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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01R
管理番号 1009152
審判番号 審判1998-10858  
総通号数
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2000-08-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1998-07-16 
確定日 2000-01-19 
事件の表示 平成3年実用新案登録願第569号「雌型端子金具」拒絶査定に対する審判事件(平成4年8月17日出願公開、実開平4-94275)について、次のとおり審決する。   
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 1.手続の経緯・本願考案
本願は、平成3年1月11日の出願であって、その請求項1に係る考案は、明細書及び図面の記載からみて、実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。(以下、「本願考案」という。)
「一対の側壁とこれらの側壁間の上下に設けた上壁、底壁とで矩形状断面に形成されて内部に相手端子が挿入される端子接続部及び、電線接続部が一体に形成された端子金具本体と、前記端子接続部内に設けられて前記上壁との間で相手端子を所定の接圧で挟持する可撓性接触片とで構成される雌型端子金具であって、前記一対の側壁に貫通孔をそれぞれ設け、前記可撓性接触片を弧状の可撓部と、この可撓部の一端部の幅方向の両側に形成されて前記端子接続部の両側壁の矩形貫通穴にそれぞれ挿入されて固定される突起からなる固定端部と、可撓部の他端に設けられて前記底壁上を摺動可能な自由端部と、前記可撓部の中間部両側から突設されて前記一対の側壁の貫通孔内に挿入されて貫通孔の前記上壁側の内壁に当接し可撓性接触片を所定量撓ませた状態で前記端子接続部に取り付けると共に、前記貫通孔の前記底壁側の内壁に当接して可撓性接触片の過大変位を阻止する予備変位用突起とで形成したことを特徴とする雌型端子金具。」
2.引用例
これに対して、当審における、平成11年8月23日付けで通知した拒絶の理由に引用した実願昭63-7436号(実開平1-112574号)のマイクロフィルム(以下、「引用例1」という。)には、雌型のコネクタ用接続端子に関するものであって、「この種の雌型接続端子は、その内部に雄型接続端子が挿入された際に、接触圧を与える板ばねから成る可動接触片を内蔵したものが広く用いられている。・・・可動接触片を接続端子本体と別部材にして、可動接触片の両側部の係止用辺部を接続端子の接続部側壁に開けた係止用孔に嵌合する方式が、例えば特開昭58-169784号公報などで知られている。」(明細書第1頁第18行?第2頁第10行)、「第5図に示すように可動接触片3の前端部3aを、接続端子2の下辺部2aにより覆う方式も知られている」(明細書第2頁第20行?第3頁第2行)と記載されている。また、第5図には、一対の接続部側壁とこれらの側壁間の上下に設けた上壁、底壁とで矩形状断面に形成されて内部に雄型接続端子が挿入される端子接続部が形成された接続端子2と、前記端子接続部内に設けられて前記上壁との間で雄型接続端子を所定の接圧で挟持する可動接触片3とで構成される雌型接続端子であって、前記一対の接続部側壁に係止用孔をそれぞれ設け、前記可動接触片3をへの字状の可撓部と、この可撓部の一端部を接続端子2の下辺部2aにより覆われた前端部3aと、可撓部の他端に設けられて前記底壁上を摺動可能な自由端部と、前記可動接触片3の両側部に設けられて前記一対の接続部側壁の係止用孔内に嵌合されて前記端子接続部に取り付ける係止用辺部とで形成した雌型接続端子が示されている。
同じく、特開昭64-10589号公報(以下、「引用例2」という。)には、電気接続子に関するものであって、「前記板バネは側壁に形成された係止溝と内面との間に形成される離間距離より大きな湾曲率に形成され、該板バネを前記上壁の突合わせ工程で自己矯正力によって弾性変形させて板バネの少なくとも長手方向両端部近傍と、中央の耳片を支持溝および内面に突き当てた状態で電気接触部の内部に保持させた」(第2頁左下欄第4行?同頁右下欄第4行)と記載されている。また、第2、4、9図には、弧状の板バネを有する電気接続子が示されている。
3.対比
本願考案と引用例1に記載された考案を対比すると、引用例1に記載のものにおける「接続部側壁」が本願考案における「側壁」に相当し、以下同様に「雄型接続端子」が「相手端子」に、「接続端子2」が「端子金具本体」に、「可動接触片3」が「可撓性接触片」に、「雌型接続端子」が「雌型端子金具」に、「係止用孔」が「貫通孔」に、「前端部3a」が「固定端部」に、「嵌合され」が「挿入され」に、「係止用辺部」が「予備変位用突起」にそれぞれ相当している。
また、引用例1の第5図から、可動接触片3の「前端部3a」は、接続端子2の下辺部2aにより覆われているため、図の左方、即ち雄型接続端子の挿入口方向への移動が阻止された状態にあり、実質的に本願考案の「固定端部」に相当する。
同じく、第5図から、「係止用孔」が可動接触片3の「係止用辺部」の上下の移動範囲を定めていることが明らかであり、この「係止用孔」と「係止用辺部」との関係は、本願考案の「貫通孔の前記上壁側の内壁に当接し可撓性接触片を所定量撓ませた状態で前記端子接続部に取り付けると共に、前記貫通孔の前記底壁側の内壁に当接して可撓性接触片の過大変位を阻止する予備変位用突起」の関係に相当する。
さらに、引用例1に記載のものにおいて、接続端子2は、端子接続部と電線接続部が一体に形成されたものであることは技術常識として明らかである。
したがって、両者は、
「一対の側壁とこれらの側壁間の上下に設けた上壁、底壁とで矩形状断面に形成されて内部に相手端子が挿入される端子接続部及び、電線接続部が一体に形成された端子金具本体と、前記端子接続部内に設けられて前記上壁との間で相手端子を所定の接圧で挟持する可撓性接触片とで構成される雌型端子金具であって、前記一対の側壁に貫通孔をそれぞれ設け、前記可撓性接触片を可撓部と、この可撓部の一端部の固定端部と、可撓部の他端に設けられて前記底壁上を摺動可能な自由端部と、前記可撓部の中間部両側から突設されて前記一対の側壁の貫通孔内に挿入されて貫通孔の前記上壁側の内壁に当接し可撓性接触片を所定量撓ませた状態で前記端子接続部に取り付けると共に、前記貫通孔の前記底壁側の内壁に当接して可撓性接触片の過大変位を阻止する予備変位用突起とで形成したことを特徴とする雌型端子金具。」である点で一致し、
▲1▼可撓性接触片の可撓部の形状に関し、本願考案が「弧状」であるのに対し、引用例1に記載のものは、「への字状」である点(以下、「相違点▲1▼」という。)、
▲2▼可撓部の一端部の固定端部に関し、本願考案が「幅方向の両側に形成されて前記端子接続部の両側壁の矩形貫通穴にそれぞれ挿入されて固定される突起からなる固定端部」としているのに対し、引用例1に記載のものは、そのように構成されていない点(以下、「相違点▲2▼」という。)、
でそれぞれ相違している。
4.当審の判断
上記相違点について以下検討する。
相違点▲1▼について
雌型端子金具において、可撓性接触片の可撓部の形状を弧状としたものは、引用例2に記載されており(「電気接続子」が「雌型端子金具」に、「板バネ」が「可撓部」にそれぞれ相当している。)、これを引用例1に記載の雌型端子金具に転用することは当業者にとってきわめて容易である。
相違点▲2▼について
雌型端子金具において、可撓性接触片の可撓部の一端部の幅方向の両側に形成されて端子接続部の両側壁の矩形貫通穴にそれぞれ挿入されて固定される突起からなる固定端部を設けることは周知の技術であり(例えば、原査定時に提示した特開昭63-124385号公報及び実開平1-155673号公報参照)、引用例1に記載の雌型端子金具において、そのような周知の固定端部の構成を採用することもきわめて容易である。
そして、本願考案の奏する効果は、各引用例に記載の事項及び周知技術から当業者が予測しうる範囲のものにすぎない。
5.むすび
したがって、本願考案は、引用例1、2に記載された考案と周知技術に基いて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるので、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 1999-11-17 
結審通知日 1999-11-26 
審決日 1999-12-06 
出願番号 実願平3-569 
審決分類 U 1 8・ 121- WZ (H01R)
最終処分 不成立    
前審関与審査官 衣川 裕史高松 猛前田 仁  
特許庁審判長 田中 秀夫
特許庁審判官 藤本 信男
長崎 洋一
考案の名称 雌型端子金具  
代理人 三好 保男  
代理人 三好 秀和  

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