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審決分類 審判 全部申し立て   E02F
管理番号 1009222
異議申立番号 異議1999-70298  
総通号数
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案決定公報 
発行日 2000-08-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 1999-01-26 
確定日 1999-11-29 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 実用新案登録第2577751号「ブレード付き作業機」の請求項1ないし2に係る実用新案に対する実用新案登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。   
結論 訂正を認める。 実用新案登録第2577751号の請求項1に係る実用新案登録を維持する。
理由 I.手続きの経緯
本件実用新案登録第2577751号に係る考案は、平成3年10月18日に出願され、平成10年5月15日にその実用新案の設定登録がされ、その後、平成11年1月26日に森本淳史より、実用新案登録異議の申立てがなされ、平成11年7月19日(起案日)に取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成11年10月12日に登録異議意見書を提出すると共に訂正請求がなされたものである。
II.訂正請求について
1.請求の趣旨及び訂正事項
訂正請求の趣旨は、実用新案登録第2577751号の明細書を請求書に添付した訂正明細書のとおり訂正することを求めるものであり、そして、その訂正事項は、以下(1)及び(2)のとおりのものである。
(1)訂正事項a
実用新案登録明細書の実用新案登録請求の範囲の請求項1を、下記のように訂正し、請求項2を削除する。
「【請求項1】走行可能な作業機本体と、基端側が該作業機本体に回動可能に取付けられ、先端側が該作業機本体から突出したアームと、該アームの先端側に設けられ、降下時に排土作業を行うブレードと、該ブレードをアームを介して上,下に昇降すべく、前記作業機本体とアームとの間に設けられ、チューブおよび該チューブから突出するロッドを有した昇降用シリンダとからなるブレード付き作業機において、
前記昇降用シリンダのロッド突出端側に固着され、軸方向の前後に離間して複数のねじ穴が形成されたねじ座と、
前記ロッドの突出部分を保護するため該ロッドの最大伸長時にも前記チューブに達する長さを有し、前記チューブの上側に沿って伸長した保護カバーと、
前記ねじ座の各ねじ穴に螺着され、該保護カバーの基端側を前後に離間した複数位置で前記ねじ座に固定し、該保護カバーの先端側を自由端として片持ち支持状態で前記チューブの外周側に延在させる複数のボルトとを備える構成としたことを特徴とするブレード付き作業機。」
(2)訂正事項b
実用新案登録明細書の段落【0015】の記載を、下記のように訂正する。
「【0015】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、請求項1の考案が採用する構成の特徴は、昇降用シリンダのロッド突出端側に固着され、軸方向の前後に離間して複数のねじ穴が形成されたねじ座と、前記ロッドの突出部分を保護するため該ロッドの最大伸長時にもチューブに達する長さを有し、前記チューブの上側に沿って伸長した保護カバーと、前記ねじ座の各ねじ穴に螺着され、該保護カバーの基端側を前後に離間した複数位置で前記ねじ座に固定し、該保護カバーの先端側を自由端として片持ち支持状態で前記チューブの外周側に延在させる複数のボルトとを備える構成としたことにある。」
2.訂正の要件の適否
2-1.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
(1)訂正事項aは、請求項1に記載された「前記チューブに沿って伸長した保護カバーと、」を「前記チューブの上側に沿って伸長した保護カバーと、」とし、「該保護カバーの先端側を自由端として前記チューブの外周側に延在させる複数のボルト」を「該保護カバーの先端側を自由端として片持ち支持状態で前記チューブの外周側に延在させる複数のボルト」とするもので、それぞれ「上側」及び「片持ち支持状態」という構造事項を付加し、より具体的に限定したものであるから、実用新案登録請求の範囲の請求項1の減縮を目的とするものと認められる。
さらに、「前記チューブの上側に沿って伸長した保護カバーと、」という訂正事項は、出願当初の明細書の段落【0022】に「保護カバー24は凸湾曲状をなし、所定間隔をおいてチューブ11と上下方向で対向するように形成されている。」と記載されていると共に図1?3に図示されているものであり、また、「保護カバーの先端側を自由端として片持ち支持状態で前記チューブの外周側に延在させる複数のボルト」という訂正事項も願書に添付した明細書の段落【0016】及び段落【0033】に「保護カバー全体をロッドの突出端側に片持ち支持状態で固定することができる。」及び「保護カバーをロッドの突出端側にねじ座と各ボルトとを用いて片持ち支持状態で固定でき、」と記載され、図1,2に「先端側を自由端として片持ち支持状態で取付けられた構造」が示されているから、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるということができる。
そして、(1)訂正事項aは、実質上実用新案登録請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。
(2)訂正事項bについては、上記(1)訂正事項aの実用新案登録請求の範囲の請求項1の訂正に伴い、実用新案登録請求の範囲の記載と考案の詳細な説明の記載との整合を図るための訂正で、明りようでない記載の釈明を目的とするものと認められ、また、上記(1)訂正事項aと同様、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実用新案登録請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。
2-2.独立実用新案登録要件についての判断
前記のように、実用新案登録請求の範囲の訂正は、請求項2を削除し、請求項1について減縮を目的として訂正されたものであるから、本件訂正明細書の請求項1に係る考案についての独立実用新案登録登録要件の判断をする。
(訂正明細書の請求項1に係る考案)
本件訂正明細書の請求項1に係る考案は、訂正明細書の実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された事項より構成される次のとおりのものである。
「【請求項1】走行可能な作業機本体と、基端側が該作業機本体に回動可能に取付けられ、先端側が該作業機本体から突出したアームと、該アームの先端側に設けられ、降下時に排土作業を行うブレードと、該ブレードをアームを介して上,下に昇降すべく、前記作業機本体とアームとの間に設けられ、チューブおよび該チューブから突出するロッドを有した昇降用シリンダとからなるブレード付き作業機において、
前記昇降用シリンダのロッド突出端側に固着され、軸方向の前後に離間して複数のねじ穴が形成されたねじ座と、
前記ロッドの突出部分を保護するため該ロッドの最大伸長時にも前記チューブに達する長さを有し、前記チューブの上側に沿って伸長した保護カバーと、
前記ねじ座の各ねじ穴に螺着され、該保護カバーの基端側を前後に離間した複数位置で前記ねじ座に固定し、該保護カバーの先端側を自由端として片持ち支持状態で前記チューブの外周側に延在させる複数のボルトとを備える構成としたことを特徴とするブレード付き作業機。」
(引用刊行物及び甲各号証)
実用新案登録異議申立人が甲第1?3号証として提出し、取消理由で刊行物1?3として引用した刊行物には、夫々以下の考案が記載されている。
刊行物1(甲第1号証)[実願昭57-49969号(実開昭58-153269号)のマイクロフィルム]には、
第3頁第14行?第4頁第3行、第4頁第4?19行及び第1、2図の記載からみて、
「走行可能な作業機本体と、基端側が該作業機本体に回動可能に取付けられ、先端側が該作業機本体から突出した支持アームと、該支持アームの先端側に設けられ、降下時に排土作業を行う排土板と、該排土板を支持アームを介して上,下に昇降すべく、前記作業機本体と支持アームとの間に設けられ、チューブおよび該チューブから突出するピストン棒を有した油圧シリンダとからなる排土板付き作業機において、
前記油圧シリンダを土砂の侵入から保護するため、油圧シリンダのチューブ上方にはスペーサを介して防護カバーをボルトによつて取付けた排土板付き作業機。」という考案が記載され、
刊行物2(甲第3号証)[特開平1-98701号公報]には、
第1頁左欄第14?17行、第2頁左下欄第8?16行、第2頁右下欄第2?5行、第3頁右上欄第8?14行、第3頁左下欄第5?8行及び第1?3、5図の記載からみて、
「油圧シリンダのロッド突出端側に、ロッドの突出部分を保護するためロッドの最大伸長時にもチューブに達する長さを有し、チューブに沿って伸長したカバーを固定し、カバーの先端側をチューブの外周側に延在させ、このカバーによってロッドを外部の岩石等の異物から保護し、当該ロッドの損傷を防止する構造」及び
「カバーの先端側は、チューブの周側面に設けたレールに係合するガイドが設けられ、チューブのレール上を摺動するようにしていること。」という考案が記載され、
刊行物3(甲第2号証)[実願平1-22039号(実開平2-116547号)のマイクロフィルム]には、
第4頁第4?12行、第5頁第5?11行及び第1、3図の記載からみて、
「シリンダのピストンロッド突出端側に、軸方向の前後に離間して複数のねじ穴を形成したプレートを固着し、バケットシリンダのチューブに沿って伸長するトリップバーに設けた複数のネジ穴をプレートの各ねじ穴に合わせて、複数のボルトにて前後に離間した複数位置で螺着され、トリップバーの基端側を前記プレートに固定し、トリップバーの先端を自由端として前記チューブの外周側に延在させた構造。」という考案が記載されていると認められる。
(対比・判断)
本件訂正明細書の請求項1に係る考案と刊行物1記載の考案とを比較すると、
刊行物1記載の考案の「支持アーム」、「排土板」、「ピストン棒」、「油圧シリンダ」及び「防護カバー」は、夫々本件訂正明細書の請求項1に係る考案の「アーム」、「ブレード」、「ロッド」、「昇降用シリンダ」及び「保護カバー」に相当するから、
本件訂正明細書の請求項1に係る考案と刊行物1記載の考案とは、以下の点で相違するが、残余の点では一致している。
相違点
(1)本件訂正明細書の請求項1に係る考案は、保護カバーの基端側を昇降用シリンダのロッド突出端側に固着し、先端側を自由端として片持ち支持状態で前記チューブの外周側に延在させ、ロッドの最大伸長時にもチューブに達する長さを有し、チューブの上側に沿って伸長するものであるのに対して、刊行物1記載の考案は、保護カバーは昇降用油圧シリンダのチューブ上方にスペーサを介してボルトによって取付られている点。
(2)本件訂正明細書の請求項1に係る考案は、昇降用シリンダのロッド突出端側に固着され、軸方向の前後に離間して複数のねじ穴が形成されたねじ座と、該ねじ座の各ねじ穴に螺着され、保護カバーの基端側を前後に離間した複数位置で前記ねじ座に固定する複数のボルトとからなる固定構造としたものであるのに対して、刊行物1記載の考案は、そのような構造を備えていない点。
そこで、上記相違点について、検討すると、
相違点(1)について
刊行物2には、上記したように、油圧シリンダのロッド突出端側に、ロッドの最大伸長時にもチューブに達する長さを有し、チューブに沿って伸長したカバーを固定し、カバーの先端側をチューブの外周側に延在させ、チューブの上側に沿って伸長する構造が記載されており、この構造においては、本件訂正明細書の請求項1に係る考案と一致しているが、刊行物2記載の考案では、カバーの先端側は、チューブの周側面に設けたレールに係合するガイドが設けられ、チューブのレール上を摺動するものであり、本件訂正明細書の請求項1に係る考案の先端側を自由端として片持ち支持状態でチューブの外周側に延在させた構造とは相違しており、そして、本件訂正明細書の請求項1に係る考案は、該構造を採用したことにより、「特別なガイド部材等を不要にでき、昇降シリンダに対する保護カバーの取付構造を簡略化することができる。……また、堆積した土砂の重量により、万一保護カバーが下側へ撓み変形しても、該保護カバーの先端側がチューブの外周面に当接してこれ以上の撓み変形を規制でき、該保護カバーがロッドに接触してロッドの外周面が損傷するのを防止でき、昇降用シリンダの寿命を向上できる。」という実用新案登録明細書の段落【0033】に記載の効果を奏するものであるから、相違点(1)における本件訂正明細書の請求項1に係る考案の事項は、刊行物2記載の考案から当業者がきわめて容易に想到できることとすることができない。
また、刊行物3記載の考案のトリップバーは、保護カバーに相当するものでなく、刊行物3には、相違点(1)における本件訂正明細書の請求項1に係る考案の事項が記載されていない。
したがって、上記相違点(2)について検討するまでもなく、相違点(1)により、本件訂正明細書の請求項1に係る考案は、取消理由に引用した刊行物1?3(または、実用新案登録異議申立人が提出した甲第1?3号証)記載の考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものとすることはできず、また、他に実用新案登録を受けることができないとする理由も発見できないから、出願の際独立して実用新案登録を受けることができるものである。
3.むすび
以上のとおりであるから、上記訂正請求は、平成6年法律第116号附則第9条第2項の規定により準用され、同附則第10条第1項の規定によりなお従前の例によって適用される特許法第120条の4第2項及び同条第3項で準用する第126条第2項乃至第4項の規定に適合し、当該訂正は認められる。
III.実用新案登録異議申立てについて
1.本件請求項1に係る考案
本件訂正明細書の請求項1に係る考案(以下、「本件請求項1に係る考案」という。)は、訂正明細書の実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載されたもので、前記IIの「2-2.独立実用新案登録要件についての判断」の「(訂正明細書の請求項1に係る考案)」に記載したとおりのものである。
2.実用新案登録異議申立ての理由及び取消理由の概要
2-1.実用新案登録異議申立ての理由の概要
実用新案登録異議申立人は、
甲第1?3号証を提出し、本件請求項1に係る考案は、甲第1?3号証記載の考案に基づいて、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができないものであり、本件請求項1に係る考案の実用新案登録は取り消されるべきものである旨主張している。
2-2.取消理由の概要
取消理由は、刊行物1として実用新案登録異議申立人が提出した甲第1号証を、刊行物2として甲第3号証を、そして刊行物3として甲第2号証をそれぞれ引用し、本件請求項1に係る考案は、刊行物1?3記載の考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであり、本件請求項1に係る考案の実用新案登録は、実用新案法第3条第2項の規定に違反してなされたものである、としている。
3.甲第1?3号証及び刊行物1?3に記載の考案
甲第1?3号証及び刊行物1?3に記載された事項は、前記II.の「2-2.独立実用新案登録要件についての判断」の「(引用刊行物及び甲各号証)」に記載のとおりである。
4.対比・判断
本件請求項1に係る考案、すなわち本件訂正明細書の請求項1に係る考案の対比・判断は、前記II.の「2-2.独立実用新案登録要件についての判断」の「(対比・判断)」でしたとおりであり、取消理由に引用した刊行物1?3記載の考案または実用新案登録異議申立人が提出した甲第1?3号証記載の考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案することができたものとすることはできないものである。
5.むすび
以上のとおりであるから、実用新案異議申立ての理由及び証拠方法によっては、本件請求項1に係る考案の実用新案登録を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1に係る考案の実用新案登録を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
発明の名称 (54)【考案の名称】
ブレード付き作業機
(57)【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】 走行可能な作業機本体と、基端側が該作業機本体に回動可能に取付けられ、先端側が該作業機本体から突出したアームと、該アームの先端側に設けられ、降下時に排土作業を行うブレードと、該ブレードをアームを介して上,下に昇降すべく、前記作業機本体とアームとの間に設けられ、チューブおよび該チューブから突出するロッドを有した昇降用シリンダとからなるブレード付き作業機において、
前記昇降用シリンダのロッド突出端側に固着され、軸方向の前後に離間して複数のねじ穴が形成されたねじ座と、
前記ロッドの突出部分を保護するため該ロッドの最大伸長時にも前記チューブに達する長さを有し、前記チューブの上側に沿って伸長した保護カバーと、
前記ねじ座の各ねじ穴に螺着され、該保護カバーの基端側を前後に離間した複数位置で前記ねじ座に固定し、該保護カバーの先端側を自由端として片持ち支持状態で前記チューブの外周側に延在させる複数のボルトとを備える構成としたことを特徴とするブレード付き作業機。
【考案の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本考案は、例えば油圧ショベル、ホイールローダ、ブルドーザ等のように、排土作業等を行なうのに好適に用いられるブレード付き作業機に関する。
【0002】
【従来の技術】
図6ないし図8に従来技術によるブレード付き作業機として油圧ショベルを例に挙げて示す。 【0003】
図中、1は作業機本体としての油圧ショベル本体で、該油圧ショベル本体1は下部走行体2と、該下部走行体2上に旋回可能に設けられた上部旋回体3と、該上部旋回体3に設けられた作業装置4とから大略構成されている。
【0004】
5は排土作業を行うために前記油圧ショベル本体1に設けられた排土装置を示し、該排土装置5は下部走行体2のトラックフレーム2Aに左,右の履帯2B間に位置して設けられた左,右一対の支持ブラケット6,6(一方のみ図示)と、該各支持ブラケット6に回動可能に支持された左,右一対のアーム7,7(一方のみ図示)と、該各アーム7の先端側に設けられた排土板としてのブレード8と、後述する昇降用シリンダ10とから大略構成されている。
【0005】
ここで、各アーム7は図7に示す如く、アーム本体7Aと、該アーム本体7Aの基端部に設けられたボス部7Bと、アーム本体7Aの中間部から上向きに突設されたブラケット部7Cとから大略構成され、各アーム7のボス部7Bは前記支持ブラケット6にピン9を介して回動可能に軸支されている。
【0006】
10はブレード8を昇降させるための昇降用シリンダで、該シリンダ10は図8に示す如く、チューブ11と該チューブ11から突出したロッド12とから大略構成され、該シリンダ10のチューブ11は後述する取付アイ11Bがピン13を介してアーム7のブラケット部7Cに回動可能に取付けられ、ロッド12は後述する取付アイ12Bがピン14を介して支持ブラケット6に前記アーム7よりも上方に位置して軸支されている。
【0007】
ここで、11は昇降用シリンダ10を構成するチューブを示し、該チューブ11は円筒状のチューブ本体11Aと、該チューブ本体11Aの基端側に固着され、昇降用シリンダ10を前記アーム7に取付けるための取付アイ11Bと、チューブ本体11Aの外周面に基端側と先端側とに位置してそれぞれ設けられた圧油給排ポート11C,11Dとから大略構成されている。そして、基端側の圧油給排ポート11Cには口金11Eを有する給排パイプ11Fが取付けられ、該給排パイプ11Fの口金11Eは圧油給排ポート11Dに補強部材11Gを介してチューブ本体11A上で連結されている。
【0008】
12はロッドを示し、該ロッド12は基端側がチューブ本体11A内に摺動可能に挿通され、チューブ本体11A内でピストン(図示せず)に固着されたロッド本体12Aと、該ロッド本体12Aの先端側に設けられた取付アイ12Bとから大略構成されている。昇降用シリンダ10はチューブ本体11A内を前記ピストンによって図示しない2つの油室に画成し、該各油室に連通する各圧油給排ポート11C,11Dから各油室内に圧油を給排することよりピストンを駆動し、ロッド12をチューブ11から伸縮させるようになっている。
【0009】
15はチューブ本体11Aの先端側外周面に溶接等の手段を用いて固着されたねじ座を示し、該ねじ座15にはチューブ本体11Aの軸方向に沿って、2個のねじ穴15A,15Aが形成されている。
【0010】
16はチューブ11に取付けられた保護カバーを示し、該保護カバー16は例えば薄肉な鋼板から横断面が略コ字状をなして折曲げ形成され、ロッド12の軸方向に伸長している。そして、該保護カバー16は前記ねじ座15にボルト17,17によって締着され、チューブ本体11Aの先端側に取付けられている。
【0011】
従来技術は上述の如く構成され、上部旋回体3に設けた作業装置4を作動させることにより土砂等の掘削作業を行うようになっている。一方、下部走行体2に設けた排土装置5によって排土作業を行う場合は、昇降用シリンダ10のロッド12を伸長させてアーム7をブレード8と共に降下させ、ブレード8の下面を接地させた状態で油圧ショベル本体1を前進させて排土作業を行う。また、排土作業の終了後には、ロッド12をチューブ11内に縮小させることにより、アーム7を上向きに揺動させてブレード8を図7中に二点鎖線で示す如く上方に持上げる。
【0012】
そして、保護カバー16はロッド本体12Aの上側から間隔をおいて、該ロッド本体12Aを覆うことにより、例えば掘削作業中等に落下した岩石等が昇降用シリンダのロッド本体12Aに衝突して、ロッド本体12Aの外周面等を傷付けたりするのを防止している。また、排土作業中には排土する土砂がブレード8の上端を越えて該ブレード8の後面から下部走行体2側に落下し、ロッド本体12Aの外周面に付着した状態でロッド12がチューブ11と摺動すると、ロッド本体12Aの外周面が傷つけられるので、保護カバー16によってこれを防止するようにしている。
【0013】
【考案が解決しようとする課題】
ところで、上述した従来技術では、ロッド12の最縮小時に保護カバー16の先端が取付アイ12Bや支持ブラケット6に接触して昇降用シリンダ10の動作に干渉したり、該保護カバー16自体が破損しないように、保護カバー16の長さ寸法は、ロッド12が最大伸長時にチューブ11の先端側から突出する寸法よりも短く形成されている。このため、排土作業中に大量の土砂や岩石が昇降用シリンダ10の上に落下すると、保護カバー16の上面にこの土砂が堆積し、保護カバー16が土砂の重量によって図8中に二点鎖線で示す如く撓み変形し、保護カバー16の先端側がロッド本体12Aの外周面を削って損傷させることがあり、この場合にはロッド12の伸縮時にこの損傷箇所によりチューブ11内のシールが損傷され、昇降用シリンダ10内の油液が外部に流出してしまうという問題がある。
【0014】
本考案は上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、本考案は昇降用シリンダのロッドを大きく伸長させたときでも、該ロッドの外周面等を確実に保護でき、油液洩れの発生を防止できるようにしたブレード付き作業機を提供することを目的としている。
【0015】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、請求項1の考案が採用する構成の特徴は、昇降用シリンダのロッド突出端側に固着され、軸方向の前後に離間して複数のねじ穴が形成されたねじ座と、前記ロッドの突出部分を保護するため該ロッドの最大伸長時にもチューブに達する長さを有し、前記チューブの上側に沿って伸長した保護カバーと、前記ねじ座の各ねじ穴に螺着され、該保護カバーの基端側を前後に離間した複数位置で前記ねじ座に固定し、該保護カバーの先端側を自由端として片持ち支持状態で前記チューブの外周側に延在させる複数のボルトとを備える構成としたことにある。
【0016】
【作用】
請求項1の構成により、軸方向に離間した複数のねじ穴を有するねじ座とこれらのねじ穴に螺着される複数のボルトとを用いて保護カバーの基端側を前後の複数位置でロッドに固定でき、固定強度を高めることができると共に、保護カバー全体をロッドの突出端側に片持ち支持状態で固定することができる。そして、ロッドの突出端側に固定された保護カバーは、ロッドの最大伸長時にもチューブに達するから、昇降用シリンダのロッドがチューブから大きく突出する排土作業時にも、該ロッドを保護カバーで常に覆うことができ、昇降用シリンダ上に落下してくる土砂等からロッドを確実に保護することができる。
【0017】
【実施例】
以下、本考案の実施例を図1ないし図5に基づき詳述する。なお、前述した従来技術の構成要素と同一の構成要素に同一符号を付し、その説明を省略する。
【0018】
図1ないし図4は本考案の第1の実施例を示している。
【0019】
図中、21は昇降用シリンダを示し、該シリンダ21は従来技術で述べたシリンダ10とほぼ同様に、チューブ11と、該チューブ11内に摺動可能に挿通された後述のロッド22とから大略構成されている。
【0020】
22はロッドを示し、該ロッド22は従来技術で述べたロッド12とほぼ同様に、基端側に図示しないピストンが設けられ、チューブ本体11A内に摺動可能に挿通されるロッド本体22Aと、該ロッド本体22Aの先端側(突出端側)に設けられた取付アイ22Bとから大略構成されているものの、該ロッド22の取付アイ22Bにはねじ座23が設けられている。
【0021】
ここで、該ねじ座23は図4に示す如く、厚肉の板材から取付アイ22Bの半径にほぼ等しい長さ寸法の長方形状に形成され、その幅寸法は図2に示す如く取付アイ22Bの幅寸法よりも小さくなっている。そして、該ねじ座23はロッド本体22Aの上面側に接線方向に溶接して取付けられている。また、該ねじ座23には取付アイ22Bとの接点に該当する部位と、チューブ11側に位置する前方部位とに2個のねじ穴23A,23Aが形成され、該各ねじ穴23Aはロッド22の軸方向で前後に離間して配設されている。
【0022】
24は例えば薄肉鋼板等から形成された保護カバーを示し、該保護カバー24は、基端側に位置しロッド22の取付アイ22B側に固定された取付部24Aと、該取付部24Aからチューブ11側に向けて伸長し、先端側が自由端となったカバー部24Bとから構成され、該カバー部24Bはロッド12の最大伸長時にもロッド12を上側から覆い、チューブ11に達する長さを有している。
ここで、取付部24Aおよびカバー部24Bの中央部分は、長方形状の平坦部24Cとして形成されている。また、該平坦部24Cの幅方向両端側には図3に示す如く、チューブ11の外周面に沿って周方向に略「ハ」字形に折曲げられ、取付部24Aとカバー部24Bの中間で漸次広幅となる傾斜部24D,24Dが設けられている。これにより、保護カバー24は凸湾曲状をなし、所定間隔をおいてチューブ11と上下方向で対向するように配設されている。
【0023】
さらに、保護カバー24の取付部24Aは、ねじ座23の各ねじ穴23Aに螺着されるボルト25,25を用いてねじ座23を覆うように、該ねじ座23上に前後に離間した2箇所で固定されている。そして、保護カバー24は各ボルト25によりロッド22の突出端(取付アイ22B)側に片持ち支持状態で取付けられ、カバー部24Bの先端側はチューブ11の外周側へと延在する構成となっている。
【0024】
本実施例は以上に述べた構成を有するもので、保護カバー24がチューブ11から突出するロッド22を上側から覆い、落下する岩石や土砂等からロッド22を保護するという基本的な作動においては従来技術によるものと格別差異はない。
【0025】
然るに、本実施例では、ロッド22の取付アイ22Bにチューブ11側に向けて所定長さをもって伸長し、軸方向の前後2箇所にねじ穴23A,23Aが形成されたねじ座23を設け、該ねじ座23の各ねじ穴23Aにはボルト25,25を螺着することにより、保護カバー24の取付部24Aを軸方向の前後2箇所でロッド22の取付アイ22Bに固定すると共に、保護カバー24を昇降用シリンダ21の最大伸長時にも完全にロッド12を覆ってチューブ11に達する長さに形成し、保護カバー24の先端側をチューブ11の外周側へと延在させる構成としたから、下記のような作用効果を得ることができる。
即ち、ロッド22の取付アイ22Bに対しねじ座23と各ボルト25とを用いて保護カバー24を片持ち支持状態で固定でき、2本のボルト25,25によりロッド22の取付アイ22Bに対する保護カバー24の固定強度を高めることができると共に、保護カバー24の先端側をチューブ11の外周側へと延在させ、特別なガイド部材等を不要にでき、昇降シリンダ21に対する保護カバー24の取付構造を簡略化することができる。
そして、ロッド22を伸長させてブレード8を降下させた状態で、下部走行体2を前進させることにより排土作業を行なう場合にも、保護カバー24でロッド22を上側から確実に覆うことができ、昇降用シリンダ10上に落下してくる岩石や土砂等を保護カバー24のカバー部24Bによって弾いたり、各傾斜部24Dに沿わせて落下させたりして、ロッド22の突出部分を効果的に保護することができる。
【0026】
また、カバー部24Bは中央部24Cに対して傾斜部24D,24Dが左右方向下向きに折曲げられ、曲げ荷重に対して頑丈となるように凸湾曲状に形成されているため、土砂等がシリンダ21の上に落下し、大きな荷重が保護カバー24に作用しても、保護カバー24が撓み変形するのを防止できる。そして、該保護カバー24が仮に撓み変形したとしても、該保護カバー24はチューブ11にまで及ぶ十分な長さを有するから、カバー部24Bの先端側がチューブ11の外周面に当接して保護カバー24のこれ以上の撓み変形を規制でき、保護カバー24がロッド22に接触してロッド本体22Aを損傷する等の問題を解消することができる。従って保護カバー24を可及的に薄肉に形成することが可能となり、材料費等のコスト低減を図ることができる上に、保護カバー24等の構造を簡略化することができ、組立て時の作業性を向上できる等、種々の効果を奏する。
【0027】
次に、図5は本考案の第2の実施例を示し、本実施例では前述した第1の実施例で述べた構成要素と同一の構成要素に同一符号を付し、その説明を省略するものとするに、本実施例の特徴はねじ座を取付アイの直径と同程度まで長尺に形成したことにある。
【0028】
図中、31は本実施例によるロッドを示し、該ロッド31は前記第1の実施例で述べたロッド22とほぼ同様に、ロッド本体31Aと取付アイ31Bとから大略構成されるものの、該ロッド31の取付アイ31Bには、ねじ座32が固着して設けられている。
【0029】
ここで、該ねじ座32は図5に示す如く、厚肉の板材から取付アイ31Bの直径にほぼ等しい長さ寸法の長方形状に形成され、その幅寸法は取付アイ31Bの幅寸法よりも小さくなっている。また、該ねじ座32には長さ方向で中央に該当する部位と、チューブ11側に位置する前方部位とに2個のねじ穴32A,32Aが形成され、該ねじ座32はロッド本体31Aの上面側に接線方向に溶接して取付けられている。
【0030】
そして、該ねじ座32には前記第1の実施例と同様に、図示しない二個のボル卜25,25を介して保護カバー24を締着するようになっている。
【0031】
以上の如く構成される本実施例においても前記第1の実施例とほぼ同様の作用効果を奏することができるが、特に本実施例では、ねじ座32の長さ寸法を大きくしたから、該ねじ座32によって保護カバー24の取付部24Aを長さ方向に亘って下方から確実に支持することができ、保護カバー24の取付部24Aが下方に撓むのをより効果的に防止できると共に、保護カバー24のカバー本体24Bが振動等でガタ付くのをより効果的に防止することができる。
【0032】
なお、前記各実施例では、保護カバー24のカバー部24Bを、平板状の平坦部24Cと、該平坦部24Cから左右方向で下向きに折曲げた傾斜部24D,24Dとから凸湾曲状に形成するものとして述べたが、本考案はこれに限らず、保護カバー24のカバー部24Bをチューブ11の外周面に沿って湾曲するように断面円弧状に形成してもよい。
【0033】
【考案の効果】
以上詳述した通り、請求項1の考案では、昇降用シリンダのロッド突出端側にねじ座を固着し、該ねじ座には軸方向の前後に離間して複数のねじ穴を形成すると共に、該各ねじ穴には複数のボルトを螺着することにより保護カバーの基端側をロッドの突出端側に複数位置で固定し、該保護カバーの先端側を自由端としてチューブの外周側に延在させる構成としたから、保護カバーをロッドの突出端側にねじ座と各ボルトとを用いて片持ち支持状態で固定でき、ロッドの突出端側に対する保護カバーの固定強度を高めることができると共に、保護カバーの先端側をチューブの外周側へと延在させ、特別なガイド部材等を不要にでき、昇降シリンダに対する保護カバーの取付構造を簡略化することができる。
そして、排土作業時等にはチューブから大きく突出するロッドを保護カバーにより上側から覆うことができるので、昇降用シリンダ上に落下してくる岩石や土砂を保護カバーによって弾いたり、保護カバーの外周面に沿わせて落下させることができ、ロッドの突出部分を確実に保護できる。また、堆積した土砂の重量により、万一保護カバーが下側へ撓み変形しても、該保護カバーの先端側がチューブの外周面に当接してこれ以上の撓み変形を規制でき、該保護カバーがロッドに接触してロッドの外周面が損傷するのを防止でき、昇降用シリンダの寿命を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本考案の第1の実施例による昇降用シリンダおよび保護カバー等を示す正面図である。
【図2】
図1中の昇降用シリンダを下部走行体の支持ブラケットに取付けた状態を示す部分平面図である。
【図3】
図2中の矢示III-III方向拡大断面図である。
【図4】
取付アイにねじ座を固着した状態を示すロッドの要部拡大図である。
【図5】
第2の実施例を示す図4と同様の要部拡大図である。
【図6】
従来技術による油圧ショベルを示す全体図である。
【図7】
図6に示す排土装置の要部拡大図である。
【図8】
従来技術による昇降用シリンダおよび保護カバー等を示す正面図である。
【符号の説明】
1 油圧ショベル本体(作業機本体)
2 下部走行体
7 アーム
8 ブレード
11 チューブ
21 昇降用シリンダ
22,31 ロッド
23,32 ねじ座
24 保護カバー
25 ボルト
訂正の要旨 (1)実用新案登録明細書の実用新案登録請求の範囲の請求項1を、実用新案登録請求の範囲の減縮を目的として、下記のように訂正し、請求項2を削除する。
「【請求項1】走行可能な作業機本体と、基端側が該作業機本体に回動可能に取付けられ、先端側が該作業機本体から突出したアームと、該アームの先端側に設けられ、降下時に排土作業を行うブレードと、該ブレードをアームを介して上,下に昇降すべく、前記作業機本体とアームとの間に設けられ、チューブおよび該チューブから突出するロッドを有した昇降用シリンダとからなるブレード付き作業機において、
前記昇降用シリンダのロッド突出端側に固着され、軸方向の前後に離間して複数のねじ穴が形成されたねじ座と、
前記ロッドの突出部分を保護するため該ロッドの最大伸長時にも前記チューブに達する長さを有し、前記チューブの上側に沿って伸長した保護カバーと、
前記ねじ座の各ねじ穴に螺着され、該保護カバーの基端側を前後に離間した複数位置で前記ねじ座に固定し、該保護カバーの先端側を自由端として片持ち支持状態で前記チューブの外周側に延在させる複数のボルトとを備える構成としたことを特徴とするブレード付き作業機。」
(2)実用新案登録明細書の段落【0015】の記載を、実用新案登録請求の範囲の記載と考案の詳細な説明の記載との整合を図るため、明瞭でない記載の釈明を目的として、下記のように訂正する。
「【0015】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、請求項1の考案が採用する構成の特徴は、昇降用シリンダのロッド突出端側に固着され、軸方向の前後に離間して複数のねじ穴が形成されたねじ座と、前記ロッドの突出部分を保護するため該ロッドの最大伸長時にもチューブに達する長さを有し、前記チューブの上側に沿って伸長した保護カバーと、前記ねじ座の各ねじ穴に螺着され、該保護カバーの基端側を前後に離間した複数位置で前記ねじ座に固定し、該保護カバーの先端側を自由端として片持ち支持状態で前記チューブの外周側に延在させる複数のボルトとを備える構成としたことにある。」
異議決定日 1999-11-09 
出願番号 実願平3-93173 
審決分類 U 1 651・ 121- YA (E02F)
最終処分 維持    
前審関与審査官 深田 高義  
特許庁審判長 樋口 靖志
特許庁審判官 鈴木 憲子
藤枝 洋
登録日 1998-05-15 
登録番号 実用登録第2577751号(U2577751) 
権利者 日立建機株式会社
東京都千代田区大手町2丁目6番2号
考案の名称 ブレード付き作業機  
代理人 広瀬 和彦  
代理人 広瀬 和彦  

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