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審決分類 |
審判 全部申し立て B41J |
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管理番号 | 1012758 |
異議申立番号 | 異議1999-73466 |
総通号数 | 10 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 実用新案決定公報 |
発行日 | 2000-10-27 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 1999-09-08 |
確定日 | 2000-02-16 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 実用新案登録第2591997号「プリンタ」の請求項1に係る実用新案に対する実用新案登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 実用新案登録第2591997号 の実用新案登録を維持する。 |
理由 |
理 由 (1)手続きの経緯及び本件考案 実用新案登録第2591997号の請求項1に係る考案は、平成3年9月18日に出願した実願平3-75052号の一部を平成7年9月14日に新たな実用新案登録出願したものであって、平成11年1月8日に設定登録がなされ、その後、その登録についてセイコーエプソン株式会社より実用新案登録異議の申し立てがなされたものである。 実用新案登録第2591997号の請求項1にかかる考案(以下、「本件考案」という。)はその実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「プリンタ本体に設けられカセット収納部にカセットを収納し、このカセット内に収納された被印字媒体に印字ヘッドを用いて印字を行なうプリンタにおいて、前記カセット収納部に収納された前記カセットを覆うべく前記プリンタ本体に開閉可能に取付けられる蓋体と、該蓋体が前記カセット収納部を覆った状態で前記蓋体を保持する蓋体保持手段と、該蓋体保持手段による保持を解除し、前記蓋体を前記カセット収納部を覆った状態から開放可能な状態にする蓋体保持解除手段と、前記印字ヘッドを前記被印字媒体への印字位置と当該被印字媒体から離間する離間位置との各位置に移動可能とする印字ヘッド移動手段と、前記印字ヘッドを前記被印字媒体への印字位置から離間させる方向に常に弾性的に付勢すべく前記印字ヘッド移動手段を付勢する付勢手段と、前記蓋体と前記印字ヘッド移動手段との間に介在され、前記蓋体の開き状態から閉じ状態への移行状態にある場合、該蓋体により押されることで前記印字ヘッド移動手段を前記付勢手段の付勢力に抗して移動させて前記印字ヘッドを前記印字位置へ移動させ、一方、逆に前記蓋体保持手段により前記蓋体が前記カセット収納部を覆った状態で保持されているのを前記蓋体保持解除手段により保持を解除した場合、これに連動して前記印字ヘッド移動手段を前記付勢手段の付勢力により移動させることで前記蓋体を押して閉じ状態から開き状態へ移動させ、且つ前記印字ヘッドを前記被印字媒体への印字位置から離間させる蓋体押上手段と、を具備したことを特徴とするプリンタ。」 (2)申立の理由の概要 申立人セイコーエプソン株式会社は、請求項1にかかる考案は、甲第1号証(特開平1-160660号公報)及び甲第2号証(特開平3-151261号公報)記載の考案に基づいて当業者がきわめて容易になし得た考案であるから、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができないものであり、本件考案の登録を取り消すべきと主張している。 (3)甲第1号証(特開平1-160660号公報)記載の考案 a.本発明は、プリンタやファクシミリなどに使用され、プラテンと印字ヘッドとの間にロール状記録紙を通して、この記録紙に印字する記録装置に関する(第1頁右下欄第12行?15行) b.図中1はファクシミリの本体ケースで、これは前部において手前側が開く回動可能な開閉カバー2を備えている。(第3頁右上欄第20行?同頁左下欄第2行) c.本体ケース1内の前後方向略中央部には、ロール状に巻かれた記録紙7が収納される収納部8(第7図および第9図参照)が設けられており(第3頁右下欄第7行?9行) d.この開閉カバー2はその裏面に突設した係止片29(第9図、第10図参照)を本体ケース1側の図示しないロック部材に係合させることにより、閉じ状態に固定されるとともに、この固定状態は第8図?第10図中28に示す開放ボタンを押圧することで解除されるようになっている。(第3頁左下欄第6行?12行) e.さらに、左右一対の支持部材11,12にわたるラインサーマルヘッド等からなる印字ヘッド14は、プラテン13に対して離接可能となるようにその両端部を支持部材11,12に移動可能に支持されている。印字ヘッド14の両端部には先端が略二又状をなす位置決めガイド17が夫々設けられている。(第4頁右上欄第5行?12行) f.そして、この記録ユニット9の支持部材12には開離ばね19が取付けられている。このばね19は板ばねからなり、支持部材12側に位置された印字ヘッド14の位置決めガイド17の先端部と係合して、(中略)常に印字ヘッド14をプラテン13から離す方向に付勢している。(第4頁左下欄第14行?同頁右下欄1行) g.次に、記録紙7をセットするには、まず、開放ボタン28を押圧し開閉カバー2の固定を解除してから、この開閉カバー2を支点4を中心にして手前側に回動させて開けるとともに、(中略)。そうすると、以上の開閉カバー2の開放に伴って、連動部材33が図示しないばねに力によって開閉カバー2の開き動作に追従する。なお、この場合、記録ユニット9は以前としてクランプ部材24で固定されているので、連動部材33の連動部35は応動部に引掛かって止まることなく(第5頁左下欄末行?右下欄12行) h.そして、開閉カバー2の開放が更に進むと、連動部材33の起上がり動作が図示しないストッパーにより規制されるとともに、第13図に示すようにカム31のカム面31aがクランプ解除部27との係合を介して、クランプ部材24を時計方向に回動させる。したがって、クランプ部材24と係止部18との係合が解除される。このためヘッド押え15が自由になるから(第5頁右下欄下から4行?第6頁左上欄4行) i.そして、上記記録ユニット9全体の上向きの回動と同時に、開離ばね19の付勢力によって、位置決めガイド17を介して印字ヘッド14が押し上げられて、プラテン13との間に少しの間隙g(第1図および第2図参照)を形成する。(第6頁右上欄第2行?6行) j.このため、開閉カバー2が更に閉じられることに伴って連動部材33を介してヘッド押え15が支点10を中心にして下向きに回動される。したがって、まず、開離ばね19の付勢力に抗して印字ヘッド14がプラテン13に接触されて、これらの間に通された記録紙7を挟んだ後に(第6頁右下欄第1行?6行) (4)甲第2号証(特開平3-151261号公報)記載の考案 a.本発明は印刷装置に係わり、特にテープカセットに収納されたテープに印字することを専用に行なうテーププリンタに関する。(第1頁左下欄下から3行?末行) b.以上説明したように本発明のテーププリンタは、フタ20を開けることによりテープカセットの脱着に障害となる印字ヘッド5およびテープ送りローラ11を逃がし、フ夕20を閉めることにより印字ヘッド5およびテープ送りローラ11を印字可能状態に位置決めする構造である。(第3頁右上欄第18行?左下欄第3行) (5)対比、判断 本件考案は、特に開閉カバー2の開放動作に関連する構成として「蓋体保持解除手段により保持を解除した場合、これに連動して前記印字ヘッド移動手段を前記付勢手段の付勢力により移動させることで前記蓋体を押して閉じ状態から開き状態へ移動させ、且つ前記印字ヘッドを前記被印字媒体への印字位置から離間させる蓋体押上手段」を備えている。 そこでその点に関して、本件考案を甲第1号証記載の考案および甲第2号証記載の考案と対比する。 まず、本件考案と甲第1号証記載の考案とは、蓋体の開閉動作に連動させて印字ヘッドを印字位置に移動させたり、印字位置から離間させたりする点では技術的に共通する点もあるが、本件考案が印字ヘッド移動手段を介して印字ヘッドを印字位置から離間させる方向に常に弾性的に付勢する付勢手段を、蓋体押上手段を介して蓋体に作用させることによって、蓋体の開放時に蓋体保持解除手段を操作するだけで、蓋体が自動的に開放されるものであるのに対して、甲第1号証記載の考案は位置決めガイド17(印字ヘッド移動手段)を介して印字ヘッドを印字位置から離間させる方向に常に弾性的に付勢する開離ばね19(付勢手段)は、クランプ部材24の存在により開閉カバー2(蓋体)には作用するものではなく、開放ボタン28(蓋体保持解除手段)を操作させただけで開閉カバー2を自動的に開放するものではない点で相違し、本件考案はこの構成を備えることによって「蓋体を蓋体押上手段が押して閉じ状態から開き状態へ所定の開放位置まで確実にしかも自動的に移動させることができ、且つ印字ヘッドを被印字媒体への印字位置からただちに離間させることができる。そして、これにより蓋体を所定の開放位置まで手動で開ける動作を必要としない分、省力化を実現できると共に、カセットをカセット収納部から簡単に取り出すことができる。」という明細書記載の作用効果を奏する。 なお異議申立人は、甲第1号証記載の考案の「ヘッド押え15」および「連動部材33」が本件考案の「蓋体押上手段」に相当すると主張しているが、上記gおよびhの記載からみて、「ヘッド押え15」は開閉カバー2の開放時、所定の開放位置まではクランプ部材24で固定されているし、その後も開閉カバー2には係合するものではないから、蓋体押上手段に相当するとはいえないし、「連動部材33」も上記gおよびhの記載からみて開閉カバー2の開放動作に追従はするものの開閉カバーを押し上げる程の付勢力は作用しているものではないし、開閉カバー2の開放時、連動部材33と印字ヘッドは動作上何ら連動関係にはなく、印字ヘッド移動手段を移動させることで開閉カバーを押すものではないから、蓋体押上手段に相当するとはいえない。 また本件考案と甲第2号証記載の考案とは、蓋体の開閉動作に連動させて印字ヘッドを印字位置に移動させたり、印字位置から離間させたりする点では技術的に共通する点もあるが、甲第2号証記載の考案のフタは手動操作によって開閉するものであって、甲第2号証刊行物には蓋体を自動的に開放させるための上記本件考案の構成要件について記載されていないし、示唆もされていない。 (6)むすび 以上のように甲第1号証及び甲第2号証には、本件考案の構成要件である蓋体保持解除手段により保持を解除した場合、それに連動して自動的に蓋体を閉じ状態から開き状態へ移動させる蓋体押上手段を備える点について記載されていないし、示唆もされていないので、実用新案登録異議申立の理由及び証拠によっては本件考案について登録を取り消すことはできない。 また他に本件考案について登録を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2000-01-27 |
出願番号 | 実願平7-9728 |
審決分類 |
U
1
651・
121-
Y
(B41J)
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最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 上田 正樹 |
特許庁審判長 |
石川 昇治 |
特許庁審判官 |
番場 得造 伊波 猛 |
登録日 | 1999-01-08 |
登録番号 | 実用新案登録第2591997号(U2591997) |
権利者 |
カシオ計算機株式会社 東京都渋谷区本町1丁目6番2号 |
考案の名称 | プリンタ |
代理人 | 落合 稔 |