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審決分類 |
審判 全部申し立て A01C |
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管理番号 | 1009216 |
異議申立番号 | 異議1998-72410 |
総通号数 | 8 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 実用新案決定公報 |
発行日 | 2000-08-25 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 1998-05-12 |
確定日 | 1999-12-11 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 実用新案登録第2554199号「水田作業機におけるフロート支持装置」の実用新案に対する実用新案登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 訂正を認める。 実用新案登録第2554199号の実用新案登録を維持する。 |
理由 |
1.手続の経緯 実用新案登録第2554199号の考案についての出願は、平成3年10月11日に出願され、平成9年7月25日にその考案について実用新案登録の設定登録がなされ、その後、井関農機株式会社より実用新案登録異議の申立がなされ、そして、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成11年4月12日に訂正請求がなされ、さらに訂正拒絶理由通知がなされ、その指定期間内である平成11年10月19日に手続補正書が提出されたものである。 2.訂正の適否についての判断 2-1 実用新案権者が求めている訂正 実用新案権者が求めている訂正は、以下のとおりである。 A 実用新案登録請求の範囲の記載に関して (イ)「可撓性索体を介して」とあるを「可撓性索体のみを介して」と訂正する。 (口)「上記フロートの後部を機体側に枢支して機体に対して近接離間自在に支持する」とあるを、「上記フロートの後部を機体側に枢支してフロートの前部を機体に対して近接離間自在に支持する」と訂正する。 (ハ)「フロートの下げ側のみを規制した」とあるを、「、機体を大きく上動させた際には、可撓性索体がフロートの下げ側のみを規制して、機体に対してフロートを適正な姿勢に支持する」と訂正する。 B 考案の詳細な説明欄中の記載に関して (イ)明細書の段落番号【0004】、【0005】、【0011】(同段落中2個所)の「可撓性索体を介して」とあるを「可撓性索体のみを介して」と訂正する。 (ロ)同上段落番号【0005】の「フロート前部には、」とあるを「フロート前部には可撓性索体以外に余分な部材がないから、」と訂正する。 (ハ)同上段落番号【0010】の「可撓性索体13で吊持したので、」とあるを「可撓性索体13のみで吊持したので、」と訂正する。 (ニ)同上段落番号【0011】の「可撓性索体で吊持されたフロートの前部には、従来のものに比べて」とあるを「可撓性索体のみで吊持されたフロートの前部には、可撓性索体以外に余分な部材がないから、従来のフロート支持構造のように、構造の複雑なパンダグラフ状のアジャスタ等で支持されたものに比べて」と訂正する。 (ホ)同上段落番号【0004】の「上記フロートの後部を機体側に枢支して機体に対して近接離間自在に支持する」とあるを、「上記フロートの後部を機体側に枢支してフロートの前部を機体に対して近接離間自在に支持する」と訂正する。 (へ)同上段落番号【0004】の「フロートの下げ側のみを規制した」とあるを、「、機体を大きく上動させた際には、可撓性索体がフロートの下げ側のみを規制して、機体に対してフロートを適正な姿勢に支持する」と訂正する。 (ト)同上段落番号【0005】の「上動きせた」とあるを「上動させた」に訂正する。 (チ)同上段落番号【0005】の「規制して適正な姿勢に」とあるを「規制してフロートを機体に対して適正な姿勢に」に訂正する。 (リ)同上段落番号【0011】の「上記フロートの後部を機体側に枢支して機体に対して近接離間自在に支持する」とあるを、「上記フロートの後部を機体側に枢支してフロートの前部を機体に対して近接離間自在に支持する」と訂正する。 (ヌ)同上段落番号【0011】の「フロートの下げ側のみを規制した」とあるを、「、機体を大きく上動させた際には,可撓性索体がフロートの下げ側のみを規制して、機体に対してフロートを適正な姿勢に支持する」と訂正する。 2-2 訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否 上記Aの訂正事項と関連して、本件登録明細書の段落番号【0005】には、「【作用】・・・水田作業を行うに当り、後部を機体側に枢支して機体に対して近接離間自在なフロートが・・・このとき、可撓性索体を介して機体から吊持されているフロートの前部は、田面に沿って円滑に上下動する。しかも、可撓性索体のみで吊持した支持構造の簡単なフロート前部には、・・・また・・・機体を大きく上動させた際には、可撓性索体がフロートの下げ側を規制して適正な姿勢に支持することができる。」と記載されており、同段落番号【0008】には、「・・・田面に沿って滑走するフロート4が機体に対して上下動すると、・・・」と記載されている。したがって、上記Aの訂正事項はいずれも登録明細書に記載された事項の範囲内で構成を限定したものといえるから、実用新案登録請求の範囲の減縮に該当するものであって、新規事項の追加に該当せず、しかも、実質上実用新案登録請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 本件登録明細書の段落番号【0005】には、「・・・しかも、可撓性索体のみで吊持した・・・と」記載されかつ、同段落番号【0003】には、「【考案が解決しようとする課題】ところが従来この種のフロートは、機体に対して上下動自在とするため、・・・フロートの前部側は鉄板あるいは合成樹脂からなるパンタグラフ状のアジヤスタ等によって機体に装着している。・・・」と記載されおり、「のみ」であれば、他にそのための部材がないことは自明であるから、上記B(イ)、(ロ)、(ハ)、(ニ)の訂正事項は、登録明細書に記載された事項の範囲で明瞭でない記載を釈明する訂正であって、新規事項を追加するものではない。 加えて、登録明細書の段落番号【0005】には、「・・・後部を機体側に枢支して機体に対して近接離間自在なフロートが・・・このとき、可撓性索体を介して機体から吊持されているフロートの前部は、田面に沿って円滑に上下動する。・・・また・・・機体を大きく上動させた際には、可撓性索体がフロートの下げ側を規制して適正な姿勢に支持することができる。」と記載されており、同じく段落番号【0008】には、「・・・田面に沿って滑走するフロート4が機体に対して上下動すると、・・・・」と記載されているから、上記B(ホ)、(へ)、(チ)、(リ)、(ヌ)の訂正は、登録明細書に記載された事項の範囲で明瞭でない記載を釈明する訂正であって、新規事項を追加するものではない。 また、上記B(ト)の訂正は、明らかな誤記を訂正するものである。 2-3 訂正明細書の請求項1に係る考案 訂正明細書の請求項1に係る考案は、平成11年10月19日付け手続補正書により補正された訂正明細書及び図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるものである。 「田面を滑走するフロートを設けた水田作業機において、上記フロートの後部を機体側に枢支してフロートの前部を機体に対して近接離間自在に支持すると共に、フロートの前部を、可撓性索体のみを介して機体から吊持して、機体を大きく上動させた際には、可撓性索体がフロートの下げ側のみを規制して、機体に対してフロートを適正な姿勢に支持することを特徴とする水田作業機におけるフロート支持装置。」 2-4 独立登録要件 2-4-1 訂正拒絶理由通知に引用した発明 当審が通知した訂正拒絶理由通知で引用した本件の出願の出願の日前の他の出願であって、本件の出願後に出願公開された出願(特願平3-124186号(特開平4-349807号公報))の願書に最初に添付された明細書又は図面(以下、「引用明細書」という。)には、 「走行機体にリンク機構(2)を介して駆動昇降自在・・田植機・・」(引用明細書の【請求項1】参照)と記載され、「・・泥面上に接地追従しながら滑走する・・フロート15a、15b、15c等・・」(同段落番号【0009】参照)、「そして、前記苗植付装置3の上昇作動に伴って、前記各サイドフロート15a,15cを引上げ操作する長さの等しい引上げ部材22,22を、前記リンク機構2に連結してある。つまり、各サイドフロート15a,15cの前部側とリンク機構2の後部上方位置に連結して左右方向に延設した連結具23の左右両側部との間を屈曲自在な引き上げ部材22,22としてのワイヤで夫々連結してある。このように構成すると、苗植付装置3を大きく上昇させたときは、上昇前における苗植付装置3の対機体左右傾斜姿勢に無関係に、左右サイドフロート15a,15cの対機体高さが常に一定となって、その結果、が対機体平行状態に自動的に設定されることになる。」(同段落番号【0011】の記載を参照。)と記載されている。 これらの記載及び図面の記載を併せみれば、引用明細書には、 田面を含む泥面を滑走するフロートを設けた水田で作業する機械である田植機において、上記フロートの後部を走行機体に対して昇降自在なリンク機構2に枢支してフロートの前部をリンク機構に対して近接離間自在に支持すると共に、フロートの前部を、可撓性索体であるワイヤのみを介してリンク機構から吊持して、リンク機構を大きく上動させた際には、ワイヤがフロートの下げ側のみを規制して、リンク機構に対してフロートを適正な姿勢に支持することを特徴とする田植機におけるフロート支持装置。 の発明が記載されているものと認める。 2-4-2 対比判断 訂正明細書の請求項1に係る考案と引用明細書の発明とを比較すると、両者は、 田面を滑走するフロートを設けた水田作業機において、上記フロートの後部を枢支してフロートの前部をフロートを取り付けた部材に対して近接離間自在に支持すると共に、フロートの前部を、可撓性索体のみを介して吊持して、フロートを取り付けた部材を大きく上動させた際には、可撓性索体がフロートの下げ側のみを規制して、フロートを取り付けた部材に対してフロートを適正な姿勢に支持する水田作業機におけるフロート支持装置。である点で一致し、訂正明細書の請求項1の係る考案が、フロートの枢支が機体側であり、かつ、フロートを取り付けた部材が機体であるのに対して、引用明細書の発明では、フロートの枢支が走行機体に対して昇降自在なリンク機構であり、かつ、フロートを取り付けた部材がリンク機構である点で相違している。 そして、訂正明細書の請求項1に係る考案は、上記相違点により、機体上昇時において、フロートの姿勢が常時適正に保たれるという特有の効果を奏するものである。 しかも、記相違点を引用明細書に実質的に記載又は示唆されているとする客観的証拠は何等ない。 よって、訂正明細書の請求項1に係る考案を、引用明細書に記載された発明と同一であるとすることは出来ない。 したがって、訂正明細書の請求項1に係る考案は、その実用新案登録出願の際独立して、実用新案登録を受けることが出来るものである。 2-5 むすび 以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成六年法律第百十六号)附則第9条第2項の規定により準用する特許法第120条の4第2項及び同条第3項で準用する特許法第126条第2項から第4項の規定に適合するので、当該訂正を認める。 3 登録異議申立に対する判断 3-1 本件実用新案登録の請求項1に係る考案 平成11年10月19日付け手続補正書により補正された訂正明細書の請求項1に係る考案(以下、「本件考案」という。)は、2-3に述べたように、その実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された以下の事項により特定されるものである。 「田面を滑走する、フロートを設けた水田作業機において、上記フロートの後部を機体側に枢支してフロートの前部を機体に対して近接離間自在に支持すると共に、フロートの前部を、可撓性索体のみを介して機体から吊持して、機体を大きく上動させた際には、可撓性索体がフロートの下げ側のみを規制して、機体に対してフロートを適正な姿勢に支持することを特徴とする水田作業機におけるフロート支持装置。」 3-2 申立て理由の概要 これに対して、実用新案登録異議申立人は、甲第1号証の刊行物として特開平4-349807号公報を提出して、本件考案は、本件の出願の出願前に出願され、その出願後に出願公開された甲第1号証の刊行物に係る出願(特願平3-124186号)の願書に最初に添付された明細書又は図面に記載された発明と同一であるから、実用新案法第3条の2の規定により実用新案登録を受けることができないものであり、本件考案についての実用新案登録は、拒絶の査定をしなければならない実用新案登録に対してされたものであるから、取り消されるべき旨主張している。 3-3 甲第1号証に係る発明 甲第1号証に係る出願である特願平3-124186号の願書に最初に添付された明細書又は図面に記載された発明は、2-4-1に述べたように以下の発明である。 田面を含む泥面を滑走するフロートを設けた水田で作業する機械である田植機において、上記フロートの後部を走行機体に対して昇降自在なリンク機構2に枢支してフロートの前部をリンク機構に対して近接離間自在に支持すると共に、フロートの前部を、可撓性索体であるワイヤのみを介してリンク機構から吊持して、リンク機構を大きく上動させた際には、ワイヤがフロートの下げ側のみを規制して、リンク機構に対してフロートを適正な姿勢に支持することを特徴とする田植機におけるフロート支持装置。 3-4 対比・判断 本件考案と甲第1号証に係る発明とを比較すると、両者は、 田面を滑走するフロートを設けた水田作業機において、上記フロートの後部を枢支してフロートの前部をフロートを取り付けた部材に対して近接離間自在に支持すると共に、フロートの前部を、可撓性索体のみを介して吊持して、フロートを取り付けた部材を大きく上動させた際には、可撓性索体がフロートの下げ側のみを規制して、フロートを取り付けた部材に対してフロートを適正な姿勢に支持する水田作業機におけるフロート支持装置。 である点で一致するものの、本件考案が、フロートの枢支が機体側であり、フロートを取り付けた部材が機体であるのに対して、甲第1号証に係る出願の願書に最初に添付された明細書又は図面に記載された発明では、フロートの枢支が走行機体に対して昇降自在なリンク機構であり、フロートを取り付けた部材がリンク機構である点で相違していおり、記相違点を同明細書等に実質的に記載又は示唆されているとする客観的証拠は何等ない。 よって、本件考案を、甲第1号証に係る出願の願書に最初に添付された明細書又は図面に記載された発明と同一であるとすることは出来ない。 3-5 むすび 以上説示の通り、実用新案登録異議申立の理由及び証拠によっては、本件考案についての実用新案登録を取り消すことはできない。 また、他に本件考案についての実用新案登録を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【考案の名称】 水田作業機におけるフロート支持装置 (57)【実用新案登録請求の範囲】 【請求項1】田面を滑走するフロートを設けた水田作業機において、上記フロートの後部を機体側に枢支してフロートの前部を機体に対して近接離間自在に支持すると共に、フロートの前部を、可撓性索体のみを介して機体から吊持して、機体を大きく上動させた際には、可撓性索体がフロートの下げ側のみを規制して、機体に対してフロートを適正な姿勢に支持することを特徴とする水田作業機におけるフロート支持装置。 【考案の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】 本考案は、田面を滑走するフロートを設けた水田作業機におけるフロート支持装置に係るものである。 【0002】 【従来の技術】 一般に歩行型田植機等の水田作業機においては、機体の下部に設けた上下動自在のフロートが、水田作業中、田面に沿って滑走するようにしたものが知られている。 【0003】 【考案が解決しようとする課題】 ところが従来この種のフロートは、機体に対して上下動自在とするため、フロートの後部を機体側に枢着し、フロートの前部側は鉄板あるいは合成樹脂からなるパンタグラフ状のアジヤスタ等によって機体に装着している。このためフロートが田面を滑走する際に、この構造の複雑なアジヤスタ部分に泥たまりが生じて抵抗が大となり、滑行性能が低下するという問第題があった。 本考案は上記の如き問題を解消すべく創案されたものであって、フロートが田面を滑走しても、泥たまりが生じるのを少なくして、滑走性能を良好にすることができる構造の簡単なフロート支持装置を提供することを目的としたものである。 【0004】 【課題を解決するための手段】 上記の課題を解決するため、本考案が講じた技術的手段は、田面を滑走するフロートを設けた水田作業機において、上記フロートの後部を機体側に枢支してフロートの前部を機体に対して近接離間自在に支持すると共に、フロートの前部を、可撓性索体のみを介して機体から吊持して、機体を大きく上動させた際には、可撓性索体がフロートの下げ側のみを規制して、機体に対してフロートを適正な姿勢に支持することを特徴とするものである。 【0005】 【作用】 したがって、本考案によれば、水田作業を行うに当り、後部を機体側に枢支して機体に対して近接離間自在なフロートが田面上を滑走する。 このとき、可撓性索体のみを介して機体から吊持されているフロートの前部は、田面に沿って円滑に上下動する。しかも、可撓性索体のみで吊持した支持構造の簡単なフロート前部には、可撓性索体以外に余分な部材がないから、泥たまりを生ずるのが少なくなって、常に良好な滑走性能が保持される。また路上走行時等に機体を大きく上動させた際には、可撓性索体がフロートの下げ側を規制してフロートを機体に対して適正な姿勢に支持することができる。 【0006】 【実施例】 次に本考案の実施例を添付した図面に基づいて詳述する。1は水田作業機として例示する歩行型田植機であって、エンジン2を前部に搭載した機体フレーム3の下部にフロート4が上下動自在に支持され、その両側にはチエンケース5に支持されたスイング車輪6が配置されている。7は苗載台8,苗植付杆9等からなる植付部である。また機体の前部はボンネット10に覆われており、機体の後部には上方後方に向けて操作ハンドル11が延設されている。 【0007】 そして上記フロート4の支持装置は、つぎのように構成されている。すなわち、フロート4の後部側は、ブラケット12を介して機体に枢支されていて、機体に対して近接離間自在となっている。一方フロート4の前部側は、ワイヤ、あるいはチエン等からなる一本の可撓性索体13によって機体の下方に吊持されていて、フロート4の下げ側のみが上記可撓性索体13により規制されている。したがってフロート4は、可撓性索体13が撓んで自由に上動し、また機体を大きく上動させたときには、可撓性索体13でフロート4を適正姿勢に保持できるようになっている。14は可撓性索体13の上端を機体に固定する固定部材、15は可撓性索体13の下端を連結するフロート4に設けた支持部材である。 【0008】 また、スイング車輪6を支持するチエンケース5の揺動軸に突成した回動アーム16がリフタロツド17を介してリフタ天秤18の左右両端に連結されている。上記のリフタ天秤18は、エンジン2の前方に立設された昇降用シリンダ19の上端に上下回動自在に装着されている。20はリフタ天秤18の下面一側に配設されたローリング用シリンタである。 21はエンジン2の前面一側に設けた油圧制御パルブであって、該油圧制御パルブ21のケースから突成した支持部材22に機体の傾きを検知する重力センサ23が左右揺動自在に垂下支持されている。そして機体が傾くと、機体に対して揺勤した重力センサ23が油圧制御バルブ21を切換えてローリング用シリンダ20を作動させ、上下回動したりフタ天秤18が左右スイング車輪6を互に反対方向に上下させて機体姿勢を水平制御する水平制御機構24が構成されている。また前記フロート4には油圧感知機構25が連繋されていて、田面に沿って滑走するフロート4が機体に対して上下動すると、油圧制御バルブ21の切換えにより、昇降用シリンダ19を作動させて左右のスイング車輪6を同時に上下動させる。 【0009】 26は前記スイング車輪6の逆方向への上下動をロックして機体姿勢を固定する機体固定装置であって、該機体固定装置26は、リフタ天秤18側に固定した支持体27にロツド28が上下方向に進退自在に支持されており、昇降用シリンダ19側には、上記ロツド28の先端が進入する係止孔29を設けた固定部30が設けられていて、ロツド28が係止孔29に進入係止するとリフタ天秤18によるスイング車輪6の上下動がロックされて、機体姿勢をそのまま固定するようになっている。 31は機体固定装置26の操作ワイヤであって、該操作ワイヤ31の基端部が操作ハンドル11に設けたロック用レバー32に連結されており、その先端部が機体の上方側を通って前記ロツド28の上端に固定されていて、ロック用レバー32の操作により機体姿勢を固定できるようになっている。33はロッド28を付勢するスプリンクである。 34は機体の前方に装着されたバンパーであって、該バンパー34はボンネット10の形状に合せ、かつボンネット10前端の表面形状の延長上に設けて、ボンネット10とバンパー34とが調和のとれた良好な外観を呈するようになっている。 【0010】 上記の如き構成において、植付作業を行うに当っては、スイング車輪6が耕盤上を走行し、フロート4が田面を滑走しながら苗植付杆9が苗載台8上の苗を掻取って田面に植付ける。 作業中機体が傾くと、機体に対して振れた重力センサ23が油圧制御バルブ21を切換えてローリング用シリンダ20を作動させ、回動したリフタ天秤18が左右のスイング車輪6を逆方向に上下動させて機体姿勢を水平制御する。一方、フロート4が機体に対して上下動すると、油圧制御バルブ21の切換えにより、昇降用シリンダ19を作動させて昇降用シリンダ19とともに上下に移動したリフタ天秤18が左右のスイング車輪6を同時に上下動させる。 また作業条件に応じて機体を固定する際には、ロック用レバー32を操作すれば、操作ワイヤ31に連動してロツド28が係止孔29に進入係止し、リフタ天秤18を昇降用シリンダ19に固定するので、機体は水平制御されることなく、そのまま固定される。 そして本考案は、特にフロート4の前部を可撓性索体13のみで吊持したので、構造の複雑なアジヤスタ等で支持した従来のものに比べて、フロート4の支持部分への泥たまりが少なくなって、フロート4の走行抵抗が減少し、常に良好な走行性能を保持したまま円滑に水田作業を行うことができ、また路上走行時等において機体を大きく上動させた際には、可撓性索体13がフロート4の下降を規制するので、フロート4は適正な姿勢に保持きれる。しかも一本の可撓性索体13を設けるのみでよいから、フロート4の支持構造が簡単になって部品点数を削減でき、機体のコフパクト化を図ることができる。 【0011】 【考案の効果】 これを要するに本考案は、田面を滑走するフロートを設けた水田作業機において、上記フロートの後部を機体側に枢支してフロートの前部を機体に対して近接離間自在に支持すると共に、フロートの前部を、可撓性索体のみを介して機体から吊持して、機体を大きく上動させた際には、可撓性索体がフロートの下げ側のみを規制して、機体に対してフロートを適正な姿勢に支持するものであるから、水田作業を行うに当り、後部を機体側に枢支されたフロートは、可撓性索体のみを介して前部が吊持されているので、機体に対して近接離間しながら田面に沿って滑走する。そして可撓性索体のみで吊持されたフロートの前部には可撓性索体以外に余分な部材がないから、従来のフロート支持構造のように、構造の複雑なパンタグラフ状のアジャスタ等で支持されたものに比べて泥たまりが少なくなって滑走抵抗が減少するので、常に良好な滑走性能を保持しながら円滑に水田作業を行うことができる。しかも可撓性索体を設けるのみでよいから、フロートの支持構造が簡単になり部品点数を削減できて、機体のコンパクト化を図ることができるものである。 【0012】 【図面の簡単な説明】 【図1】 水田作業機の全体側面図である。 【図2】 同上前部の拡大側面図である。 【図3】 同上平面図である。 【図4】 水平制御機構の拡大側面図である。 【図5】 同上正面図である。 【図6】 フロートの支持装置を示す拡大側面図である。 【図7】 同上平面図である。 【0013】 【符号の説明】 1 水田作業機 4 フロート 12 ブラケット 13 可撓性索体 |
訂正の要旨 |
A 実用新案登録請求の範囲の記載に関して (イ)「可撓性索体を介して」とあるを「可撓性索体のみを介して」と訂正する。 (口)「上記フロートの後部を機体側に枢支して機体に対して近接離間自在に支持する」とあるを、「上記フロートの後部を機体側に枢支してフロートの前部を機体に対して近接離間自在に支持する」と訂正する。 (ハ)「フロートの下げ側のみを規制した」とあるを、「、機体を大きく上動させた際には、可撓性索体がフロートの下げ側のみを規制して、機体に対してフロートを適正な姿勢に支持する」と訂正する。 B 考案の詳細な説明欄中の記載に関して (イ)明細書の段落番号【0004】、【0005】、【0011】(同段落中2個所)の「可撓性索体を介して」とあるを「可撓性索体のみを介して」と訂正する。 (ロ)同上段落番号【0005】の「フロート前部には、」とあるを「フロート前部には可撓性索体以外に余分な部材がないから、」と訂正する。 (ハ)同上段落番号【0010】の「可擁性索体13で吊持したので、」とあるを「可撓性索体13のみで吊持したので、」と訂正する。 (ニ)同上段落番号【0011】の「可撓性索体で吊持されたフロートの前部には、従来のものに比べて」とあるを「可撓性索体のみで吊持されたフロートの前部には、可撓性索体以外に余分な部材がないから、従来のフロート支持構造のように、構造の複雑なパンダグラフ状のアジャスタ等で支持されたものに比べて」と訂正する。 (ホ)同上段落番号【0004】の「上記フロートの後部を機体側に枢支して機体に対して近接離間自在に支持する」とあるを、「上記フロートの後部を機体側に枢支してフロートの前部を機体に対して近接離間自在に支持する」と訂正する。 (へ)同上段落番号【0004】の「フロートの下げ側のみを規制した」とあるを、「、機体を大きく上動させた際には、可撓性索体がフロートの下げ側のみを規制して、機体に対してフロートを適正な姿勢に支持する」と訂正する。 (ト)同上段落番号【0005】の「上動きせた」とあるを「上動させた」に訂正する。 (チ)同上段落番号【0005】の「規制して適正な姿勢に」とあるを「規制してフロートを機体に対して適正な姿勢に」に訂正する。 (リ)同上段落番号【0011】の「上記フロートの後部を機体側に枢支して機体に対して近接離間自在に支持する」とあるを、「上記フロートの後部を機体側に枢支してフロートの前部を機体に対して近接離間自在に支持する」と訂正する。 (ヌ)同上段落番号【0011】の「フロートの下げ側のみを規制した」とあるを、「、機体を大きく上動させた際には,可撓性索体がフロートの下げ側のみを規制して、機体に対してフロートを適正な姿勢に支持する」と訂正する。 |
異議決定日 | 1999-11-25 |
出願番号 | 実願平3-91551 |
審決分類 |
U
1
651・
161-
YA
(A01C)
|
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 郡山 順 |
特許庁審判長 |
粟津 憲一 |
特許庁審判官 |
西野 健二 西川 一 |
登録日 | 1997-07-25 |
登録番号 | 実用登録第2554199号(U2554199) |
権利者 |
三菱農機株式会社 島根県八束郡東出雲町大字揖屋町667番地1 |
考案の名称 | 水田作業機におけるフロート支持装置 |
代理人 | 稲葉 昭治 |
代理人 | 稲葉 昭治 |