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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性 無効としない A63H
管理番号 1010457
審判番号 審判1999-35208  
総通号数
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2000-09-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 1999-05-07 
確定日 2000-01-14 
事件の表示 上記当事者間の登録第2129601号実用新案「イベント用着用ぬいぐるみ」の登録無効審判事件について、次のとおり審決する。   
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 1.手続の経緯・本件登録実用新案
本件実用新案登録第2129601号の請求項1に係る考案(平成3年10月8日出願、平成7年7月12日出願公告、平成8年8月1日設定登録。)は、その実用新案登録請求の範囲に記載された事項により特定されるとおりの、
「外部との通気口及びファスナー開閉口を有する内部中空のぬいぐるみエアバッグと、該ぬいぐるみエアバッグ内の人間が着用する電源バッテリー付でモーター直結の送風機などを備えた送気ユニットと、該送気ユニットの送風機の吸気口が通気口に係脱自在に嵌装された吸気管とからなり、モーターの駆動で送風機によって吸気口から外気を吸入し送風口から絶えずぬいぐるみエアバッグ内に送気してバルーン状にふくらませることを特徴とするイベント用着用ぬいぐるみ。」
にあるものと認める。(以下、「本件考案」という。)
2.請求人の主張
これに対して無効審判請求人は、本件考案は、甲第1号証に記載された考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案することができたものであるので、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができず、無効とされるものであると主張し、証拠方法として、甲第1号証(株式会社ベンチャー・リンク 平成元年10月15日発行 「VENTURE LINK ベンチャー・リンク」 1989年11月号第18頁)、甲第2号証(実公平7-30066号公報・・・本件考案の公告公報)を提出している。
3.甲第1号証記載の考案
(1)甲第1号証(株式会社ベンチャー・リンク 平成元年10月15日発行 「VENTURE LINK ベンチャー・リンク」 1989年11月号第18頁)には、「米国生まれの新しい宣伝ツールが登場! 人間が入って動くバルーン『ウォークアラウンド』」(第18頁第1段左)「ただ、普通のぬいぐるみの場合に難点となるのは、その重量。かなりの重さがあるだけに、中に入って動く人間の苦労もさることながら、軽快なアクションや細やかな動きをするのは、なかなか難しい。この人間入りのぬいぐるみを特殊素材を用いてもっと大きくしたのが、株式会社イベントサービスの『ジャイアントバルーン』。米国・エンターティメント・リサーチ・グループと総輸入販売代理店契約を結び、『ウォークアラウンド』という商品名で販売を開始した。その名のとおり、仕組みは風船をぬいぐるみにしたもので、バルーン用の新素材「リップストップ」を生地にして、背中に付けた小型バッテリー式の扇風機で中に風を送り込むというもの。外部の装置から空気を送り込んだり、電源を供給しなくてもすむため、人間が中に入って自由に動き回れるというわけだ。内部は常時風が入るので、中に入る人も涼しい状態で動くことができるという。」(第18頁第2段1?30行)
と記載されている。
4.対比・判断
本件考案と甲第1号証記載の考案とを対比すると、甲第1号証記載の考案は「人間入りのぬいぐるみ」、「人間が中に入って自由に動き回れる」などの記載から、そのぬいぐるみは人間が出入りするための開閉口を備えていると認められ、また、「小型バッテリー式の扇風機で中に風を送り込む」との記載から、ぬいぐるみの中には常時空気を送り込むための通気口が設けられているものと認められる。そして、甲第1号証記載の考案の「扇風機」は、本件考案の「送風機」に相当し、しかも甲第1号証記載の考案の扇風機は小型バッテリー式のものであるので、甲第1号証記載の考案のものも「送気ユニット」を有しているものと認められる。
したがって、両者は、「外部との通気口及び開閉口を有する内部中空のぬいぐるみエアバッグと、電源バッテリー付でモータ直結の送風機などを備えた送気ユニットを有し、モーターの駆動で送風機によって外気を吸入し、絶えずぬいぐるみエアバッグ内に送気してバルーン状にふくらませることを特徴とするイベント用着用ぬいぐるみ」である点で一致し、
▲1▼開閉口が、本件考案のものはファスナー開閉口であるのに対し、甲第1号証記載の考案のものはファスナーを用いる旨の記載がない点、
▲2▼送気ユニットが、本件考案のものはぬいぐるみエアバッグ内の人間が着用するものであるのに対し、甲第1号証記載の考案のものは「背中に付けた小型バッテリー式の扇風機で中に風を送り込む」と記載されているだけで、該記載の中の「背中」がぬいぐるみの背中なのか、エアバッグ内の人間の背中なのか不明である点、
▲3▼本件考案のものが、送気ユニットの送風機の吸気口が通気口に係脱自在に嵌装された吸気管とからなり、モーターの駆動で送風機によって吸気口から外気を吸入し送風口から絶えずぬいぐるみエアバッグ内に送気するものであるのに対し、甲第1号証記載の考案は、送気ユニットをエアバッグ内の人間が着用するものであるか否か不明であり、したがって上記のような具体的な吸送気構造は不明である点、で相違している。
上記相違点▲2▼、▲3▼について検討する。
(相違点▲2▼について)
甲第1号証は、イベント用着用ぬいぐるみに関する記事であって、「その名のとおり、仕組みは風船をぬいぐるみにしたもので、バルーン用の新素材「リップストップ」を生地にして、背中に付けた小型バッテリー式の扇風機で中に風を送り込むというもの。外部の装置から空気を送り込んだり、電源を供給しなくてもすむため、人間が中に入って自由に動き回れるというわけだ。」との記載によれば、該「背中」について何ら特定されていない以上、該「背中」はぬいぐるみの背中と解するのが自然であり、上記記載のみで送気ユニットを人間が着用する点を想起することには困難性があるというべきである。
(相違点▲3▼について)
また、送気ユニットを人間が着用することが想起されるとしても、送風ユニットをどのように構成して外部との通風を確保するかについて甲第1号証には記載も示唆もないのであるから、当業者が甲第1号証記載の考案に基づいて、本件考案のような構成(送気ユニットの送風機の吸気口が通気口に係脱自在に嵌装された吸気管とからなり、モーターの駆動で送風機によって吸気口から外気を吸入し送風口から絶えずぬいぐるみエアバッグ内に送気してバルーン状にふくらませること)をきわめて容易に想到し得るものということはできない。
そして、本件考案の着用ぬいぐるみは、「従来の着用ぬいぐるみに比較してきわめて軽量で軽快な動作が容易に行えると共にぬいぐるみエアバッグ内には絶えず空気が流動しているものでエアバッグ内の人は中に長時間入っていても蒸し暑いようなことが全くなくてたいへん涼しく快適である。またこの考案の着用ぬいぐるみはナイロンやビニールのシートで作られるエアバッグであるため、折り畳みコンパクト化できるもので、不使用時における移動、運搬、格納が容易で甚だ重宝である。さらに比較的製造が容易でかつ量産となれば製作コストも嵩まない。」という明細書記載の効果を奏するものである。
したがって、本件考案は、上記甲第1号証記載の考案から当業者がきわめて容易に考案できたものとすることはできない。
また、無効審判請求人に対して平成11年8月5日付けで、審判請求書の第3頁末行から第4頁1行において「・・・甲第1号証考案において、小型バッテリー式の扇風機(モーター直結の送風機)を、ぬいぐるみ内の人間の背中に付ける構成が示されている。・・・」と主張しているが、甲第1号証第18頁第2段20?30行の「その名のとおり、仕組みは風船をぬいぐるみにしたもので、バルーン用の新素材「リップストップ」を生地にして、背中に付けた小型バッテリー式の扇風機で中に風を送り込むというもの・・・という。」との記載から、何故上記のことがいえるのか、その根拠を明確にされたい旨の審尋を行ったところ、平成11年9月27日付弁駁書において、無効審判請求人は「甲第1号証の言う背中が、若しぬいぐるみの背中であったとすれば、扇風機等はぬいぐるみの表面に取り付けられることになり、商品価値からしてそのようなことはあり得ないことであり、従って背中とは人体の後ろ側の表面である」旨主張しているが、扇風機等をぬいぐるみの背中に取り付けたとしても、その商品価値がなくなるということはなく、通風を妨げずに隠したり、覆ったりしてその商品価値が落ちないようすることは可能であるので上記主張は根拠がない。
そして、同弁駁書において、無効審判請求人は「尚被請求人は、本請求人が製作したバルーン式着用ぬいぐるみについて、株式会社セガ・エンタプライゼズ社に対して御通知(甲第3号証)を送っている。このバルーン式着用ぬいぐるみは、ぬいぐるみ背中に送風機を取付けたものである。然るに被請求人が前記御通知を出したのは、本請求人が製作した背中に送風機を取付けたバルーン式着用ぬいぐるみが、本件考案のエアバッグ内の人間が着用する送気ユニットに送風機を取付けたものと実質的に同一と認めたからである。従って、甲第1号証に示すものが、ぬいぐるみの背中に扇風機を取付けたものと読み取られるものであったとしても、前記御通知を送ったことからして、エアバッグ内の人間が着用する電源バッテリー付でモータ直結の送風機などを備えた送気ユニットは、前記甲第1号証に示すものから極めて容易に考えられるものと、被請求人自身認めているといえる。」と主張しているが、上記事実があったとしても、両当事者のそれぞれの認識の問題であって、当審における本件考案の無効か否かの審理に対して影響があるものではない。
5.むすび
したがって、請求人の主張する理由及び提出した証拠方法によっては、本件考案の登録を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 1999-10-20 
結審通知日 1999-10-29 
審決日 1999-11-10 
出願番号 実願平3-91093 
審決分類 U 1 112・ 121- Y (A63H)
最終処分 不成立    
特許庁審判長 村山 隆
特許庁審判官 白樫 泰子
馬場 清
登録日 1996-08-01 
登録番号 実用登録第2129601号(U2129601) 
考案の名称 イベント用着用ぬいぐるみ  
代理人 大矢 須和夫  
代理人 草野 卓  
代理人 稲垣 稔  

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