• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 一部申し立て   E03C
管理番号 1010531
異議申立番号 異議1999-71775  
総通号数
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案決定公報 
発行日 2000-09-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 1999-04-30 
確定日 2000-01-17 
異議申立件数
事件の表示 実用新案登録第2584652号「イオン水用水栓とイオン水生成設備」の請求項1に係る実用新案に対する実用新案登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。   
結論 実用新案登録第2584652号の請求項1に係る実用新案登録を維持する。
理由 I.手続きの経緯
本件実用新案登録第2584652号に係る出願は、平成5年9月10日の出願であって、平成10年8月28日に実用新案登録の設定がなされ、その後、依田昌三より異議申立がなされたものである。
II.異議申立の理由の概要
異議申立人依田昌三は証拠方法として甲第1?5号証を提出し、本件実用新案登録の請求項1に係る考案は、実用新案法第3条第2項の規定に違反してなされたものであり、その実用新案登録を取り消すべきであると主張している。
III.異議申立についての判断
1.本件考案
本件実用新案登録の請求項1に係る考案は、登録明細書及び図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。
「厨房や化粧室等の水栓取付部下方のキャビネット内に収納設置されたイオン水生成器により水道水から浄水やイオン水等を生成し、同イオン水等を配管を介して前記水栓の吐水管から取り出すようにした水栓であって、
水道水の給水口及び排水口を有し、同給排水口を内部で連結した水道水通路が形成されると共に、少なくとも前記イオン水生成器からのアルカリイオン水及び酸性水の取水口にそれぞれ連結され、各取水口とイオン水出口との間を連結する第1及び第2のイオン水通路が形成されてなる水栓本体と、
前記水栓本体の各イオン水出口に取り付けられる少なくとも第1及び第2の吐水管と、
前記水道水通路の途中に配されて同通路を開閉する開閉弁を有する開閉操作部と、
を備えてなることを特徴とするイオン水用水栓。」(以下、「本件考案」という。)
2.甲各号証の記載事項
甲第1号証:特開平5-33373号公報(以下、「引用例1」という。)には、例えば、次のような記載がある。
▲1▼「キッチンキャビネット1のカウンター1aに取付け孔10に台座11を介してカラン6が配設され、その前方にはシンク7が取付けられている。カラン6には従来と同様に市水の給水管8及び浄水とかアルカリイオン水を生成せる給水装置2からの通水パイプ9と給水パイプ12が接続されている。給水装置2からは溜水あるいは酸性イオン水を排水するための排水ホース3が導出されている。排水ホース3の先端には排水パイプ5が取付けられており、この排水パイプ5はカウンター1aの取付け孔10の小径部10aを挿通させて台座11から上方に向けて突出するように取付けられている。排水パイプ5は台座11を介してカラン6と一体的に取付けられているので、特別な工事が不要である。排水パイプ5は逆L字状であり、先端がシンク7に臨んでいる。排水ホース3にはポンプ4が配設されており、ポンプ4を駆動させ給水装置2内の溜水あるいは酸性の水が排水ホース3を通して排水パイプ5からシンク7へと流される。シンク7へと流された溜水あるいは酸性の水は汚水ではないので、食器洗い等に利用できる。」公報第2頁右欄。
前記▲1▼の記載事項と図面の記載からみて、引用例1には、キッチンキャビネット1内に収納された給水装置2により市水からイオン水を生成し、イオン水を通水パイプ9を介してカラン6から取り出すようにした水栓であって、市水の給水管8と給水装置2への給水パイプ12を内部で連結した市水通路が形成されると共に、給水装置2からのアルカリイオン水をカラン6に送る通水パイプ9を一体とした水栓本体と、水栓本体の近傍に給水装置2内の酸性イオン水を排出する排水パイプ5を取付け、排水パイプ5と給水装置2とをポンプ4を取付けた排水ホース3で連結したイオン水用水栓が記載されている。
甲第2号証:特開平5-26371号公報(以下、「引用例2」という。)には、例えば、次のような記載がある。
▲2▼「(1)は蛇口、(2)は通水の開閉を行う開閉つまみ、(3)は通水後の蛇口(1)内部の水を抜く水抜きパイプで、開口部が蛇口(1)の開口部より低い位置にあると共に、流し台(4)のシンク(5)の上に位置している。(6)は水道水が流入する一次給水パイプで、水道水が逆流を防止するための逆止弁(7)が先端にあり、水道配管(8)に接続された止水弁(9)に接続されている。(10)は水道水が流出する二次給水パイプ、(11)は内部に活性炭或いは中空糸膜フィルター(図示せず)を有した浄水器、(12)は内部にヒーター(図示せず)を有した温水器、(13)は蛇口(1)と連通した温水器(12)の湯が流入する給湯ホースである。浄水器(11)は、前述の様に活性炭、中空糸膜等を用いて残留塩素、有害物、細菌、濁質を除去するもので、流入側は耐圧ホース(14)を介して水栓の二次給水パイプ(10)に接続され、流出側は耐圧ホース(15)を介して温水器(12)の給水口(16)へ接続されている。また、浄水器(11)は、ある程度使用することにより除去性能が落ちるため、耐圧ホース(14)(15)とワンタッチジョイント(17)で接続され、交換が簡単に行なえるようになっている。」公報【0008】段落。
▲3▼「温水器(12)は、給水口(16)から流入した浄水を温水タンク(18)内部で所定の温度(例えば90℃)になるように、ヒーターとサーモスタットで加熱、保持し、給湯口(19)から水栓に湯を供給するもので、下部に温水タンク(18)の水抜きを行うためのドレン(20)が付いている。(21)は一次給水パイプ(6)に連通する一次通水路(22)と二次給水パイプ(10)と連通する二次通水路(23)の間を開閉する弁機構、(24)は水抜きパイプ(3)に連通する水抜通路(25)の入口を開閉する水抜き弁、(26)は給湯ホース(13)を接続する水受けケース、(27)は水受けカバーで、給湯口(28)を介して蛇口(1)側に通水する水路と水抜通路(25)側に通水する水路とに分岐している。」公報【0009】段落。
前記▲2▼及び▲3▼の記載事項と図面の記載からみて、引用例2には、流し台4の下方に収納される浄水器11及び温水器12により水道水から浄水や温水を生成して、前記浄水や温水を配管を介して蛇口1から取り出すようにした水栓であって、水道水の給水する一次通水路22と水道水を浄水器に給水する二次通水路23を内部で開閉弁21を介して連結し、温水器12からの温水を蛇口1に供給する給湯口28と、水抜き弁24を介して水抜きパイプと連通する水抜通路25を形成した水栓本体を有する水栓が記載されている。
甲第3号証:特開平3-154684号公報(以下、「引用例3」という。)には、例えば、次のような記載がある。
▲4▼「(1)は流し台、(2)はシンク、(3)はシンク(2)の後台、(4)は流し台(1)の後壁、(5)は後台(3)に立設された蛇口部である。(6)は後壁(4)から導入された水道水の流入水路、(7)は流出水路、(8)は回帰水路であり、各水路(6)、(7)、(8)が蛇口部(5)に導入されている。(9)は蛇口部(5)の上端に設けられた開閉器であり、流入水路(6)の終端と流出水路(7)の始端に設けられ、開閉器(9)のレバー(10)の操作により流入水路(6)と流出水路(7)間が開閉され、第1図のCが第4図の流入水路(6)に連通し、第1図のDが第4図の流出水路(7)に連通している。(11)は水道水を浄化する機能を有する機器、(12)は機器(11)に設けられ流出水路(7)に連通した流入口、(13)は機器(11)に設けられ機器(11)により浄化された浄化水が流出する流入口であり、回帰水路(8)に連通している。(14)は蛇口部(5)からシンク(2)側に突出させた水平部であり、回帰水路(8)の上部が水平部(14)に導入されている。(15)は水平部(14)の先端に上方に立設された逆J字状の蛇口パイプ、(16)は蛇口パイプ(15)の先端の給水口であり、シンク(2)の面上に位置している。(17)は蛇口部(5)内において流出水路(7)から分岐された分岐水路であり、水平部(14)に導入されている。(18)は分岐水路(17)の先端に設けられた安全弁であり、分岐水路(17)、即ち流出水路(7)の水圧が所定以上に上昇したときに作動し、分岐水路(17)の先端の排出口(19)から排水する。」公報第2頁左下欄?第2頁右下欄。
前記▲4▼の記載事項と図面の記載からみて、引用例3には、流し台1の近傍に配置された浄水器11により水道水から浄水を生成して蛇口パイプ15の給水口16から取り出すようにした水栓であって、水道水が入水する流入水路6と水道水が流出する流出水路7との間に開閉器9を設け、流出水路7を浄水器11の流入口12に連結し、浄水器11の流出口13に回帰水路8を連結し、各水路6,7,8を蛇口部5に導入し、蛇口部5に流出水路7と連通する分岐水路17を形成し、分岐水路に安全弁を取付けた水栓装置が記載されている。
甲第4号証:特開平3-183827号公報(以下、「引用例4」という。)には、流し台の下部に浄水器6と温水器7を配設し、流し台の近くに設けた元止め式混合栓8に、第1原水パイプ15と第2原水パイプ16とを開閉弁10を介して連通させ、蛇口14と連通する第1浄水パイプ24と第2浄水パイプ25が切換コック23を介して連通させ、蛇口から浄水又は温浄水を選択的に流出させる水栓装置が記載されている。
甲第5号証:特開平3-242285号公報(以下、「引用例5」という。)には、流し台の下方に配置された浄水器1により水道水から浄水を生成し、浄水を浄水器1の出口側配管に接続された浄水用ノズル4から取り出すようにした水栓であって、給水栓3の入口15は水道水の導管7と連通し、出口16は浄水器1の入口10と連通し、給水栓3に浄水器1の出口部11と連通する浄水ノズル4を配設した水栓装置が記載されている。
3.対比
本件考案と引用例1記載の考案を対比する。
引用例1記載の考案における、「給水装置」、「市水」、「カラン」、「通水パイプ」、「市水の給水管と給水装置への給水パイプを内部で連結した市水通路」、「排水パイプ」、「排水ホース」は、本件考案における、「イオン水生成器」、「水道水」、「第1の吐水管」、「第1のイオン水通路」、「水道水の給水口及び排水口を有し、同給排水口同士を内部で連結した水道水通路」、「第2の吐水管」、「第2のイオン水通路」にそれぞれ対応するものであるから、本件考案と引用例1記載の考案は、「厨房の水栓取付部下方のキャビネット内に収納設置されたイオン水生成器により水道水からイオン水を生成し、同イオン水を配管を介して前記水栓の吐水管から取り出すようにした水栓であって、水道水の給水口及び排水口を有し、同給排水口を内部で連結した水道水通路が形成されると共に、前記イオン水生成器からのアルカリイオン水の取水口に連結され、取水口とイオン水出口との間を連結する第1のイオン水通路と前記イオン水生成器からの酸性イオン水を取り出す第2のイオン水通路を備え、前記各イオン水出口に取り付けられる第1及び第2の吐水管とを備えたイオン水用水栓」という点で両者の構成は一致し、次の相違点で両者の構成は相違する。
相違点1:本件考案においては、水道水通路の途中に配されて同通路を開閉する弁を有する開閉操作部を備えるのに対して、引用例1記載の考案においては、開閉操作部に関する記載がない点。
相違点2:本件考案においては、水道水の給水口及び排水口を有し、同給排水口を内部で連結した水道水通路が形成されると共に、少なくとも前記イオン水生成器からのアルカリイオン水及び酸性水の取水口にそれぞれ連結され、各取水口とイオン水出口との間を連結する第1及び第2のイオン水通路が形成されてなる水栓本体と、前記水栓本体の各イオン水出口に取り付けられる少なくとも第1及び第2の吐水管としたのに対して、引用例1記載の考案においては、水道水の給水口及び排水口を有し、同給排水口を内部で連結した水道水通路が形成されると共に、前記イオン水生成器からのアルカリイオン水の取水口に連結され、取水口とイオン水出口との間を連結する第1のイオン水通路が形成されてなる水栓本体と、前記イオン水生成器からの酸性イオン水を取り出す第2のイオン水通路を前記水栓本体の近傍に配置し、前記水栓本体のイオン水出口に第1の吐水管を取付け、前記第2のイオン水通路の出口に取付けられる第2の吐水管とした点。
4.判断
先ず、相違点1について検討する。
水道水を処理して取り出す水栓装置において、水栓本体内の水道水通路の途中に配されて同通路を開閉する弁を有する開閉操作部を備えることは、引用例2?5に記載されており、引用例1記載の考案に、引用例2?5の構成を適用して、前記相違点1にあげた本件考案の構成のようにすることは、当業者がきわめて容易に考案することができるものと認められる。
次ぎに、相違点2について検討する。
引用例2?5には、水道水を処理して得られる2種類の生成水を別の吐水管から取り出すように、水栓本体に、水道水給排水通路、第1及び第2のイオン水通路、各イオン水通路の出口に取付けられる第1及び第2の吐水管を備える構成に関する直接の記載はなく、前記構成を示唆する記載もない。
そして、本件考案は、前記構成により、明細書【0039】段落記載の「【考案の効果】以上の説明から明らかなごとく、本考案によればキャビネット上のシンクなどに設置されたイオン水用水栓に、アルカリイオン水用及び酸性水用の2本の水通路を形成すると共に、前記水通路とは別に水道水の給排水路を連結状態に形成し、前記2本のイオン水通路に連通する専用の吐水管を取り付け、また前記水道水の給排水路の途中に同給排水路を操作ハンドルにより開閉する開閉弁を設け、前記2本のイオン水通路を前記キャビネット内に収納設置されたイオン水生成器のイオン水供給口に連結すると共に、前記水道水排出口とイオン水生成器の取水口を連結しているため、アルカリイオン水用と酸性水用の吐水管を個別に設置する必要がなくなり、極めてコンパクトなものとなるばかりでなく、施工も極めて簡単なものとなる。」という効果を奏するものである。
したがって、本件考案は、引用例1?5記載の考案の基づいて当業者がきわめて容易に考案することができたものとすることはできない。
IV.むすび
以上のとおりであるから、異議申立人の主張する理由及び提出した証拠方法によっては、本件実用新案登録の請求項1に係る考案の実用新案登録を取り消すことはできない。
また、他に本件実用新案登録の請求項1に係る考案の実用新案登録を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
異議決定日 1999-12-08 
出願番号 実願平5-49328 
審決分類 U 1 652・ 121- Y (E03C)
最終処分 維持    
前審関与審査官 宮崎 恭  
特許庁審判長 片寄 武彦
特許庁審判官 鈴木 憲子
斎藤 利久
登録日 1998-08-28 
登録番号 実用登録第2584652号(U2584652) 
権利者 三菱レイヨン株式会社
東京都港区港南一丁目6番41号
考案の名称 イオン水用水栓とイオン水生成設備  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ