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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01N
管理番号 1012693
審判番号 審判1998-11266  
総通号数 10 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2000-10-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1998-07-16 
確定日 2000-02-23 
事件の表示 平成4年実用新案登録願第66346号「メタン・非メタン炭化水素分析計」拒絶査定に対する審判事件(平成6年4月8日出願公開、実開平6-25757)について、次のとおり審決する。   
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成4年8月27日の出願であって、その請求項1に係る考案(以下、「本願考案」という。)は、補正された明細書及び図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。
「 第1カラムと第2カラム及び第2水素炎イオン化検出器が、この順序で接続されて、キャリアガスラインのキャリアガスで第1カラムに導入されたサンプルガスのメタンと非メタン炭化水素とを、第1カラムで非メタン炭化水素を吸着し、メタンを第2カラムに移送して分離し、次に、前記キャリアガスラインを第1カラムの下流側と、第2カラムの上流側とに各別並行に接続を変更して第1カラムの下流側から上流側に前記キャリアガスをバックフラッンュして、第1カラムが吸着した非メタン炭化水素を溶出させるメタン・非メタン炭化水素分析計において、前記キャリアガスラインから分岐された分岐ラインを設けて、前記バックフラッシュ時に、第2カラムの上流側に前記分岐ラインに設けた抵抗を介在させてメタンを第2水素炎イオン化検出器で測定するよう構成する一方、前記バックフラッシュ時の第1カラムの下流側に第1カラムが吸着した非メタン炭化水素を測定する第1水素炎イオン化検出器を第1カラム以外にキャリガスの流れに対して抵抗になるものがない状態で接続して構成してあることを特徴とするメタン・非メタン炭化水素分析計。」
2.引用例
(1)第1引用例
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、特開昭51-100794号号公報(以下、「第1引用例」という)には、
イ)「大気汚染の測定に当たっては大気中の炭化水素を測定することが行われ、この場合メタンと非メタングループを分離測定する必要がある。この場合、従来装置にあっては、ガスクロマトグラフの第1のカラムでメタングループ(CH4,O2,N2等)と非メタングループとに分離し、先に分離流出するメタングループを第二のカラムで各成分に分離後測定し、第1カラムをバックブラッシングを行って残る非メタングループを一括測定する方式が採用されていた。
ところが、この方式によるとメタンと非メタングループのピークの出る時間が殆ど同じ程度となるので、この装置の分離目的が達せられない欠点があった。」(第1頁左下欄下から4行?右下欄10行)
ロ)「この発明は、この問題点を解決することを目的とするもので、試料を第1のカラムでメタングループと非メタングループに大別し、前者グループをさらに第2のカラムで各成分に分離後測定し、後者グループをバックフラッシングによって一括測定する方式のものにおいて、上記の第2のカラムに直列にダミーカラム(空カラム)を接続したことを特徴とする炭化水素測定装置であり」(第1頁右下欄下から6行?第2頁右上欄3行)と記載されており、
ハ)また、「第1図はこの発明の流路構成の一例を示すもので、Vは・・・キャリアガスは点2で分岐して一方は流路抵抗R2、ダミーカラム(空カラム)E、第2カラム(メインカラム)MC1を介して検出器Dへ、他方は第1カラム(プレカラム)PC、流路抵抗R1を介して検出器Dへ各々流れるように流路が形成されている。
以上の流路構成によってバルブVの操作によって計量管Lにサンプリングされた試料(例えば空気)は、バルブVの実線から点線流路への切替操作によって、キャリアガスによって第1カラム(プレカラム)PCに送り込まれ、ここで、CH4、O2,N2等のメタングループと、非メタングループとに大別される。ついでこのプレカラムPCで分離されたメタングループがプレカラムPCを流出後バルブを実線流路に切換えると、プレカラムPCに残存する非メタングループは、キャリアガスの逆流によりバックフラッシュされ、抵抗R1を介して検出器Dで検出される。」(第2頁左下欄3行?右上欄14行)との説明と共に、具体例として第1図が記載されている。
(2)第2引用例
同じく、原査定の拒絶の理由に引用された、特開昭56-27649号公報(以下、「第2引用例」という)には、キャリアガスとしてHeだけを用い、H2O溶出時間がCO2,N2の溶出時間より長い第1カラムとCO2とN2を分離する第2カラムを用いるガスクロマトグラフの測定作業によって、同一のサンプルからをO,N,Hの3成分を前処理によりCO2,N2,H2Oの形で含むサンプルガスとして測定するようにした金属中のガス分析装置において、
イ)一例として、第一カラム5と第2カラム6及び第2熱伝導度検出器TCD2がこの順序で接続されて、キャリアガスラインのキャリアガスで第1カラムに導入されたサンプルガスのCO2,N2とH2Oとを、第1カラムにH2Oを残し、CO2,N2を第2カラムに移送して分離し、次に、流路切換弁4により前記キャリアガスラインを第1カラム5の下流側と、第2カラム6の上流側とに各別並行に接続を変更して、第1カラム5の下流側から上流側に前記キャリアガスをバックフラッンュして、第1カラムに残るH2Oを溶出させ、抵抗10を介して第1熱伝導度検出器TCD1で検出する一方、キャリアガスラインから分岐された分岐ラインに設けられた抵抗9を介在させて、上記H2O検出とほぼ同時に第一カラム5より流出したN2+CO2は第二カラム6に導入され、第二カラム6によってN2とCO2を分離し、各々のピークを第2熱伝導度検出器TCD2で検出するガス分析装置が記載されている(第2頁左下欄5行?第3頁右上欄9行、第1図及び第2図)と共に、
ロ)特に流路抵抗9,10につき「これらの抵抗9,10は第一カラム5,第二カラム6に相当する抵抗とするのが基本であるが、H2Oのバックフラッシュを促進するために抵抗10を小さくして、バックフラッシュラインの流量が大きくなるように設定してもよい。」と記載されている。(第2頁左下欄下から2行?右下欄4行)
ハ)さらに、「また、第1図、第2図(イ)(ロ)では、2カラム5,6,ダブル流路、2検出器TCD1,TCD2の実施例を示したが、第3図に示すように、1つの検出器TCDをサンプルライン、比較ラインの両ラインに接続して実施することも可能である。但し第3図の場合には、CO2,N2の検出後、H2Oのバックフラッシュを行なうことになる。また、第3図において、CO2,N2が第一カラムを流出し終えた時点で、H2Oのバックフラッシュを行なう場合には、第二カラム6の直前にCO2,N2の流出を遅らす空洞部を設けてH2OとCO2,N2とがTCDへ同時に到着しないようにすることがひつようとなる。」と、検出器を1つしか使用しない場合の具体例についても、バックフラッシュされない検出成分とされる検出成分の検出器への同時到着を避けるための「空洞部」設置を含めて記載されている。(第3頁右上欄下から7行?左下欄6行、第3図)
3.対比・判断
そこで、本願考案と第1引用例に記載された炭化水素分析装置を対比すると、ガスクロマトグラフの分離カラムにおける成分の分離や溶出時間の遅れ、残存は、一般に吸着によるものであるから、両者は「第1カラムと第2カラム及びメタンを測定する検出器が、この順序で接続されて、キャリアガスラインのキャリアガスで第1カラムに導入されたサンプルガスのメタンと非メタン炭化水素とを、第1カラムで非メタン炭化水素を吸着し、メタンを第2カラムに移送して分離し、次に、前記キャリアガスラインを第1カラムの下流側と、第2カラムの上流側とに各別並行に接続を変更して、第1カラムの下流側から上流側に前記キャリアガスをバックフラッシュして、第1カラムが吸着した非メタン炭化水素を溶出させるメタン・非メタン炭化水素分析計において、前記キャリアガスラインから分岐された分岐ラインを設けて、前記バックフラッシュ時に、第2カラムの上流側に前記分岐ラインに設けた抵抗を介在させてメタンを測定する検出器が接続するよう構成する一方、前記バックフラッシュ時の第1カラムの下流側に第1カラムが吸着した非メタン炭化水素を測定する検出器を接続して構成してあるメタン・非メタン炭化水素分析計」である点で一致し、次の点で相違する。
A 検出器の数について、本願考案がメタンを測定する第2検出器とは別に非メタン炭化水素を測定する第1検出器を設けて、バックフラッシュ時に第2カラムの上流側に前記分岐ラインに設けた抵抗を介してメタンを第2検出器で測定するよう構成する一方、前記バックフラッシュ時の第1カラムの下流側に第一カラムが吸着した非メタン炭化水素を測定する第1検出器を接続して構成してあるのに対し、第1引用例記載のものはメタンを測定する検出器と非メタン炭化水素を測定する検出器とが同じであって、キャリアガスラインから分岐された分岐ラインが第2カラムの下流側で検出器につながるキャリアガスラインに合流接続して構成してある点。
B 検出器の種類について、本願考案が水素炎イオン化検出器を使用するものであるのに対し、第1引用例記載のものは検出器の種類が特定されていない点。
C 本願考案は第2カラムの上流側にメタンピークの検出器への到着時間を調節する手段は何も設置していないのに対し、第1引用例記載のものは空カラムを設けてメタンピークの検出器への到着を遅延させている点。
D バックフラッシュ時の第1カラムの下流側と検出器との間に、本願考案は第1カラム以外にキャリアガスの流動に対して抵抗になるものがない状態で接続して構成してあるのに対し、第1引用例記載のものは抵抗を介在させた状態で接続して構成してある点。
上記相違点について検討する。
[相違点Aについて]
一般に、複数の成分を複数の検出器を用いて成分別に測定するのに比して、単一の検出器でそれぞれ測定分析しようとすると、検出器の数は少なくて済むものの同時測定ができないため測定に要する時間が長くなる問題点があることは、分析における技術常識に過ぎず、検出器を共通の1個とするか、複数個とするかは、当業者が分析計の設計に際し必要に応じて適宜設計しうる事項である。
ちなみに、本願考案と同様に、キャリアガスラインのキャリアガスで第1カラムに導入されたサンプルガス中の複数測定成分の一部を第1カラムで吸着し、残りの成分を第2カラムに移送して分離し、次に前記キャリアガスラインを第1カラムの下流側と、第2カラムの上流側とに各別並行に接続を変更して、第1カラムの下流側から上流側に前記キャリアガスをバックフラッシュして、第1カラムが吸着した成分を溶出させるガス分析計において、検出器の数について、単一の検出器を使用するタイプのものの代わりに、キャリアガスラインから分岐された分岐ラインを設けて、バックフラッシュ時に第2カラムの上流側に分岐ラインに設けた抵抗を介在させて第2カラムから流出してくる成分を第2検出器で測定するよう構成する一方、バックフラッシュ時の第1カラムの下流側に第1カラムが吸着した成分を測定する第1検出器を接続して構成して、検出器を2個使用するタイプの装置に設計変更することは、第2引用例に記載されている。
したがって、第1引用例記載の分析計を2個の検出器を使用するタイプに設計変更することは、当業者が必要に応じ適宜なし得ることである。
[相違点Bについて]
水素炎イオン化検出器は、特に炭化水素等の有機物用の高感度のガスクロマトグラフの検出器として、周知慣用のものに過ぎず(必要ならば、例えば(社)日本分析化学会編「分析ライブラリー7 ガスクロマトグラフの検出器」(株)東京化学同人1966年10月15日発行、第73-89頁、「化学計測ハンドブック」(株)朝倉書店昭和49年6月30日初版発行、第168-171頁参照)、メタン・非メタン炭化水素分析計の検出器として水素炎イオン化検出器を採用することに何等困難性は認められない。
[相違点Cについて]
第2引用例の第3頁左下欄1-6行にも記載してあるように、空カラムの存在は複数成分を1個の検出器で測定する場合に必要なものであって、検出器を2個使用する場合に必要のない構成であることは明らかである。
[相違点Dについて]
第2引用例の第2頁右下欄1-4行に、第1カラムに吸着した成分のバックフラッシュを促進するために、バックフラッシュ時の第1カラムの下流側に設けた抵抗10を小さくしてバックフラッシュラインに流れるキャリアガスの流量が大きくなるように設定してもよいことが記載してあるから、バックフラッシュ時の第1カラムの下流側に第1カラムが吸着した非メタン炭化水素を第1カラム以外にキャリアガスの流動に対して抵抗になるものがない状態、即ち抵抗ゼロの状態で接続して構成することも、当業者が必要に応じ設計し得る程度の事項に過ぎない。
そして、本願考案の構成に基づく効果も、第1引用例及び第2引用例の記載から、当業者が予測しうる範囲内のもので格別のものとは認められない。
4.むすび
したがって、本願考案は、第1引用例及び第2引用例に記載された考案に基づいて当業者が極めて容易に考案をすることができたものであるから、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができない。
審理終結日 1999-10-19 
結審通知日 1999-11-02 
審決日 1999-11-18 
出願番号 実願平4-66346 
審決分類 U 1 8・ 121- Z (G01N)
最終処分 不成立    
前審関与審査官 宮澤 浩  
特許庁審判長 後藤 千恵子
特許庁審判官 住田 秀弘
伊坪 公一
考案の名称 メタン・非メタン炭化水素分析計  
代理人 藤本 英夫  

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