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審決分類 審判 全部申し立て   A01F
管理番号 1009188
異議申立番号 異議1998-72569  
総通号数
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案決定公報 
発行日 2000-08-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 1998-05-19 
確定日 1999-12-08 
異議申立件数
事件の表示 実用新案登録第2555202号「グレンタンクの動力伝達構造」の実用新案に対する実用新案登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。   
結論 実用新案登録第2555202号の実用新案登録を取り消す。
理由 I.本件手続の経緯
本件登録第2555202号実用新案(平成3年12月2日出願、平成9年8月1日設定登録)の実用新案登録に対し、異議申立人、井関農機株式会社により実用新案登録異議の申立てがなされた。
当審において、取消理由を通知したところ、平成10年10月2日に訂正請求がなされ、さらに、訂正拒絶理由を通知したところ、訂正明細書を補正する手続補正書が提出された。
II.訂正の適否について
1、訂正明細書の考案
上記手続補正書は訂正請求の要旨を変更するものではないから、訂正明細書の請求項1に係る考案(以下、「訂正明細書の考案」という)は、上記手続補正書で補正された訂正明細書における実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された、次の事項により特定されるものである。
「機体フレーム上でグレンタンクの後部を中心に、該グレンタンクを側方へ回動可能に配置したコンバインにおいて、該グレンタンクの底部前方位置と、機体フレーム上に固定された運転席の後部との間の位置に、排出コンベアのコンベア軸と排出コンベア駆動軸とを、機体前後方向の同一軸芯線上に配置し、該コンベア駆動軸端上に当接体を後方へ突出した駆動片の中央を固定し、前記コンベア軸端上に突起を前方へ突出した従動プレートの中央を固定し、前記当接体と突起をグレンタンクの側方回動方向に係脱自在に配置したことを特徴とするグレンタンクの動力伝達構造。」
2、引用刊行物記載の考案
当審において通知した訂正拒絶理由で引用した引用刊行物1〔実願昭60-119892号(実開昭62-27441号公報)のマイクロフイルム〕、引用刊行物2〔実願昭61-23637号(実開昭62-134350号公報)のマイクロフイルム〕及び引用刊行物3(米国特許第3362143号明細書)には、次の考案が記載されていると認められる
引用刊行物1
「1 機体に搭載された脱穀機の一側には排出螺旋を有する穀粒タンクを配設し、この穀粒タンクに支架される排出螺旋軸の軸端と、機体に固定した軸受に支架されるカウンター軸端との間に断続クラッチ機構を介在させると共に、このカウンター軸を駆動機構により駆動するようになし、穀粒タンクを断続クラッチの断状態で脱穀機の一側から遠ざかる方向に移動するようにしたことを特徴とするコンバインにおける穀粒タンクの動力断続装置。
2 断続クラッチ機構に、軸端に設けたテーパー部と、このテーパー部が嵌入するテーパー孔とを設けた実用新案登録請求の範囲第一項記載のコンバインにおける穀粒タンクの動力断続装置。」
(実用新案登録請求の範囲)
「〔考案の目的〕
本考案は上述した従来の実情に鑑み、その問題点を解消すべく創案されたものであって、穀粒タンクを移動させるための事前操作、および穀粒タンク復帰後の排出螺旋軸を駆動するための事後操作が面倒なく簡単にできるコンバインにおける穀粒タンクの動力断続装置を提供することを目的とするものである。」(3頁8?15行)
「コンバイン機体2の前方には図示しない硫起し機構、刈刃等よりなる前処理装置が配置され、この前処理装置の後方の機体2一側には脱穀機5、また他側には座席15及び操縦杆16等よりなる運転操作部17がそれぞれ配設されている。」(4頁13?18行)
第3及び4図には、穀粒タンク6に座席15を取付けている構成が記載されている。
図面及び上記記載によると、引用刊行物1には、コンバイン機体2上で穀粒タンク6の側部の前後方向軸を中心に、該穀粒タンク6を側方へ回動可能に配置したコンバインにおいて、該穀粒タンク6に座席15を取付け、該穀粒タンク6の底部前方位置と、操縦杆16等が設けられた部分との間の位置に、排出コンベアの排出螺旋軸8とカウンター軸47とを、機体前後方向の同一軸芯線上に配置し、前記排出螺旋軸8の軸端とカウンター軸47の軸端との間に断続クラッチ機構を介在させた穀粒タンクの動力伝達構造が記載されていると認められる。
引用刊行物2
穀粒タンク(14)を、穀粒タンク(14)の後部に位置するオーガ筒(22)を中心に、側方へ回動可能に配置したコンバイン。
引用刊行物3
入力軸42(訂正明細書の考案の「駆動軸」に相当している。以下、括弧内に訂正明細書の考案において相当する構成部材を記す。)と出力軸44(従動軸)とを同一軸芯線上に配置し、該入力軸42端上に駆動突起56,58(当接体)を一方へ突出した入力係合部材48(駆動片)の中央を固定し、前記出力軸44端上に駆動突起70,72(突起)を他方へ突出した出力係合部材60(従動プレート)の中央を固定し、前記駆動突起56,58と駆動突起70,72とを側方方向に係脱自在に構成した動力断続装置が記載されている(第2欄43行?第3欄43行及びFiglないし6参照)。
なお、訂正拒絶理由では引用刊行物1として実願昭61-23637号(実開昭62-134350号公報)のマイクロフイルムを引用しているが、実用新案権者は引用刊行物1が実願昭60-119892号(実開昭62-27441号公報)のマイクロフイルムの誤記と認識し、それに基いて意見を述べているので、引用刊行物1を上記のようにした。
3、対比・判断
訂正明細書の考案と引用刊行物1記載の考案とを比較すると、引用刊行物1記載の考案の「コンバイン機体2」「穀粒タンク6」「排出螺旋軸8」及び「カウンター軸47」が、訂正明細書の考案の「機体フレーム」「グレンタンク」「コンベア軸」及び「排出コンベア駆動軸」にそれぞれ相当しており、また、訂正明細書の考案の「コンベア駆動軸端上に当接体を後方へ突出した駆動片の中央を固定し、前記コンベア軸端上に突起を前方へ突出した従動プレートの中央を固定し、前記当接体と突起をグレンタンクの側方回動方向に係脱自在に配置した」構成と引用刊行物1記載の「排出螺旋軸8の軸端とカウンター軸47の軸端との間に断続クラッチ機構を介在させた」構成は、共に動力断続装置である。
そうすると、訂正明細書の考案と引用刊行物1記載の考案は、
機体フレーム上でグレンタンクを側方へ回動可能に配置したコンバインにおいて、該グレンタンクの底部前方位置に、排出コンベアのコンベア軸と排出コンベア駆動軸とを、機体前後方向の同一軸芯線上に配置し、該コンベア駆動軸端と前記コンベア軸端との間に動力断続装置を配置したグレンタンクの動力伝達構造である点で一致し、
(1)訂正明細書の考案では、グレンタンクの後部を中心に、該グレンタンクを側方へ回動可能に配置しているのに対し、引用刊行物1記載の考案では、グレンタンクの側部の前後軸を中心に、該グレンタンクを側方へ回動可能に配置している点、
(2)排出コンベアのコンベア軸と排出コンベア駆動軸とが、訂正明細書の考案では、グレンタンクの底部前方位置と、機体フレーム上に固定された運転席の後部との間の位置しているのに対し、引用刊行物1記載の考案では、グレンタンクの底部前方に位置しているが、運転席がグレンタンクに固定されており、機体フレーム上に固定された運転席の後部に位置していない点、
(3)動力断続装置が、訂正明細書の考案では、コンベア駆動軸端上に当接体を後方へ突出した駆動片の中央を固定し、前記コンベア軸端上に突起を前方へ突出した従動プレートの中央を固定し、前記当接体と突起をグレンタンクの側方回動方向に係脱自在に配置した構成であるのに対し、引用刊行物1記載の考案では、そのような構成でない点
で相違している。
上記相違点(1)ないし(3)について検討する。
相違点(1)について
グレンタンクの後部を中心に、該グレンタンクを側方へ回動可能に配置することは、引用刊行物2にも示されるように周知であるから、引用刊行物1記載の考案において、グレンタンクを側方へ回動可能にする構成として、この周知な技術を適用し、本願考案のような構成にすることは、当業者ならきわめて容易にできることである。
相違点(2)について
引用刊行物1記載の考案では、運転席がグレンタンクに固定されているが、通常、運転席は機体フレーム上に固定されている(例えば、引用刊行物2参照)ので、引用刊行物1記載の考案において、運転席を機体フレーム上に固定して設け、その運転席の後部にカウンター軸47を位置することは当業者ならきわめて容易にできることである。
相違点(3)について
入力軸端上に当接体を一方へ突出した駆動片の中央を固定し、出力軸端上に突起を他方へ突出した従動プレートの中央を固定し、前記当接体と突起を側方方向に係脱自在に配置した動力断続装置は、引用刊行物3に開示されているから、引用刊行物1記載の考案の動力断続装置を引用刊行物3記載のものにすることは当業者がきわめて容易にできることである。
そして、訂正明細書の考案が奏する効果は、上記引用刊行物1ないし3に記載された考案から当業者が予測できる程度のものであって格別のものではない。
したがって、訂正明細書の考案は、上記引用刊行物1ないし3に記載された考案に基いて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであり、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録出願の際独立して実用新案登録を受けることができないものである。
4、むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第9条第2項の規定により準用される、同附則第10条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項で準用する第126条第4項の規定に適合しないので、当該訂正は認められない。
III.本件考案
本件の請求項1に係る実用新案(以下、「本件考案」という。)は、実用新案登録明細書及び図面の記載からみてその実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの、
「機体フレーム上にグレンタンクを側方へ回動可能に配置したコンバインにおいて、グレンタンクの底部前方位置に排出コンベアのコンベア軸と排出コンベア駆動軸を同一軸芯線上に配置し、該コンベア駆動軸端上に当接体を後方へ突出した駆動片の中央を固定し、前記コンベア軸端上に突起を前方へ突出した従動プレートの中央を固定し、前記当接体と突起を側方方向に係脱自在に配置したことを特徴とするグレンタンクの動力伝達構造。」
にある。
IV.実用新案登録異議の申立てについて
1、引用刊行物記載の考案
当審が通知した取消理由に引用した引用刊行物2〔実願昭60-119892号(実開昭62-27441号)のマイクロフイルム、〕及び引用刊行物3(米国特許第3362143号明細書)は、上記II.の「2、引用刊行物記載の考案」における引用刊行物1及び引用刊行物3と同じであるから、取消理由に引用した引用刊行物2及び3には、上記II.2、引用刊行物記載の考案の「引用刊行物1」及び「引用刊行物3」に記載した考案が記載されている。
2、対比・判断
本件考案と引用刊行物2記載の考案とを比較すると、引用刊行物2記載の考案の「コンバイン機体2」「穀粒タンク6」「排出螺旋軸8」及び「カウンター軸47」が、本件考案の「機体フレーム」「グレンタンク」「コンベア軸」及び「排出コンベア駆動軸」にそれぞれ相当しており、また、本件考案の「コンベア駆動軸端上に当接体を後方へ突出した駆動片の中央を固定し、前記コンベア軸端上に突起を前方へ突出した従動プレートの中央を固定し、前記当接体と突起をグレンタンクの側方回動方向に係脱自在に配置した」構成と引用刊行物1記載の「排出螺旋軸8の軸端とカウンター軸47の軸端との間に断続クラッチ機構を介在させた」構成は、共に動力断続装置である。
そうすると、本件考案と引用刊行物2記載の考案は、
機体フレーム上でグレンタンクを側方へ回動可能に配置したコンバインにおいて、該グレンタンクの底部前方位置に、排出コンベアのコンベア軸と排出コンベア駆動軸とを、機体前後方向の同一軸芯線上に配置し、該コンベア駆動軸端と前記コンベア軸端との間に動力断続装置を配置したグレンタンクの動力伝達構造である点で一致し、
動力断続装置が、本件考案では、コンベア駆動軸端上に当接体を後方へ突出した駆動片の中央を固定し、前記コンベア軸端上に突起を前方へ突出した従動プレートの中央を固定し、前記当接体と突起をグレンタンクの側方回動方向に係脱自在な構成であるのに対し、引用刊行物2記載の考案では、そのような構成でない点
で相違している。
しかしながら、上記相違点は、上記II.3、対比・判断の「相違点(3)について」に記載した理由により、引用刊行物2記載の考案に引用刊行物3記載の考案を適用して当業者がきわめて容易にできることである。
そして、本件考案が奏する効果は、引用刊行物2及び3に記載された考案から当業者が予測できる程度のものであって格別のものではない。
したがって、本件考案は、引用刊行物2及び3に記載された考案に基いて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであり、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができないものである。
3、むすび
以上のとおり、本件考案は実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができないから、本件考案の実用新案登録は拒絶の査定をしなければならない実用新案登録出願に対してされたものである。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第9条第7項の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の一部の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第3条第1項及び第2項の規定により、上記のとおり決定する。
異議決定日 1999-10-25 
出願番号 実願平3-99234 
審決分類 U 1 651・ 121- ZB (A01F)
最終処分 取消    
前審関与審査官 郡山 順  
特許庁審判長 藤井 俊二
特許庁審判官 鈴木 寛治
吉村 尚
登録日 1997-08-01 
登録番号 実用登録第2555202号(U2555202) 
権利者 セイレイ工業株式会社
岡山県岡山市江並428番地 ヤンマー農機株式会社
大阪府大阪市北区茶屋町1番32号
考案の名称 グレンタンクの動力伝達構造  
代理人 矢野 寿一郎  

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