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審決分類 審判 全部無効  無効としない F16L
審判 全部無効 1項3号刊行物記載 無効としない F16L
管理番号 1010450
審判番号 審判1998-35446  
総通号数
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2000-09-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 1998-09-16 
確定日 2000-01-14 
事件の表示 上記当事者間の登録第2148574号実用新案「固定機構」の登録無効審判事件について、次のとおり審決する。   
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 1.出願の経緯・本件考案
本件実用新案登録第2148574号は、平成1年2月27日に出願され、平成5年3月2日に出願公告され、平成9年6月13日に設定登録されたものである。
本件実用新案登録にかかる考案は、その実用新案登録請求の範囲に記載された次のとおりのものと認める。
「1.垂壁部(3)に一対の係止片(2、2a)を対向配置してなる保持体(1)をアンカーボルト(6)の所定位置に固定する機構であって、
前記係止片(2、2a)には前記アンカーボルトのための挿通孔(4、4a)を設けるとともに、該挿通孔の内縁部の前記アンカーボルトの外側には押しつぶしまたは切削によって前記アンカーボルトのねじ部に係着する薄肉係合部(5、5a)を設けて固定部(7、7a)を形成し、
前記垂壁部(3)には前記アンカーボルトの内側に配置されて前記アンカーボルト挿通孔の薄肉係合部を前記アンカーボルトのねじ部側に付勢押圧する板バネ(8)を設けた
ことを特徴とする固定機構。
2.垂壁部(3)に一対の係止片(2、2a)を対向配置してなる保持体(1)をアンカーボルト(6)の所定位置に固定する機構であって、
前記係止片(2、2a)には前記アンカーボルトのための挿通孔(4、4a)を設けるとともに、該挿通孔の内縁部の前記アンカーボルトの内側には押しつぶしまたは切削によって前記アンカーボルトのねじ部に係着する薄肉係合部(5、5a)を設けて固定部(7、7a)を形成し、
前記垂壁部(3)には前記アンカーボルトの外側に配置されて前記アンカーボルト挿通孔の薄肉係合部を前記アンカーボルトのねじ部側に付勢押圧する板バネ(8)を設けた
ことを特徴とする固定機構。」
2 請求人の主張の概要
これに対し、請求人は、本件考案は、下記のとおりの無効事由により、その実用新案登録は実用新案法第37条の規定に該当し、無効とされるべきである、と主張している。
(1)本件請求項1、2に係る考案(以下まとめて「本件考案」という。)は、「押しつぶしまたは切削によって前記アンカーボルトのねじ部に係着する薄肉係合部(5、5a)を設けて固定部(7、7a)を形成すること」を必須の構成要件とするところ、「押しつぶし」については、願書に最初に添付した明細書又は図面(以下「出願当初の明細書又は図面」という。)に何等記載がなく、示唆もない。したがって、平成4年1月10日付手続補正書、平成4年9月18日付手続補正書及び平成8年7月8日付手続補正書による明細書の補正は、その明細書の要旨を変更するものであり、よって平成5年法律第26号附則第4条第1項において、なおその効力を有するとされた改正前の実用新案法第9条で準用する特許法第40条の規定により、本件出願は、平成4年1月10日に出願したものとみなされるものである。
(2)してみれば、本件考案は、甲第2号証に記載された考案と同一であるから、実用新案法第3条第1項第3号の規定により実用新案登録を受けることができないものであり、その実用新案登録は特許法第37条第1項第1号の規定により無効とされるべきである。
3、被請求人の答の概要
(1)「押しつぶし」の語句を加入した補正は、自明の事項を加入した補正であって、要旨変更には該当するものでなく、したがって、出願日は繰り下がることはない。
(2)よって、甲第2号証の刊行物は、本件出願の出願日以降の刊行物であり、本件実用新案登録が実用新案法第3条第1項第3号の規定に違反して実用新案登録されたものであるとする請求人の主張は、失当である。
4.甲第2号証
甲第2号証(実願平1-22287号(実開平2-113080号)のマイクロフィルム)には、本件考案と同様の固定機構が開示されている。
5.当審の判断
(1)要旨変更に関して;
本件出願に係る平成4年1月10日付、平成4年9月18日付及び平成8年7月9日付手続補正書による補正が、要旨変更であるか否かにつき検討する。
上記手続補正書において、審判請求人が要旨変更であるとする主張の内容は、本件考案の必須の構成要件である「押しつぶしまたは切削によって前記アンカーボルトのねじ部に係着する薄肉係合部(5、5a)を設けて固定部(7、7a)を形成すること」のうち、「押しつぶしによるアンカーボルトのねじ部に係着する薄肉係合部を設けて固定部を形成すること」は、出願当初の明細書又は図面に何等記載されていないし、示唆もないというにある。
出願当初の明細書の実用新案登録請求の範囲あるいは課題を解決するための手段の欄には、「固定部には薄厚の嵌合部を設け」、「嵌合体先端には薄厚の嵌合部を設け」との記載があり、その作用の欄には、「板バネの反発力にて嵌合部をアンカーボルトに嵌合させて」との記載がある。また、その実施例の欄には、「貫通孔4、4aの外方縁部には係止部2、2aの肉厚を薄く削成して嵌合部5、5aと成し」(第5頁第19行?第6頁第1行)、「保持体1の嵌合部5、5aはアンカーボルト6の谷部に嵌合する1ように薄厚円形状に形成している。」(第6頁第11?13行)、「尚、固定部7、7aにおける嵌合部5、5aは保持体1の係止片2、2aに設けた貫通孔4、4aの内側縁部の肉厚を薄く削成している。」(第7頁第12?14行)、「嵌合体17先端の肉厚を薄く削成して嵌合部18と成している。」(第7頁第17?18行)、「嵌合体19先端の肉厚を薄く削成して嵌合部20と成している。」(第5?6行)との記載があり、その考案の効果の欄には、「固定部7、7aには薄厚の嵌合部5、5aを設けたので、アンカーボルト6の谷部に嵌合部5、5aを嵌合して保持体1を堅固に固定でき」(第13頁第5?7行)、「又、保持体1及び板バネ8は非常に単純なものである為、製造が簡単であり、而も低コスト化を図ることが出来るのである。」(第13頁第15?17行)等の記載がある。そして、これらの記載があることについて審判請求人と被請求人との間に争いはない。
上記本件考案の目的、作用及び効果の記載から勘案すると、本件考案は、保持体をアンカーボルトに固定するに際し、固定部に設けられた嵌合部を薄厚とし、アンカーボルト(に形成されているねじ)の谷部に前記薄厚の嵌合部を嵌合させる構成により保持体をアンカーボルトに堅固に固定するようにしたものと認められる。してみると、本件考案は、アンカーボルト(に形成されたねじの)谷部に嵌合するように、嵌合部を薄厚に形成する方法に特徴があるのではなく、嵌合部を薄厚とする構成そのものにあるものと認められる。そして、嵌合部を薄厚とする方法として、削成することが、実施例に代表例として開示されているにすぎないものと認められる。ところで、嵌合部は係止片2、2aに形成されているものであり、該係止片が板状体であることは明白である。そして、板状体を薄厚とする技術として、出願当初の明細書に記載された「削成(切削)」によること及び出願当初の明細書には記載されていなかった「押しつぶし」によることは、いずれも本件出願前周知の技術であって、当業者にとって自明の事項であったものと認められる。してみれば、嵌合部を薄厚とする方法(手段)として出願当初の明細書には記載されていなかった方法である「押しつぶし」を付加することは、自明の事項の単なる追加であって、本願考案の要旨を変更するものとは認められない。
(2)実用新案法第3条第1項第3号の規定の適用について;
本件出願は、上記の通り、その考案の要旨を変更するものとは認められないのであるから、その出願日は平成1年2月27日となり、本件出願後に公知となった甲第2号証の刊行物(実願平1-22287号(実開閉2-113080号)のマイクロフィルム)に記載される考案をもって、実用新案法第3条第1項第3号の規定を適用することは出来ない。よって、この点に関する審判請求人の主張には理由がない。
6.むすび
以上のとおりであるから、請求人の主張および証拠方法によっては、本件実用新案登録を無効とすることはできない。
よって結論のとおり審決する。
審理終結日 1999-09-30 
結審通知日 1999-10-12 
審決日 1999-10-21 
出願番号 実願平1-22287 
審決分類 U 1 112・ 113- Y (F16L)
U 1 112・ 03- Y (F16L)
最終処分 不成立    
前審関与審査官 大橋 康史熊倉 強  
特許庁審判長 佐藤 久容
特許庁審判官 船越 巧子
森林 克郎
登録日 1997-06-13 
登録番号 実用登録第2148574号(U2148574) 
考案の名称 固定機構  
代理人 北村 修一郎  
代理人 後藤 憲秋  
代理人 吉田 吏規夫  

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