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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性 無効とする。(申立て全部成立) E04G
管理番号 1012725
審判番号 審判1998-35219  
総通号数 10 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2000-10-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 1998-05-22 
確定日 2000-03-17 
事件の表示 上記当事者間の登録第1745519号実用新案「コンクリート型枠のセパレーター固定用具」の登録無効審判事件について、次のとおり審決する。   
結論 登録第1745519号実用新案の登録を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 1.手続の経緯、本件考案の要旨
本件登録第1745519号実用新案は、昭和58年2月14日に実用新案登録出願された実願昭58-20615号を分割した出願であって、昭和63年3月23日に実公昭63ー9734号として出願公告され、昭和63年10月24日に設定の登録がなされたものであり、本件登録第1745519号実用新案に係る考案(以下、「本件考案」という。)の要旨は、出願公告された明細書及び図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲の第1項に記載された次のとおりのものと認める。
「セパレーター(19)を型枠(M)へ固定横架させるためのものとして、硬質な合成樹脂から成り、その固定用具本体(10)における長手方向のほぼ中間部(13)に、セパレーター端部の径大ヘッド(20)受け入れ用となる深く広幅な上部開口型の凹溝(18)を設け、同じく本体(10)の基端部(11)に型枠(M)への取付け用となる軸足(26)の受け入れ螺合ナット(15)を埋設一体化し、更に本体(10)の先端部(12)にセパレーター(19)それ自身の受け入れ用となる浅く狭幅な上部開口型の凹欠(21)と、その凹欠(21)の開口上部を常時閉塞するように張り出し指向して、セパレーター(19)を該凹欠(21)内への受け入れ後に浮き上り防止する左右一対の弾性舌片(24)と、その凹欠(21)と連続してほぼL字型に向かい合う左右一対の舌片逃し切欠(25)とを設けると共に、その両舌片(24)の相互により区画されるほぼV字型楔空間(S)の深さ(W)がセパレーター(19)それ自身の直径寸法(d)よりも大きくなるようにその舌片(24)を、上記本体(10)における中間部(13)の頂面よりも一定高さ(H)だけ起立するものとして先端部(12)に突設した左右一対の支点耳片(23)から、そのまま斜め下方へ連続的に張り出し延長させたことを特徴とするコンクリート型枠のセパレーター固定用具。」
2.審判請求人の主張
審判請求人は、登録第1745519号実用新案の登録を無効とする、審判の費用は被請求人の負担とする、との審決を求めている。
すなわち、本件考案は、甲第1号証?甲第6号証に記載の考案から、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができないものであり、同法第37条第1項第1号の規定により無効とされるべきである、と主張し、以下の証拠方法を提示している。
甲第1号証
実公昭51-44586号公報
甲第2号証
実願昭46-36304号(実開昭47-35031号)のマイクロフィルム
甲第3号証
実願昭48-93433号(実開昭50-39114号)のマイクロフィルム
甲第4号証
実公昭52-20890号公報
甲第5号証
実公昭53-48496号公報
甲第6号証
実願昭53-79940号(実開昭54-181714号)のマイクロフィルム
3.甲各号証の記載事項
審判請求人の提示した甲第1号証?甲第6号証には、それぞれ以下の事項が記載されている。
甲第1号証
「この考案は、形枠緊結用コーンに関するものでその目的は予め形枠の堰板にコーンを取付けておき、その後コーンにセパレーターを連結して緊結することができるコーン、特に形枠内に鉄筋を配筋する場合に、配筋後において簡単に形枠を緊結できるようにしたコーンを提供することにある。」(第1頁第1欄第20?25行)、
「コーン本体1の側面の中間部から軸線に垂直に縦穴2が設けられ、これに連続して縦穴2と本体1の後端面との間に前記縦穴の幅よりも狭い幅の溝3が形成されている。溝3の切口部端には斜め下方に突出する舌片4,4が対設されている。また、本体1の前端面には必要に応じ空間部5および中心部にねじ孔6を設ける。
形枠緊結に際しては、本体1のねじ孔6にねじ込んだ軸足7を堰板8に差し通して、その突き出た端部に端太材緊結用連結杆9をねじ込んで連結することにより、予めコーン本体1を堰板8の内側に左右対称に取付けておき、形枠内に配筋した後、両端にフランジ等の突起部10を形成したセパレーター11を両コーン本体1,1にその両端において連結し、この状態で形枠を緊結する。すなわち、セパレーター11の突出部10を本体1の縦穴2に嵌め込み、その突出部10の基端を溝3に嵌め込むことにより、縦穴2と溝3の段部に突出部10が係止されて、軸方向に脱落することなく連結され、かつ舌片4,4によってセパレーター11は溝3の切口部から抜け出すことなく係止される。」(第1頁第2欄第2?23行及び第1,2,4,5図)及び
「セパレーター11端部の突出部10は径大に形成され、縦穴2は溝3よりも深く広幅で、上部に開口しており、溝3は縦穴2よりも浅く狭幅で、上部に開口しており、又、左右一対の舌片4,4の相互により区画されるほぼV字型楔空間が形成されていること。」(第1?3,5図)
そして、上記甲第1号証の記載として摘示した事項からみて、甲第1号証には以下の考案が記載されていると認められる。
「セパレーター11を形枠へ固定横架させるためのものであって、コーン本体1の側面の中間部に、セパレーター11端部の径大突出部10を嵌め込む深く広幅な上部に開口した縦穴2を設け、本体1の前端面の中央部に形枠と端太材とを連結する軸足7をねじ込むねじ孔6を設け、本体1の縦穴2と後端面との間に,セパレーター11の突起部10の基端を嵌合するための浅く狭幅な上部に開口した溝3と、該溝3を常時閉塞するように張り出し指向して、セパレータ11を該溝3内に嵌合後は抜け出し防止する左右一対の舌片4,4を溝3の切口部端に斜め下方に突設し、両舌片4,4の相互により区画されるほぼV字型楔空間を形成した形枠緊結用コーン。」
甲第2号証
「この考案は型枠緊結装置に使用するセパレーターコーン、特に合成樹脂製コーン本体にセパレーターおよび締結ボルトを連結する連結金具を一体に埋込んだものに関し、」(明細書第1頁第12?15行)及び
「製造に際しては連結金具2の取付部3をコーン本体の型内に挿入しておき、これにABS樹脂等の合成樹脂を流し込んで成形する。」(明細書第3頁第16?18行)
甲第3号証
「本案はコンクリート型枠組立の際に、鉄筋と型枠の間隔を正確に保ち、コンクリートのかぶり厚さを正しく取るために鉄筋に取付けるスペーサーにおいて、硬質合成樹脂製の鉄筋用スペーサーに関するものである。」(明細書第3頁第1?5行)、
「硬質合成樹脂製円形体の中心部に鉄筋嵌着部1を穿設すると共に、円形体周縁3から該嵌着部1に通ずる幅広い導入溝2を形成し、この導入溝2の両内側には円形体周縁3入口両側から円形体中心方向に延びる一対の鉄筋支持板4,4を設け、この支持板4,4は導入溝入口両側の基部から鉄筋嵌着部1に向い次第に導入溝2をせばめて、支持板4,4の先端部が鉄筋嵌着部1を塞ぐようにすると共に、支持板に対し鉄筋挿入時押圧力が働くときは支持板4,4がその両外側の間隙5,5方向に曲がるよう弾性を持たせてある。」(明細書第4頁第14行?第5頁第4行及び第1、3図)、
「鉄筋支持板4,4は導入溝2両側壁の凸起6、6を支点にしてその両外側の間隙5,5方向に曲がり、鉄筋Sを通して鉄筋嵌着部1に嵌入する。
これにより鉄筋支持板4,4は復帰してその先端により鉄筋を離脱しないように支持する。」(明細書第5頁18行?第6頁第3行及び第1、3図)及び
「間隙5,5は、鉄筋嵌着部1と連続して略L字状に向かい合う左右一対の窪み形状としていること。」(第1、3図)
甲第4号証
「1はスペーサー全体を示す。このものはプラスチック製で外周は円又は多角形である。2は鉄筋の挿入口である。鉄筋を通す時は挿入口より、戻止板3を押し開いて鉄筋嵌着部4に鉄筋を固定する。戻止板は、その一端をスペーサー外周付近で挿入口部に固定し、他端を中心部に向け自由端としておき、プラスチックの反撥力を利用したトラップ構造であるため、太さの異なる鉄筋に対してもこれが抜け落ちることはない。」(第1頁第2欄第11?19行及び第1、2図)
甲第5号証
「凹陥部3の開口上に内向きの一対の突片部11,11を形成し、凹陥部3に挿入した鉄筋Aをその突片部11,11により抑え込んで鉄筋の浮上りを防止できるようにしたものである。」(第2頁第3欄第6?9行及び第4図)及び
「一対の突片部11,11は、それぞれの支点部を支持部4上辺2よりも高い位置に起立するよう設け、左右一対の支点部から斜め下方へ張り出し延長させ、一対の突片部11,11の背後に略L字状の切欠を設けたスペーサー1。」(第4図)
甲第6号証
「図中1は本考案に係るスペーサ本体である。このスペーサ本体1は合成樹脂によつて成形されており、断面U字形をした鉄筋受部2を有している。この鉄筋受部2はその上端に互いに対向する逆V字形の鉄筋導入部3,3を一体的に備えており、また、この鉄筋受部2の側壁面には各々腕部4,4が一体的に延設されている。」(明細書第2頁第12?19行及び第1図)及び
「鉄筋導入部3,3の支点は、腕部4より高い位置に設けられていること。」(第1、3図)
4.当審の判断
本件考案と甲第1号証記載の考案とを比較すると、
甲第1号証記載の考案の「形枠」、「コーン本体」、「側面」、「突出部」、「嵌め込む」、「上部に開口した」、「縦穴」、「前端面」、「形枠と端太材とを連結する」、「ねじ込む」、「縦穴と後端面との間」、「セパレーターの突起部の基端」、「嵌合するため」、「溝」、「抜け出し」、「舌片」及び「形枠緊結用コーン」は、夫々本件考案の「型枠」、「固定用具本体」、「長手方向」、「ヘッド」、「受け入れ用」、「上部開口型」、「凹溝」、「基端部」、「型枠への取付け用」、「受け入れ」、「先端部」、「セパレーターそれ自身」、「受け入れ用」、「凹欠」、「浮き上り」、「弾性舌片」及び「コンクリート型枠のセパレーター固定用具」に相当し、甲第1号証記載の考案の「ねじ孔を設ける」ことに代え「ナット体を本体に内装すること」は、単なる設計変更にすぎないから、
本件考案と甲第1号証記載の考案とは.
「セパレーターを型枠へ固定横架させるためのものとして、その固定用具本体における長手方向のほぼ中間部に、セパレーター端部の径大ヘッド受け入れ用となる深く広幅な上部開口型の凹溝を設け、同じく本体の基端部に型枠への取付け用となる軸足の受け入れ螺合ナットを埋設一体化し、更に本体の先端部にセパレーターそれ自身の受け入れ用となる浅く狭幅な上部開口型の凹欠と、その凹欠の開口上部を常時閉塞するように張り出し指向して、セパレーターを該凹欠内への受け入れ後に浮き上り防止する左右一対の弾性舌片を設けたことを特徴とするコンクリート型枠のセパレーター固定用具。」
である点では、実質上一致しているということができるが、以下の点で両者は相違している。
相違点
(1)本件考案は、硬質な合成樹脂から形成されているのに対して、甲第1号証記載の考案では、材料が明示されていない点。
(2)本件考案のステーロッドの軸端部を嵌合せしめる凹部と連続して略L字状に向かい合う左右一対の舌片逃し切欠を有する点が、甲第1号証には、記載されていない点。及び
(3)両舌片の相互により区画されるほぼV字型楔空間の深さが、本件考案では、セパレーターそれ自身の直径寸法よりも大きくなるようにその舌片を、中間部の頂面よりも一定高さだけ起立するものとして先端部に突設した左右一対の支点耳片から、そのまま斜め下方へ連続的に張り出し延長させたことよりなるのに対して、甲第1号証記載の考案は、そのような構造を具備していない点。
そこで、上記相違点について検討すると、
相違点(1)について
甲第2号証には、本件考案の「セパレータ用止め具」に相当する「セパレーターコーン」をABS樹脂等の合成樹脂で成形することが記載されており、相違点(1)における本件考案の、セパレータ用止め具を硬質な合成樹脂から形成することは、周知・慣用の事柄にすぎない。
相違点(2)について
甲第3号証には、「鉄筋嵌着部1に通ずる導入溝2を形成し、この導入溝2の両内側には入口両側から円形体中心方向に延びる一対の鉄筋支持板4,4に対して、鉄筋嵌着部1と連続して略L字状に向かい合う左右一対の窪み形状の間隙5,5を設け、支持板に対し鉄筋挿入時押圧力が働くと支持板4,4がその両外側の間隙5,5方向に曲がり、鉄筋Sを通して鉄筋嵌着部1に嵌入し、その後鉄筋支持板4,4は復帰してその先端により鉄筋を離脱しないように支持する」という合成樹脂製鉄筋用スペーサーの構造が記載されており、該甲第3号証記載の考案の「間隙5,5」は、本件考案の「舌片逃し切欠」に相当し、その形状に差異がなく、また、相違点(2)における本件考案の構造と甲第3号証記載の鉄筋用スペーサーの構造とは、その作用・機能において共通しており、甲第3号証記載の合成樹脂製鉄筋用スペーサーの構造を本件考案の型枠のセパレータ用合成樹脂製止め具の構造とすることに格別の困難性も認められない。
そして、効果においても、格別な差異を奏するものということもできない。
よって、相違点(2)において、本件考案のようにすることは、甲第2号証記載の考案より、当業者がきわめて容易に設計変更なし得ることにすぎないということができる。
相違点(3)について
甲第5号証には、「一対の突片部は、それぞれの支点部を支持部上辺よりも高い位置に起立するよう設け、左右一対の支点部から斜め下方へ張り出し延長させ、一対の突片部の背後に略L字状の切欠を設けたスペーサー」が記載され、この「突片部」及び「支点部」は、本件考案の「舌片」及び「支点耳片」に相当するものであり、寸法が十分でないときは、支点を高くし、相違点(3)における本件考案の事項のようにすることは、当業者が必要に応じてきわめて容易に想到なし得る設計的事項にすぎないということができる。
以上を総合判断すれば、本件考案は、審判請求人が提出した甲第1?3号証及び甲第5号証に記載された考案に基づいて、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであり、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができない。
5.むすび
したがつて、本件考案の登録は、実用新案法第3条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第37条第1項第1号の規定により、これを無効にすべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 1999-12-14 
結審通知日 2000-01-04 
審決日 2000-01-12 
出願番号 実願昭58-92823 
審決分類 U 1 112・ 121- Z (E04G)
最終処分 成立    
前審関与審査官 丸山 亮  
特許庁審判長 樋口 靖志
特許庁審判官 鈴木 憲子
小野 忠悦
登録日 1988-10-24 
登録番号 実用登録第1745519号(U1745519) 
考案の名称 コンクリート型枠のセパレーター固定用具  

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