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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B65B |
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管理番号 | 1012701 |
審判番号 | 審判1998-634 |
総通号数 | 10 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 実用新案審決公報 |
発行日 | 2000-10-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 1997-12-25 |
確定日 | 2000-03-01 |
事件の表示 | 平成4年実用新案登録願第15964号「包装機の圧縮装置」拒絶査定に対する審判事件(平成5年10月19日出願公開、実開平5-77003)について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.本願(実願平4-15964号:平成4年3月26日実用新案登録出願)の実用新案登録を受けようとする考案は、累次の手続補正{最終の手続補正は、平成11年3月17日の提出に係る【実用新案登録請求の範囲】の補正}によって補正された明細書の【実用新案登録請求の範囲】に記載された次のとおりのものと捉えられる。 『【請求項1】 紙葉類が自由状態に積み重ねられた被包装物を圧縮した後にフィルム包装する包装機において、フィルム包装工程に搬送される被包装物を圧縮するために設けられた圧縮装置であって、 紙葉類がフィルムに覆われることなく自由状態で積み重ねられた被包装物を載せて水平方向に搬送する下側コンベアと、 この下側コンベアの上方に、下側コンベアとは対向して水平状態で昇降し得るように配置されており、被包装物を下側コンベアとともに圧縮して同方向に等しい速度で搬送する上側コンベアと、 この上側コンベアを昇降させる昇降駆動モータと、 上側コンベアが被包装物上の所定距離まで下降したことを非接触で検出する減速位置検出手段と、 この減速位置検出手段によって前記上側コンベアが被包装物に対して所定距離まで下降したことが検出された際に、上側コンベアが微速にて被包装物にて接触して被包装物を圧縮するように昇降駆動モータを減速制御する制御器と、 を具備することを特徴とする包装機の圧縮装置。』 2. 引用文献 これに対して、当審が、平成11年7月6日付けで通知した拒絶理由通知書において引用した、▲1▼ 第1引用例:「特開昭60-228227号公報」(コンベヤの駆動をモータによってなした点を捨象して、ほぼ本願考案と同趣旨の構成をもつ包装機の圧縮装置である点):この引用例には、以下の記載が、図面とともに記載されている。 イ) 「本発明は、折りたたんで積重ねた新聞紙等、………包装する装置の改良に関する。」(公報第2頁下段右欄5?7行目) ロ) 「1は第1移送装置で、下段に備えた無端コンベヤ2の上方に昇降駆動源として適宜固定せるシリンダ3により昇降自在とした上部装置4を配置してある。……………………………………………………………………10は、前記枠部材5の側部に設けた減速機付モータでスプロケット11・無端鎖12・スプロケット13を介して前記無端コンベヤ9を間欠動可能としてある。」(公報第3頁上段右欄12行?下段左欄6行目) ハ) 「上部装置4の上昇状態において第1移送装置の1の下段コンベヤ2上に被包装物Pが搭載されて所定位置まで移動すると、図示しない検知器の信号によりコンベヤ2が停止し、続いてシリンダ3が作動して上部装置4が下降する(第4図)………………………………………………………………………………………………………………………この包装機においては上部装置4の下降により被包装物Pが圧縮されるが、コンベヤ9のみ特に突出しているため圧縮状態のままでの移送が円滑に行えるものであり、しかもコンベヤ9は部分的に設けたため上部装置4全体が軽量化されて昇降所要時間が短縮されるものである。」(公報第4頁上段左欄5行?下段左欄13行目) ニ) 「上部装置4の構成として抑え板の両側にコンベヤを配置するものや、……………………………コンベヤが複数になれば移送状態は確実安定化する。」(公報右第4頁下段右欄7?12行目) ホ) 「さらにコンベヤ109の前記ブラケットによる枢結部は、前記枠部材105に固定したブラケット124と横リンク125により枢結してある。 しかして、前述構成より成る上部装置104は、シリンダ122a,122bの短縮状態においてコンベヤ109をその下面が抑え板108a,108b下面より上方となる位置に吊持されたままシリンダ103の短縮により上方位置において待機し、被包装物Pの下コンベヤ2上所定位置への搭載信号によりシリンダ103が伸長して下動し、所定圧縮力で被包装物Pを圧縮する。 続いてシリンダ122a,122bの伸長作動により(前記シリンダ103の圧力より若干高い圧力)リンク114a,114b,116a,116bを介しコンベヤ109のみをさらに若干下降させて抑え板108a,108b下面より突出させると共に、下段コンベヤ2,コンベヤ109を同時駆動させるものであり、その他の作用は前述第1発明における場合と全く同一である。」(公報第5頁上段右欄12行?下段左欄10行目〉 同じく、当審が、引用したところの、 ▲2▼ 第2引用例:「実願昭50-171524号(実開昭52-84470号)のマイクロフィルム」(非接触センサによる被包装体への接近位置を検知し速度を減速制御する技術事項)には、以下の記載が、図面とともに記載されている。 イ) 「Pは折りたたんで積重ねた新聞紙等の上下方向に弾力性のある被包装物の被圧縮物である。12は限定距離検出器であり、圧縮板11の孔13を通して、被圧縮物Pの上側にかけられたフィルム6の上面と圧縮板11の下面が所定距離以内に接近したとき信号を発するごとくなっている。14、15はスピードコントローラであり……… 16,17は電磁切換バルブであり、18は圧縮空気源である。……………………………………21はスピードコントローラであり、スピードコントローラ14,15よりも小さい速度で空気が流れるごとく調節してある。」(明細書第2頁16行?第3頁9行目) ロ) 「圧縮板11が下降して、被包装物の被圧縮物Pの上側にかけられたフィルム6の上面と圧縮板11の下面が所定距離以内に接近すると限定距離検出器12が信号を発し、それにより電磁切換バルプ16がB側へ切換わる(第2図)。すなわち流量小の管路へ切換わる。このため、シリンダ9の下部内部の空気は電磁切換バルブ17の方へは進まず、電磁切換バルブ16からスビードコントローラ21を通りサイレンサ19で消音されて大気中へ放出される。スピードコントローラ21は流量が小に調節されているため、シリンダ9内部の下部の空気はゆつくりと放出され、シリンダ9内部の上下の圧力差の変化が遅くなり、シリンダロッド10及び圧縮板11はゆつくりと下降し、被圧縮物Pにゆつくりと当接し圧縮する。このため、包装機には過度の衝撃や振動が発生せず、また不快な騒音が発生しない。」(明細書第5頁3行?20行目) ハ) 「本考案は圧縮板に設けた検出器により圧縮板が被圧縮物に当接する若干前に液体圧シリンダの流体排出管路を流量大の排出管路から流量小の排出管路に切り換えるため、…………………………過度の衝撃や振動を発生させず、また……………圧縮することができる。」(明細書第6頁15行?第6頁3行目) 同じく、当審が、引用したところの、 ▲3▼ 第3引用例;「特開平3-31119号公報」(昇降するコンベアの駆動源にモータを用いる点。一般に、被搬送体を搬送する装置を上下昇降せしめる駆動手段として、モータを使用することは、普通のことである。):この引用例には、以下の記載が、図面とともに記載されている。 イ) 「搬送物を台車上に載置しつつ垂直方向に搬送するための垂直搬送装置であって、………………前記2台の台車は上下両方向に駆動可能なリニアモーターの一次巻線をそれぞれ備え、………………前記2台の台車のリニアモーターを互いに反対方向に駆動することにより、前記2台の台車の上下動を制御することを特徴とする垂直搬送装置」(公報第1頁特許請求の範囲(1)の項) ロ) 「台車3a、3bは、……………………………レール面14a、14bとなっている。」(公報第3頁上段左欄3行目?11行目」 ハ) 「この垂直搬送装置は、書類ファイルなどの定型品(以下、「搬送物」と呼ぶ。)を鉛直方向に搬送するための装置である。」(公報第3頁下段左欄14行?16行目) 3. 対比・判断 上記第1引用例には、本願考案の構成との対応において把握すると、以下のとおりの構成が開示されていると捉えられることは、引用例の記載・図面の内容に照らし、是認されるところというべきである。 「紙葉類が自由状態に積み重ねられた被包装物(積重ねた新聞紙等の「被包装物P」が、之に相当する。以下同じ)を圧縮した後にフィルム(「フィルム幕F」)包装する包装機(「圧縮包装機」)において、フィルム包装工程に搬送される被包装物(「被包装物P」)を圧縮するために設けられた圧縮装置(「第1移送装置」)であって、 紙葉類(「P」)がフィルム(「F」)に覆われることなく自由状態で積み重ねられた被包装物(第1装置側の被包装物Pは、「自由状態」を実現)を載せて水平方向に搬送する下側コンベア(「無端コンベヤ2」)と、 この下側コンベア(「2」)の上方に、下側コンベアとは対向して水平状態で昇降し得るように配置されており、被包装物(「P」)を下側コンベアとともに圧縮して同方向に等しい速度で搬送する上側コンベア(上側の「無端コンベヤ109」)と、 この上側コンベア(「109」)を昇降させる昇降駆動装置(「シリンダ103」)と、 上側コンベアが被包装物上の所定距離まで下降したことを感知し(「シリンダ103が伸長して下動し、所定圧縮力で被包装物Pを圧縮する。続いてシリンダ122a・122bの伸長動作により(前記シリンンダ103の圧力より若干高い圧力)リンク114a・114b、116a・116bを介してコンベヤ109のみをさらに若干下降させて」の技術事項中に、所定距離下降の感知手段が内含されていると捉えることができる)、 上側コンベアが微速にて被包装物にて接触して被包装物を圧縮するように昇降駆動装置を減速駆動機構(「シリンダ122a・122b」は、シリンダ103より若干高い圧力で伸長すること、下降量が少ないことから、より「微速にて接触し」を実現していることが推認される)と、 を具備する包装機の圧縮装置(第1移送装置)。』 4.本願考案と第1引用例に記載された考案とを比較すると、 I).本願考案が、コンベヤの昇降駆動源としてモータを以て供しているのに対して、第1引用例に記載の考案では、シリンダ(流体圧)で行っている点、 II).本願考案は、コンベヤの所定距離下降の検知を、非接触で行っているのに対して、第1引用例に記載の考案では、非接触でなすことまでは、明らかに示されていない点、 III).本願考案は、コンベヤの下降速度の遅速制御を、一つの圧縮機構で行っているのに対して、第1引用例のものは、別途の減速圧縮機構を制御する制御器を備えている点、 で各相違している。 その余の構成部分については、前記にみたとおり、両者間に格別の径庭は存しないところである。 5. そこで、これらの相違点につき、審案する。 (1) 相違点I).について ところで、一般に昇降搬送機の駆動のアクチュエータとしてモータを以て供用することは普通に行われていることである。 さらに、紙類を昇降輸送するコンベヤの昇降駆動にモータを使用してなるものは、前掲第3引用例に開示されているとおりである。 本願考案のこの点における構成は、第1引用例に記載の考案の駆動源であるシリンダに代えてモータを以て供したものに相当し、斯様にした点は、モータのアクチュエータとして供用し得る普遍的性格からみて、公知技術の代替施用の域を出ないものというべきである。 (2) 相違点II).について 通例、距離(長さL)の検知を、非接触で行うことは、普通に行われていることである。 また、本願考案と同旨の包装機の圧縮装置において、コンベヤが被包装物上の所定距離まで下降したことを非接触で検知する減速位置検出手段は、前掲第2引用例に開示されている。即ち、第2引用例に記載の「限定距離検出機12」が、これを体現している。 本願考案のこの点における構成は、 第1引用例に記載の考案の上側コンベヤの段階的下降手段に代えて、第2引用例に記載の非接触で検出する減速位置検出手段を施用して成したものに相当し、斯様にした点は、きわめて容易になし得る公知技術の置換に過ぎないものというべきである。 蓋し、第2引用例に記載の包装機の圧縮装置が、包装機に過度の衝撃と振動が発生することを防ぎ不快な騒音の発生を防止するものではあるが、包装機の過度の衝撃や振動は、当然に圧縮される被包装物に対しても悪影響を及ぼすであろうことは当業者当然予測の事項であり、ために、第2引用例に記載の包装機の圧縮装置は、被包装物に対する影響にも配慮したものであることは当業者にとり自明の事項といえるものであるところ、被包装物の荷崩れ防止のために、上記第2引用例に開示されているような非接触の減速位置検出手段を擁し段階的に上側コンベヤを下降させる技術を、第1引用例に記載の考案に採択し本願考案のこの点における構成のごとく工夫することは、当業者当然予測の範域を出ないものというべきであるからである。 (3) 相違点III).について 一つの昇降機構の遅速を制御して速度を制御する制御器を具備してなる包装機の圧縮装置なるものは、第2引用例に開示されている。 即ち、流体圧シリンダ9で以て圧縮速度の遅速に対処している。 したがって、斯かる第2引用例に記載の圧縮装置の減速制御器を第1引用例に記載の圧縮装置に用いることは、両者の技術的アナロジーの類型性に因み、きわめて容易になし得る公知技術の置換に過ぎないものといってしかるべきである。 さらに、明細書の記載から窺知するに、本願考案は、これ等3つの相違点を総合考量しても、それによってもたらされる効果は、当業者の予測を超越する格別顕著な効用を収めているものとは解し難い。 それ故、本願考案の構成要件を以ては、上掲第1、第2、第3の各引用例に記載された考案を組合せ・勘案することにより、当業者に於いて、きわめて容易に推考することができたものと認められる。 故に、実用新案法第3条第2項の規定により、本願考案につき、実用新案登録を受けることが出来ない。 6.よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 1999-12-06 |
結審通知日 | 1999-12-14 |
審決日 | 1999-12-24 |
出願番号 | 実願平4-15964 |
審決分類 |
U
1
8・
121-
WZ
(B65B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 原 慧、石川 太郎 |
特許庁審判長 |
佐藤 久容 |
特許庁審判官 |
三原 彰英 藤原 稲治郎 |
考案の名称 | 包装機の圧縮装置 |
代理人 | 倉内 義朗 |