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審決分類 審判 全部申し立て   F16L
管理番号 1009175
異議申立番号 異議1999-72983  
総通号数
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案決定公報 
発行日 2000-08-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 1999-08-03 
確定日 1999-12-29 
異議申立件数
事件の表示 実用新案登録第2589617号「出力配管接続用組立体」の実用新案に対する実用新案登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。   
結論 実用新案登録第2589617号の実用新案登録を維持する。
理由 1.本件考案
本件実用新案登録第2589617号(平成4年6月10日出願、平成10年11月20日設定登録。)の請求項1に係る考案(以下、本件考案という。)は、実用新案登録明細書及び図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される下記のとおりのものである。
「【請求項1】流体圧機器の複数の出力ポートに個別に連通する複数の継手取付孔を、該流体圧機器に取り付ける出力ポートブロックに開設し、それらの継手取付孔にそれぞれ管継手を嵌着させるとともに、これらの管継手の外周に設けた係止溝に、上記出力ポートブロック上に重設する単一の押え金具の係止部をそれぞれ係止させ、該押え金具の両端に開設したボルト孔から、出力ポートブロックの両端部のボルト孔を通して、上記流体圧機器にボルトを螺締し、それにより上記複数の管継手を組み付けるとともに、上記出力ポートブロックを流体圧機器に一体的に締結した、ことを特徴とする出力配管接続用組立体。」
2.申立ての理由の概要
申立人平賀博は、「本件考案は、甲第2号証乃至甲第6号証にて例示した周知技術を勘案すれば、甲第1号証に記載された考案に基づいて、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができないものである。よって、本件考案は、実用新案法附則第9条第2項で準用する特許法第113条第1項第2号の規定により取り消されるべきものである。」旨主張している。
3.甲第1号証乃至甲第6号証の記載事項
甲第1号証(特公昭59-24315号公報)には、空圧および液圧システムにおける接続装置に関して、下記の事項が図面とともに記載されている。
「第1,2,4および6図を参照すると、本装置は2つのサブアセンブリー10および11および中央接続あるいはマニホルド(多岐管)部材12を有する。サブアセンブリー10および11は夫夫プレート13および14およびスライド保持具16および17を有する。この実施例では、第2図に示すように、これらの部分は全て長方形である。保持具16および17の作用は複数のホース金具をプレート13および14に解放可能に固定することであり、この作用は保持具をプレートに対し、係合位置と解除位置との間でスライド可能にすることにより達成される。係合位置において保持具は金具をプレートに固定し、解除位置において保持具は金具のプレートヘの組立またはプレートよりの解体を可能にする。金具はプレートに形成された穴に固定され、そして中央部材12中の通路により2つのサブアセンブリー間の金具が相互に連結される。保持具16をプレート13に可動的に固定するため、プレート13の中央部材12に面する側すなわち内側に凹部21を設ける。この凹部はプレート13の長さ方向に沿ってのびる。凹部21の厚さは保持具16よりわずかに大きく、その巾は保持具16をスライド式に受け入れる寸法にする。凹部21の巾はプレート13の巾より小さく、したがってプレート13の長さ方向にわたってのびて凹部21を縁どる2つの厚い部分18および19(第7図)が形成される。保持具16は固定手段としての1対のネジ22(第6図および7図)により凹部21内にスライド可能にまたは可動的に保持される。各ネジ22は、プレート13の穴20の中ヘネジ込まれるシャンク23、肩部24および大きい頭部25を有する。保持具16は縦方向に長い開口、すなわちスロット27(第2図)を有し、これらの開口はネジ22の肩部24をスライド可能に受け入れ得る寸法にする。スロット27の長い方向は凹部21の長い側の方向であり、ネジ22の頭部25の直径はスロット27の巾より大きい。保持具16を凹部21内に位置させ、ネジ22をスロット27に通し、そしてプレート13のネジ穴20内にネジ込むことにより、保持具16とプレート13とを組立てる。2つのネジ22の頭部25は保持具16の内側に位置して、プレート13に対して保持具を保持するが、保持具16は凹部21内でプレート13に対して可動であり、その移動量はスロット27の長さによって決まる。」(第5欄7行乃至第6欄8行)
「中央接続部材12は、本図面においては2つのプレート13および14と実質的に同じ外形寸法を有し、中央部材12の厚さは第2図乃至第4図および第6図に示すように比較的厚い。第6図に示すように、中央部材12の広い側にサブアセンブリー10,11を置きそしてネジ締めることにより、2つのサブアセンブリー10,11を中央部材12に固定する。2つのプレート13,14および中央部材12の同位置に穴38が形成され、プレートの穴38にネジ39が挿入されそして中央部材12の穴にネジ込まれる。第6図および7図に示されるように、凹部21,31の外側の厚い部分18,19中に穴38を設けることにより、ネジ39は保持具16,17の動作を妨げることがない。」(第6欄27行乃至41行)
「また、溝61と肩部64との間の各金具53のシャンク上に環状溝66が形成され、これは保持具16と係合可能である。保持具16に、各金具53の開口67が形成され、これは各穴62の近傍に位置する。各開口67は、溝66の基部の直径より巾がわずかに広い弧状部67a(第5図)および金具のシャンクの外径よりわずかに広い拡大部67bを有する。」(第7欄30行乃至37行)
甲第2号証(実開昭62-134993号公報)には、多重管継手に関して、下記の事項が図面とともに記載されている。
「(1)流体圧機器等の流路接続対象物に多重管を連結するための多重管継手であって、多重管を係着するための管体接続機構を有し且つ通路用孔部が形成された管継手ボディと、前記管継手ボディに組み込まれて当該管継手ボディと一体化されるブラケットと、前記ブラケットを前記流路接続対象物に係着するための係着手段とを具備し、前記係着手段によって前記管継手ボディを前記流路接続対象物に接合するよう構成することを特徴とする多重管継手。
(2)実用新案登録請求の範囲第1項記載の多重管継手において、係着手段はブラケットに挿通されて流路接続対象物に螺入する螺子からなる多重管継手。
(3)実用新案登録請求の範囲第1項記載の多重管継手において、管継手ボディには嵌合用溝部を形成し、ブラケットには前記嵌合用溝部に摺接嵌合する嵌合部を形成し、前記嵌合用溝部と嵌合部との係合作用下に前記ブラケットに対して前記管継手ボディを嵌脱自在に構成してなる多重管継手。
(4)実用新案登録請求の範囲第1項記載の多重管継手において、ブラケットには管継手ボディを挿通して係止するための複数個の孔部を穿設し、前記夫々の孔部に管継手ボディが挿通されたブラケットを係着手段によって流路接続対象物に係着することにより複数個の前記管継手ボディに接続された複数本の多重管を流路接続対象物に連結するよう構成してなる多重管継手。」(実用新案登録請求の範囲)
甲第3号証(実願昭61-48942号(実開昭62-162493号)のマイクロフィルム)には、冷却配管用マニホールドの配管接続構造に関して、下記の事項が図面とともに記載されている。
「そしてここでは、上述のように各ホース13に尾部14aが接続されたニップル14の頭部14bを、第2図に示すように、ニップル挿入孔11c内に挿入して、頭部14bの外周面とニップル挿入孔11cの内周面との間をシール材16で実質的に満たして、それらの間を液密とし、さらに、第1図および第2図に示すように、ニップル固定用プレート17によって、ニップル14をマニホールド11に固定する。
ここにおけるこのニップル固定用プレート17は、第5図に示すように、ほぼL字状の横断面形状を有するとともに、マニホールド11の互いに整列する四個のニップル挿入孔11cに対応して位置する四個のU字状溝部17aと、それらのニップル挿入孔11cの両側方のネジ孔11eに対応して位置する二個のボルト用溝部17bとを有し、それらのU字状溝部17aを、各ニップル14に、フランジ部14cの上方で嵌め合わせて、各フランジ部14cと掛合させるとともに、ボルト用溝部17bに軸部を嵌め合わせたボルト18をねじ孔11bに締着することにて、ニップル14をマニホールド11に固定することができる。」(第11頁8行乃至第12頁8行)
甲第4号証(実願昭61-63497号(実開昭62-174190号)のマイクロフィルム)には、継手部材へのパイプ仮止め装置に関して、下記の事項が図面とともに記載されている。
「継手部材(10)へのパイプ(1)(2)の仮止め装置は、両パイプ(1)(2)の端部を流体流通路(11)(12)の左端部内に挿入した状態でパイプ(1)(2)をブロック状継手部材(10)に取付ける板状パイプ取付部材(14)と、パイプ取付部材(14)に固着されており、かつボルト貫通孔(13)を貫通するボルト(15)と、ボルト(15)の軸部に嵌め被せられ、かつボルト(15)周面とボルト貫通孔(13)の周面との間に圧入されてボルト(15)の脱落を防止する仮止めチューブ(16)とを備えている。」(第7頁11行乃至第8頁4行)
「まず、右側の継手部材(20)に取付けられたパイプ(4)(5)の先端を、それぞれ左側の継手部材(10)の流体通路(11)(12)の右端部内に挿入する。このとき、シール部材(27)は、流体流通路(11)(12)のシール部材受け用段部(11a)(11b)に受けられている。また、これとともに、ボルト(15)の軸部を継手部材(20)のボルト貫通孔(23)に貫通させる。そして、最後に、ボルト(15)軸部の先端にナット(28)をねじ嵌めて締付けることにより、パイプ取付部材(14)を継手部材(10)に接した状態で固定する。・・・中略・・・こうして、パイプ(1)とパイプ(4)、およびパイプ(2)とパイプ(5)とが連結される。」(第11頁3行乃至第12頁7行)
甲第5号証(実願昭61-57172号(実開昭62-170485号)のマイクロフィルム)には、パイプ連結装置に関して、下記の事項が図面とともに記載されている。
「まず、左側のパイプ取付部材(13)の両切欠き(18)(19)に、結露防止用断熱筒(3)が嵌め被せられたパイプ(1)(2)を、それぞれ環状突起(6)(7)がパイプ取付部材(13)の右側面側に来るように嵌め入れる。パイプ(1)(2)の環状突起(6)(7)よりも先端側にシール部材(26)を嵌め被せておく。ついで、パイプ(1)(2)の端部をそれぞれ流体流通路(11)(12)内に挿入するとともに、ボルト(15)の軸部を連結用ブロック(10)のボルト貫通孔(17)に貫通させる。このとき、仮止め用チューブ(25)がボルト(15)軸部の周面とボルト貫通孔(17)の周面との間に圧入されて、ボルト(15)の連結用ブロック(10)からの抜落ちが防止される。
しかしながら、仮止め用チューブ(25)は必ずしも必要とはしない。その後、右側のパイプ取付部材(14)の両切欠き(21)(22)に、パイプ(4)(5)を、それぞれ環状突起(8)(9)がパイプ取付部材(14)の左側面側に来るように嵌め入れる。両パイプ(4)(5)の環状突起(8)(9)よりも先端側にはシール部材(26)を嵌め被せておく。そして、パイプ(4)(5)の端部をそれぞれ流体流通路(11)(12)内に挿入するとともに、ボルト(15)軸部における連結用ブロック(10)から突出した部分をパイプ取付部材(14)のボルト貫通孔(24)に貫通させる。そして最後に、ナット(16)をボルト(15)軸部の先端にねじ嵌めて締付けることにより、両パイプ取付部材(13)(14)を連結用ブロック(10)に接した状態で固定する。」(第10頁11行乃至第12頁6行)
甲第6号証(実開昭55-134584号公報)には、ガス器具におけるガス導管接続装置に関して、下記の事項が図面とともに記載されている。
「フレアを有するパイロットガス導管と、フレアを有するエアパージ導管と、該エアパージ導管とパイロットガス導管との間に配し上下方向に相対応して切欠部を設けた取付平板と、該取付平板をガス弁開閉装置に取着するビスとからなることを特徴とするガス器具におけるガス導管接続装置。」(実用新案登録請求の範囲)
4.対比・判断
上記甲第1号証に記載された技術事項からみて、甲第1号証に記載された考案の「保持金具16,17」、「スロット27」、「開口67の弧状部67a」、「プレート13,14に形成された穴62」、「複数の金具53」、「環状溝66」、「プレート13,14」、「中央接続部材12」、「穴20,38」、「ネジ22,39」及び「空圧および液圧システムにおける接続装置」は、各々本件考案の「単一の押さえ金具」、「単一の押え金具のボルト孔」、「単一の押え金具の係止部」、「複数の継手取付孔」、「複数の管継手」、「管継手の外周に設けた係止溝」、「出力ポートブロック」、「流体圧機器」、「ボルト孔」、「ボルト」及び「出力配管接続用組立体」に相当するものであるから、本件考案に使用された用語を使用して本件考案と甲第1号証に記載された考案とを対比すると、両者は、「流体圧機器の複数の出力ポートに個別に連通する複数の継手取付孔を、該流体圧機器に取り付ける出力ポートブロックに開設し、それらの継手取付孔にそれぞれ管継手を嵌着させるとともに、これらの管継手の外周に設けた係止溝に、単一の押え金具の係止部をそれぞれ係止させ、ボルト孔を通して上記流体圧機器にボルトを螺締し、上記出力ポートブロックを流体圧機器に一体的に締結した出力配管接続用組立体。」で一致しており、次の点で相違している。
相違点;本件考案では、単一の押え金具は出力ポート上に重設されており、押え金具の両端に開設したボルト孔から、出力ポートブロックの両端部のボルト孔を通して、流体圧機器にボルトを螺締し、それにより複数の管継手を組み付けるとともに、出力ポートブロックを流体圧機器に一体的に締結しているのに対して、甲第1号証に記載された考案では、保持金具16(17)は、プレート13(14)の中央接続部材12に面する側の凹部21に配設されるものであり、ネジ22とネジ39を使用して、ネジ22により保持金具16(17)をプレート13(14)に対して凹部21内で移動可能に保持し、ネジ39によりプレート13(14)を中央接続部材12へ螺締している点。
上記相違点について検討するに、甲第2号証には、ブラケット(単一の押え金具に相当)と係着手段(ボルト孔とボルトに相当)によって管継手ボディ(管継手と出力ポートブロックを一体にしたものに相当)を流路接続対象物(流体圧機器の相当)に接合することが記載されているにすぎないものであって、本件考案のように出力ポート上に重設された押え金具の両端に開設したボルト孔から、出力ポートブロックの両端部のボルト孔を通して、流体圧機器にボルトを螺締し、それにより複数の管継手を組み付けるとともに、出力ポートブロックを流体圧機器に一体的に締結することについては、記載されておらず、示唆する記載も見出すことができない。
また、甲第3号証には、ニップル固定用プレート(単一の押え金具に相当)とボルトを使用した冷却配管用マニホールドの配管接続構造が、
甲第4号証には、板状パイプ取付部材とボルトを使用したパイプ継手部材へのパイプの仮止め構造が
甲第5号証には、板状パイプ取付部材とボルトを使用したパイプ継手部材へのパイプの連結構造が、
甲第6号証には、取付平板とビスを使用したフレアを有するパイロットガス導管とエアパージ導管のガス弁開閉装置への取着構造が記載されているにすぎないものであって、甲第3号証乃至甲第6号証にも、本件考案のように出力ポート上に重設された押え金具の両端に開設したボルト孔から、出力ポートブロックの両端部のボルト孔を通して、流体圧機器にボルトを螺締し、それにより複数の管継手を組み付けるとともに、出力ポートブロックを流体圧機器に一体的に締結することについては、記載されておらず、示唆する記載も見出すことができない。
そして、本件考案は、上記相違点に係る技術事項によって、押え金具が座金と同様な機能を持ち、出力ポートブロックが、例えば合成樹脂のような素材で形成されている場合であっても、ワンタッチ管継手を係止固定するための押え金具を利用して、出力ポートブロックをも流体圧機器に強固に締めつけ固定することができる等の格別な作用効果を奏するものと認める。
したがって、本件考案は、甲第1号証乃至甲第6号証に記載の考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものとは認めることができない。
5.むすび
以上のとおりであるから、実用新案登録異議申立ての理由及び証拠によっては本件考案についての実用新案登録を取り消すことはできない。
また、他に本件考案についての実用新案登録を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
異議決定日 1999-10-12 
出願番号 実願平4-46461 
審決分類 U 1 651・ 121- Y (F16L)
最終処分 維持    
前審関与審査官 川本 真裕  
特許庁審判長 村本 佳史
特許庁審判官 市野 要助
杉原 進
登録日 1998-11-20 
登録番号 実用登録第2589617号(U2589617) 
権利者 エスエムシー株式会社
東京都港区新橋1丁目16番4号
考案の名称 出力配管接続用組立体  
代理人 内山 正雄  
代理人 林 宏  

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