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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65D
管理番号 1009129
審判番号 審判1998-13673  
総通号数
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2000-08-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1998-08-31 
確定日 2000-01-14 
事件の表示 平成5年実用新案登録願第19337号「食品包装用容器」拒絶査定に対する審判事件(平成6年11月4日出願公開、実開平6-78280)について、次のとおり審決する。   
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 1.本願考案
本願は、平成5年4月15日の出願であって、その請求項1に係る考案は、平成10年3月18日付手続補正書により補正された明細書および出願当初の図面の記載からみて、上記平成10年3月18日付手続補正書の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。
「樹脂発泡体を素材とする食品用包装容器であって、少なくとも、食品本体を収容するための上方が開放した有底容器本体と、該容器本体の開放部に嵌合載置される上方が開放した中蓋部と、該中蓋部の開放部に嵌合載置される蓋本体とからなり、該容器本体はその内底部分に凹凸溝が形成されており、該中蓋部は仕切り壁により少なくとも2室に区画されており、そのうち1室に該当する底部には多数の貫通孔が形成されていて、該室には蓄冷剤が収容されるとともに、該蓄冷剤が収容される室の少なくとも底部には吸湿性シートが敷設されていることを特徴とする食品包装用容器。」
II.引用例の記載
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、実願昭57-106494号(実開昭59-147060号)のマイクロフィルム(以下、引用文献1という)には下記の事項が記載されている。
▲1▼「容器本体に対し被嵌自在な合成樹脂発泡体主材の蓋本体の上面中央部を凹設するとともに、該凹設部の上部に合成樹脂発泡体主材の蓋板を脱着自在に嵌合して凹設部空間を保冷保温媒体の収納室となし、前記収納室の底壁の上面に多数の凸部を所要間隔に配して設けるとともに、底壁の所要箇所に冷気または温気流通用の孔を設けたことを特徴とする容器の蓋構造。」(第1頁第4?12行;実用新案登録請求の範囲第1項)
▲2▼「上記収納室(4)の底壁(5)については、その厚みや面積等によっては図示する実施例のように長手方向中央部等の適所に補強用のリブ(8)を設ける場合があり、この場合リブ(8)によって区画された各部分において上記のごとき凸部(6)および孔(7)を設けて実施する。」(第4頁第13?18行)
▲3▼「容器本体(20)としては上記の蓋本体(1)等と同様に合成樹脂発泡体単独、あるいはこれに非発泡の合成樹脂を表皮層として被装したものが好適に用いられる。」(第7頁第8?11行)
▲4▼「本考案は上記のように構成されており、アイスクリーム等の冷菓、ケーキ等の菓子類、鮮魚類等の保冷を要する食品あるいはホットケーキ等の保温を要する食品その他の商品の出荷、輸送用の通い箱あるいは包装用保冷保温容器等に利用するもので、」(第7頁第12?17行)
▲5▼「この保冷保温媒体(30)としては、例えば熱容量の大きいゲル状もしくはゼリー状の蓄冷効果のある物質を表裏体よりなる扁平状の合成樹脂製袋に封入してなる袋詰め蓄冷材あるいは蓄熱材が特に好適に用いられる。」(第8頁第1?6行)
また、原査定の拒絶の理由に引用された実願平1-117749号(実開平3-56575号)のマイクロフィルム(以下、引用文献2という)には下記の事項が記載されている。
▲6▼「本考案は、主として鮮魚類等の生鮮食品や冷凍食品を低温にて輸送するための低温輸送容器に関する。」(第1頁第13?15行)
▲7▼「容器本体1は、その側壁面内には上下方向に連続した多数の突起3,3・・・が一体成形されているとともに、底面上には、円柱状をした多数の突起4,4・・・が一体成形されており、」(第4頁第8?11行)
▲8▼「輸送中において、冷却材12によって冷却された周囲の冷気は比重差によって降下し、突起3,3及び4,4間の凹部5,6を通って対流を生じ、内容物を全周囲から均一に冷却する。」(第5頁第15?18行)
また、原査定の拒絶の理由に引用された実願昭63-66077号(実開平1-169323号)のマイクロフィルム(以下、引用文献3という)には下記の事項が記載されている。
▲9▼「生鮮食品を保管ケースの中に入れて低温(冷菓、チルド状態)管理を行う場合、時間の経過に伴う温度上昇にのため、ドリップ(食品に含まれる水分、体液、水洗いした食品の水滴、味付けした汁や油など)が発生する。
この場合、ドリップのため品質が低下する。このため従来は、1層からなる不織布を食品の間に挟み、ドリップを吸収するという方法がとられていた。}(第2頁第6?14行)
III.対比・判断
ここで、本願請求項1に係る考案(以下、本願考案)と上記引用文献1に記載の考案(以下、引用考案1)とを対比する。
上記▲1▼より、引用考案1の「蓋本体」は、その凹設部に保冷保温媒体を収納するものであるから、本願考案の「中蓋部」に相当し、引用考案1の「蓋板」は、上記「蓋本体」に脱着自在に嵌合するものであるから、本願考案の「蓋本体」に相当する。そして、上記▲1▼より、引用考案1の「蓋本体」「蓋板」はともに合成樹脂発泡体を主材とするものであり、上記▲3▼より容器本体も合成樹脂発泡体を主材とするものであることが認められ、上記▲4▼より該容器は食品包装用に用いられるものであることが認められるから、引用考案1は「樹脂発泡体を素材とする食品用包装容器」に関するものであることが認められる。また、上記▲1▼の記載から、容器本体に蓋本体(中蓋部)が嵌合することより、容器本体の上方が開放していることが認められ、蓋本体(中蓋部)の上面中央部が凹設されているから、蓋本体(中蓋部)の上方も開放していることが認められるから、引用考案1の食品包装容器は「食品本体を収容するための上方が開放した有底容器本体と、該容器本体の開放部に嵌合載置される上方が開放した中蓋部と、該中蓋部の開放部に嵌合載置される蓋本体とから」なるものと認められる。また、上記▲2▼には、蓋本体(中蓋部)の収納室はリブによって区画されている点が記載されており、「中蓋部は仕切り壁により少なくとも2室に区画されて」いる点も記載されている。また、上記▲1▼には、「底壁の所要箇所に冷気または温気流通用の孔を設けた」と記載されているから、「そのうち1室に該当する底部には多数の貫通孔が形成されて」いる点も記載されている。また、上記▲1▼に記載の蓋本体(中蓋部)の凹設部に収納される「保冷保温媒体」の一例として上記▲5▼より蓄冷材が記載されており、「該室(収納室)には蓄冷剤が収容される」点も記載されている。
したがって、両者は、
「樹脂発泡体を素材とする食品用包装容器であって、少なくとも、食品本体を収容するための上方が開放した有底容器本体と、該容器本体の開放部に嵌合載置される上方が開放した中蓋部と、該中蓋部の開放部に嵌合載置される蓋本体とからなり、該中蓋部は仕切り壁により少なくとも2室に区画されており、そのうち1室に該当する底部には多数の貫通孔が形成されていて、該室には蓄冷剤が収容されることを特徴とする食品包装用容器。」である点で一致し次の点で相違している。
(1)本願考案においては「容器本体はその内底部分に凹凸溝が形成されている」のに対し、引用考案1においてはそのような特定がなされていない点。
(2)本願考案においては、「蓄冷剤が収容される室の少なくとも底部には吸湿性シートが敷設されている」のに対し、引用考案1にはそのような特定がない点。
上記の相違点について検討する。
上記(1)の相違点については、引用文献2の記載▲7▼および▲8▼から、引用文献2に記載の考案(以下、引用考案2)には、冷気の対流を導く凹部を形成するための多数の突起が容器本体の底面に形成されている構成が認められる。そして、上記▲6▼の記載から、引用考案2は引用考案1と同じ食品用の低温輸送容器の技術分野に属する点、上記の「凹部を形成するための多数の突起」が本願考案と同一の冷気の循環の円滑化という目的で形成されているに鑑みれば、引用考案2の凹部の構成を引用考案1に適用することに格別の困難性は認められない。そして、該凹部の構成を引用考案2のように多数の突起で形成することも、本願考案のように凹凸の溝で形成することも周知の技術であるから、上記の適用に際して、引用考案2の多数の突起に換えて凹凸溝により凹部を形成して本願考案同様の構成とすることに格別の困難性は認められない。すなわち、(1)の相違点の特定については、当業者がきわめて容易に想到し得た事項に過ぎない。
上記(2)の相違点については、蓄冷材が周囲の空気の結露を生起して水滴を生じることは当業者が周知している技術常識であり、該水滴が蓄冷材納部底面の孔から落下して食品の品質を損なわないように該水滴を処理する必要があることは、当業者が当然認識している自明な課題である。そして、水滴を処理する方法として、吸湿性シートを底部に敷くことは周知の手段(上記引用文献3の上記記載▲9▼参照)であるから、上記自明な課題の解決のために上記周知の「吸湿性シートを底部に敷く」という手段を採用し、本願考案と同様の構成とすることに格別の困難性は認められない。すなわち、(2)の相違点の特定についても、当業者がきわめて容易に想到し得た事項に過ぎない。
したがって、上記2つの相違点の特定は、いずれも当業者がきわめて容易に想到し得た事項と認められるから、本願請求項1に係る考案は、上記引用文献に記載の考案に基づいて当業者がきわめて容易になし得た考案である。
IV.むすび
以上のとおりであるから、この出願の請求項1に係る考案は実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 1999-09-17 
結審通知日 1999-10-01 
審決日 1999-10-08 
出願番号 実願平5-19337 
審決分類 U 1 8・ 121- Z (B65D)
最終処分 不成立    
前審関与審査官 溝渕 良一  
特許庁審判長 佐藤 雪枝
特許庁審判官 森林 克郎
西村 綾子
考案の名称 食品包装用容器  

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