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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F04D
管理番号 1009167
審判番号 審判1998-4820  
総通号数
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2000-08-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1998-03-26 
確定日 2000-01-04 
事件の表示 平成1年実用新案登録願第79733号「複合形真空ポンプ」拒絶査定に対する審判事件(平成7年8月2日出願公告、実公平7-34234)について、次のとおり審決する。   
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 I.手続の経緯・本願考案
本願は、平成1年7月6日の出願であって、その請求項1に係る考案は、出願公告後の平成11年9月17日付け手続補正書により補正された明細書及び出願当初の図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。(以下「本願考案」という。)
「径方向に近接配置される静止外筒(11)と回転内筒(12)とを備え、対向壁面となる前記回転内筒(12)の外周部に、入口部で深く出口部で浅いネジ溝(13)を形成したネジ溝形ポンプ要素(1)と、軸方向に近接配置される静止円板(21)と回転円板(22)とを備え、これら円板の対向平面にら旋溝(24)を形成したジグバーン形ポンプ要素(2)と、外周部に羽根(31)をもつロータ(32)と前記羽根(31)を配設する環状排気通路(33)とを備えた渦流形ポンプ要素(3)とを、この順序で、一つのポンプハウジング(4)に設ける吸気口(5)から排気口(6)にかけて直列に配設すると共に、これら各ポンプ要素(1)(2)(3)を同一の駆動源(8)に連結し、前記渦流形ポンプ要素(3)は、吸気側から排気側にかけて順次径を小さくした複数のポンプ段を有することを特徴とする複合形真空ポンプ」
II.引用例
1.これに対して、当審の拒絶の理由で引用した、特開昭63-85288号公報(以下、「第1引用例」という)には、
「第1図において、回転軸1は吸気口2Aと排気口2Bを有するハウジング2内で軸受7によって回転自在に支持されており、前記回転軸1に取り付けられたモータ10(11の誤記と認められる。以下、モータ11とする。)により駆動される。ハウジング2内には吸気口側より順に、第2図(a)および第2図(b)に示す如く回転軸1に取り付けられたねじ羽根車9Aとハウジング2の内壁により構成されるねじ圧縮ポンプ段9と、同じく回転軸1に取り付けられた遠心羽根車5A第3図(a)、第3図(b)とハウジング2内に固定された固定円板5B(第3図(c))を交互に並置して構成される遠心圧縮ポンプ段5と、同じく円周流羽根車10A(第4図(b))と固定円板10B(第4図(c))を交互に並置して構成される円周流圧縮ポンプ段10が連接されている」(第2頁左下欄第9行乃至同頁右下欄第3行)の記載があり、この記載及び図面等を参酌すると、
第1引用例には、
「径方向に近接配置されるハウジング2とねじ羽根車9Aとを備え、対向壁面となるねじ羽根車9Aの外周部に、ねじ溝を形成したねじ圧縮ポンプ段9と、軸方向に近接配置される固定円板5Bと遠心羽根車5Aとを備え、これら円板の対向平面にら旋溝(符号なし)を形成した遠心圧縮ポンプ段5と、外周部に羽根(符号なし)をもつ円周流羽根車10Aと前記羽根(符号なし)を配設する環状排気通路(符号なし)とを備えた円周流圧縮ポンプ段10とを、この順序で、一つのハウジング2に設ける吸気口2Aから排気口2Bにかけて直列に配設すると共に、これら各ポンプ要素9、5、10を同一のモータ11に連結した複合形真空ポンプ」が記載されているものと認められる。
2.同じく引用した、特開昭63-280893号公報(以下、「第2引用例」という)には、「本発明の第1番目は、吸気口と排気口とを有するケーシング内に、ロータとこれに対向するステータとからなるポンプ段を複数段設け、これらのポンプ段により排気作用を行うターボ真空ポンプにおいて、前記ロータに設けた順次異径の複数渦流翼段と、ステータに設けた前記渦流翼段に対向する異径の通風路とで多段の渦流ポンプ段を形成し、さらにステータに前段の通風路に通じる吸入口と複段の通風路に通じる吐出口とを設けることにより達成される」(第2頁右下欄第10?19行)の記載、
「渦流翼を有するロータの外径および通風路を有するステータの内径を順次異径で多段に構成したことにより、各ロータ端面とステータ端面との間に細隙シール部を形成することができる。その結果、ポンプ軸方向長さを短くできコンパクト化が達成できる」(第3頁左上欄第12?17行)の記載、
「第1図において、ロータ1は、ケーシング2内に配置され、シャフト3に焼きばめされている。ロータ1の外径は吸気口4から排気口5に向かって順次異径に形成され階段状に小さくなっている。その各々の径の先端には渦流翼6が設けられている。べース7にはロータ1に対向してステータ8が支承されている。ステータ8は、ロータ1の外径変化に合わせて内径が順次異径に形成され階段状に小さくなっている。ステータ8の各渦流翼6と対向する内径面には通風路9が設けられている。」(第3頁右上欄第8?17行)の記載、
「第4図は本発明のもう一つの他の実施例を示すもので、この図において第1図と同符号のものは同一部分である。この実施例は第1図に示す実施例において、その吸気側に遠心ロータ26、遠心ステータ27とから成る遠心ポンプが、また、この遠心ポンプの吸気側に軸流ロータ28、軸流ステータ29とから成る軸流ポンプが備えられている。・・・(中略)・・・以上の説明では、渦流翼6の吸気側に備えるものとして遠心ポンプを用いたが、遠心ポンプの代わりにねじ溝ポンプを用いてもよい」(第4頁左上欄第5行乃至同頁右上欄第5行)等の記載があり、これらの記載及び図面等を参酌すると、
第2引用例には、
「渦流形ポンプ要素が、吸気側から排気側にかけて順次径を小さくした複数のポンプ段を有する」点が記載されているものと認められる。
III.対比
本願考案と第1引用例記載の考案とを対比すると、第1引用例記載の考案の「ハウジング」、「ねじ羽根車」、「ねじ圧縮ポンプ段」、「固定円板」、「遠心羽根車」、「円周流羽根車」、「円周流圧縮ポンプ段」及び「モータ」は、それぞれの機能に照らし、それぞれ本願考案の「静止外筒」、「回転内筒」、「ネジ溝形ポンプ要素」、「静止円板」、「回転円板」、「外周部に羽根をもつロータ」、「渦流型ポンプ要素」及び「駆動源」に相当するから、
両者は、
「径方向に近接配置される静止外筒と回転内筒とを備え、対向壁面となる前記回転内筒の外周部に、ネジ溝を形成したネジ溝形ポンプ要素と、軸方向に近接配置される静止円板と回転円板とを備え、これら円板の対向平面にら旋溝を形成したポンプ要素と、外周部に羽根をもつロータと前記羽根を配設する環状排気通路とを備えた渦流形ポンプ要素とを、この順序で、一つのポンプハウジングに設ける吸気口から排気口にかけて直列に配設すると共に、これら各ポンプ要素を同一の駆動源に連結し、前記渦流形ポンプ要素は複数のポンプ段を有することを特徴とする複合形真空ポンプ」である点で一致し、下記の点で相違する。
(1)ネジ溝形ポンプ要素のネジ溝に関して、本願考案では入口部で深く出口部で浅いネジ溝であるに対し、第1引用例に記載されたものではネジ溝の深さに言及していない点。
(2)軸方向に近接配置される静止円板と回転円板とを備え、これら円板の対向平面にら旋溝を形成したポンプ要素に関して、本願考案ではジグバーン形ポンプ要素であるのに対し、第1引用例に記載されたものでは遠心圧縮ポンプ段である点。
(3)複数のポンプ段を有する渦流形ポンプ要素に関して、本願考案では吸気側から排気側にかけて順次径を小さくしたのに対し、第1引用例に記載されたものではポンプ段の径に言及していない点。
IV.当審の判断
上記相違点(1)乃至相違点(3)について検討する。
相違点(1)について
入口部で深く出口部で浅いネジ溝を形成したネジ溝形ポンプ要素は本出願前周知である(例えば、特開昭60-125795号公報、特開昭63-147989号公報参照)ので、上記相違点(1)における本願考案に係る構成は当業者がきわめて容易に想到しうる事項にすぎない。
相違点(2)について
本願考案の「軸方向に近接配置される静止円板と回転円板とを備え、これら円板の対向平面にら旋溝を形成したジグバーン形ポンプ要素」は、本願の第1,2図、ら旋溝24等の引出線及び詳細な説明を参酌すると、ら旋溝24が、回転円板22の上面と静止円板21の下面の間の一平面に形成されているものと解するのが相当である。
それ故、ネジ溝形ポンプ要素の排気側の位置及びら旋溝の位置等を考慮すると、本願考案のジグバーン形ポンプ要素の排気は遠心圧縮と解するのが相当である。
本願考案には、ジグバーン形ポンプ要素が求心ポンプであるとも、遠心ポンプであるとも明細書で言及していない。そして、審判請求書及び平成11年9月17日付け意見書において、甲第2号証【産業機械(第425号昭和61年2月号)昭和61年2月20日発行、P28-29参照】及び参考資料1【科学機器評論:The Review of Scientific Instruments(1940年)P362-364参照】を提示し、本願考案の「ジグバーン形ポンプ」は、上記甲第2号証、参考資料1を根拠にして、「ジグバーン形ポンプ」という語句から、「遠心ポンプではなくて、その逆の求心ポンプである」旨主張している。しかしながら、「ジグバーン形ポンプ」は、必ずしも求心ポンプを示唆するものでなく、遠心ポンプをも示唆するものと認められるので【実願昭46-56974号(実開昭48-15606号)のマイクロフイルム(ジーグ・バーン形分子ポンプと記載されている)参照】、該主張は認められない。
したがって、本願考案のジグバーン形ポンプ要素は、その構成・機能に照らすと、第1引用例に記載された遠心圧縮ポンプ段に相当するものと認められる。
相違点(3)について
第2引用例には、「渦流形ポンプ要素が、吸気側から排気側にかけて順次径を小さくした複数のポンプ段を有する」点が記載されている。第1引用例記載の渦流形ポンプ要素を第2引用例記載の上記構成のように形成することは、当業者がきわめて容易に想到し得ることであり、上記相違点(3)における本願考案に係る構成は当業者がきわめて容易に想到しうる事項にすぎない。
V.むすび
以上のとおりであるから、本願考案は、上記第1,2引用例に記載の考案、及び周知技術等に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 1999-10-29 
結審通知日 1999-11-09 
審決日 1999-11-17 
出願番号 実願平1-79733 
審決分類 U 1 8・ 121- WZ (F04D)
最終処分 不成立    
前審関与審査官 熊倉 強  
特許庁審判長 藤田 豊比古
特許庁審判官 林 晴男
清田 栄章
考案の名称 複合形真空ポンプ  
代理人 青山 葆  
代理人 山崎 宏  

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