)とを形成したことを特徴とするバリアー性を有する紙カップ容器。」
II.引用刊行物記載の考案
原査定の拒絶の理由に引用された実願昭63-120745号(実開平2-43228号)のマイクロフィルム(以下、「引用刊行物1」という。)および特開昭62-146139号公報(以下、「引用刊行物2」という。)には以下の点が記載されている。
・引用刊行物1
a)「紙を主体とした積層構成のマイクロ波透過性のシートより形成した液体紙容器において、前記積層構成中にバリヤー性無機物をコートした耐熱性フィルムを設けたことを特徴とする液体紙容器。」(実用新案登録請求の範囲、第1図参照。)
b)「従来より、清酒、スープ等の内容物を収納するゲーベルトップ型、直方体型等の液体紙容器は、その保護性を考慮して容器を形成する素材中にアルミ箔が用いられている。」(1頁14?17行)
c)「本考案によれば、容器を形成するシート材料中にアルミ箔等のマイクロ波遮蔽物質を含んでいないので、マイクロ波が容器の内部に達し内容物を加熱できる。また、内容物保存上必要なバリヤー性を有するものである。」(3頁4?9行)
d)「この液体紙容器(A)は、外側よりPE(1)/紙(2)/ポリエステル(3)(以下PETという)/SiO_(2)薄膜層(4)/PE(1)の積層構成よりなる。この実施例において、SiO_(2)薄膜層(4)は通常行われている方法により、PET(3)フィルムを基材としてスパッタリング法、プラズマ法、真空蒸着法等の方法を用いて設ける・・・上記実施例において、バリヤー性無機物層にSiO_(2)を用いたが、SiO、Si_(2)O_(3)、Si_(3)O_(4)等の珪素酸化物、珪素を用いてもよい。」(3頁17行?4頁9行)
・引用刊行物2
a)「(1)ベース紙の片面にポリビニルアルコールおよび/またはデンプンと耐水化剤とを主成分とするバリヤー層を有し、更にその上にシリコン樹脂層を有するシート片を用いて、該シリコン樹脂層を内側として形成された容器であって、ヒートシールによる接着部分を有することを特徴とする耐水耐油耐熱性紙容器。」(特許請求の範囲第1項)
b)「従来、食品を包装する容器のうち、包装体の状態で調理等の加熱加工および流通に供されるものとしては、・・・アルミ箔や耐熱樹脂をラミネートした紙製のもの、・・・などがあり、形状としてはカップ状、ドンブリ状、袋状、トレイ状などがある。・・・しかしながらこれらの包装材は、廃棄後焼却ができないか、焼却すると有毒ガスを発生したり高熱の発生により焼却炉を損傷するなどの問題点を有する。」(2頁右上欄3行?同左下欄2行)
c)「本発明の容器の形状は特に限定されず、例えばカップ状、ドンブリ状、箱形、袋状、トレイ状、円錐状またはラングストン筒状等、種々の形状に適用でき、また蓋、封などをしない解放状態であってもよい。」(4頁左上ラン13?17行)
d)「第1?6図において、斜線部はシリコン樹脂層を形成した部分である。・・・第1図は形状をカップ状とした場合の例である。本体1、底2および蓋3において斜線部にはバリヤー層およびシリコン樹脂層が形成されており、これが容器の内面となる。」(4頁右上欄11?17行、第1?6図参照。)
III.対比・判断
引用刊行物1記載の考案における紙容器はPE/紙/ポリエステル/SiO_(2)薄膜層/PEの積層構成よりなり(引用刊行物1-d)、その積層構成中にアルミ箔を含まないシートよりなるものであるから(引用刊行物1-c)、このシートは本願請求項1に係る考案の積層物に相当する。また、紙容器全体がこの積層構成を有するシートにより形成されており(引用刊行物1-a)、前記SiO_(2)薄膜層はバリヤー性を有するものであるから、本願請求項1に係る考案と引用刊行物1記載の考案とを対比すると、両者は「ケイ素酸化物薄膜層とポリエステル層と紙層とを含み、アルミニウム層を有しない積層物で胴部(1)と底部(2)とを形成したことを特徴とするバリアー性を有する紙容器。」である点で一致する。そして、紙容器が、前者では「カップ容器」であるのに対し、後者では「液体容器」であって、液体容器の例としてゲーベルトップ型や直方体型等をあげている(引用刊行物1-b)点で相違する。
以下、相違点について検討すると、引用刊行物2にはバリヤー層を有するシート片により形成された紙容器が記載されており(引用刊行物2-a)、この紙容器はカップ状、箱形等、種々の形状に適用できること(引用刊行物2-c)、カップ状とした例においては本体および底が同じ素材のシート片で形成されていること(引用刊行物2-d)が記載されている。そして、引用刊行物1および2記載の考案は、共に従来アルミ箔により得ていたバリアー性をアルミニウム層を含まないことに達成した紙容器であり、技術分野および課題を同じくするものである。してみると、引用刊行物1記載の積層物で紙容器を形成するにあたり、カップ状とすることに格別の困難性は認められない。また、このようにして得られた紙カップ容器は本願請求項1に係る考案と同じ素材の積層物により形成されているのであるから、当然にして胴部・底部の強度付与を含む本願請求項1に係る考案と同様の効果を奏するものと認められる。
IV.むすび
したがって、本願請求項1に係る考案は引用刊行物1および2記載の考案に基いて当業者が極めて容易に想到することができたものであるから、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 1999-09-10 
結審通知日 1999-09-24 
審決日 1999-10-01 
出願番号 実願平4-92476 
審決分類 U 1 8・ 121- Z (B65D)
最終処分 不成立    
前審関与審査官 二ッ谷 裕子  
特許庁審判長 佐藤 久容
特許庁審判官 杉原 進
鈴木 美知子
考案の名称 バリアー紙カップ容器  
代理人 小西 淳美  

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