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審決分類 審判    C12G
管理番号 1012726
審判番号 審判1998-35510  
総通号数 10 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2000-10-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 1998-10-23 
確定日 2000-02-16 
事件の表示 上記当事者間の登録第3009230号実用新案「計量装置付き麹冷却保管装置」の登録無効審判事件について、次のとおり審決する。   
結論 登録第3009230号実用新案の明細書の請求項第1項に記載された考案についての登録を無効とする。登録第3009230号実用新案の明細書の請求項第2項ないし第3項に記載された考案についての審判請求は、成り立たない。 審判費用は、その3分の2を請求人の負担とし、3分の1を被請求人の負担とする。
理由 I.手続の経緯・本件考案
本件登録第3009230号実用新案の請求項1乃至3に係る考案(以下、「本件考案1乃至3」という。)は、平成6年9月20日に実用新案登録出願され、平成7年1月18日に設定の登録がなされたもので、本件考案1乃至3は、その明細書及び図面の記載からみて、実用新案登録請求の範囲の請求項1乃至3に記載された次のとおりのものと認める。
「【請求項1】通気可能な回転円盤床を有し、回転円盤床上に均し工程と排出工程を兼用する昇降可能な均し排出装置を設け、壁体より囲まれた回転円盤床下に、通気ファンと連結する緩衝キャンバスを有するダクトを設け、麹の温度を測定するセンサにより、麹への通風を制御する麹冷却保管装置において、麹冷却保管装置をロードセルで支持することにより、麹の重量変化を計量する計量装置付き麹冷却保管装置。
【請求項2】壁体により構成された室内に、通気可能な回転円盤床を有し、この回転円盤床上に均し工程と排出工程を兼用する昇降可能な均し排出装置を設けると共に、通気ファンと結ばれた排気循環切換ダンパと連結する緩衝キャンバスを有するダクトを設け、回転円盤床下に通気ファンと連結する緩衝キャンバスを有するダクトを設け、麹の温度を測定するセンサにより、麹への通風を制御する麹冷却保管装置において、麹冷却保管装置をロードセルで支持することにより、麹の重量変化を計量する計量装置付き麹冷却保管装置。
【請求項3】設定した時刻に、設定した重量の麹を自動的に払い出す制御装置を備えた請求項1又は2記載の計量装置付き麹冷却保管装置。」
II.当事者の主張
(1)請求人の主張
請求人は、「実用新案登録第3009230号の実用新案登録請求の範囲の請求項1乃至3に記載された考案についての実用新案登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする」との審決を求め、証拠方法として下記の甲第1号証乃至甲第6号証を提出して、本件考案1乃至3は、甲第1号証に記載された考案と同一であるから、実用新案法3条の2の規定により、実用新案法37条1項2号によって無効とすべきである旨主張している。

甲第1号証:特願平5-320033号の願書に添付された明細書又は図面(特開平7-170967号公報)
甲第2号証:「醸造用機器解説 1983」(全国醸造機器工業組合昭57.12.10発行)34?37頁
甲第3号証:特公昭58-9671号公報
甲第4号証:特開平4-158819号公報
甲第5号証:特開昭2-16967号公報
甲第6号証:実願平1-80291号のマイクロフィルム(実開平3-22697号公報)
(2)被請求人の主張
被請求人は、「実用新案登録第3009230号の請求項1、2及び3は、これを無効とすべきではない。審判費用は請求人の負担とする」との審決を求めている。
III.当審の判断
甲第1号証には、その特許請求の範囲の項に、「【請求項1】麹を収容する麹ストッカー1と該麹ストッカー1を下方で支持したロードセル2とからなる麹重量測定型麹ストッカー。」が記載され、発明の詳細な説明中には、「本発明は、清酒、味噌製造等の醸造工業における麹を収容する麹ストッカーの改良に関するもので、スチールベルト型、回転円盤型、箱形等すべての麹ストッカーに応用できるものである。」(段落番号【0001】)、「通常麹ストッカーは、麹を収容する麹ストッカー本体と麹の発熱を除去するための送風機及び冷却又は除湿装置で構成される。・・・大型の麹ストッカーでは麹ストッカー本体をロードセルに載せ、その他の部分は麹ストッカー本体の重量測定に影響のないように柔軟なターボリン等で本体と接続する。」(段落番号【0006】)、及び「このような構造としたことにより、麹ストッカーの重量(風袋)をゼロとして麹の重量のみを表示することが可能となる。スチールベルト型等で、排出を自動で行なう場合は1回の排出量を設定し、その値になった時点で自動停止させることができる。」(段落番号【0007】)がそれぞれ記載され、また、本発明の麹重量測定型麹ストッカーの実施例の側面図「図1」、及び平面図「図2」には、循環する閉鎖系の通気経路が図示されている。
甲第2号証には、「N.F.T自動製麹装置」の表題の下、[円盤型麹保管機]として、
「2 構造、機能及び特長
本機は図に示す如く回転円盤周囲に約800?1000m/mまで堆積可能な衝立板を設け、円盤上に昇降自在な掻出し、掻均し兼用スクリューを装備し・・・(略)・・・麹冷却に於いては円盤下部の半密閉室に設けた高静圧フアンとこれを制御する品温センサーが麹層に挿入され、保管中に品温が上昇すればフアンが作動し外気或いは冷風を吸引通風して冷却を行う。」(37頁左欄13?26行)との記載とともに、その断面図(36頁右欄)が図示され、また、[NFT自動製麹装置II型]及び[NFT自動製麹装置III型]として、それぞれの断面図(34頁右欄、35頁右欄)も図示されている。
甲第3号証には、「米、麦、大豆、コーンミール及びその他の粉粒体を培養処理した麹を保管のために堆積すべく通気性を有する回転床を囲繞して側壁を構成し、この側壁に形成した排出口に向かって前記麹を半径方向に搬出するための搬出手段とこの搬出手段の昇降手段とを駆動装置に連動可能に関連させると共に、前記回転床の下方に前記麹に対する上向き及び/又は下向きの通気を行って、麹菌の繁殖を阻止しうる冷風供給手段を設け、保管中の麹から発散する熱を逸散させることにより前記麹の麹菌の不時の繁殖を阻止しうるようにした麹の保管、供給装置。」(特許請求の範囲の項)、「図において、1は通気性を有し回転可能であるようにした回転床であって、該回転床の上には、米、麦、大豆、コーンミール等或いはその他の粉粒体を培養処理した麹を堆積収容させる。2は回転床1上の麹を堆積収容させるようにした側壁、3は麹のかきならし或いは搬出のための搬出手段、・・・」(1頁2欄22?27行)が、
甲第4号証は、「自動炊飯装置」に係るもので、「次にオペレータは、時刻セットを行う。この時刻セットは、時刻と予約セットボタン78を用いて、現在時刻を正しく表示させたり、予約時刻を設定したりする。・・・(略)・・・予約ボタン61が押されているときは、予約工程に入り、所定の設定時刻になると計量工程に進む。・・・(略)・・・計量工程では、選定された炊飯量にしたがって、所定量の米が、貯米庫9から計量部4を介して洗米タンク16に排出される。」(4頁右下欄末行?5頁左上欄14行)が、
甲第5号証には、「培養室を培養床によって上室と下室に区切り、上室内に配置した温、湿度感知手段を介して、この室内の湿度を製麹に最適な室内環境に設定する温、湿度調整手段を設け、調整された空気をもって麹基質の品温を調整する送風手段を、上室と下室との間に設けて、製麹を行うものにおいて、麹基質の品温上昇に伴ない駆動される送風手段の作動に際し、これと連動して前記温、湿度調整手段を、前記温、湿度感知手段によって、平常の作動状態を越えた急激な作動状態に移行させ、前記送風手段の作動に伴なう、麹基質からの急激な高温多湿の導入に対応させるようにしたことを特徴とする製麹の方法。」(特許請求の範囲の項)が、
甲第6号証には、「回転円盤(1)を境にした上室(2)又は下室(3)に設けられた回転円盤の回転軸(4)と同心円上の上室移動装置又は下室移動装置に対して噴射角可変型ノズル(5)を設けてなることを特徴とする製麹用回転円盤型装置の洗浄装置。」(実用新案登録請求の範囲の項)が、それぞれ記載されている。
(本件考案1について)
甲第1号証の出願時の技術常識をまず検討するに、甲第2号証には、「回転円盤・・・、円盤上に昇降自在な掻出し、掻均し兼用スクリューを装備し・・・麹冷却に於いては円盤下部の半密閉室に設けた高静圧フアンとこれを制御する品温センサーが麹層に挿入され、」が、また、甲第3号証には、「通気性を有する回転床、・・・この側壁に形成した排出口に向かって前記麹を半径方向に搬出するための搬出手段とこの搬出手段の昇降手段とを駆動装置に連動可能に関連させる・・・」がそれぞれ記載されており、しかも、甲第3号証は、甲第1号証の出願に先立つ17年前に発行された公報であり、また、甲第2号証は、同じく10年前に「全国醸造機器工業組合」が発行した解説書であることを考慮すると、甲第1号証の出願時に、回転円盤型の麹冷却保管装置に、「通気可能な回転円盤床」、「回転円盤床上に均し工程と排出工程を兼用する昇降可能な均し排出装置」、及び「麹への通風を制御するための麹の温度を測定するセンサ」が設けられていることは、技術常識であったといえる。
そうすると、甲第1号証の段落番号【0001】の「・・・回転円盤型、・・・すべての麹ストッカーに応用できるものである。」における「回転円盤型麹ストッカー」に関し、「通気可能な回転円盤床」、「回転円盤床上に均し工程と排出工程を兼用する昇降可能な均し排出装置」、及び「麹への通風を制御するための麹の温度を測定するセンサ」について直接的に言及するところはないが、上記技術常識をふまえると、これらの事項は記載されているに等しいといえる。
また、本件考案1の「緩衝キャンバス」は、甲第1号証の「柔軟なターボリン等」に相当するから、結局、甲第1号証に係る出願当初の明細書又は図面からは、「通気可能な回転円盤床を有し、回転円盤床上に均し工程と排出工程を兼用する昇降可能な均し排出装置を設け、壁体より囲まれた回転円盤床下に、通気ファンと連結する緩衝キャンバスを有するダクトを設け、麹の温度を測定するセンサにより、麹への通風を制御する麹冷却保管装置において、麹冷却保管装置をロードセルで支持することにより、麹の重量変化を計量する計量装置付き麹冷却保管装置。」という発明を把握することができる。
そうすると、本件考案1と、甲第1号証に係る出願当初の明細書又は図面に記載された発明とは相違するところはない。
したがって、本件考案1は、甲第1号証に記載された発明と同一であり、しかも、本件考案1の考案者が、甲第1号証に記載された発明の発明者と同一の者であるとも、本件出願時において、その出願人が甲第1号証に係る出願の出願人と同一の者であるともいえないので、請求項1に係る考案の実用新案登録は、実用新案法3条の2の規定に違反してなされたものである。
(本件考案2について)
本件考案2は、「通気ファンと結ばれた排気循環切換ダンパ」を構成要件とするところ、甲第1号証の「図1」及び「図2」からは、循環する閉鎖系の通気経路が見出せるだけで、「排気循環切換ダンパ」は、窺い知ることができない。
また、「排気循環切換ダンパ」は、他の甲各号証にも記載されていない。
すなわち、甲第2号証には、NFT自動製麹装置の断面図が図示されているが、通気経路は、単に循環させるもの、或いは装置外から通気して装置外へ排気する形態のものだけであり、甲第3号証は、排風機により通気をする記載はあるが、麹堆積層の上部或いは下部から冷気を通気させるだけのものであり、甲第5号証では、通風を循環させるものだけが図示されており、また、甲第6号証には、吸気ダクトから入って、排気ダクトから再び空気調和装置方向へと排出されることが記載されているだけである。
そうすると、甲第1号証の出願時に、製麹装置において、「排気循環切換ダンパ」を設置することが、技術常識であったとは、甲第2、3、5、及び6号証の記載からはいえないので、甲第1号証に「排気循環切換ダンパ」が記載されているに等しいとは、到底いうことができない。
したがって、本件考案2は、甲第1号証に記載された発明と同一であるとはいえないので、請求項2に係る考案の実用新案登録は、実用新案法3条の2の規定に違反するものではない。
(本件考案3について)
本件考案3は、「設定した時刻に、設定した重量の麹を自動的に払い出す制御装置を備えた」ことを特徴とするものであるところ、甲第1号証には、「設定した時刻に」という構成については開示されていない。
甲第4号証には、「次にオペレータは、時刻セットを行う。・・・(略)・・・所定の設定時刻になると計量工程に進む。・・・(略)・・・計量工程では、選定された炊飯量にしたがって、所定量の米が、貯米庫9から計量部4を介して洗米タンク16に排出される。」との記載はあるが、これは、自動炊飯装置に係るもので、本件考案とはその技術分野を異にするものである。
そうすると、甲第1号証の出願時に、製麹装置において「設定した時刻に、設定した重量の麹を自動的に払い出す制御装置を備えた」ことが、技術常識であったとは、甲第4号証の記載からはいえないので、甲第1号証に、「設定した時刻に、設定した重量の麹を自動的に払い出す制御装置を備えた」という事項が記載されているに等しいということはできない。
したがって、本件考案3は、甲第1号証に記載された発明と同一であるとはいえないので、請求項3に係る考案の実用新案登録は、実用新案法3条の2の規定に違反するものではない。
IV.むすび
以上のとおりであるから、本件請求項1に係る考案の実用新案登録は、実用新案法37条1項2号に該当し、無効にすべきものであり、また、請求項2及び3に係る考案の実用新案登録は、請求人の主張する理由及び提出した証拠方法によっては、無効とすることができない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 1999-10-29 
結審通知日 1999-12-14 
審決日 1999-12-24 
出願番号 実願平6-12706 
審決分類 U 1 111・ 161- ZC (C12G)
最終処分 一部成立    
特許庁審判長 徳▲廣▼ 正道
特許庁審判官 田中 久直
田村 明照
登録日 1995-01-18 
登録番号 実用登録第3009230号(U3009230) 
考案の名称 計量装置付き麹冷却保管装置  
代理人 石山 博  
代理人 山崎 隆  
代理人 森 廣三郎  

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