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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65H |
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管理番号 | 1009133 |
審判番号 | 審判1998-19726 |
総通号数 | 8 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 実用新案審決公報 |
発行日 | 2000-08-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 1998-12-14 |
確定日 | 2000-01-04 |
事件の表示 | 平成5年実用新案登録願第45133号「巻取具」拒絶査定に対する審判事件(平成7年3月10日出願公開、実開平7-13863)について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
I.本願考案 本願は、平成5年8月19日の出願であって、その請求項1に係る考案は、平成10年4月6日付手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、上記平成10年4月6日付手続補正書の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。 「チューブやホース等の押し潰しが可能な長尺物の巻取りに用いる巻取具であって、同形同サイズの一対の成形品よりなり、各成形品は巻芯部と、巻芯部の一端に形成される押え板とよりなり、巻芯部には上記長尺物が押し潰された状態で差し込まれる開口部を一ないし数カ所設けると共に、端面に着脱が可能な雄型及び雌型の係止具を一体形成し、巻芯部を向い合わせにして雄型及び雌型の係止具を互いに取着することにより両成形品を一体に連結したことを特徴とする巻取具。」 II.引用例の記載 これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、実願平3-100228号(実開平5-42265号)のCD-ROM(以下、「引用文献1」という。)には下記の事項が記載されている。 ▲1▼「本考案のキャリヤーテープ用リールは、高剛性のプラスチック成形品で、ハブおよびこれと同心のフランジから構成された同形、同サイズのリール部材を一体に結合したものものである。」(第5頁第3?5行) ▲2▼「これを組み立てるには、まず2個のリール部材の1つを反転し、互いにハブ面を対向させ、図3に示すように重ねると、雌孔5と雄孔4,および受け窓8とカギ形係止片7とが若干ずれて重なるので、軸芯1を中心に両者を押しながら所定の角度、この実施例では約10度回転させると、図3に示すように、受け窓8から入り込んだカギ形係止片7の中に、舌片9が挿入される。この場合、両者は先端が15度傾斜しているので、剛性の舌片9がわずかに曲げられてカギ形係止片7の中に強制的に挿入されると同時に雄孔4の環状突起6が雌孔5にかん合するので、一瞬のうちにきわめて強固な結合一体化が行われ、本考案のキャリヤーテープ用リールが得られる。」(第6頁第12?20行) また、原査定の拒絶の理由に引用された、実公昭46-6060号公報(以下、「引用文献2」という。)には下記の事項が記載されている。 ▲3▼「本考案は、従来のシネ用スプールにおける上述の欠点を除去したものである。 以下、図示の実施例により本考案を説明する。 図において1はフランジ、2は外筒である。フランジ1と外筒2は一体に成形されるもので、本考案における第1部分を構成する。3は外筒2に設けたスリットで、フィルム先端7を挿入するためのものである。」(第1頁右欄第6?13行) III.対比・判断 ここで、本願の請求項1に係る考案(以下、「本願考案」という。)と上記引用文献1に記載の考案(以下、「引用考案1」という。)とを対比する。 上記記載▲1▼の「リール」「ハブ」「フランジ」は、それぞれ、本願考案の「巻取具」「巻芯部」「押え板」に相当するから、上記記載▲1▼には、「巻取具であって、同形同サイズの一対の成形品よりなり、各成形品は巻芯部と、巻芯部の一端に形成される押え板とよりな」るものが記載されている。 上記記載▲2▼の「受け窓8」「カギ形係止片7」が、それぞれ、本願考案の「雌型」「雄型」に相当し、記載▲2▼には、「2個のリール部材の1つを反転し、互いにハブ面を対向させ、図3に示すように重ね」「図3に示すように、受け窓8から入り込んだカギ形係止片7の中に、舌片9が挿入される。」ことが記載されているから、結局、「端面に着脱が可能な雄型及び雌型の係止具を一体形成し、巻芯部を向い合わせにして雄型及び雌型の係止具を互いに取着することにより両成形品を一体に連結」する点が記載されているものといえる。 したがって、本願考案と引用考案1は、 「巻取具であって、同形同サイズの一対の成形品よりなり、各成形品は巻芯部と、巻芯部の一端に形成される押え板とよりなり、端面に着脱が可能な雄型及び雌型の係止具を一体形成し、巻芯部を向い合わせにして雄型及び雌型の係止具を互いに取着することにより両成形品を一体に連結したことを特徴とする巻取具。」である点で一致し、次の2点で相違している。 (1)本願考案が「チューブやホース等の押し潰しが可能な長尺物の巻取りに用い」られるのに対し、引用考案1はキャリヤーテープ用である点。 (2)本願考案が「巻芯部には上記長尺物が押し潰された状態で差し込まれる開口部を一ないし数カ所設ける」のに対し、引用考案1にはそのような構成が備えられていない点。 上記相違点について検討する。 (1)の相違点については、「チューブやホース等の押し潰しが可能な長尺物」をリール(巻取具)で巻き取ることは周知の事項である。そして、「チューブやホース等の押し潰しが可能な長尺物」の巻取具もキャリヤーテープ用リールも巻取具という点で共通する隣接技術分野に属しているから、キャリヤーテープ用リールに関する引用考案1の技術を「チューブやホース等の押し潰しが可能な長尺物」の巻取具に適用し、本願考案の如くの構成とすることに格別の困難性は認められない。すなわち、(1)の相違点の特定は当業者がきわめて容易に想到し得た事項である。 (2)の相違点については、引用文献2の上記記載▲3▼には、スプール(巻取具)の外筒(本願考案の巻芯に相当)にスリットを設け、該スリットにフィルム(被巻取部材)の先端を挿入する点が記載されているから、巻芯部に被巻取部材が差し込まれる開口部を設ける点は、引用文献2に記載されている公知の技術である。そして、上記引用文献1と上記引用文献2に記載の技術の技術分野の共通性に鑑みれば、上記引用文献2に記載の公知技術を引用文献1に記載の考案に採用して本願考案の如くの構成とすることに格別の困難性は認められない。さらに、開口部に差し込まれる被巻取部材が「チューブやホース等の押し潰しが可能な長尺物」の場合は、ある程度の挟持力を生じさせるためには該長尺物を押し潰した状態で差し込む必要があることは技術常識から考えて当然の事項であるから、本願考案において「長尺物が押し潰された状態で差し込まれる」と特定した点は、技術常識上、自明の事項を特定したに過ぎない。したがって、上記(2)の相違点の特定は、当業者がきわめて容易に想到し得た事項に過ぎない。 また、本願考案の効果も、引用文献1および2に記載の考案から当業者であれば予測することができる程度のものであって、格別のものとはいえない。 IV.むすび 以上のとおりであるから、この出願の請求項1に係る考案は、引用文献1および2に記載の考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 1999-10-08 |
結審通知日 | 1999-10-29 |
審決日 | 1999-11-05 |
出願番号 | 実願平5-45133 |
審決分類 |
U
1
8・
121-
Z
(B65H)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 杉野 裕幸 |
特許庁審判長 |
村本 佳史 |
特許庁審判官 |
鈴木 美知子 森林 克郎 |
考案の名称 | 巻取具 |
代理人 | 佐藤 晃一 |