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審決分類 |
審判 一部申し立て A63B |
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管理番号 | 1010539 |
異議申立番号 | 異議1997-71339 |
総通号数 | 9 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 実用新案決定公報 |
発行日 | 2000-09-29 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 1997-02-14 |
確定日 | 2000-01-17 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 実用新案登録第2507397号「ラケット」の実用新案に対する実用新案登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 訂正を認める。 実用新案登録第2507397号の実用新案登録を維持する。 |
理由 |
I.手続の経緯 本件実用新案登録第2507397号に係る考案は、昭和62年8月28日に特許出願され、平成5年4月27日に出願変更されて実願平5-22322号として出願され、その出願の考案は平成8年5月30日に実用新案の設定登録がされ、その後、異議申立人美津濃株式会社より実用新案登録異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成11年11月22日に訂正請求がなされたものである。 II.訂正の適否についての判断 訂正請求に対する訂正の適否について (1)訂正の要旨 訂正事項a 実用新案登録請求の範囲中、請求項1および2を削除する。 訂正事項b 各請求項を順次繰り上げて新請求項とするとともに、それぞれの請求項において引用する請求項の番号を対応する新請求項の番号に訂正する。なお、請求項3は新請求項1として次のように訂正する。 「【請求項1】把手部分(18)と、ループ形状のヘッド部分(20)と、前記把手部分(18)及びヘッド部分(20)に結合するのど部分(19)とを有し、かつ、把手の中心線と整列した縦方向軸線(22)、並びに前記ループ形状のヘッド部分(20)の面と平行に前記縦方向軸線を通して延びる中央面(MP)を有したラケット(15)であって、180Hzから250Hzまでの範囲内で前記中央面(MP)と垂直に延びる面における自由一自由抑制状態下での曲げの第1のモードの周波数を有するラケット(15)において、227Hzから315Hzの範囲内で前記中央面(MP)と垂直に延びる面におけるクランプー自由抑制状態下での曲げの第2のモードの周波数を有することを特徴とするラケット。」 訂正事項c i.明細書第6頁【0013】の記載を次のように訂正する。 「最適なテニス・ラケットは、2ミリ秒から3ミリ秒のボール/ラケットの衝突時間が普通であるので、180Hzと250Hzとの間で”自由一自由”抑制状態下での曲げの第1のモードの周波数を有するものにおいて、把手上に7.62cm(3インチ)で堅固な支持体によって吊された68.58cm(27インチ)のラケットを考慮して、“クランプー自由”状態下での周波数範囲は、曲げの第2のモードに対して227Hzから315Hzまでの間にある。ラケットの特定の一実施例は、”自由一自由”抑制状態下での曲げの第1のモードに対して200Hz及び210Hz間の周波数範囲を、そして“クランプ一自由”状態下での曲げの第2のモードに対しては230Hz及び265Hz間の周波数を有している。」 ii.明細書第7頁【0016】の記載を次のように訂正する。 「ラケットが、180Hzから250Hzまでの範囲内で自由一自由抑制状態下での曲げの第1のモードの周波数を有するとともに、227Hzから315Hzの範囲内でクランプー自由抑制状態下での曲げの第2のモードの周波数を有するように、テニス・ラケットのこわさを調節することが望ましい。図1?図9はかかる周波数を有するテニス・ラケット15の特定の一実施例を示す。」 iii.明細書第10頁【0031】の記載を次のように訂正する。 「図3?図9に示されたラケット・フレームの形状及び寸法は、ラケットが通常のラケットよりも堅くすなわちより大きいこわさを有し、そして自由一自由抑制下での曲げの第1のモードに対しては180Hzから250Hzまでの周波数を有するとともに、クランプー自由抑制下での曲げの第2のモードに対しては227Hzから315Hzまでの間の所望の周波数を有するように、中間面MPに対する慣性モーメントを提供する。最小高さAに対する最大高さBの割合は、約1.35から約1.38であるのが望ましい。」 iv.明細書第11頁【0033】の記載を次のように訂正する。 「特定の形状及び寸法を有した大形ヘッドのラケット及び中間サイズのラケットが、所望のこわさ及び周波数を達成するようにここに説明されてきた。しかしながら、結果のこわさもしくは堅固さが所望の周波数を提供する限り、他の形状及び寸法が用いられ得るということが理解される。重要な目的は、180Hzから250Hzまでの自由一自由抑制下での曲げの第1のモードの周波数を有するラケットにおいて、227Hzから315Hzまでのクランプー自由抑制下での曲げの第2のモードの周波数を達成することである。」 (2)訂正の目的の存否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否 訂正事項aは、請求項1および2を削除するもので、実用新案登録請求の範囲の減縮を目的とするものである。 訂正事項bは、この訂正は請求項1および2の削除に伴い、請求項3?請求項14を順次繰り上げて請求項1?請求項12とするものであり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 訂正事項c 訂正事項i?ivの事項については、訂正事項aおよびbの訂正に伴い、訂正事項bの訂正後の請求項1に整合させるためになされたもので、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 (むすび) 以上のとおり、訂正事項aからcは、いずれも実用新案登録請求の範囲の減縮または明りようでない記載の釈明を目的とし、願書に添付された明細書又は図面に記載された範囲内のものと認められ、実質上実用新案登録請求の範囲を拡張し又は変更するものとも認められない。 (3)独立登録要件 ▲1▼訂正後の考案の要旨は、訂正請求書に添付された訂正明細書及び図面の記載からみて、訂正後の実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。 「把手部分(18)と、ループ形状のヘッド部分(20)と、前記把手部分(18)及びヘッド部分(20)に結合するのど部分(19)とを有し、かつ、把手の中心線と整列した縦方向軸線(22)、並びに前記ループ形状のヘッド部分(20)の面と平行に前記縦方向軸線を通して延びる中央面(MP)を有したラケット(15)であって、180Hzから250Hzまでの範囲内で前記中央面(MP)と垂直に延びる面における自由一自由抑制状態下での曲げの第1のモードの周波数を有するラケット(15)において、227Hzから315Hzの範囲内で前記中央面(MP)と垂直に延びる面におけるクランプー自由抑制状態下での曲げの第2のモードの周波数を有することを特徴とするラケット。」(以下、「本件考案」という。) ▲1▼引用刊行物 当審が通知した取消理由で引用した刊行物1:ソニー株式会社より昭和58年4月15日発行の「japanese journal of SPORTS SClENCES Vol.2 No.4 April 1983」の表紙、目次、第245頁?第259頁、奥付、裏表紙および刊行物2:1980年(昭和50年)10月11日?10月13日に介された「日本体育学会第31回大会号」の表紙、目次、第448頁、裏表紙には、本件考案の「把手部分(18)と、ループ形状のヘッド部分(20)と、前記把手部分(18)及びヘッド部分(20)に結合するのど部分(19)とを有し、かつ、把手の中心線と整列した縦方向軸線(22)、並びに前記ループ形状のヘッド部分(20)の面と平行に前記縦方向軸線を通して延びる中央面(MP)を有したラケット(15)であって、180Hzから250Hzまでの範囲内で前記中央面(MP)と垂直に延びる面における自由一自由抑制状態下での曲げの第1のモードの周波数を有するラケット(15)において、227Hzから315Hzの範囲内で前記中央面(MP)と垂直に延びる面におけるクランプー自由抑制状態下での曲げの第2のモードの周波数を有することを特徴とするラケット。」が記載されていない。 したがって、本件考案は、上記刊行物1および刊行物2記載されたものからきわめて容易に考案をすることができたものとは認められない。 よって、本件考案は、実用新案登録出願の際に独立して実用新案登録を受けることができるものと認める。 以上のとおりであるから、上記訂正請求は、平成6年法律第116条付則第9条第2項により準用され、同附則第10条第1項の規定により、なお従前の例によるとされる、特許法126条の4第2項及び第3項で準用する同法第126条第2項乃至第4項に規定に適合するので、当該訂正を認める。 III.実用新案登録異議についての判断 請求項1および請求項2に係る考案は、訂正の結果削除され、実用新案登録異議の申立ての対象が存在しない。 IVむすび 以上のとおりであるから、実用新案登録異議申立ての理由及び証拠によっては、本件考案の登録を取り消すことはできない。 また、他に本件考案の登録を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【考案の名称】 ラケット (57)【実用新案登録請求の範囲】 【請求項1】 把手部分(18)と、ループ形状のヘッド部分(20)と、前記把手部分(18)及びヘッド部分(20)に結合するのど部分(19)とを有し、かつ、把手の中心線と整列した縦方向軸線(22)、並びに前記ループ形状のヘッド部分(20)の面と平行に前記縦方向軸線を通して延びる中央面(MP)を有したラケット(15)であって、180Hzから250Hzまでの範囲内で前記中央面(MP)と垂直に延びる面における自由ー自由抑制状態下での曲げの第1のモードの周波数を有するラケット(15)において、227Hzから315Hzの範囲内で前記中央面(MP)と垂直に延びる面におけるクランプー自由抑制状態下での曲げの第2のモードの周波数を有することを特徴とするラケット。 【請求項2】 クランプー自由抑制状態下での曲げの第2のモードの前記周波数は、230Hzから265Hzの範囲内にある請求項1のラケット。 【請求項3】 前記ラケットは、多層の(31?42)樹脂含浸グラファイト・ファイバからなる管から形成され、該層のいくつかのファイバは約227528.4×10^(6)N/m^(2)(33,000,000ポンド/平方インチすなわちpsi)の弾性係数を有し、他の層のファイバは、約310266×10^(6)N/m^(2)(45,000,000ポンド/平方インチすなわちpsi)の弾性係数を有している請求項1または2のラケット。 【請求項4】 前記ラケットは、12層(31?42)の樹脂含浸グラファイト・ファイバからなる管から形成され、該層の内の2層のファイバは約310266×10^(6)N/m^(2)(45,000,000ポンド/平方インチすなわちpsi)の弾性係数を有し、他の層のファイバは、約227528.4×10^(6)N/m^(2)(33,000,000ボンド/平方インチすなわちpsi)の弾性係数を有している請求項1ないし3いずれかのラケット。 【請求項5】 前記ファイバの約10%から20%は約310266×10^(6)N/m^(2)(45,000,000ポンド/平方インチすなわちpsi)の弾性係数を有し、該ファイバの約80%から90%は約227528.4×10^(6)N/m^(2)(33,000,000psi)の弾性係数を有している請求項3または4のラケット。 【請求項6】 2つの内部層(31、32)及び8つの外部層は約227528.4×10^(6)N/m^(2)(33,000,000ポンド/平方インチすなわちpsi)の弾性係数を有したグラファイト・ファイバを含む請求項4または5のラケット。 【請求項7】 前記管は、約1.143mmから1.27mm(0.045から0.05インチ)のウォール・ヒュックネン(a wall Hucknen)を有した請求項3ないし6いずれかのラケット。 【請求項8】 前記のど部分は、前記把手部分(18)から分岐して前記ヘッド部分(20)と合体する一対のフレーム部材(21、22)を有し、前記ラケット(15)は、前記分岐するフレーム部材(21、22)間に延びかつ前記ループ形状のヘッド部分(20)の底部を形成するわく片(23)を含み、前記中央面(MP)と直角な前記ラケット(15)の高さ(B)は、前記分岐するフレーム部材(21、22)における、前記わく片(23)と該分岐するフレーム部材(21、22)との合体領域で最大である請求項1ないし7いずれかのラケット。 【請求項9】 前記ヘッド部分(20)の頂部の高さ(A)に対する前記ラケット(15)の前記最大高さ(B)の割合は、約1.35から1.38である請求項8のラケット。 【請求項10】 最大の断面高さ(B)のフレーム(17)上の点における面積の慣性モーメントが、約13.73cm^(4)(0.33インチ^(4))である請求項8または9のラケット。 【請求項11】 前記ラケットの高さは、前記最大高さ(B)から前記ヘッド部分(20)の頂部まで連続的に減少し、かつ前記最大高さ(B)から前記把手部分(18)の頂部まで連続的に減少する請求項8または9のラケット。 【請求項12】 約685.8mm(27インチ)の長さを有する請求項1のラケット。 【考案の詳細な説明】 【0001】 【考案の背景】 この考案は、概して、制限された反発力のボールでもってゲームを遊技するための、テニス・ラケットのようなラケットに関するものである。 【0002】 【従来の技術】 通常のテニス・ラケットにおいては、フレーム及びシャフト部分のこわさもしくは堅固性は、ラケットの糸もしくはガットを張った面をボールが打つときに、ヘッド・フレーム部分がラケットの縦方向の軸線の外に押しやられるようなものである。このたわみは、弾んだボールの飛行路に不利に影響する。 【0003】 入力荷重を受けるどのようなボディもしくは胴体においても、ある複雑な振動反応が生じる。胴体のこの複雑に変形された形状は、様々な振幅及び周波数を有する無数の単純な振動のモード形状の和に変形され得る。振動する胴体と関連した特定の周波数、モード形状、及び振幅は、いくつかの因子に依存している。これらの因子の中には、胴体内のこわさもしくは堅固さ及び重量の配分と共に、胴体の抑制のレベルがある。 【0004】 こわさ及び重量配分は、2つの方法で制御され得る。1つの方法は、胴体の部分に特別の補強材料を使用することであり、この場合これら材料は、より大きい強度対重量比及びこわさ対重量比を有している。こわさ及び重量配分を制御するもう1つの方法は、胴体の断面の形状を変えることであり、特に、こわさ対重量比が変化するように該断面の面積慣性モーメント(the area-moment-of-inertia)を変化させつつ、該断面において一定量の材料を用いることである。こわさを増せば振動周波数を増加し、そして動的な変形振幅を減少する。重量を増せば振動周波数を減じ、動的な変形振幅を減じる。 【0005】 この説明においては、2つの特定の抑制状態が重要である。1つの極端な状態、すなわち“自由ー自由”抑制の状態は、空間において抑制されずに振動する胴体を表わす。これは、胴体を弾力のあるバンドで吊し、それが自由に振動するのを許容することによって、実験室内で近似され得る。“自由ー自由”抑制状態(“free-free”constraint conditions)下での曲げにおける単純なビームに対する最初の2つの振動モード形状が図10に示されている。 【0006】 反対の極端な状態には、“クランプー自由”抑制状態(“clamped-free” constraint condition)があり、この場合、胴体の一端は、支持取付具に固定的にクランプされ、他端は、自由に振動することが可能である。“クランプー自由”抑制状態下での曲げにおける単純なビームに対する最初の3つの振動モード形状が、図11に示されている。図10におけるモード1及び2は、図11における、それぞれモード2及び3とほぼ同じ形状を有しているのが解る。“自由ー自由”状態下での曲げにおいて胴体に対して固定的なクランプを付加すると、付加的な低周波モードの振動の励起をもたらす。 【0007】 “自由ー自由”抑制状態下でのモード1及び2の周波数は、“クランプー自由”状態下での関連のモード形状(それぞれモード2及び3)に対する周波数と同じではない。抑制状態の一方の下でのモード形状の周波数は、他方の状態の下でのモード形状の周波数から、以下の式を使って近似され得る: 【0008】 【数1】 Freq cf=Freq ff×(Lff/Lcf)^(2) (式1) (Lcf=Lff-Lccでもって) ここに、Freq cf=“クランプー自由”状態下でのモード形状の周波数 Freq ff=“自由ー自由”状態下でのモード形状の周波数 Lff=“自由ー自由”状態下でのビームの長さ Lcc=クランプ取付具下に保持されたビームの長さ Lcf=“クランプー自由”状態下でのビームの等価長 【0009】 テニス・ラケットは、遊技中に生じるボール/ラケットの衝突に起因して、単純なビームに対して上述したものと同様の振動特性を呈する。実験室での試験が、種々のラケットに関して行われた。試験の結果は、“自由ー自由”抑制状態下での通常のテニス・ラケットに対して、曲げの第1のモードは、100Hzから170Hzまでの範囲内にあるということを示した。“クランプー自由”抑制状態下での通常のラケットは、曲げの第1及び第2のモードに対して、それぞれ、25Hzから50Hz、及び125Hzから210Hz間の周波数範囲を呈した。米国特許第4,664,380号明細書(独国公開DE-OS3434898)は、“クランプー自由”抑制下でのここに説明したラケットの共振周波数が70Hzから200Hzであると述べている。 【0010】 “自由ー自由”状態下で振動するテニス・ラケットは、“クランプー自由”状態においてラケットが振動するよりも一層密接に遊技中のテニス・ラケットの行為を近似することが研究の結果分かってきた。“クランプー自由”抑制状態が試験中に存在するならば、“クランプー自由”状態下での曲げの第2のモードが“自由ー自由”に対する第1のモードの周波数の値を近似するよう、周波数の値を変更するために式1が用いられなければならない。 【0011】 通常のテニス・ボールに対して、ボール/ラケットの衝突時間は、2ミリ秒と7ミリ秒の間の範囲に及び、平均は、2ミリ秒と3ミリ秒の間にあるということが観察されている。この期間中、ラケットのヘッド部分は、ボールからの押しつけ入力により、後方にたわんでいる。通常のラケットにおいては、ラケットが変形し始めるときのボール/ラケットの衝突点と、ラケットがたわみの最大点に達したすぐ後との間のある時刻で、ボールは糸を離れる。結果として、ショットの飛行路は影響され(図12参照)、そして弾み角がゼロでありかつラケットのヘッドの速度が最大である、その変形されない位置までラケットが戻らないので、エネルギが失われることとなる。 【0012】 【考案の概要】 ラケットがたわんでいる間、ボールが糸上に留どまり、変形されない位置に戻ってしまうまで糸を離れないならば、ボールの飛行路は影響されず、ショットの正確さが改善される(図13参照)。加うるに、ラケット・ヘッドの速度はこの点において最大であるので、より大きいエネルギがボールに与えられ、一層強力なショットがもたらされる。テニス・ボールの変形期間を変えることは、問題に対する望ましい解決策として考慮されない。それ故、最適な動作において、テニス・ラケットは、遊技中にラケットに励起される支配的な振動モードの周波数が、ボール/ラケットの接触の期間と一致するように設計されなければならない。特に、“自由ー自由”抑制状態下でのテニス・ラケットに対する曲げの第1のモードの半分の期間は、糸上にテニス・ボールが存在する時間と等しくあるべきである。“自由ー自由”抑制状態下での曲げの第1のモードは、遊技中に励起される支配的な振動モードであるので、このモードが選ばれる。 【0013】 最適なテニス・ラケットは、2ミリ秒から3ミリ秒のボール/ラケットの衝突時間が普通であるので、180Hzと250Hzとの間で“自由ー自由”抑制状態下での曲げの第1のモードの周波数を有するものにおいて、把手上に7.62cm(3インチ)で堅固な支持体によって吊された68.58cm(27インチ)のラケットを考慮して、“クランプー自由”状態下での周波数範囲は、曲げの第2のモードに対して227Hzから315Hzまでの間にある。ラケットの特定の一実施例は、“自由ー自由”抑制状態下での曲げの第1のモードに対して200Hz及び210Hz間の周波数範囲を、そして“クランプー自由”状態下での曲げの第2のモードに対しては230Hz及び265Hz間の周波数を有している。 【0014】 以下、この考案を添付図面に示した図示実施例と関連させて説明する。 【0015】 【実施例】 前述したように、通常のテニス・ボールがテニス・ラケットに衝突した後、ボールがラケットの糸もしくはガット張り材料を去る前にラケットが元の変形されない位置に戻るように、テニス・ラケットの堅さもしくはこわさを調節することが望ましい。これらの条件下では、ラケットと衝突する前後でのボールの飛行路は影響されず、そして図13に示されるようにショットの正確さが改良されるであろう。さらに、一層大きなエネルギが弾んだボールに与えられて、より力強いショットがもたらされる。 【0016】 ラケットが、180Hzから250Hzまでの範囲内で自由ー自由抑制状態下での曲げの第1のモードの周波数を有するとともに、227Hzから315Hzの範囲内でクランプー自由抑制状態下での曲げの第2のモードの周波数を有するように、テニス・ラケットのこわさを調節することが望ましい。図1?図9はかかる周波数を有するテニス・ラケット15の特定の一実施例を示す。 【0017】 最初に図1及び図2を参照すると、ラケット15は、握りもしくは把手部分18と、のど部分19と、ヘッド部分20とを有しているフレーム17を含んでいる。のど部分19は、把手部分18から分岐しかつヘッド部分20と合体する一対のフレーム部材21及び22を含んでいる。ヨーク片もしくはわく片23は、のど片21及び22間に延びており、かつヘッド部分の底部を形成しており、該ヘッド部分は概してループ形状もしくは卵形である。 【0018】 テニス・ラケットはまた、ヘッド部分20及びわく片23における通常の開口内に延びる複数の縦方向の糸24及び横の糸25を含んでいる。こすり及び摩耗からヘッドを保護するために、ヘッド部分の頂部の回りにプラスティックもしくは可塑性バンパ26が延びている。バンパは糸によって適所に保持され、またラケット・フレームにおける穴に逆らって糸を擦り減らすことから保護する。可塑性挿入物27が、バンパ26の端及びのど部分19間に延び、ヘッドの低部分における糸を保護する。 【0019】 ラケットはまた、把手部分18に通常の把手被覆物28及び端キャップ29を含んでいる。把手被覆物はらせん形に巻かれた革の帯から形成され得る。 【0020】 図3及び図4は、糸及び把手被覆物の無いラケット・フレーム17を示す。 【0021】 図5?図8を参照すると、フレーム部分18?23の各々は、約0.1143cm(0.045インチ)から約0.127cm(0.050インチ)までの壁厚さを有した管状のフレーム部材から形成される。管状のフレーム部材は、膨張させられるブラダもしくは袋の回りにくるまれる樹脂含浸グラファイト・ファイバの層から形成される。当該技術分野で良く知られているように、ラケット・フレームがモールドもしくは鋳型に置かれたとき、樹脂が硬化するまでグラファイト・ファイバの層を鋳型に押し付けるように袋が膨らまされる。 【0022】 図9は、好適な実施例の管状のファイバ部材を形成するために用いられる樹脂含浸グラファイト・ファイバの層31?42を示している。層31?42の各々は、斜線で示された方向に配向された一方向性のグラファイト・ファイバを含んでいる。層31、32、及び35?42は、約227528.4×10^(6)N/m^(2)(33,000,000ポンド/平方インチすなわちpsi)の弾性係数を有するグラファイト・ファイバを含んでいる。層33及び34は、約310266×10^(6)N/m^(2)(45,000,000ポンド/平方インチすなわちpsi)の弾性係数を有するグラファイト・ファイバを含んでいる。ラケット・フレームに用いられるグラファイト・ファイバの約10%から20%までは高い弾性係数を有しており、グラファイト・ファイバの約80%から90%までは低い弾性係数を有している。高い弾性係数のグラファイト・ファイバを用いると、ラケットの重量を増加することなくラケットの堅さもしくはこわさを増加する。図9に示されたラケット・フレームの外側の層43は塗料の層である。 【0023】 図3?図6に戻ると、ヘッドの外側表面には、糸の穴46が配置された溝45が設けられている。溝45はまた、バンパ26及び挿入物27(図2)を位置付けるためにも働く。 【0024】 ラケット・フレームの高さは、図4に関して決定され、把手部分18の縦方向の中心線CLを通して延びる中央面MPと直角の、ラケットの寸法を測定する。縦方向の中心線CLはまた、図3のラケットの縦方向の軸線を形成する。ラケットの糸は、中央面MP内にあり、かつ図10及び図11に示されたラケットの曲げは、中央面と直角に延びる面内に生ずる。 【0025】 図4のラケット・フレームの高さは、フレームのヘッド部分の頂部における寸法Aから、フレームののど部分における寸法Bまで連続的に増加する。ラケットの高さは、寸法Bから、把手部分18の頂部における寸法Cまで連続的に減少する。把手部分の高さは、寸法Cから寸法Dまで増加し、そして把手部分の底部まで連続的にそのままである。 【0026】 ラケット・フレームの最大高さBは、のど部材21及び22がヘッド部分20と合体する領域で生ずる。図3及び図4を比較すると、最大寸法Bは、わく片が縦方向の中心線CLによって交差される該わく片23の中心と概して整列する。図6及び図7を比較すると、わく片23の高さは、わく部材21及び22の高さ及び最大高さBの領域におけるヘッド部分20の高さよりも実質的に少ない。 【0027】 大きいヘッドのラケットの特定の一実施例において、ヘッド部分の内側の縦方向の寸法Eは、34.9623cm(13.7647インチ)であり、ヘッド部分の内側の横の寸法Fは、25.7970cm(10.1563インチ)であり、全体の長さLは、68.4784cm(26.960インチ)であった。ヘッド部分の頂部における高さAは2.7686cm(1.090インチ)であり、最大高さBは3.81cm(1.500インチ)であり、高さCは2.54cm(1.000インチ)であり、そして高さDは、通常の把手の寸法に従った把手の大きさに依存して変化した。図5を参照すると、ヘッド部分の頂部におけるヘッドの部分の全体幅Gは、0.965cm(0.380インチ)であった。図7を参照すると、わく片23の高さHは、2.743cm(1.080インチ)であり、そして幅Iは、1.016cm(0.400インチ)であった。ヘッド部分の最小高さAに対する最大高さBの割合は、1.5/1.09すなわち1.376であった。 【0028】 最大の断面高さのフレーム上の点におけるラケットの面積の慣性モーメント(The area moment of inertia)は、13.73cm^(4)(0.333インチ^(4))であ る。自由ー自由抑制状態下での曲げの第1のモードの周波数は、204Hzであり、クランプー自由状態下での曲げの第2のモードの周波数は、230Hzであった。 【0029】 中間の大きさのラケットの特定の一実施例においては、ヘッド部分の内側の縦方向寸法Eは、31.801cm(12.520インチ)であり、内側の横の寸法Fは、23.698cm(9.330インチ)であり、長さLは68.423cm(26.938インチ)であった。ヘッドの頂部における高さAは2.337cm(0.920インチ)であり、最大高さBは、3.175cm(1.250インチ)であり、高さCは2.54cm(1.000インチ)であり、そして高さDは、把手の大きさに依存して変化した。ヘッドの頂部におけるヘッド部分の幅Gは、1.029cm(0.405インチ)であった。わく片23の高さHは2.299cm(0.905インチ)であり、そして幅Iは1.1422cm(0.4497インチ)であった。ヘッド部分の最小高さAに対する最大高さBの比もしくは割合は、1.25/0.92、すなわち1.3587であった。 【0030】 自由ー自由状態下での曲げの第1のモードの周波数は208Hzであり、クランプー自由状態下での曲げの第2のモードの周波数は230Hzであった。 【0031】 図3?図9に示されたラケット・フレームの形状及び寸法は、ラケットが通常のラケットよりも堅くすなわちより大きいこわさを有し、そして自由ー自由抑制下での曲げの第1のモードに対しては180Hzから250Hzまでの周波数を有するとともに、クランプー自由抑制下での曲げの第2のモードに対しては227Hzから315Hzまでの間の所望の周波数を有するように、中間面MPに対する慣性モーメントを提供する。最小高さAに対する最大高さBの割合は、約1.35から約1.38であるのが望ましい。 【0032】 層33及び34において比較的高い弾性係数のグラファイト・ファイバを用いると、ラケットの全重量を正常な範囲内に維持しつつ、フレームの重量を、バンパ26を収容するよう充分に減ずるのを許容する。フレームは、通常の樹脂であって良い、約270グラムのグラファイト・ファイバ及び樹脂を使用する。 【0033】 特定の形状及び寸法を有した大形ヘッドのラケット及び中間サイズのラケットが、所望のこわさ及び周波数を達成するようここに説明されてきた。しかしながら、結果のこわさもしくは堅固さが所望の周波数を提供する限り、他の形状及び寸法が用いられ得るということが理解される。重要な目的は、180Hzから250Hzまでの自由ー自由抑制下での曲げの第1のモードの周波数を有するラケットにおいて、227Hzから315Hzまでのクランプー自由抑制下での曲げの第2のモードの周波数を達成することである。 【0034】 以上においては、この考案の特定の実施例を、説明の目的で詳細に述べてきたけれども、ここに与えられた詳細の多くは、この考案の精神及び範囲から逸脱することなく、当業者によって相当に変更され得るということが理解される。 【図面の簡単な説明】 【図1】 この考案の一実施例に従って形成されたテニス・ラケットを示す上面図である。 【図2】 図1のラケットの側面図である。 【図3】 糸及び把手被覆物の無い状態で、図1のラケットのフレームを示す上面図である。 【図4】 図3のラケット・フレームの側面図である。 【図5】 図3の線5ー5に沿って切り取られた断面図である。 【図6】 図3の線6ー6に沿って切り取られた断面図である。 【図7】 図3の線7ー7に沿って切り取られた断面図である。 【図8】 図3の線8ー8に沿って切り取られた断面図である。 【図9】 多層のフラファイト・ファイバを示すラケット・フレームの部分の斜視図である。 【図10】 自由ー自由抑制状態におけるテニス・ラケットの曲げの第1及び第2のモードを示す図である。 【図11】 クランプー自由抑制状態下でのテニス・ラケットの曲げの第1、第2、及び第3のモードを示す図である。 【図12】 通常のテニス・ボールが衝突後にラケットから弾んだときの従来のラケットの変形を示す図である。 【図13】 通常のテニス・ボールが衝突後にラケットから弾んだときのこの考案によるテニス・ラケットの変形を示す図である。 【符号の説明】 15 テニス・ラケット 17 フレーム 18 把手部分 19 のど部分 20 ヘッド部分 21、22 フレーム部材 23 わく片 24 縦方向の糸 25 横の糸 26 バンパ 27 挿入物 31?42 樹脂含浸グラファイト・ファイバの層 43 塗料の層 45 溝 46 糸穴 |
訂正の要旨 |
(1)訂正の要旨 訂正事項a 実用新案登録請求の範囲中、請求項1および2を削除する。 訂正事項b 各請求項を順次繰り上げて新請求項とするとともに、それぞれの請求項において引用する請求項の番号を対応する新請求項の番号に訂正する。なお、請求項3は新請求項1として次のように訂正する。 「【請求項1】把手部分(18)と、ループ形状のヘッド部分(20)と、前記把手部分(18)及びヘッド部分(20)に結合するのど部分(19)とを有し、かつ、把手の中心線と整列した縦方向軸線(22)、並びに前記ループ形状のヘッド部分(20)の面と平行に前記縦方向軸線を通して延びる中央面(MP)を有したラケット(15)であって、180Hzから250Hzまでの範囲内で前記中央面(MP)と垂直に延びる面における自由一自由抑制状態下での曲げの第1のモードの周波数を有するラケット(15)において、227Hzから315Hzの範囲内で前記中央面(MP)と垂直に延びる面におけるクランプー自由抑制状態下での曲げの第2のモードの周波数を有することを特徴とするラケット。」 訂正事項c i.明細書第6頁【0013】の記載を次のように訂正する。 「最適なテニス・ラケットは、2ミリ秒から3ミリ秒のボール/ラケットの衝突時間が普通であるので、180Hzと250Hzとの間で”自由一自由”抑制状態下での曲げの第1のモードの周波数を有するものにおいて、把手上に7.62cm(3インチ)で堅固な支持体によって吊された68.58cm(27インチ)のラケットを考慮して、“クランプー自由”状態下での周波数範囲は、曲げの第2のモードに対して227Hzから315Hzまでの間にある。ラケットの特定の一実施例は、”自由一自由”抑制状態下での曲げの第1のモードに対して200Hz及び210Hz間の周波数範囲を、そして“クランプ一自由”状態下での曲げの第2のモードに対しては230Hz及び265Hz間の周波数を有している。」 ii.明細書第7頁【0016】の記載を次のように訂正する。 「ラケットが、180Hzから250Hzまでの範囲内で自由一自由抑制状態下での曲げの第1のモードの周波数を有するとともに、227Hzから315Hzの範囲内でクランプー自由抑制状態下での曲げの第2のモードの周波数を有するように、テニス・ラケットのこわさを調節することが望ましい。図1?図9はかかる周波数を有するテニス・ラケット15の特定の一実施例を示す。」 iii.明細書第10頁【0031】の記載を次のように訂正する。 「図3?図9に示されたラケット・フレームの形状及び寸法は、ラケットが通常のラケットよりも堅くすなわちより大きいこわさを有し、そして自由一自由抑制下での曲げの第1のモードに対しては180Hzから250Hzまでの周波数を有するとともに、クランプー自由抑制下での曲げの第2のモードに対しては227Hzから315Hzまでの間の所望の周波数を有するように、中間面MPに対する慣性モーメントを提供する。最小高さAに対する最大高さBの割合は、約1.35から約1.38であるのが望ましい。」 iv.明細書第11頁【0033】の記載を次のように訂正する。 「特定の形状及び寸法を有した大形ヘッドのラケット及び中間サイズのラケットが、所望のこわさ及び周波数を達成するようにここに説明されてきた。しかしながら、結果のこわさもしくは堅固さが所望の周波数を提供する限り、他の形状及び寸法が用いられ得るということが理解される。重要な目的は、180Hzから250Hzまでの自由一自由抑制下での曲げの第1のモードの周波数を有するラケットにおいて、227Hzから315Hzまでのクランプー自由抑制下での曲げの第2のモードの周波数を達成することである。」 |
異議決定日 | 1999-12-28 |
出願番号 | 実願平5-22322 |
審決分類 |
U
1
652・
121-
YA
(A63B)
|
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 神崎 潔、長谷部 善太郎、松島 四郎、結田 純次 |
特許庁審判長 |
村山 隆 |
特許庁審判官 |
白樫 泰子 平瀬 博通 |
登録日 | 1996-05-30 |
登録番号 | 実用登録第2507397号(U2507397) |
権利者 |
ウィルソン・スポーティング・グッズ・カンパニー アメリカ合衆国、イリノイ州、シカゴ、ウエスト・ブリン・モア 8700 |
考案の名称 | ラケット |
代理人 | 曾我 満照 |
代理人 | 池谷 豊 |
代理人 | 曾我 道照 |
代理人 | 小林 慶男 |
代理人 | 小林 慶男 |
代理人 | 池谷 豊 |