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審決分類 審判 全部申し立て   B41J
管理番号 1010538
異議申立番号 異議1999-71421  
総通号数
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案決定公報 
発行日 2000-09-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 1999-04-15 
確定日 2000-01-24 
異議申立件数
事件の表示 実用新案登録第2582809号「印字ヘッド」の請求項1ないし2に係る実用新案に対する実用新案登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。   
結論 訂正を認める。 実用新案登録第2582809号の請求項1ないし2に係る実用新案登録を維持する。
理由 [手続の経緯]
本件実用新案登録第2582809号の実用新案登録請求の範囲の請求項1,2に係る考案は、平成3年1月31日に実用新案登録出願され、平成10年7月31日にその実用新案の設定登録がなされ、その後、その実用新案登録について小山輝晃より実用新案登録異議の申立がなされ、当審において取消理由通知がなされてその指定期間内である平成11年9月28日に訂正請求がなされ、そして、当審において訂正拒絶理由通知がなされてその指定期間内である平成11年11月25日に手続補正がなされたものである。
[訂正の適否]
【1】訂正請求に対する補正の適否
平成11年11月25日付け手続補正書による補正は、全文訂正明細書の実用新案登録請求の範囲を減縮すると共にそれとの整合を図るために考案の詳細な説明を補正するものであって、実用新案登録請求の範囲の減縮及び明りょうでない記載の釈明を目的として訂正請求書を補正するものであり、訂正請求書の要旨を変更するものではなく、実用新案法附則(平成6年法律第116号抄)第9条第2項の規定において準用する特許法第120条の4第3項で準用する同法第131条第2項の規定に適合するので、当該補正を採用する。
【2】訂正の内容
〈1〉訂正事項a
実用新案登録請求の範囲の請求項1において、「複数個の中間ニードルガイド」を、「前記先端ニードルガイドの後方に積層する形でノーズの後方より順次挿入した複数個の中間ニードルガイド」と訂正する。
〈2〉訂正事項b
実用新案登録明細書の考案の詳細な説明中、段落【0012】の【課題を解決するための手段】(実用新案登録掲載公報2頁4欄5?13行)の項の記載において、「複数個の中間ニードルガイド」を、「前記先端ニードルガイドの後方に積層する形でノーズの後方より順次挿入した複数個の中間ニードルガイド」と訂正する。
【3】訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
〈1〉訂正事項aについて
この訂正は、実用新案登録明細書の考案の詳細な説明中、段落【0014】1?2行(実用新案登録掲載公報2頁4欄22?23行)の記載及び図1の記載内において、「複数個の中間ニードルガイド」について限定したものであって、実用新案登録請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、また、実質上実用新案登録請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。
〈2〉訂正事項bについて
この訂正は、上記訂正事項aの訂正に伴い、それとの整合を図るものであって、明りょうでない記載の釈明に相当するものであり、新規事項の追加に該当せず、また、実質上実用新案登録請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。
【4】独立実用新案登録要件
〈1〉実用新案登録請求の範囲の請求項1,2に係る考案
訂正後の実用新案登録請求の範囲の請求項1,2に係る考案(以下「本件考案1,2」という)は、その実用新案登録請求の範囲の請求項1,2に記載された事項により特定される以下のとおりである。
「【請求項1】ニードルを整列させるためのニードル案内孔を有しノーズに固定された先端ニードルガイド及び前記先端ニードルガイドの後方に積層する形でノーズの後方より順次挿入した複数個の中間ニードルガイドをノーズの空洞部内に設けた印字ヘッドにおいて、前記複数の中間ニードルガイドは、それぞれが別体に構成され、前記ノーズに対し単独に前記ニードルの軸線方向に自由に移動することを可能とする隙間を有して配置されていることを特徴とする印字ヘッド。
【請求項2】前記中間ニードルガイドが更に前記ノーズに対して軸線方向と直交する方向へ自由に移動することが可能とする隙間を有して配置されていることを特徴とする請求項1記載の印字ヘッド。」
〈2〉取消理由(実用新案法第3条の2第1項違反)
1.平成11年7月12日付け取消理由通知書中の取消理由は、先の特許出願である特願平2-181803号(特開平4-67956号公報:異議申立人が提出した甲第1号証)を引用し、本件考案1,2は、それぞれ、該先の特許出願の願書に最初に添付した明細書又は図面(以下「先願明細書」という)に記載された発明と同一であると認められ、しかも、本件実用新案登録出願に係る上記考案の考案者が本件実用新案登録出願の日前の先の特許出願に係る上記発明の発明者と同一ではなく、また、本件実用新案登録出願の時にその出願人が上記先の特許出願の出願人と同一でもないから、本件考案1,2の実用新案登録は実用新案法第3条の2第1項の規定に違反してされたものであるというものである。
2.本件考案1,2に対して、前記先願明細書には、インパクトドット印字ヘッドに関する発明が記載され、その構成に関して、「複数本のインパクトドットワイヤ(1)と、上記各インパクトドットワイヤ(1)をその基端側から個別に駆動するためのワイヤ駆動手段(2)と、上記複数本のインパクトドットワイヤ(1)の先端部分を所定配列状態に案内する先端ガイド部材(3)と、上記複数本のインパクトドットワイヤ(1)を上記ワイヤ駆動手段(2)と上記先端ガイド部材(3)との間で案内するために、上記インパクトドットワイヤ(1)が個別に挿通される複数のガイド孔(4a,5a)を有し、上記ガイド孔(4a,5a)の軸に対して略垂直の平面方向に移動可能に配置された中間ガイド部材(4,5)と‥‥を有することを特徴とするインパクトドット印字ヘッド。」(特許請求の範囲:請求項1)、「中間ガイド部材4,5はワイヤ1の軸に対して略垂直の平面方向に自由に移動することができ、中間ガイド部材4,5は、各ワイヤ1に最も無理がかからないバランスのとれた状態で安定することができる。」(公報3頁右上欄11?15行)、「印字部に対向する印字ヘッドの先端部分には、各ワイヤ1の先端部分を所定の配列状態に案内するための、平板状の先端ガイド部材3が固設されている。第3図は、その先端ガイド部材3の正面図であり、ワイヤ1を嵌挿するためのガイド孔3aが‥‥穿設されている。また、ワイヤ駆動装置2と先端ガイド部材3との間でワイヤ1を案内するための平板状の第1及び第2の中間ガイド部材4,5が、印字ヘッドのノーズ部11の途中に、間隔をあけて配置されている。」(公報3頁右下欄6?17行)、「第1図及び第2図に戻って、第1及び第2の中間ガイド部材4,5は、印字ヘッドのノーズ部11内に形成された溝12,13内に緩く係合しており、板の平面方向(即ち、ガイド孔4a,5aの軸に対して略垂直の平面方向)及びガイド孔4a,5aの軸方向にもある程度自由に移動可能になっている。」(公報4頁左上欄6?12行)、「16は、ノーズ部11の側面開口部を塞ぐための蓋体である。」(公報4頁左下欄18?19行)と記載されており、
これによれば、先願明細書には、「インパクトドットワイヤ1を整列させるためのガイド孔3a,4a,5aを有しノーズ部11に固定された平板状の先端ガイド部材3及び前記先端ガイド部材3の後方に積層する形で順次挿入した複数個の中間ガイド部材4,5をノーズ部11の空洞部内に設けた印字ヘッドにおいて、前記複数の中間ガイド部材4,5は、それぞれが別体に構成され、前記ノーズ部11に対し単独に前記インパクトドットワイヤ1のガイド孔4a,5aの軸方向にある程度自由に移動可能になるようノーズ部11内に形成された溝12,13内に緩く係合して配置されていることを特徴とする印字ヘッド。」(以下「先願発明1」という)、及び、上記の如くの印字ヘッドにおいて、「前記中間ガイド部材4,5が更に前記インパクトドットワイヤ1のガイド孔4a,5aの軸に対して略垂直の平面方向にある程度自由に移動可能になるようノーズ部11内に形成された溝12,13内に緩く係合して配置されていることを特徴とする印字ヘッド。」(以下「先願発明2」という)が記載されているものと認められる。
3.本件考案1と先願発明1との対比・検討
先願発明1における「インパクトドットワイヤ1」,「ガイド孔3a,4a,5a」,「ノーズ部11」,「先端ガイド部材3」,「中間ガイド部材4,5」が、本件考案1における「ニードル」,「ニードル案内孔」,「ノーズ」,「先端ニードルガイド」,「中間ニードルガイド」に対応し、また、「ノーズ部11に対し単独にインパクトドットワイヤ1のガイド孔4a,5aの軸方向にある程度自由に移動可能になるようノーズ部11内に形成された溝12,13内に緩く係合して配置されている」が、本件考案1における「ノーズに対し単独にニードルの軸線方向に自由に移動することを可能とする隙間を有して配置されている」と同義であるから、本件考案1と先願発明1とは、「ニードルを整列させるためのニードル案内孔を有しノーズに固定された先端ニードルガイド及び前記先端ニードルガイドの後方に積層する形で順次挿入した複数個の中間ニードルガイドをノーズの空洞部内に設けた印字ヘッドにおいて、前記複数の中間ニードルガイドは、それぞれが別体に構成され、前記ノーズに対し単独に前記ニードルの軸線方向に自由に移動することを可能とする隙間を有して配置されていることを特徴とする印字ヘッド。」という基本的な構成の点で一致するが、
ノーズ(先願発明1は「ノーズ部11」、以下同様)に対し単独にニードル(「インパクトドットワイヤ1」)の軸線方向に自由に移動することを可能とする隙間を有するニードル(「インパクトドットワイヤ1」)の案内構造を得るための、ノーズ(「ノーズ部11」)空洞部内への中間ニードルガイド(「中間ガイド部材4,5」)の挿入方向について、本件考案1が、「先端ニードルガイドの後方に積層する形でノーズの後方より順次挿入した」ものであるのに対し、先願発明1が、先端ニードルガイド(「先端ガイド部材3」)の後方に積層する形で順次挿入したものではあるが、空洞部(正確には「ノーズ部11内に形成された溝12,13)内には、先願明細書の前掲「16は、ノーズ部11の側面開口部を塞ぐための蓋体である。」との記載及び第1,2図の記載からみて、ノーズ(「ノーズ部11」)の後方より挿入するものではなく、ノーズ(「ノーズ部11」)の側面開口部から挿入するものであると認められる点で構成上明らかな相違がある。
そして、本件考案1は、上記構成の相違点に係る構成を考案を特定する事項とすることにより、実用新案登録明細書に記載の「全てのニードルを挿入した場合、各ニードルによる片寄りを打ち消し合うことになり、中間ニードルガイドがニードルの軸線方向と直交する方向に片寄りしない。このため、ニードル案内孔とニードルとの間に側圧がかかりずらい。」、「同じ生産ラインで一貫して自動組立ができる。」等の先願発明1からは期待することができない格別の作用効果を奏するものと認められる。
4.本件考案2と先願発明2との対比・検討
先願発明2における「インパクトドットワイヤ1のガイド孔4a,5aの軸に対して略垂直の平面方向にある程度自由に移動可能になるようノーズ部11内に形成された溝12,13内に緩く係合して配置されている」は、本件考案2における「ノーズに対して軸線方向と直交する方向へ自由に移動することが可能とする隙間を有して配置されている」と同義であり、この点で本件考案2と先願発明2とは構成上が一致するが、上記本件考案1と先願発明1との対比・検討の項で述べたと同様の構成上の相違点がある。
そして、本件考案2も、上記構成の相違点に係る構成を考案を特定する事項とすることにより、先願発明2からは期待することができない、本件考案1の上記作用効果と同様の、格別の作用効果を奏するものと認められる。
5.取消理由についての結論
従って、本件考案1,2は、それぞれ、上記先願明細書に記載された先願発明1,2と同一であるとは認められないから、本件考案1,2は実用新案法第3条の2第1項の規定により、実用新案登録を受けることができないものとすることはできない。
〈3〉独立実用新案登録要件についてのまとめ
以上のとおりであり、また、他に本件考案1,2の実用新案登録を取り消すべき理由を発見しないから、本件考案1,2は実用新案登録出願の際独立して実用新案登録を受けることができるものである。
【5】訂正の適否のまとめ
以上のとおりであるから、上記訂正は、実用新案法附則(平成6年法律第116号抄)第9条第2項の規定において準用する特許法第120条の4第2項及び第3項で準用する同法第126条第2項,第3項,第4項の規定に適合するので、当該訂正を認める。
[異議申立]
【1】異議申立人の主張
〈1〉異議申立人は証拠方法として、甲第1号証〔特願平2-181803号(特開平4-67956号公報:取消理由に引用した先願明細書)〕を提出し、本件考案1,2は、甲第1号証の先願明細書に記載された発明(先願発明1,2)と同一であるから、本件考案1,2は、実用新案法第3条の2第1項の規定により実用新案登録を受けることができないものである旨主張している。
〈2〉異議申立人の主張についての検討・判断
異議申立人が証拠方法として提出した甲第1号証は、取消理由で引用した先願明細書であるから、本件考案1,2と先願明細書に記載された発明(先願発明1,2)との構成の一致点及び相違点についての検討・判断も、前記[訂正の適否]の欄、【4】独立実用新案登録要件の項、〈2〉で述べた内容と同様である。
従って、本件考案1,2が甲第1号証の先願明細書に記載された発明(先願発明1,2)と同一であるとは認められないから、本件考案1,2が実用新案法第3条の2第1項の規定に違反して実用新案登録されたものであるという、異議申立人の主張は採用できない。
[むすび]
以上のとおりであるから、異議申立ての理由及び証拠方法によっては、本件考案1,2の実用新案登録を取り消すことはできない。
また、他に本件考案1,2の実用新案登録を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
発明の名称 (54)【考案の名称】
印字ヘッド
(57)【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】 ニ-ドルを整列させるためのニ-ドル案内孔を有しノ-ズに固定された先端ニ-ドルガイド及び前記先端ニードルガイドの後方に積層する形でノーズの後方より順次挿入した複数個の中間ニ-ドルガイドをノ-ズの空洞部内に設けた印字ヘッドにおいて、前記複数の中間ニ-ドルガイドは、それぞれが別体に構成され、前記ノ-ズに対し単独に前記ニ-ドルの軸線方向に自由に移動することを可能とする隙間を有して配置されていることを特徴とする印字ヘッド。
【請求項2】 前記中間ニ-ドルガイドが更に前記ノ-ズに対して軸線方向と直交する方向へ自由に移動することが可能とする隙間を有して配置されていることを特徴とする請求項1記載の印字ヘッド。
【考案の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本考案は印字ヘッドに係り、特にノ-ズの空洞部内に収納され、ニ-ドルを整列させるためのニ-ドル案内孔を有するニ-ドルガイドのノ-ズへの取り付け構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、ニ-ドルガイドのノ-ズへの取り付け構造として、例えば実開昭63-101537号公報(以下、公知例1という)及び特開昭64-8052号公報(以下、公知例2という)に示すものが知られている。
【0003】
公知例1には、2つの手段が開示されている。
【0004】
第1手段は、ノ-ズを、下方が開放したノ-ズ上部材と、ニ-ドルガイドを収納し、前記ノ-ズ上部材の開放口に固定されるノ-ズ下部材とによって構成している。そして、ノ-ズ下部材にニ-ドルの突き出し方向と直交する方向に伸びる溝を形成し、この溝にニ-ドルガイドを嵌め合わせるようになっている。
【0005】
第2手段は、下方が開放したノ-ズ上部材にニ-ドルの突き出し方向と直交する方向に伸びる溝を形成し、この溝に直接ニ-ドルガイドを嵌め合わせるようになっている。
【0006】
公知例2は、内部に空洞部を形成し、複数個のニ-ドルガイドをノ-ズの後方側から積層して挿入し、後方のニ-ドルガイドをガイドホルダでニ-ドルの前方側に押し付けて固定している。
【0007】
【考案が解決しようとする課題】
公知例1の第1手段は、ノ-ズをノ-ズ上部材とノ-ズ下部材の2部材によって構成し、またノ-ズ下部材に別工程でニ-ドルガイドを取り付けておき、このノ-ズ下部材をノ-ズ上部材に固定するので、部材点数及び組立工数の増加を招くという問題点があった。またこれらの組立は、ニ-ドルガイドへのニ-ドル組立ラインと別の組立ラインで行なう必要があり、一貫組立が行なえない。
【0008】
公知例1の第2手段は、ノ-ズ上部材にニ-ドルの突き出し方向と直交する方向より直接ニ-ドルガイドを挿入する必要があること、またニ-ドルガイドをノ-ズ上部材に挿入した後は、接着剤でニ-ドルガイドをノ-ズ上部材に固定するか、またはノ-ズ上部材の開放口にノ-ズ下部材を固定する必要があるので、前記第1手段と同様の問題点を有する。
【0009】
公知例2は、側方に開放口を有しなく、またニ-ドルガイドの組立方向とニ-ドルの挿入方向とが同一であるので、前記公知例1のような問題点は解消される。
【0010】
しかし、公知例2は、全てのニ-ドルガイドが固定されてしまうので、固定された時にニ-ドルの軸線方向と直交する方向に片寄りが生じ易い。このことを更に詳記すると、先端ニ-ドルガイドの後方に配設された中間ニ-ドルガイドの外周とノ-ズの空洞部の内周(ニ-ドルの軸線方向と直交する方向)とは、中間ニ-ドルガイドが僅かに移動可能に隙間を有している。このように、中間ニ-ドルガイドとノ-ズとは、ニ-ドルの軸線方向と直交する方向に隙間を有するので、全てのニ-ドルガイドを固定してしまった場合、中間ニ-ドルガイドが前記隙間の存在によって片寄りした状態で固定され易い。この各ニ-ドルガイドの片寄りを無くすように組立直すのは、かなり困難である。このように、各ニ-ドルガイドに片寄りが生じると、ニ-ドル案内孔とニ-ドルとの間に側圧がかかった状態になり、ニードルの突没動作の負荷となる。これによってニ-ドルの動きが遅くなり、印打応答不良、リボン引っ掛け等が生じ易くなるという問題点を有する。
【0011】
本考案の目的は、前記公知例2の特徴とするコスト低減及び組立容易性を保有し、かつニ-ドルガイドのニ-ドル案内孔とニ-ドルとの側圧がかからない印字ヘッド提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための本考案の構成は、ニ-ドルを整列させるためのニ-ドル案内孔を有しノ-ズに固定された先端ニ-ドルガイド及び前記先端ニードルガイドの後方に積層する形でノーズの後方より順次挿入した複数個の中間ニ-ドルガイドをノ-ズの空洞部内に設けた印字ヘッドにおいて、前記複数の中間ニ-ドルガイドは、それぞれが別体に構成され、前記ノ-ズに対し単独に前記ニ-ドルの軸線方向に自由に移動することを可能とする隙間を有して配置されていることを特徴とする。
【0013】
【作用】
先端ニ-ドルガイドをノ-ズの後方より挿入して押圧すると、ノ-ズの凸部によって先端ニ-ドルガイドの前方の突起が弾性変形して前記凸部の穴を通る。そして、前記前方の突起が前記凸部の前方に位置すると、該突起が弾性復帰する。これにより、ノ-ズの凸部が先端ニ-ドルガイドの2個の突起間に嵌め合わされ、先端ニ-ドルガイドはノ-ズに単独で位置決め固定される。
【0014】
次に複数個の中間ニ-ドルガイドを順次積層する形でノ-ズの後方より挿入する。その後、中間ニ-ドルガイドがニ-ドルの軸線方向に僅かに移動することができる隙間を持つようにノ-ズの後端部にガイドストッパ部材を設ける。
【0015】
このように、先端ニ-ドルガイドは単独でノ-ズに固定されているので、該先端ニ-ドルガイドに挿入されるニ-ドルの先端を安定した状態に保持することができる。また他の中間ニ-ドルガイドはニ-ドルの軸線方向に移動することができるので、中間ニ-ドルガイドがニ-ドルの軸線方向と直交する方向に片寄りしない。このため、ニ-ドル案内孔とニ-ドルとの間に側圧がかかりずらい。また先端及び中間ニ-ドルガイドの組立方向とニ-ドルの組立方向が同一であるので、同じ生産ラインで一貫して自動組立ができる。
【0016】
【実施例】
以下本考案の一実施例を図1により説明する。ノ-ズアタッチメント1を固定したノ-ズ2の内部には、ニ-ドル装着用空洞部2aが形成されており、このニ-ドル装着用空洞部2aには、前方より後方に順次先端ニ-ドルガイド3、中間ニ-ドルガイド4乃至7が配設されている。先端ニ-ドルガイド3、中間ニ-ドルガイド4乃至7は、樹脂製よりなり、ニ-ドル8を整列させるためのニ-ドル案内孔が形成されている。
【0017】
先端ニ-ドルガイド3は、それ自体単独にノ-ズ2に位置決めされるように、第2図及び第3図に示すように、外壁部3aの両側面に形成された円弧状の突起3bと、この突起3bより後方に一定距離離れて形成された突起3cとを有する。なお、前記突起3bは第4図に示すように爪状に形成してもよい。そして、ノ-ズ2には、前面側に前記先端ニ-ドルガイド3の突起3bと突起3c間に嵌め合わされる凸部2bが形成されている。
【0018】
中間ニ-ドルガイド4乃至7は、それぞれ個別にノ-ズ2に位置決めされるように、中間ニ-ドルガイド5は、中間ニ-ドルガイド4より外径が大きく形成され、中間ニ-ドルガイド6には中間部に段部6aが形成されている。そして、ノ-ズ2には、中間ニ-ドルガイド5の前面を位置決めする段部2cと、中間ニ-ドルガイド6の段部6aを位置決めする段部2dとが形成されている。ここで、前記段部2c、2dの軸方向の位置(寸法)は、中間ニ-ドルガイド4乃至7を図1に示すように積層する形で順次挿入した時に、次のように形成されている。
【0019】
段部2cは、中間ニ-ドルガイド5の前面を該段部2cに当接させた時に、中間ニ-ドルガイド4の寸法誤差を吸収できるように、中間ニ-ドルガイド5の前面と中間ニ-ドルガイド4の後端間には、若干の隙間を有するように形成されている。段部2dも同様に、中間ニ-ドルガイド6の段部6aを段部2dに当接させた時に、中間ニ-ドルガイド5の寸法誤差を吸収できるように、中間ニ-ドルガイド6の前面と中間ニ-ドルガイド5の後端間には、若干の隙間を有するように形成されている。
【0020】
前記ノ-ズ2の後方外周部には、該ノ-ズ2に形成されたヨ-ク位置決め部2eに当接するようにカップ状のヨ-ク10が配設されている。ヨ-ク10の前方面には、ヒ-トシンク11を有するヒ-トシンク支持板12、インシュレ-タ13及び回路基板14が配設され、ヒ-トシンク支持板12、インシュレ-タ13及び回路基板14は段付ピン15でヨ-ク10に固定されている。
【0021】
ヨ-ク10は、外壁部10aとセンタリング部10b間にほぼ円周状に円柱状のコア部10cを複数個有しており、外壁部10aとセンタリング部10b及びコア部10cの端面は、同一面に形成されている。コア部10cには、コイル16が装着されており、コイル16の端子は回路基板14に半田付けされている。また回路基板14にはコネクタ17の端子が半田付けされている。
【0022】
ヨ-ク10のセンタリング部10bには、スペ-サ20を介してガイドストッパ部材21が配設され、ガイドストッパ部材21のストッパ部21aは前記ノ-ズ2の内部に挿入されている。従って、中間ニ-ドルガイド7の後方への位置は、ストッパ部21aによって規制される。またガイドストッパ部材21には、前記コア部10cに対応した位置にスプリング穴21bが形成されており、このスプリング穴21bにア-マチュアリタ-ンスプリング22が挿入されている。
【0023】
ヨ-ク10の後方側にはア-マチュア位置決め板23を介してリアカバ-24が配設されている。リアカバ-24は、内側に円筒状に形成された位置決め部24aがガイドストッパ部材21の内周に挿入されて径方向が位置決めされている。またリアカバ-24の位置決め部24aの前方端部とガイドストッパ部材21内には、ア-マチュアストッパ25が配設されている。前記ア-マチュア位置決め板23には、前記コア部10cに対応してそれぞれ配設されたア-マチュア30の横方向の位置を規制する図示しないガイド溝が形成されている。
【0024】
ア-マチュア30は、コア部10cに対応した部分に設けられたプランジャ部30aと、ヨ-ク10の外壁部10aの端に当接する回動支持部30bと、前記スペ-サ20に当接するストッパ部30cとを有し、ア-マチュア30の内側端部には、前記先端ニ-ドルガイド3、中間ニ-ドルガイド4乃至7のニ-ドル案内孔に挿入されたニ-ドル8が固定されている。前記ア-マチュア30の回動支持部30bは、ヨ-ク10の外壁部10aの外周よりヨ-ク10側に突出した突出部30dを有し、ナイフエッジ方式となっている。
【0025】
そこで、ア-マチュア30の内側先端側は前記ア-マチュアリタ-ンスプリング22によってア-マチュアストッパ25に当接するように付勢される。またア-マチュア30は、回動支持部30bがヨ-ク10の外壁部10aの端部のエッジ部に圧接するように、リアカバ-24に取り付けられたア-マチュア用板ばね31で付勢されている。
【0026】
次にかかる構造よりなる印字ヘッドの組立について説明する。ノ-ズアタッチメント1が取り付けられたノ-ズ2の前方側(図において右側)を下方にした状態で、以下に説明するように組立る。まず、先端ニ-ドルガイド3をノ-ズ2に後方より挿入して押圧すると、突起3bがノ-ズ2の凸部2bによって弾性変形して該凸部2bの前方に位置すると、突起3bが弾性復帰する。これにより、ノ-ズ2の凸部2bが先端ニ-ドルガイド3は突起3bと突起3c間に嵌め合わされ、先端ニ-ドルガイド3は単独でノ-ズ2に位置決め固定される。
【0027】
次に中間ニ-ドルガイド4乃至7をノ-ズ2の後方より順次挿入する。これにより、中間ニ-ドルガイド4は直接先端ニ-ドルガイド3に、中間ニ-ドルガイド5は段部2cに、中間ニ-ドルガイド6は段部2dに、中間ニ-ドルガイド7は直接中間ニ-ドルガイド6に当接し、それぞれ個別に位置決めされる。即ち、中間ニ-ドルガイド4は、先端ニ-ドルガイド3の後端によって位置決めされ、中間ニ-ドルガイド5は段部2cによって位置決めされ、中間ニ-ドルガイド6は段部2dによって位置決めされ、中間ニ-ドルガイド7は中間ニ-ドルガイド6の後端によって位置決めされる。
【0028】
一方、ヨ-ク10、ヒートシンク11付きのヒ-トシンク支持板12、インシュレ-タ13及び回路基板14は、別工程で予め段付ピン15で一体に固定しておく。そして、回路基板14に、コネクタ17及びヨ-ク10のコア部10cに装着されたコイル16を半田付けしておく。
【0029】
上記のように一体に組み立てられたヨ-ク組立体のヨ-ク10をノ-ズ2のヨ-ク位置決め部2eに載置する。その後、ヨ-ク10のセンタリング部10bにスペ-サ20を載置する。続いてガイドストッパ部材21のストッパ部21aをノ-ズ2の後端内周部に挿入して、ガイドストッパ部材21をスペ-サ20上に載置する。またヨ-ク10の外壁部10a上にア-マチュア位置決め板23を載置する。次にガイドストッパ部材21のスプリング穴21bにア-マチュアリタ-ンスプリング22を挿入する。
【0030】
次にア-マチュア30に固定されたニ-ドル8を中間ニ-ドルガイド7、6、5、4及び先端ニ-ドルガイド3のニ-ドル案内孔に挿入し、ア-マチュア30をア-マチュア位置決め板23の図示しないガイド溝に挿入し、回動支持部30bをヨーク10の外壁部10aの端面のエッジ部に当接させる。次にガイドストッパ部材21の後端内周段部21cにア-マチュアストッパ25を載置する。その後、ア-マチュア用板ばね31を有するリアカバ-24の位置決め部24aをガイドストッパ部材21の後端内周に挿入し、リアカバ-24を載置する。そして、図示しない固定金具を用いてノ-ズ2の外周とリアカバ-24の外周をはさむ。これにより、印字ヘッドが組み立てられる。
【0031】
次に作動について説明する。コイル16が励磁されていない場合には、ア-マチュア30はア-マチュアリタ-ンスプリング22及びア-マチュア用板ばね31の付勢力によってア-マチュアストッパ25に当接している。コイル16が励磁されると、コア部10cによってプランジャ部30aが引かれ、ア-マチュア30は回動支持部30bがヨ-ク10の外壁部10aの端面のエッジ部を中心として回動する。なお、印字ギャップが最適状態より大きく組立されている場合は、ストッパ部30cがスペ-サ20に当接し、印打方向の位置を規制する。
【0032】
これにより、ニ-ドル8は先端ニ-ドルガイド3の前面より突出し、図示しないインクリボンを介して紙をプラテンに押し付けてドット印字を行なう。コイル16の励磁が切れると、ア-マチュア30はア-マチュアリタ-ンスプリング22の付勢力並びにプラテンからの反力によって戻る。
【0033】
このように、先端ニ-ドルガイド3は単独でノ-ズ2に固定されているので、該先端ニ-ドルガイド3に挿入されるニ-ドル8の先端を安定した状態に保持することができる。また他の中間ニ-ドルガイド4乃至7に対しては、ノ-ズ2の後方側に、各中間ニ-ドルガイド4乃至7がニ-ドル8の軸線方向に僅かに移動することができる隙間をもって、ガイドストッパ部材21が設けられると共に、ニ-ドル8の軸線方向と直交する方向へも僅かに移動可能に挿入されているので、中間ニ-ドルガイド4乃至7にニ-ドル8が挿入されると、ニ-ドル8に応じて中間ニ-ドルガイド4乃至7がニ-ドル8の軸線方向に移動する。従って、全てのニ-ドルを挿入した場合、各ニ-ドルによる片寄りを打ち消し合うことになり、中間ニ-ドルガイド4乃至7がニ-ドル8の軸線方向と直交する方向に片寄りしない。このため、先端及び中間ニ-ドルガイド3乃至7のニ-ドル案内孔とニ-ドル8との間に側圧がかかりずらい。また先端及び中間ニ-ドルガイド3乃至7の組立方向とニ-ドル8の組立方向が同一であるので、同じ生産ラインで一貫して自動組立ができる。
【0034】
【考案の効果】
本考案によれば、先端ニ-ドルガイドは単独でノ-ズに固定されているので、該先端ニ-ドルガイドに挿入されるニ-ドルの先端を安定した状態に保持することができる。また他の複数の中間ニ-ドルガイドに対しては、前記ノ-ズの後方側に、各中間ニ-ドルガイドがニ-ドルの軸線方向に僅かに移動することができる隙間をもって、ガイドストッパ部材が設けられると共に、ニ-ドルの軸線方向と直交する方向へも僅かに移動可能に挿入されているので、中間ニ-ドルガイドにニ-ドルが挿入されると、ニ-ドルに応じて中間ニ-ドルガイドがニ-ドルの軸線方向に移動する。従って、全てのニ-ドルを挿入した場合、各ニ-ドルによる片寄りを打ち消し合うことになり、中間ニ-ドルガイドがニ-ドルの軸線方向と直交する方向に片寄りしない。このため、ニ-ドル案内孔とニ-ドルとの間に側圧がかかりずらい。また先端及び中間ニ-ドルガイドの組立方向とニ-ドルの組立方向が同一であるので、同じ生産ラインで一貫して自動組立ができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本考案の一実施例を示す印字ヘッドの断面図である。
【図2】
図1のA-A線断面図である。
【図3】
先端ニ-ドルガイドの拡大斜視図である。
【図4】
先端ニ-ドルガイドの他の実施例を示す拡大斜視図である。
【符号の説明】
2 ノ-ズ
2a 空洞部
2b 凸部
2c、2d 段部
3 先端ニ-ドルガイド
3b、3c 突起
4乃至7 中間ニ-ドルガイド
6a 段部
8 ニ-ドル
21 ガイドストッパ部材
訂正の要旨 訂正の要旨
▲1▼訂正事項a
実用新案登録請求の範囲の請求項1において、「複数個の中間ニードルガイド」を、「前記先端ニードルガイドの後方に積層する形でノーズの後方より順次挿入した複数個の中間ニードルガイド」と訂正する。
▲2▼訂正事項b
実用新案登録明細書の考案の詳細な説明中、段落【0012】の【課題を解決するための手段】(実用新案登録掲載公報2頁4欄5?13行)の項の記載において、「複数個の中間ニードルガイド」を、「前記先端ニードルガイドの後方に積層する形でノーズの後方より順次挿入した複数個の中間ニードルガイド」と訂正する。
異議決定日 1999-12-03 
出願番号 実願平3-8400 
審決分類 U 1 651・ 16- YA (B41J)
最終処分 維持    
前審関与審査官 名取 乾治  
特許庁審判長 小澤 和英
特許庁審判官 伊波 猛
嶋野 邦彦
登録日 1998-07-31 
登録番号 実用登録第2582809号(U2582809) 
権利者 シチズン時計株式会社
東京都新宿区西新宿2丁目1番1号
考案の名称 印字ヘッド  
代理人 手島 直彦  
代理人 塩野入 章夫  
代理人 湯田 浩一  
代理人 魚住 高博  
代理人 塩野入 章夫  
代理人 杉山 秀雄  
代理人 竹本 松司  
代理人 手島 直彦  
代理人 杉山 秀雄  
代理人 魚住 高博  
代理人 湯田 浩一  
代理人 竹本 松司  

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