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審決分類 審判    A01K
審判    A01K
管理番号 1010462
審判番号 審判1997-40005  
総通号数
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2000-09-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 1997-03-10 
確定日 1999-11-09 
事件の表示 上記当事者間の登録第3002014号実用新案「スピニングリール」の登録無効審判事件について、次のとおり審決する。   
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 1.本件第3002014号実用新案登録
本件第3002014号実用新案登録(以下、本件登録という。)は、実用新案法第9条第1項において準用する特許法第44条第1項の規定により、平成3年5月14日に出願された実願平3ー33214号の一部を、平成6年2月3日に分割して新たに出願した実願平6ー356号を、更に特許法等の一部を改正する法津(平成5年法律第26号)附則第5条第1項の規定により平成6年2月8日に新実用新案登録出願とした実願平6ー463号(以下、本件出願という。)に係り、平成6年7月6日に設定登録されたものであって、平成9年3月10日付けでダイワ精工株式会社からこれの無効の審判請求がなされたものである。
2.請求人の主張
請求人は、「第3002014号登録実用新案は無効とする。審判費用は被請求人の負担とするとの審決を求め、その理由の概要は、以下のとおりである。
(1)無効理由1
証拠方法として、下記の甲第1、2号証を提示し、本件登録に係る請求項1及び2に記載された考案は、その構成に欠くことのできない事項が当該請求項に記載されていないので、本件出願は、実用新案法第5条第5項第2号の規定を満たしていなく、本件登録は、同法第37条第1項第4号に該当し無効とされるべきものである。

甲第1号証:「振動工学」(前澤成一郎著、森北出版発行、発行日:1977年9月10日、第123?127頁)
甲第2号証:「平成7年(ワ)第9216号」侵害訴訟事件における原告準備書面(三、四、六)及び被告準備書面(三、四、五)抜粋
(2)無効理由2
証拠方法として、下記の甲第3号証を提示し、本件登録に係る請求項1、2に記載された考案は、原出願(実願平3ー33214号)に開示された考案でないので、本件出願は、適法な分割出願に基づくものでなく、その出願日は遡及せず、通常の出願日である平成6年2月3日となり、前記本件登録に係る考案は、前記原出願の公開公報である甲第3号証に記載された考案に基づききわめて容易に考案できたものであり、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録をうけることができなく、本件登録は、同法第37条第1項第2号に該当し、無効とされるべきものである。

甲第3号証:実開平4ー127167号公報
(3)無効理由3
証拠方法として、下記の検甲第4号証及び甲第4号証の1?3を提示し、検甲第4号証の検証を申し出ると共に、下記の甲第5号証及び甲第5号証の1?3を提示し、証人 橋本 泰の証人尋問を申し出て、本件登録に係る考案は、本件出願前公知乃至は公然実施された検甲第4号証又は甲第5号証に記載されたスピニングリールに基づいてきわめて容易に考案できたものであるので、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができなく、本件登録は、同法第37条第1項第2号に該当し、無効とされるべきものである。

検甲第4号証:「財団法人日本雑貨振興センター(現名称、財団法人生活用登録品振興センター)において、登録(昭和49年11月12日)されたリョービ株式会社製スピニングリール(登録番号、釣登第156号ー1である)
甲第4号証の1:財団法人日本雑貨振興センターが、登録した甲第4号証のスピニングリールである釣登第156号ー1の登録デザインカード
甲第4号証の2:「雑貨デザイン弘報、1975年特集号」(財団法人日本雑貨振興センター発行、第7頁)抜粋
甲第4号証の3:釣登第156号ー1の外観及びスプールを取り外した状態のローター外観の写真を添付した財団法人生活用品振興センター理事長中川鐵蔵のダイワ精工株式会社代表取締役社長松井義郁への「釣り用リールに関する写真の交付について」並びに請求人の作成した前記スプールを取り外した状態のロータ部分の説明図
甲第5号証:ダイワ精工株式会社製造のスピニングリール(商品名DAIWAエースNO1)の設計図(昭和44年8月作成)及び部品リスト(昭和46年7月作成)
甲第5号証の1:甲第5号証に基づき組み立てられた製品の外観等の写真並びに請求人の作成したスプールを取り外した状態におけるロータ部分の説明図
甲第5号証の2:甲第5号証のものが販売された事実を示すダイワ精工株式会社の1973年度総合カタログ
甲第5号証の3:大和精工株式会社がダイワ精工株式会社に社名変更したことを証する謄本
証人:橋本 泰
3.被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求め、請求人が主張する無効理由1?3によって本件登録が無効になるものではない旨の答弁をしている。
4.請求人の主張する無効理由の検討
以下、請求人の主張する前記無効理由1?3について検討する。
(1)無効理由1について
本件登録に係る登録明細書(以下、本件明細書という。)の実用新案登録請求の範囲には、以下のとおり記載されている。なお、請求項1の記載については、これを分節し、各項ごとに符号を付して記載した。
「【請求項1】
(A)釣竿に装着されるスピニングリールであって、
(B)ハンドルを有し、釣竿に装着可能なリール本体と、
(C)前記リール本体の前部に回転自在に支持され、回転軸を挟むように対向して配置された第1アーム部及び第2アーム部と、前記第1アーム部に装着され糸案内部を有する第1揺動アームと、前記第2アーム部に装着された第2揺動アームと、前記第1揺動アームから前記第2揺動アームにわたって設けられ前記両揺動アームとともに揺動して糸解放姿勢と糸巻き取り姿勢とをとり得るベールとを有し、前記ハンドルによって回転させられるロータと、
(D)前記第1アーム部と第2アーム部との間に配置されたスプールと、
(E)前記ロータの前記リール本体側で、糸巻き取り姿勢のベールが位置する側に重心が位置するように配置された第1バランサと、
(F)前記第1バランサより前方側で、糸解放姿勢のベールが位置する側に重心が位置するように配置された第2バランサと、
を備えたスピニングリール。
【請求項2】
前記第2バランサは前記ロータの前壁に取り付けられている、請求項1記載のスピニングリール。」
請求人が、この理由において具体的に主張するところは、請求項1に係る考案(以下、本件考案1という。)にとって、本件明細書に記載された目的、効果を達成するためには、第1、2のバランサの配置位置は、前記請求項1に記載された(E)(F)の構成では十分でなく、「ベール、揺動アーム及びラインローラの重量に起因する合成重心(W_(P))と第1バランサとの合成重心(W_(X))に対し、回転軸芯を挟んで対向する位置に、合成重心(W_(X))における回転時の遠心力を相殺する重量の第2バランサ(W_(2))を設ける」という構成が必須であるにも拘わらず、これが請求項1に記載されていないので、本件出願は、実用新案法第5条第5項の規定を満たさないというものである。
そこで、本件明細書に記載された事項をみてみると、「従来の技術」の項には、一般にスピニングリールは、リール本体の前部位置に設けられ、ハンドルからの動力で軸芯周りで回転するロータを有し、ロータは、1対のアーム部と、1対のアーム部のうちの一方に設けられた揺動アームに装着された糸案内部と、糸案内部から他方のアーム部あるいは他方の揺動アームの間にわたって設けられたベールとを有しており、このようなスピニングリールでは、釣り糸巻き取り時には、釣り糸はベールを介して糸案内部に導かれ、スプールに巻き付けられ、従来からのスピニングリールでは、揺動アーム及び揺動アームの糸案内部(通常はラインローラ等と称する回転部材で構成されている)等の重量により回転時のアンバランスが発生する旨の記載が認められる。また、「考案が解決しようとする課題」の項には、揺動アーム、ラインローラ等の部材の合成重心W_(P)はロータの比較的前方に位置しており(段落【0004】)、また、スピニングリールは、比較的小さい重量ながらベールを備えており、ベール重量も含めたアンバランスを解消するようにバランサを配置したりした(段落【0006】)旨の記載も認められる。そうすると、このような従来のスピニングリールにおいては、釣り糸巻き取り時の前記合成重心W_(P)は、前記ベールの釣り糸巻き取り時の位置側で、ロータの比較的前方の位置であって、ロータの回転軸芯に対し偏位したところにあり、これにより回転時アンバランスが生じるものであると認められる。
ところで、本件考案1の請求項1に記載された(C)の構成は、まさに前述の従来のスピニングリールのロータの構成であるので、この(C)の構成は、本件考案1のスピニングリールの糸巻き取り時の前記合成重心W_(P)が、前記ベールの糸巻き取り時の位置側で、ロータの比較的前方にあり、回転時アンバランスが生じるものであることを示す構成である。
他方、請求項1に記載された(E)の構成は、本件考案1の第1バランサの配置位置を規定するものであり、この第1バランサの重心位置と前記の合成重心W_(P)の位置とを合わせ考えれば、これらの合成重心W_(X)は、前記ベールの糸巻き取り時の位置において、前記合成重心W_(P)と比べ、リール本体側に位置し、第1バランサよりも前方に位置するものであることは、力学上自明のことである。つまり、この(E)の構成により、本件考案1において、本件明細書の「作用」の項に記載された「本考案に係るスピニングリールでは、糸巻き取り姿勢のベールが位置する側に第1バランサが配置されるので、ベール及び1対のアーム部に設けられた各部材の合成重心が比較的前部に位置するものの、これらと第1バランサとの合成重心がリール側に偏位する。」作用がなされる、具体的には、本件明細書の段落【0013】及び図3、4に記載された合成重心位置W_(X)が形成されると理解されるものである。
ここで、本件考案1の第1、2バランサについて検討してみる。本件考案1の目的は、本件明細書の「従来の技術」及び「考案が解決しようとする課題」の項の記載をみれば、従来のスピニングリールでは、揺動アーム及び揺動アームの糸案内部等の重量により回転時のアンバランスが発生するので、種々の位置にバランサを取り付ける等して、バランスをとるように考えられてきたが、長期使用においてガタッキが生じるものであったため、合理的なバランスの配置により、長期にわたる使用でガタツキが発生した場合でも、高速巻き取り時に円滑な巻き取り操作が行えるようにすることであることにある。そうすると、本件考案1の第1、2バランサの文言自体の技術的意味は、それぞれバランサと称されていることから、単なる錘というものではなく、スピニングリールのロータが、高速巻き取り時に円滑な巻き取り操作が行えるよう回転時の重量バランスを良くするように設けられるものであると理解される。
このような前記第1、2バランサの文言自体の技術的意味を考慮して、本件考案1の請求項1に記載された(F)の構成で、本件考案1の目的、効果が奏されるかを検討する。この(F)の構成によれば、第2バランサの重心位置は、「前記第1バランサより前方側で」しかも「糸解放位置のベールが位置する側に」とある。確かに、この「前方」というだけでは前方のどの位置なのか、また糸解放位置のベールが位置する側とだけといっても、糸巻き取り姿勢のベールの位置する側の反対側であることは判明するが、その位置する側のどこなのか明確ではない。しかし、前述のように第2バランサの文言自体の技術的に意味するところが、前記ロータの回転時の重量バランスを良くするように設けられるものであることを意味すると考えると、前述のように前記合成重心W_(X)は、第1バランサより前方側にあることから、前記「前方側」とは、前記合成重心W_(X)の位置を示し、「糸解放位置のベールが位置する側」ということで、前記ローラの回転軸を挟んで、前記合成重心W_(X)の位置と対応する位置を示していることは明らかである。そうすると、この(F)の構成は、請求人が本件考案1において必須の構成と主張する「ベール、揺動アーム及びラインロータの重量に起因する合成重心(W_(P))と第1バランサとの合成重心(W_(X))に対し、回転軸芯を挟んで対向する位置に、合成重心(W_(X))における回転時の遠心力を相殺する重量の第2バランサ(W_(2))を設ける」という構成を意図していると理解できる。そして、この第2バランサが、前記ロータに設けられることも、前記の第2バランサのその文言自体の技術的に意味するところを考えれば、自明である。
このように、本件考案1は、ベール、揺動アーム及びラインロータの重量に起因する合成重心(W_(P))が、釣り糸巻き取り時、前記ベールの釣り糸巻き取り時の位置側で、ロータの比較的前方の位置であって、ロータの回転軸芯に対し偏位したところにあり、これにより回転時アンバランスが生じるスピニングリールであることを、前記(C)の構成で示し、このようなスピニングリールにおいて、前記第1、2バランサを前記(E)(F)に示される位置に配置し、上記回転時のアンバランスを解消する等本件明細書記載の効果を奏するようにしたものであり、前記請求項1には、本件考案1の必須の構成が記載されていると認められる。
なお、本件考案1の第1、2バランサのロータ取り付け位置と本件考案1の第1、2アームとの位置関係は、本件考案の前記(C)の構成にある第1、2アームとベールが設けられる位置と前記(E)(F)の構成にある第1、2バランサのそれぞれ設けられる位置が前記ベールの糸巻き取り姿勢側及び糸解放姿勢側であることを考えれば、前記第1、2バランサは、図4で示されるような前記ロ一夕の円周方向において前記第1、2アーム間に位置していることも自明である。
また、本件登録に係る請求項2に記載された考案(以下、本件考案2という。)についても、前記請求項2は、前記請求項1に記載された構成を引用したものであり、本件考案1に関する前述の理由から明らかなように、前記請求項2に記載された事項を必須の構成とするものと認められる。
以上のことから、前記請求項1、2には、本件考案1、2の目的、効果を奏するための必須の構成が、それぞれ記載されているものと認められ、請求人の主張するこの無効理由1によっては、本件登録を無効にすることはできない。なお、請求人の提出した甲第1、2号証によっては、前記認定、判断を覆すことはできない。
(2)無効理由2について
請求人が主張するところは、前記無効理由1において主張する本件考案1の前記(E)(F)の構成は、「ベール、揺動アーム及びラインロータの重量に起因する合成重心(W_(P))と第1バランサとの合成重心(W_(X))に対し、回転軸芯を挟んで対向する位置に、合成重心(W_(X))における回転時の遠心力を相殺する重量の第2バランサ(W_(2))を設ける」という構成を意図しないとし、このような前記(E)(F)の構成を有する考案は、本件出願の原出願(実願平3ー33214号)に開示されたものではないので、本件出願は、適法な分割出願ではないと言うことにあると認められる。
ところが、前記無効理由1で述べたように、本件考案1の前記(E)(F)の構成は、請求人の意図しないとした構成を示していると認められるので、請求人の前記主張は採用できない。
そして、前記原出願の出願当初の明細書及び図面をみると、本件考案1、2は、明らかに記載されているので、本件出願は、適法な分割出願と認められ、その出願日は、平成3年5月14日に遡及するものである。
そうすると、請求人の提出した甲第3号証は、本件出願後に頒布された刊行物であることから、この甲号証によっては、本件考案1、2は、本件出願前に頒布された刊行物に記載された考案に基づき当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるとすることはできない。
以上のことから、請求人の主張するこの無効理由2によっては、本件登録を無効にすることはできない。
(3)無効理由3について
本件考案1、2は、前記請求項1、2に記載された事項を必須の構成とするものである。そして、前述のように、これに記載された事項により、本件考案1、2は、その第1、2バランサのロータ取り付け位置が、図4で示されるような前記ロータの円周方向において前記第1、2アーム間に位置しているものと認められるものである。
そうすると、請求人の提出した検甲第4号証、甲第4号証の1?3、甲第5号証及び甲第5号証の1?3には、本件考案1、2の第1、2バランサのように、スピニングリールのロータの糸巻き取り時の回転バランスを良くするために、これらのロータヘの取り付け位置が、図4で示されるような前記ロータの円周方向において前記第1、2アーム間に位置しているものは、示されておらず、また、これらに示されたものは、いずれも、ロータ内に肉厚部を持ち、アーム部がロータに偏位させて取り付けたもので、たとえ、この肉厚部と前記アーム部の偏位によってロータの回転バランスを良くしたものであっても、当業者がきわめて容易に本件考案1、2の第1、2バランサのような取り付けを想到できるものとも認められない。
以上のことから、本件考案1、2は、検甲第4号証、甲第4号証の1?3、甲第5号証及び甲第5号証の1?3に示されたものから、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものとは認められず、請求人の主張する無効理由3によっては、本件登録を無効とすることはできない。
なお、請求人の申し立てている検甲第4号証に関する検証及び甲第5号証に関する証人橋本 泰の証人尋問は、検甲第4号証及び甲第5号証がそれぞれ示しているものが前述のとおりであり、それぞれの公知又は公然実施が判明したとしても、これらに基づいて本件考案1、2の進歩性は否定できなく、これら検証及び証人尋問を行う必要性は認められない。
5.したがって、請求人の主張する理由及び提出した証拠方法によっては、本件登録を無効にすることはできない。
よって、結論のごとく審決する。
審理終結日 1997-09-14 
結審通知日 1997-09-30 
審決日 1997-10-15 
出願番号 実願平6-463 
審決分類 U 1 111・ 534- Y (A01K)
U 1 111・ 121- Y (A01K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 長井 啓子  
特許庁審判長 酒井 雅英
特許庁審判官 大高 とし子
田中 久直
登録日 1994-07-06 
登録番号 実用登録第3002014号(U3002014) 
考案の名称 スピニングリール  
代理人 坪井 淳  
代理人 鈴江 武彦  
代理人 中村 誠  
代理人 小林 茂雄  
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