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審決分類 |
審判 全部無効 2項進歩性 無効とする。(申立て全部成立) A47J |
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管理番号 | 1010447 |
審判番号 | 審判1998-35314 |
総通号数 | 9 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 実用新案審決公報 |
発行日 | 2000-09-29 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 1998-07-13 |
確定日 | 1999-11-01 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第2558404号実用新案「製パン機におけるこね容器の取手構造」の登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 登録第2558404号実用新案の登録を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 |
理由 |
I.手続の経緯 本件実用新案登録第2558404号は、平成3年3月4日に出願された実願平3-10986号(以下、「原出願」という。)の一部が平成8年12月3日に新たな実用新案登録出願として出願(実願平8-12345号)され、平成9年9月5日に設定の登録がなされたものである。 その後、その実用新案登録についてエムケー精工株式会社より実用新案登録無効審判の請求がなされ、被請求人船井電機株式会社より訂正請求がなされ、当審において訂正拒絶理由通知がなされたところ、その指定期間内である平成11年10月1日に訂正拒絶理由通知に対して手続補正書の提出がなされたものである。 II.訂正の適否についての判断 1.訂正請求に対する補正の適否について (1)補正の内容 被請求人が求めている補正の内容は、訂正請求書に添付された明細書(以下、「訂正明細書」という。)の実用新案登録請求の範囲を、 「製パン機本体に対して取外し自在になったこね容器において、その上端フランジ部に幅広部を形成して、該幅広部の一部を略山形に切起こして空所を形成し、取手の両端の間隔を、取手が有する弾性に抗して狭めてその先端を前記空所に挿通係合させ、前記弾性は、前記取手に力を加えて前記こね容器を回転し該こね容器と製パン機本体とを着脱できる剛性を有する弾性力としたことを特徴とする製パン機におけるこね容器の取手構造。」 から 「製パン機本体に対してバヨネット結合で取外し自在になったこね容器において、その上端フランジ部の対向する2カ所に幅広部を形成して、該幅広部に平行な2本の切込みを形成し、該2本の切込みの間を略山形に起こして空所を形成し、取手の両端の間隔を、取手が有する弾性に抗して狭めてその先端を前記空所に挿通係合させ、前記弾性は、前記取手に力を加えて前記こね容器を回転し、バヨネット結合される上記こね容器と製パン機本体とを着脱できる剛性を有する弾性力としたことを特徴とする製パン機におけるこね容器の取手構造。」と補正するとともに、 この補正に対応して、訂正請求書の「4.訂正の理由」のうち「訂正の目的」の欄と「訂正の要旨」の欄の記載を補正することにある。 (2)補正の目的の適否、新規事項の有無、及び拡張・変更の存否 この補正は、訂正明細書の実用新案登録請求の範囲の請求項1の記載のうち (イ)「製パン機本体に対して取外し自在に」を「製パン機本体に対してバヨネット結合で取外し自在に」とすること、 (ロ)「上端フランジ部に幅広部を形成して、該幅広部の一部を略山形に切起こして空所を形成し」を「上端フランジ部の対向する2カ所に幅広部を形成して、該幅広部に平行な2本の切込みを形成し、該2本の切込みの間を略山形に起こして空所を形成し」とすること、及び (ハ)「前記こね容器を回転し該こね容器と製パン機本体とを」を「前記こね容器を回転し、バヨネット結合される上記こね容器と製パン機本体とを」とすること の3つの補正事項を含むものである。 そして、上記(イ)の補正事項は、訂正明細書の実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載されていた「取外し自在に」する構成の具体的手段を「バヨネット結合で」と限定したものであるから、実用新案登録請求の範囲の減縮に相当する。 また、(ロ)の補正事項は、訂正明細書の実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載されていた「幅広部」の形成部位を「上端フランジ部の対向する2カ所に」と限定するとともに、「幅広部の一部を略山形に切起こして空所を形成」する構成を具体的に限定したものであるから、実用新案登録請求の範囲の減縮に相当する。 さらに、(ハ)の補正事項は、(イ)の補正事項に対応するものであり、また句読点を入れることにより明瞭でない記載を明瞭にしたものであるから、明瞭でない記載の釈明及び実用新案登録請求の範囲の減縮に相当する。 そして、これらの補正事項は、いずれも訂正明細書の第12段、第15段、第18段及び願書に添付された図面の第1図の記載に基づくものあり、また、この補正は実質上実用新案登録請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (3)むすび よって、上記補正は、訂正請求書の要旨を変更するものではないので、これを採用する。 2.訂正明細書に記載された考案 訂正明細書の請求項1に係る考案は、平成11年10月1日付け手続補正書により補正された実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載される次の事項により特定されるとおりのものである。 「製パン機本体に対してバヨネット結合で取外し自在になったこね容器において、その上端フランジ部の対向する2カ所に幅広部を形成して、該幅広部に平行な2本の切込みを形成し、該2本の切込みの間を略山形に起こして空所を形成し、取手の両端の間隔を、取手が有する弾性に抗して狭めてその先端を前記空所に挿通係合させ、前記弾性は、前記取手に力を加えて前記こね容器を回転し、バヨネット結合される上記こね容器と製パン機本体とを着脱できる剛性を有する弾性力としたことを特徴とする製パン機におけるこね容器の取手構造。」 3.引用刊行物記載の考案 請求人が甲第1号証として提出し、当審においてなされた訂正拒絶理由通知でも引用した、本件の原出願の出願前に頒布された刊行物である特開平1-207017号公報(以下、「刊行物1」という。)には、「同一のケース内に並列状に配置される製パン用容器及び炊飯用鍋と、前記製パン用容器内に回転可能に配設された混練翼と、前記ケース内に、前記混練翼を駆動するために配置されたモータと、前記ケース内に前記製パン用容器を加熱し得るように配置された製パン用ヒータと、前記ケース内に前記炊飯用鍋を加熱し得るように配置された炊飯用ヒータとを具備して成る調理器。」(特許請求の範囲、請求項1)が、その実施例を示す図面とともに記載されており、また、刊行物1には、「6は矩形状をなす製パン用容器(以下単に容器と称する)で、これは内枠2内にバヨネット機構7を介して着脱可能に配置されている。尚、上記バヨネット機構7は、容器6の外底部に固着されたバヨネット爪部材7aと、内枠2側に設けられたバヨネット受け部材7bとより成る。8は容器6の底部及びバヨネット爪部材7aを水密に貫通するように設けられた回転軸で、その上端部(つまり容器6内)に混練翼9が装着されていると共に、下端部に継手10が装着されている。」(第2頁左下欄19行?同頁右下欄8行)こと、及び「製パン及び炊飯を夫々単独で行ない得ることは勿論であ」(第4頁左上欄14,15行)ることが記載されている。 そして、刊行物1の第2図には「蓋を開放した状態で示す斜視図」が記載されており、この第2図の記載からみて、製パン用容器6の上端の対向する2カ所に一対の耳部材を取着し、この一対の耳部材に逆U字状の取手の両端が取付けられていることが窺える。 また、請求人が甲第3号証として提出し、当審においてなされた訂正拒絶理由通知でも引用した、本件の原出願の出願前に頒布された刊行物である実公昭62-35730号公報(以下、「刊行物2」という。)には、「流し台等の排水部」が記載されており、また、刊行物2には、ステンレス製の外筒体6の「上縁部7の内周下縁に環状段部14に下方を内方に折曲すると共に数個の切起片15,15を設けた断面L字状でステンレス製の支持縁16を取付け」ること、「切起片15,15に係止されると共に支持縁16に載置される外方係止縁17を設け、多数の小孔18を穿設したステンレス製のごみ取り籠体19」(第1頁第1欄12?15行及び16?19行)が記載されており、更に、「ごみ取り籠体19の外方係止縁17には相対した切起し環部40,40を設け、該切起し環部40,40に回動自在に挿入する挿入片41,41を両端に備えたステンレス製の把持針金体42を取付けると共に外方係止縁17には切起片15,15が挿通される挿通切欠部43,43を備え、ごみ取り籠体19を回動することにより外方係止縁17の係止部45,45が係止され排水時のごみ取り籠体19の浮上が防止されるものである。」(第2頁第3欄15?24行)ことが記載されている。 そして、刊行物2の第3図には「ごみ取り籠体の一部切欠斜視図」が記載されており、この第3図の記載からみて、ごみ取り籠体19の外方係止縁17はごみ取り籠体19の上端にフランジ状に形成されたものであること、ごみ取り籠体19の上端に設けたフランジ状の外方係止縁17に形成した切起し環部40,40は、このフランジ状の外方係止縁17の対向する2カ所を略山形に切起こして形成した空所をなしており、この切起こしは、外方係止縁17の端縁に沿って1本の切込みを形成し、端縁と切込みの間を略山形に起こしたものであること、及び、把持針金体42は全体として略半円弧状であることが窺える。 4.対比、判断 訂正明細書の請求項1に記載されたもの(前者)と刊行物1に記載されたもの(後者)とを対比検討する。 後者は、製パンを単独で行い得るものであり、後者の「製パン用容器」は、その内部にパン材料を投入して混練翼を回転駆動するものであり、さらにその内部でパンが製造されるものであることから、製パン用のこね容器であるといえる。 そうすると、両者は、「製パン機本体に対してバヨネット結合で取外し自在になったこね容器において、その上端の対向する2カ所に形成された取付部に取手の両端を取付けた製パン機におけるこね容器」である点において一致し、 i.前者が、こね容器の上端フランジ部の対向する2カ所に幅広部を形成して、この幅広部に平行な2本の切込みを形成し、この2本の切込みの間を略山形に起こして空所を形成し、取手の両端の間隔を、取手が有する弾性に抗して狭めてその先端を前記空所に挿通係合させたものであるのに対して、後者は、こね容器の上端の対向する2カ所に一対の耳部材を取着し、この一対の耳部材に取手の両端が取付けられている点 ii.前者が、取手が有する弾性を、取手に力を加えてこね容器を回転し、バヨネット結合されるこね容器と製パン機本体とを着脱できる剛性を有する弾性力としているのに対し、後者は、取手が有する弾性について何等言及していない点 において相違する。 (1)そこで、まず、上記相違点iについて検討する。 a.刊行物2には、上記の刊行物2の記載からみて、流し台等の排水部に装着されるごみ取り籠体の上端にフランジ状の外方係止縁を設け、この外方係止縁の対向する2カ所に切起し環部、即ちフランジ状の外方係止縁の一部を略山形に切起こして形成した空所を設け、この略山形に切起こして形成した空所に略半円弧状のステンレス製の把持針金体の両端の挿入片を挿入して取付けたものが示されているといえる。また、刊行物2には、切起し環部へ把持針金体の両端の挿入片をどのように挿入するかについて直接文言をもって明記していないけれども、その切起し環部と把持針金体の形状と寸法関係及び把持針金体の材質からみて、把持針金体の両端の間隔を把持針金体が有する弾性に抗して狭めてその両端に備えられた挿入片を切起し環部に挿入しているものと認められる。 そして、刊行物2に示されたもののごみ取り籠体はごみを収容する容器であるといえるし、その把持針金体はごみ取り籠体即ち容器の取手といえるから、後者のごみ取り籠体の上端に設けたフランジ状の外方支持縁に形成した切起し環部と把持針金体は、容器の取手構造を構成しているといえる。 b.さらに、フランジ部に他の部材を取付けるに際し、他の部材を余裕を持って取付けることができるように、フランジ部のうち他の部材を取付ける部分を幅広に形成することは、本件の原出願の出願前から広く行われていたことである。また、部材を切起こして空所を形成する際、部材の端縁に沿って1本の切込みを形成し、この切込みと端縁との間を起こすことと、部材に平行な2本の切込みを形成し、その2本の切込みの間を起こすことは、いずれも本件の原出願の出願前から広く行われていたことである。 そうすると、後者のこね容器の取手構造を、こね容器の上端フランジ部の対向する2カ所に幅広部を形成して、この幅広部に平行な2本の切込みを形成し、この2本の切込みの間を略山形に起こして空所を形成し、取手の両端の間隔を、取手が有する弾性に抗して狭めてその先端を前記空所に挿通係合させたものとするようなことは、刊行物2に記載されたものに基いて、当業者が格別の困難もなく為し得る程度のことと認められる。 (2)つぎに、上記相違点iiについて検討する。 訂正明細書の第14段、及び、第17?19段の記載からみて、前者において、取手が有する弾性を、取手に力を加えてこね容器を回転し、バヨネット結合される上記こね容器と製パン機本体とを着脱できる剛性を有する弾性力とするということは、前者の取手が、製パン機本体とバヨネット結合されるこね容器の着脱の際取手を持って力を加えた程度では容易に塑性変形しない程度の剛性を有する材料であって、しかも、弾性も有する材料からなるものとすることを意味するものと解され、具体的なものでは、ばね鋼材からなるワイヤー程度の剛性と弾性を有する材料からなるものがそれに該当すると解される。 一方、後者は、こね容器を製パン機本体にバヨネット結合を介して取付けるものであるから、こね容器を回転してこね容器と製パン機本体とを着脱させるものであるけれども、刊行物1には、こね容器に取付けられた取手に力を加えてこね容器を回転させることを直接文言をもって明記していない。しかし、もともと、取手は取付け対象の操作の便宜のために取付けられるものであり、後者の取手も、こね容器の製パン機本体に対する取付け、取外し、また、こね容器の搬送のような、こね容器の操作の便宜のために取付けられたものであり、まして、後者のこね容器は製パン機本体にバヨネット機構を介して着脱可能にされているのであるから、こね容器を製パン機本体に着脱する際、通常は、取手に力を加えてこね容器の回転をさせるものと考えられる。このことは、製パンの行程が終了し、でき立てのパンを収容するこね容器を製パン機本体から取外す場合、取手を用いず、こね容器を直接手で持って回転するようなことは考えにくいことからもいえることである。 そして、後者の取手が叙上の態様で用いられる以上、取手を構成する材料を選択するか、材料を選択した上に形状、寸法に工夫を加えるかして、取手を上記の態様での使用に耐えるようにすること、即ち、取手を、取手に力を加えてこね容器を回転し該こね容器と製パン機本体とを着脱できる剛性と弾性を備えたものとすることは、当業者が当然に配慮すべきことである。 ところで、刊行物2に記載のものも、ごみ取り籠体は回動することにより、ごみ取り籠体の外方係止縁の係止部が外筒体に設けられた支持縁の切起片に係止され、よって排水時のごみ取り籠体の浮上が防止され、また逆方向に回動することにより上記の係止がはずれるものであるが、先に述べた取手自体の機能や、ごみ取り籠体が排水部にバヨネット機構を介して着脱可能にされていること、及び、ごみ取り籠体内にごみが集積した状態でごみ取り籠体を回動させる場合の回転操作を総合勘案すると、刊行物2に記載のものも、通常は、把持針金体に力を加えてごみ取り籠体を回動させることが考えられ、そうである以上、この把持針金体を、把持針金体に力を加えてごみ取り籠体を回転し該ごみ取り籠体と外筒体とを着脱できる程度の剛性と弾性を備えたものとするように配慮しているといえる。 そして、刊行物2に記載の把持針金体はステンレス製の針金、即ちステンレス製のワイヤーであり、ステンレスがばね鋼材に匹敵する剛性と弾性を有することは、明らかなことである。 そうすると、刊行物2に記載されたものに基いて後者のこね容器の取手構造を上記の如くするに際し、取手の弾性を、製パン機本体とバヨネット結合されるこね容器の着脱の際、取手を持って力を加えた程度では容易に塑性変形しない程度の剛性を有する材料であって、しかも、弾性も有する材料からなるものとすることは、刊行物1に記載されたもの、及び、刊行物2に記載されたものに基いて、当業者が格別の困難もなく為しうることであるといえる。 5.むすび したがって、訂正明細書の請求項1に係る考案は、刊行物1および2に記載された考案に基いて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであり、実用新案法第3条2項の規定により実用新案登録出願の際独立して実用新案登録を受けることができないものであるから、上記訂正は、平成5年法律第26号附則第4条第1項の規定によりなおその効力を有するとされ、同条第2項の規定によって読み替えられる旧実用新案法第40条第5項の規定により準用する同法第39条第3項の規定に適合しないので、当該訂正は認められない。 III.本件考案に対する判断 1.本件考案 本件実用新案登録第2558404号の請求項1に係る考案(以下、「本件考案」という。)は、設定登録時の実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 「製パン機本体に対して取外し自在になったこね容器において、その上端フランジ部の一部を略山形に切起こして空所を形成し、取手の両端の間隔を、取手が有する弾性に抗して狭めてその先端を前記空所に挿通係合させ、前記弾性は、前記取手に力を加えて前記こね容器を回転し該こね容器と製パン機本体とを着脱できる剛性を有する弾性力としたことを特徴とする製パン機におけるこね容器の取手構造。」 2.請求人の主張 これに対して、請求人は、甲第1?6号証を提出し、本件考案は、甲第1?6号証に記載された考案に基いて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができないものであることを理由として、本件実用新案登録は無効にすべきものである旨主張している。 甲第1号証 特開平1-207017号公報 甲第2号証 特開平2-102615号公報 甲第3号証 実公昭62-35730号公報 甲第4号証 実願昭54-177504号(実開昭56-93199号)のマイクロフィルム 甲第5号証 実願昭63-77914号(実開平2-1039号)のマイクロフィルム 甲第6号証 実開昭63-54005号(実開平1-157632号)のマイクロフィルム 3.被請求人の主張 被請求人は、本件考案は、上記甲各号証に記載された考案に基いて当業者がきわめて容易に考案をすることができないものであるから、実用新案法第3条第2項の規定には該当せず、よって、本件審判の請求は成り立たない旨主張している。 4.引用刊行物記載の考案 請求人の提出した甲第1号証及び甲第3号証は、上記II.3で述べたとおりのものであって、刊行物1である甲第1号証及び刊行物2である甲第3号証には、各々、II.3で述べたとおりの事項が記載されている。 5 対比、判断 本件考案(前者)と刊行物1に記載されたもの(後者)とを対比検討すると、後者はII.4で述べたとおりのものであるから、両者は、 「製パン機本体に対して取外し自在になったこね容器において、その上端に取手を設けた製パン機におけるこね容器」である点において一致し、 i.前者が、こね容器の上端フランジ部の一部を略山形に切起こして空所を形成し、取手の両端の間隔を、取手が有する弾性に抗して狭めてその先端を前記空所に挿通係合させたものであるのに対して、後者は、こね容器の上端の対向する位置に一対の耳部材を取着し、この一対の耳部材に取手が取付けられている点 ii.前者が、取手が有する弾性を、取手に力を加えてこね容器を回転し該こね容器と製パン機本体とを着脱できる剛性を有する弾性力としているのに対し、後者は、取手が有する弾性について何等言及していない点 において相違する。 そこで、まず、上記相違点iについて検討すると、II.4の(1)aで述べた理由により、後者のこね容器の取手構造を、こね容器の上端フランジ部の一部を略山形に切起こして空所を形成し、取手の両端の間隔を、取手が有する弾性に抗して狭めてその先端を前記空所に挿通係合させたものとするようなことは、刊行物2に記載されたものに基いて、当業者が格別の困難もなく為し得る程度のことと認められる。 つぎに、上記相違点iiについて検討すると、II.4の(2)で述べたとおりであるから、刊行物2に示された取手構造を後者のこね容器の取手構造に適用するに際し、取手の弾性を、こね容器の着脱の際取手を持って力を加えた程度では容易に塑性変形しない程度の剛性を有する材料であって、しかも、弾性も有する材料からなるものとすることは、刊行物1に記載されたもの、及び、刊行物2に記載されたものに基いて、当業者が格別の困難もなく為しうることであるといえる。 6.むすび したがって、他の甲各号証について検討するまでもなく、本件考案は、刊行物1及び刊行物2に記載された考案に基いて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、本件考案に係る実用新案登録は、実用新案法第3条第2項の規定に違反してなされたものであり、同法第37条第1項第2号の規定に該当し、これを無効にすべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 1999-11-05 |
結審通知日 | 1999-11-16 |
審決日 | 1999-11-17 |
出願番号 | 実願平8-12345 |
審決分類 |
U
1
112・
121-
Z
(A47J)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 鵜飼 健 |
特許庁審判長 |
寺尾 俊 |
特許庁審判官 |
岡田 和加子 滝本 静雄 |
登録日 | 1997-09-05 |
登録番号 | 実用登録第2558404号(U2558404) |
考案の名称 | 製パン機におけるこね容器の取手構造 |
代理人 | 魚住 高博 |
代理人 | 湯田 浩一 |
代理人 | 塩野入 章夫 |
代理人 | 杉山 秀雄 |
代理人 | 竹本 松司 |