• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02B
管理番号 1010431
審判番号 審判1998-9308  
総通号数
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2000-09-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1998-06-11 
確定日 2000-01-05 
事件の表示 平成3年実用新案登録願第61547号「光固定減衰器用端末部材及びこれを用いた光固定減衰器」拒絶査定に対する審判事件(平成5年2月26日出願公開、実開平5-15002)について、次のとおり審決する。   
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 1.手続きの経緯・本願考案
本願は、平成3年8月5日に実用新案登録出願したものであって、本願の請求項1に係る考案は、平成9年3月10日付け手続補正書及び平成10年7月13日付け手続補正書により補正された明細書の実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。
「【請求項1】円筒状部材内に光ファイバを内蔵する光固定減衰器用端末部材であって、前記円筒状部材はその両端に凸球状の研磨面を有すると共に、その略中央部に大径の段部を有し、前記光ファイバはコバルト、鉄およびニッケルから選ばれた少なくとも1種の遷移金属がドーピングされた吸収損失が100000でdb/km以上の高濃度光ファイバであり、1.2μmから1.6μmの波長領域で使用することを特徴とする光固定減衰器用端末部材。」(以下「本願考案」という。)
2.引用文献
原査定の拒絶の理由に引用され、本出願前日本国内において頒布された実願昭61-191963号(実開昭63-96506号)のマイクロフィルム(以下「引用文献」という。)には以下の記載がある。
▲1▼「光吸収用の光ファイバを有する光減衰器であって、前記光ファイバのコアに所定波長の光を吸収する少なくとも一種類以上の遷移金属元素が含まれていることを特徴とする光減衰器。」(実用新案登録請求の範囲)
▲2▼「本考案に係る光減衰器は、第1図に示すように、光吸収用の光ファイバ1を備えている。この光ファイバ1はその両端にコネクタ2、2が取付けられ、これらコネクタ2、2を介して通信用光ファイバ4、4が光結合されている。尚、光ファイバ1及びコネクタ2、2はケーシング3内に収納されている。」(明細書2頁19行?3頁5行)
▲4▼「第2図は珪酸塩ガラス中の遷移金属元素の吸収スペクトルを示している。即ち、遷移金属元素Cu^(2+)は波長800nmで光吸収ピークを有しており、同Fe^(2+)は1100nm、同Ni^(2+)は650nm、同Cr^(3+)は675nm、同Mn^(3+)は500nmでそれぞれ光吸収ピークを有している。また、同V^(3+)は第2図中では表示されていないが475nmで光吸収ピークを有している。そして、例えば、800nmの波長の光に20db/kmの損失を付与するためには、遷移金属元素Cu^(2+)は上記コア1a内に9ppb添加するだけでよく、又同Fe^(2+)、同Ni^(2+)及び同V^(3+)はそれぞれ15ppb、26ppb、36ppb添加すればよい。
従って、上記光吸収用の光ファイバ1のコア1aに遷移金属元素Cuを微量添加する場合には800nmの波長の光のみが吸収、減衰される。また、同Fe、Ni、Cr、Mn、Vをそれぞれ微量添加する場合には1100nm、650nm、675nm、500nm、475nmの波長の光のみが吸収、減衰される。」(明細書3頁10行?4頁10行)
▲5▼「本考案によれば、光吸収用の光ファイバのコアに少なくとも一種類以上の遷移金属元素を含ませたので、所定波長の光のみを確実に吸収、減衰させることができる。」(明細書5頁6?9行)
▲6▼第1図には、ケーシング3に光減衰用光ファイバ1が内蔵され、ケーシング3の両側端にコネクタ2、2が取り付けられ、これらコネクタ2、2を介して光減衰用光ファイバ1が通信用光ファイバ4、4に光結合されていることが記載されている。
▲7▼第2図には、Co^(2+)の波長(500nm?1100nm)に対する吸収特性が示されている。
以上▲1▼?▲7▼の記載事項からみて、引用文献には次の考案が記載されている。
「ケーシング3の両側端には、ケーシング3に内蔵された光ファイバ1が接続されたコネクタ2、2が取り付けられ、これらコネクタ2、2を介して通信用光ファイバ4、4が光結合されており、光ファイバ1はコバルト、鉄およびニッケルから選ばれた少なくとも1種類以上の遷移金属がドーピングされた光減衰器。」(以下、「引用考案」と呼ぶ。)
3.対比
そこで、本願考案と引用考案とを対比すると、引用考案の「光減衰器」が本願考案の「光固定減衰器用端末部材」に相当する。
してみると、本願考案と引用考案の両者は、「部材内に光ファイバを内蔵する光固定減衰器用端末部材であって、前記光ファイバはコバルト、鉄およびニッケルから選ばれた少なくとも1種の遷移金属がドーピングされた光ファイバであることを特徴とする光固定減衰器用端末部材。」である点で一致し、以下の点で相違する。
相違点1:光ファイバを内蔵する部材が、本願考案では「円筒状部材」で「その両端に凸球状の研磨面を有すると共に、その略中央部に大径の段部を有し」ているのに対して、引用考案の光減衰器では「ケーシング3の両側端には、ケーシング3に内蔵された光ファイバ1が接続されたコネクタ2、2が取り付けられ、これらコネクタ2、2を介して通信用光ファイバ4、4が光結合されて」いる点。
相違点2:遷移金属のドーピングされた光ファイバが、本願考案では「吸収損失が100000db/km以上の高濃度光ファイバであり、1.2μmから1.6μmの波長領域で使用する」のに対して、引用考案の遷移金属のドーピングされた光ファイバはそのように規定されていない点。
4.判断
まず、相違点1について検討する。
相違点1を検討するに当たり光ファイバのコネクタ接続における技術常識を参酌すると、本願考案の光ファイバを内蔵した円筒状部材、すなわち実施例でいうところのフェルールの両端に凸球状の研磨面を設けることは、当該技術分野において周知・慣用されている程度の技術事項である〔例えば、実願昭61-153846号(実開昭63-60105号)のマイクロフィルム、「精密フェルールを用いた単心光コネクタの代表的なものにFCコネクタがある。FCコネクタは、日本の誇る光技術の一つであるが、海外でも最も普及している光コネクタの一つである。・・・フェルールの先端を球面状に加工したFC-PC形の開発で特性はさらに安定した。」[大久保 勝彦 「ISDN時代の光ファイバ技術」第1版第2刷(1989年9月30日) 理工学社 p.6-10?11 6・4光コネクタ]等参照〕。
同様に、フェルールの略中央部に大径の段部を設けることも当該技術分野において周知・慣用されている程度の技術事項である〔例えば、特開昭63-273812号公報、[福島 俊雄 貝淵 俊二 「新版・光ファイバ通信」2版(昭和58年6月12日) 株式会社電気通信技術ニュース社 P.282?288 (b)フェルール型(FA型)光コネクタ 図4.83、図4.84、図4.85、図4.93]等参照〕。
してみると、上記相違点1に係る本願考案の構成は光コネクタの接続における周知・慣用されている技術事項を単に寄せ集めた程度のものに過ぎないので、引用考案においてケーシングに内蔵された光ファイバをコネクタ接続する構成として、上記周知・慣用の技術事項を採用して本願考案を構成することに格別の困難性はみい出せない。
次に相違点2について検討する。
引用考案の光減衰器においては、本願考案と同様に光ファイバにドーピングする遷移金属の種類及び量を調整して吸収する光の波長及び吸収量を所望の値に設定している。
そして、光減衰器において使用する光の波長及び吸収損失をどの程度のものにするかは当業者が必要に応じて任意に設定する事項であること、本願考案で限定されている1.2μm?1.6μmの波長領域は光ファイバ通信において一般的に使用されている波長を含むこと〔例えば、「波長1.3、1.5μmのInGaAsPダブルヘテロ接合レーザが長距離光ファイバ通信に使われている。」〔[福島 俊雄 貝淵 俊二 「新版・光ファイバ通信」2版(昭和58年6月12日)株式会社電気通信技術ニュース社 p.202(c)半導体レーザ]参照〕及びコバルト、鉄およびニッケルが1.2μm?1.6μmの波長領域において略同一の吸収損失特性を示すという一般に知られている技術事項を考慮すると、引用考案の光ファイバにドーピングする遷移金属の種類及び量を調整し、使用する光の波長及び吸収損失を本願考案のように設定することに格別の困難性はみい出せない。
4.むすび
以上のとおりであるから、本願の請求項1に係る考案は引用文献記載の考案及び周知・慣用技術から当業者がきわめて容易に考案をすることができたものと認められ、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 1999-05-12 
結審通知日 1999-05-28 
審決日 1999-10-19 
出願番号 実願平3-61547 
審決分類 U 1 8・ 121- Z (G02B)
最終処分 不成立    
前審関与審査官 橋場 健治柏崎 正男  
特許庁審判長 豊岡 静男
特許庁審判官 横林 秀治郎
東森 秀朋
考案の名称 光固定減衰器用端末部材及びこれを用いた光固定減衰器  
代理人 澤井 敬史  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ